議会報告

  • 2015年07月10日
    2015年6月議会 言論弾圧を許さず、厳正な対応を求める意見書への賛成討論 吉良富彦県議(2015.07.10)

私は日本共産党を代表し、ただいま議題となりました議発第6号「言論弾圧を許さず厳正な対応を求める意見書」議案に賛成の立場から討論を行います。

安倍晋三首相に近い自民党若手議員が元NHK経営委員の百田尚樹氏を招いて6月25日に開いた会合で、安全保障関連法案などを批判する報道に対し、「マスコミを懲らしめる」などの議員の発言や、「沖縄の二つの新聞はつぶさないといけない」という百田氏の発言があったことが明らかになり、安保関連法案審議中の特別委員会でも問題になりました。いずれも安保関連法案と辺野古への新基地建設への批判が高まっていることへの焦りから出た発言と考えられますが、日本新聞協会がその声明で「政権与党の所属議員でありながら、憲法21条で保障された表現の自由をないがしろにした発言は、報道の自由を否定しかねないもので到底看過できず、強く抗議する」と指摘しているように、憲法21条を踏みにじるだけでなく国会議員の憲法遵守をうたった憲法99条違反でもある暴論であり断じて見過ごせません。

「民主主義の根幹であり、憲法で保障された言論と表現の自由を脅かす」「自らに批判的な報道を規制し、排除してもいいという考え方に反対する」と日本記者クラブ、「メデイァへの弾圧であり、報道の自由への侵害だ」と新聞労連などに加え、地方紙も「まるで戦前の軍部のような横暴な意見」「言論封殺の暴挙 許すな」山形新聞、「言論封殺の策動許すな」長崎新聞、「自由民主の党名が泣く」「自民党には言論・報道の自由を軽視する体質があるのではないか」高知新聞、「気に入らない言論を強権で押しつぶそうとする姿勢」沖縄タイムズ等々、メデイァや世論はこれら発言に対し猛反発し曖昧に済ますことを許さない冷厳な目で推移を見つめています。

安倍首相は国会で、党責任者としての認識を問われ、「党の正式な会合ではない」「わびるかどうかは発言者のみが責任を負う」などと述べ、「われ関せず」の態度をとっています。

しかし、そもそもこの自民党の勉強会「文化芸術懇話会」は、参加者37人のうち半分以上が安倍首相の出身派閥「細田派」のメンバーです。首相側近の萩生田光一・党総裁特別補佐はじめ 「マスコミを懲らしめるには、広告料収入がなくなるのが一番。文化人が経団連に働きかけてほしい」と発言した大西英男衆院議員、「沖縄の世論は歪み、左翼勢力に完全に乗っ取られている」と述べた長尾敬衆院議員など19人が参加をしています。

また、勉強会参加者の9割近い32人が安倍首相が会長を務める「神道政治連盟国会議員懇談会」の会員です。首相側近の加藤勝信官房副長官、党青年局長を更迭された木原稔衆院議員、「スポンサーにならないことが一番、マスコミはこたえる」と発言した井上貴博衆院議員なども懇談会メンバーです。そして、講師に招かれた百田氏は2012年総裁選で安倍氏の「再登板」を求める民間有志の一人に名を連ねる親密な間柄で、この2月まで安倍政権の推薦によりNHKの経営委員を務めていた人物。安倍首相を支えてきた集団が、9月の次期自民党総裁選で「安倍再選」に向けた環境整備をと狙って開いた決起集会のようなものだったと報道されており、「われ関せず」との態度が許されるものではなく、首相と党の責任は重大だと言えます。

 しかし、首相は暴言について「遺憾」を口にしつつも、先に述べたように発言者をかばいだてする姿勢に終始しています。暴言を暴言と正面から認めない姿勢は、それが首相の本心と無関係でないことを図らずも示すものとなっており、それを見透かしたように、党執行部から厳重注意を受けたはずの大西議員は、舌の根も乾かぬうち再び安全保障関連法案を危惧する報道に関し「懲らしめないといけない」、自身の発言も「問題があったとは思っていない」と開き直った発言を繰り返し国会議員としての資質そのものと、彼への党としての姿勢が厳しく問われるものとなっています。
 各党幹部は「政治家としての基本的認識が間違っている」公明党、「コメントするのも嫌なくらい、恥ずかしい話だ」民主党、「軽率かつ重大だ」維新の党、「猛省を促したい」次世代の党、「おごり・高ぶりどころの騒ぎではない問題」社民党と、与野党超えて批判を集中。沖縄県議会は7月2日、「政府の意に沿わない言論機関は存在そのものを許さないという態度であり、沖縄だけでなく日本全国の報道機関への圧力」だと厳しく批判し、発言の撤回と県民への謝罪を求めた自民党総裁宛ての「抗議決議」を可決しています。

 高知新聞は社説で、「安保関連法案の審議への影響を抑えようと、議員の処分で安易な幕引きを図ろうとした党の姿勢も疑問だが、一番の問題は党総裁でもある安倍首相の曖昧な態度であろう」「ことは一部議員の問題で済まない。異論や批判についてどう考えるのかなど、言論の自由に関する認識について正面から、首相自らが国会で明確に語る必要がある」「首相は明確な認識を語れ」と自民党と安倍首相の説明責任を厳しく問う姿勢を示しています。

 私たち高知県民は、自由民権運動を抑え込むために「集会条例」や「新聞紙条例」など、さまざまな弾圧法令を発した明治政府の言論弾圧のもと、新聞発行停止処分を5度にわたり受けながらも、1万人が集う「新聞の葬式」を行うなど、弾圧に抗し言論の自由を求めて闘った歴史的伝統と風土を持つ県民です。今回の発言は、まさに140年前のその当時に後戻りしたかのような時代錯誤も甚だしい発言であり、当時の民権家や県民が聞いたらあきれはて怒り、笑い飛ばすことでしょう。

 表現や言論、報道の自由は民主主義社会の根幹をなすものです。思い通りにいかないメディアを「懲らしめ」「つぶせ」、そして歯向かう国民世論を封じよなど、これら、時の政府による言論統制や弾圧が日本を破滅的な戦争へと導いたことは、忘れてはならない歴史の教訓です。

政府においては、事実関係の調査を行い国民に明らかにし、党総裁である安倍首相自らが責任の明確化と謝罪、処分など厳正な対応を行い、憲法21条、憲法99条を守り歴史の逆行を許さない毅然とした姿勢を示すべきです。

以上、政治への信頼を取り戻すことに、政府、国会が責任ある対応を行うよう強く求め、第6号議案に賛成する討論とします。