議会報告

  • 2017年07月10日
    2017年6月議会 「『共謀罪』法案の強行採決に抗議し、『共謀罪法』の廃止を求める意見書議案」への賛成討論 中根佐知県議(2017.7.7)

 私は、日本共産党を代表し、ただいま議題となりました、議発第5号「共謀罪」法案の強行採決に抗議し、「共謀罪法」の廃止を求める意見書議案に、賛成の立場から討論を行います。

  「内心」を処罰対象にし、過去3度廃案になった共謀罪の趣旨を盛り込んだ組織的犯罪処罰法改正法案、いわゆる「共謀罪」法案は、6月15日、委員会採決を抜きにした「中間報告」という国会ルール無視の“禁じ手”を行使し、参院本会議で自民・公明の両与党と日本維新の会により強行採決されました。

 内容的にも、手続的にも、民主主義を破壊する暴挙です。地元紙の社説は「安倍政権によって『言論の府』が踏みにじられる光景を、これまで何度見せられたことだろう。」と批判をしています。

 国会審議を通じ、法案の持つ重大な危険性、それをごまかそうとする政府答弁の矛盾や詭弁が次々とあらわになっていきました。そして、国民が内容を知れば知るほど、反対や説明不十分の声が大きく広がっていきました。それは、共謀罪法案の正体が、何を考え、合意、計画したか、内心に限りなく踏み込んで捜査、処罰しようとする、紛れもない憲法違反の治安立法だからです。

 

 「共謀罪」法の問題点の第一は、犯罪の具体的行為があって初めて処罰されるという日本の刑法の大原則をねじ曲げて、人々がどんなことをしたら処罰の対象にされるのか全く不明確で、人の生命や身体、財産など侵害する危険が客観的にはない「合意」の段階を処罰するものだからです。

 政府は「準備行為」という歯止めをかけたと主張していますが、準備行為の判断基準について、金田法相は「花見であればビールや弁当を持っているのに対し、(犯行場所の)下見であれば地図や双眼鏡、メモ帳などを持っているという外形的事情がありうる」と答弁しましたが、マスコミ報道でも、スマートフォンの機能には地図もカメラのズームもメモ帳もある。つまりは取り調べで「内心の自由」に踏み込むしかないのだ、警察の恣意(しい)的判断がいくらでも入り込むということだ、と指摘をしています。

 組織的犯罪集団はどうか。政府が繰り返すテロ組織、暴力団、薬物密売組織は例示にすぎません。その団体の結合関係の基礎としての共同の目的が、刑法犯罪の8割にも及ぶ広範な277もの罪を実行することにあると警察に判断されれば、捜査と処罰の対象になり得るのです。

 さらに、政府は、組織的犯罪集団なるものの構成員でなくとも共謀罪の主体になることも認めています。政府は一般人が対象となることはあり得ないと強弁していますけれど、条文上全く限定されておらず、結局、警察に捜査対象と目されれば誰もが一般人ではなくなると言っているに等しい暴論でしかありません。
 客観的に危険な行為、危険な結果があって初めて罪に問うとの原則は、戦前大日本国憲法の下で、思想を処罰の対象とした治安維持法が、多数の人々の自由を侵害し恐怖に陥れたという、その反省に立って定められた歴史の到達点です。
共謀罪法は歴史の教訓にそむくもので、戦前の反省から定められた憲法19条、21条、31条にも明らかに反しています。


 第二の問題点は、戦後、現憲法の下でも、犯罪の未然防止や任意捜査の名目で、犯罪とは無縁の市民の人権、プライバシーを深く侵害する活動を続ける事例のある警察、検察の活動に法的根拠を与えることになり、深刻な人権侵害を生み出す危険があることです。

 その危険は、通常の団体が一変したら共謀罪、さらには、環境保護や人権保護が隠れみのなら共謀罪とする政府の答弁によって、いよいよ浮き彫りになりました。警察組織が住民運動は隠れみのではないかと情報収集を行い、その中で共謀罪の嫌疑を抱けば捜査に移行する、公安情報収集活動と犯罪捜査を連続して行うことがはっきりといたしました。一変にせよ隠れみのにせよ、労働組合や市民団体も処罰対象にされ得るのです。これに加えて、密告を奨励する自首減免規定が盛り込まれていることは、さらに冤罪(えんざい)を誘発するものとして、きわめて重大です。

 風力発電の建設に反対している住民を警察が監視し、その情報を企業に提供していた大垣事件では、警察は「通常の業務」として、なぜ調査対象にしたのかの説明をせず、謝罪も反省もしていません。
 犯罪と無縁の国民が、警察のさじ加減一つでプライバシーをひそかに侵害され、なぜ調査対象になったかも分からないまま深く傷つけられる重大な危険があり、そうとはならないという保証はどこにもないのです。


 反対する第三の理由は、TOC条約(国連国際組織犯罪防止条約)の締結に不可欠とする政府の説明が、まったくのウソであることが、国際社会の指摘によって明らかになったことです。

 当初明らかになった法案には「テロ」の語は存在せず、その後も「テロリズム集団その他」の語が挿入されただけで、テロ対策を内容とする条文は全く含まれていません。しかも、日本はテロ対策主要国際条約をすべて批准し、国内法化を終えています。

 TOC条約は、マフィアなどの国際的な経済組織犯罪の取締りを目的としたものであり、日本政府を含むG7各国がテロリズムを本条約の対象とすべきでないと主張していました。条約の国連立法ガイドを起草したニコス・パッサス教授は、条約はイデオロギーに由来する犯罪のためではない、テロ対策ではないと明言をしています。さらに、パッサス教授は、東京オリンピックのようなイベントの開催を脅かすようなテロなどの犯罪に対して現在の法体系で対応できないものは見当たらないとし、同法がなくても日本は条約を批准することは可能と忠告をしました。

 同法の不明確性が法執行機関の前近代的な秘密体質と結び付いて深刻なプライバシー侵害が引き起こされる懸念を、ケナタッチ国連特別報告者の公開書簡は指摘をしています。国連TOC条約の締結のためと言いながら、国際社会から批判されたら、独立した専門家としての特別報告者の権限も、日本が国連人権理事会理事国になるに当たっての、特別報告者との建設的な対話の実現のために今後もしっかり協力していくという誓約も投げ捨てて、感情的に非難し、協議も拒否する姿勢が、国際社会の信頼を失墜させています。

 今後、市民の自由を侵害する怖れのある法が悪用されないよう厳しく監視するとともに、市民を監視、弾圧する違憲立法の一刻も早い廃止を訴え、本意見書案への賛成討論といたします。同僚議員の賛同を、どうぞ、よろしくお願いいたします。