議会報告

【質問項目】

1、知事の政治姿勢・原発

2、知事の政治姿勢・TPP11

3、知事の政治姿勢・災害対応

4、知事の政治姿勢・人権行政

5、医療・介護問題について

6、ビキニ被災について

7、戦争遺跡の保存・活用について

 

 

●米田県議 私は日本共産党を代表して以下質問を行います。

 

【政治姿勢・原発】

 まず原発について知事にお伺いします。福島原発の過酷事故から6年9ヶ月たちましたが、事故原因はいまだに究明できず、6万8千人ともいわれる方々が避難生活を強いられています。溶け落ちた燃料の状態もほとんど不明で、廃炉工程表で示されていた燃料取り出しも3年先送りになりました。この現実を直視する必要があります。

 9月12日、「学者の国会」と言われる日本学術会議は、「提言 我が国の原子力発電のあり方について――東京電力福島第一原子力発電所事故から何をくみ取るか」を発表しています。その中で、事故の影響の大きさとともに、原発は、安全対策の費用が事前に予測不可能な「工学的に未完成の技術」であり、決して経済的ではないこと、核燃料サイクルの見通しがないもとでは資源の賦存量に制約された化石エネルギー同様、長期的にみれば供給力に限界があること、使用済み核燃料の処理方法が未定であることなど「原子力発電の持つリスク」を直視して、電力供給方式の転換――再生可能エネルギーの基幹化によるエネルギー供給方法を提言しています。

 2017 年6 月初旬、稼働中の原発は5基であり、エネルギー供給源としての原子力への依存度は1%を切っています(前述、学術会議提言)。

◆再生可能エネルギーの基幹化に大きく舵を切る必要があります。学術会議の提言をどう受け止めておられるのか、知事にお聞きします。

 

■県知事 米田議員の一連のご質問にお答えします。

まず、伊方原発に関連して、日本本学術会議の再生可能エネルギーの基幹化に関する提言をどう受け止めているのか、とのお尋ねがありました。

再生可能エネルギーの基幹化によるエネルギー供給方法の転換を図るべきという日本学術会議の提言は、再生可能エネルギーの導入を進めることにより原発への依存度を低減していくべきという本県の考え方と方向性は同じものと考えます。

 一方で、日本学術会議の提言の中では、国に対して、再生可能エネルギーの基幹化を図る上で課題となる低コスト化や安定供給化に向けた研究開発を促進することを求めております。                 

国においても、エネルギー基本計画の中で、再生可能エネルギーを積極的に推進していくため、系統強化、規制の合理化、低コスト化等の研究開発などを着実に進めることを明記しており、こうしたことに取り組まれていくものと認識しております。

本県においては、既に地域の大部分で送電線への連系制約が発生するなどの課題が生じていることから、国に対して送電網の強化や蓄電池の導入に対する支援の充実などの政策提言を行ってきており、引き続き、こうした取り組みを通じて再生可能エネルギーの導入促進を図ってまいります。

 

●米田県議 四国では、伊方原発3号機の運転が開始されていますが、1号機は、昨年3月廃炉を発表し、その際、知事は「今回の1号機の廃炉については、原発への依存度低減に向けた具体的な一歩であり、歓迎致します」とコメントを発表しました。

 2号機は現在停止していますが、四国電力は、昨年「再稼働をめざす」としていたものを、今年6月に「費用と運転期間、電力需要の見通しもみないといけない」として、今年中に再稼働の判断をすると変更し、さらに先日、「伊方2号機が発電する電力がどのように活用されていけるのかをよく見極める必要がある」「今後の電力需要の見通しを慎重に判断したい」と判断を年度内に先送りしました。

 要は、減少する電力需要と新電力参入の動きなどを背景としての経営判断、ということであります。電力の安定供給に不可欠との言葉は出てきません。伊方2号機は、すでに建設後35年たっており、廃炉となった1号機の4年半後に運転が開始された古い型の原発です。

 2号機を廃炉にすれば、原発リスクを軽減できます。再生可能エネルギーの接続可能量も増大します。

◆県として四国電力が判断を下す前に、多くの県民が示してきた再稼働反対の声と、県の原発への依存度低減の方針をしっかり届け、2号機の廃炉を求めるべきではないか、知事にお伺いします。

 

■県知事 次に、四国電力が判断を下す前に、県民の再稼働反対の声や県の原発への依存度低減の方針を届け、2号機の廃炉を求めるべきではないか、とのお尋ねがありました。

本県としましては、伊方原発3号磯の再稼働に当たって、その安全性や必要性について、四国電力との勉強会を通じて徹底的に確認し、確認した内容をわかりやすくとりまとめ、県民の皆様に公表してまいりました。

公表後においても、新たに県民の皆様から寄せられた不安や疑問の声に対しては、改めての勉強会の開催や個別の問い合わせを通じて四国電力に説明を求め、安全性などを確認してきております。

また、本年度も四国電力の株主総会において、伊方原発3号機の安全対策の徹底を求めるとともに、原発への依存度を低減させるべきとの本県の考え方をお示ししてきたところであります。

今後、仮に、四国電力が2号機についても再稼働の申請をすることになれば3号機の時と同様の対応をとりたいと考えております。

すなわち、勉強会などを通じて2号磯の安全性や再稼働の必要性などについて徹底的に確認を行ったうえで、本県としての意見を述べていくことを考えております。

 

【政治姿勢・TPP11】

●米田県議 次に、TPP、農業問題について伺います。

 TPPを巡り、離脱した米国を除く11カ国による新協定「TPP11」が大筋合意したと報道されています。日本政府は、アメリカにアジアの貿易で後れを取るとの焦りを誘い、TPP復帰を促すという理由で、同協定を主導してきました。しかし、現在のトランプ政権は、TPPではなく二国間協定を目指すと宣言しています。今年2月10日の日米首脳会談で「日米経済対話」の名のもと、財政、金融などでの連携、貿易枠組みでの協議を行うことを決定しました。当然、TPP以上の水準の要求が押し付けられることは必至です。全米米協会は1月、2国間の貿易協定を支持すると声明をだしています。米国食肉協会もTPP後の二国間協定を要求しています。

 そうしたもとで「大筋合意」を優先したやり方に「国内の懸念を置き去りにした対応も批判を免れない」「国会論戦や情報開示も不十分だ。合意を急ぐ理由など全くない」(北海道新聞11月8日、12日)、「焦点だった農業分野の合意内容見直しは、結局手つかずのまま。農業者の懸念を置き去りにしたとの批判は免れない。」(農業新聞11/11)との声があがっています。

 心配されているのが輸入枠の問題です。もともと米国を含む12カ国を対象に設定した低関税輸入枠で、乳製品の場合は7万トン(生乳換算)となっていますが、離脱した米国分3万トンが想定されていたとすれば、その分を差し引かず、7万トンを維持すると、ニュージーランド(NZ)やオーストラリアで輸入枠を満たし、これとは別に米国から2国間交渉で3万トン以上の輸入枠を改めて迫られることは必至だと指摘されています。また、ただでさえ設定量が大きすぎて実効性がないと評されていた牛肉などのセーフガード(緊急輸入制限)の発動基準数量も未改定ですので、TPP11の国は、米国抜きで、ほぼ制限なく日本に輸出できることになります。

◆TPP11と日米FTAによって、二重の打撃をうける懸念があると思いますが、知事にお聞きをいたします。

 

■県知事 次に、TPP11(イレブン)と日米FTAによって、二重の打撃を受ける懸念があると思うがどうか、とのお尋ねがございました。

本年1月に米国でトランプ氏が大統領に就任し、TPPからの離脱を正式表明して以降、我が国主導によって議論されていましたTPP11(イレブン)協定が、・先月10日に大筋合意されました。

国によりますと、新たな協定の内容は、米国を含んだTPP12(トウエルブ)協定の範囲内であり、米国に対して将来的にTPPの枠組みに入ってきてはしいとの思いから、農業分野の内容については見直しが行われていないとされております。

しかしながら、現時点において、米国は二国間のFTAによる経済協定を望んでいることから、仮に米国がTPPの枠組みに入ってこなかった場合には、二重の打撃とならないよう、新たな協定には「締約国の要請があった時には協定の見直し協議を行う」という旨の条項が盛り込まれたものと承知しております。

また、これまでのTPP対策を定めた国の政策大綱につきましては、日EU・EPA対策等を新たに盛り込み、総合的な「TPP等関連政策大綱」として改訂されました。

本県の場合には、中山間地域が多いといった厳しい実情もある中で、仮にTPPが発効すると、中山間地域の農業者を中心に、将来の経営への不安感が生産意欲を減退させ、結果として生産量が低下することも懸念されてきたところです。

国においては、国内の生産者が将来にわたって、持続可能な農業が展開できるよう、改訂後の大綱に基づき、十分な経営安定対策を講じていただくとともに、農業者の不安や懸念の声を解消するため、今後も丁寧な説明を行っていただきたいと考えているところでございます。

 

【政治姿勢・災害対応】

●米田県議 次に、台風21号による農業被害に対する支援について、農業振興部長に伺います。

 この度の台風によって、575ヘクタール、ビニールハウスなど施設6.6億円余、作物6.4億円余、計13億円余の被害を受けています。心からお見舞申し上げますとともに、一日も早い復旧と農業経営等の安定を願うところです。

 何人かの方に現場でお会いもして 、お話しを伺いました。4反余りのハウスで軟弱野菜を栽培する農業者は、二重に張ったハウスのフィルムが破れ、雨風によって野菜が大きく傷つきました。ちょうど、正月向け出荷用で、一年でもっとも収入がある時での大きな痛手であります。ハウス・農作物で、1千万円の被害になるといっています。そして、収穫作業がなくても、受け入れている外国人研修生5人への支払い等も必要です。30歳代の農業後継者は、実効ある支援策を、と訴えていました。

 他の農業者含めて、厳しい自然の中で農業経営を続けるために、やりがいと展望がもてるきめ細かな支援を、と話されています。

 県は、今回の農業被害に対して、実情に対応する支援に努力し、取り組まれていますが、さらに本格的な対策の検討と実施を強く求めるものあります。

◆一つは、この方は、まさに農繁期で、一刻も早いハウスの修理、復旧が必要で、緊急に知人の業者に発注をしました。こうしたケースをふくめて、柔軟に災害復旧の対象となるよう、あるいは県独自の支援策をつくるなど検討すべきと思いますが、お伺いをいたします。

 

■農業振興部長 まず、ハウスの修理、復旧に対する柔軟な対応についてのお尋ねがございました。

台風等で被災した農業用ハウスの被覆資材の修繕につきましては、主に農業共済制度を活用していただいております。

この制度については、ハウスの被覆の被害があった場合、一刻も早くハウスの復旧に取り掛かれるよう、農業共済組合の損害評価を受ける前であっても、被害を受けたビニール等の被覆を保管しておく又は写真を撮っておくことで、補償の対象となると伺っております。

ハウス本体につきましても、平成26年2月の豪雪被害を受けて27年度に見直され、ハウスの耐用年数期間中であれば最大80%、耐用年数経過後であっても最大60%の補償が受けられるなど、補償内容が大幅に拡充されております。

また、同制度への県内の加入率は約9割と全国でもトップクラスとなっており、既に今回の台風の被害に係る共済金の支払いも始まっているとお聞きしています。

県といたしましては、平成16年度より園芸用ハウスの災害復旧に対する支援を行ってきたところですが、今回の台風で被災された農家の方々の切実な声もお伺いし、負担が少しでも軽減されますよう補助率の引き上げや園芸用育苗ハウスの補助対象への追加、また、従来、原状復帰が原則としていたものを、より災害に強いハウスでの復旧も可能とするなど、補助要綱の改正を行いました。

さらに、より早期の復旧を進めるため、見積取得要件の緩和や、市町村予算措置前でも復旧に着手できるようにするなど、できる限りの緩和を行ったところでございます。

また、今月5日には、各市町村やJA等を対象に説明会を開催し、今般の取り組みについて、広く周知を図ってきました。

今後も、被災された方々ができる限り早期に営農が再開できますよう、農家の皆様に寄り添った対応に努めてまいります。

 

●米田県議 ◆第2は、紹介した様に、ハウスの修繕、復旧の間はもちろん、また作物が従前のように育ち、販売できるまでの間、現金収入は期待できず、極めて深刻です。軟弱野菜等の農業共済の充実とともに、融資制度についても無利子に加えて、一定の収入、安定的な経営が回復できるまで、償還のすえおきや期間の延長などを行うべきと考えますが、伺います。

 

■農業振興部長 次に、軟弱野菜などの農業共済の充実とともに、融資制度についても無利子に加えて、一定の収入や安定的な経営が回復するまで、償還の据え置きや期間の延長などを行うべきではないか、とのお尋ねがございました。

農業共済制度につきましては、ハウス本体に加えて、施設内農作物も園芸施設共済に加入できますが、補償の範囲は農作物の生産費に限定されており、加入状況は園芸施設共済加入者の約5割に留まっています。

一方、平成31年1月に開始される収入保険制度は、災害のほか価格低下による収入減少も補てんの対象となることから、高知県農業共済組合は、ハウス本体は園芸施設共済、施設内農作物等の農産物は収入保険制度に加入していただくよう薦めているところです。

また、融資制度につきましては、国が、今回の被害に対する金融上の支援措置として、農業近代化資金やスーパーL資金など制度資金の貸付当初5年間の無利子化などの措置を講じたところです。

償還の据置や期間の延長は、農業近代化資金の場合、法令等により、償還期限が15年、据置期間が7年と定められておりますが、実際の申請状況を見ますと、据置期間を2年または3年に設定しているのが現状です。

償還期間が長期になった場合、資金繰りが改善され、経営が安定化するといったメリットがある一方で、利子が増大し、農業者の負担が大きくなることが課題と考えております。

このようなことから、償還の据置や期限の延長は、慎重に対応することが必要であると考えますが、被災された農業者の皆様が営農を継続できるよう、お話を十分おうかがいしながら対処してまいります。

 

●米田県議 ◆第3に、今回の台風災害を受け、やむなく離農される方もいると伺っています。これらの方の蓄積した技術、また、耕作地を活用いただいて、新規就農者育成に一緒にとりくむ道を検討してはどうか、お伺いをいたします。

 

■農業振興部長 最後に台風被害によって、やむなく離農される方の技術や耕作地を活用した新規就農者の育成について、お尋ねがございました。

台風第21号では、香美市や高知市、香南市などで農業用ハウスや農作物に大きな被害が発生しました。

県としましては、まずは被災された農家の皆様に寄り添い、早期の営農再開に向けて取り組んでいくことが第一であると考えています。

そのため、農業振興センターの職員が、JAや市町村などとともに、被災された農家の皆様のもとにお伺いして、被災した農作物の管理への助言や、復旧に向けた各種制度の説明と活用方法、経営相談等を実施しているところです。

今後とも、JAや市町村などの皆様と連携しまして、被災された農家の皆様が一日でも早く営農再開できますよう、全力で取り組んでまいります。

なお、それでも止むを得ず離農される方がおられる場合には、ご本人の意向を踏まえながら、農地中間管理事業などを活用しまして、優良な農地が新たな担い手に引き継がれますよう取り組んでまいります。

また、農家のご協力がいただける場合には、JAや指導農業士等と連携し「学び教えあう場」などにおいて、蓄積された技術の継承にも取り組んでまいりたいと考えております。

 

【政治姿勢・人権行政】

●米田県議 次に、人権行政について伺います。

  昨年12月16日施行となった「部落差別の解消の推進に関する法律」は、部落差別解消のための「理念法」といいながら歴史に逆行して新たな障壁を作り出し、部落差別を固定化、永久化する恒久法であり、その危険は極めて重大であります。

  部落問題は封建的身分そのものではなく、その残滓の問題です。その解決は、民主主義の前進を図る国民の不断の努力を背景に大きく前進し、国の同和対策特別事業終結から15年たつ今日、社会問題としての部落問題は基本的に解決された到達点にあります。

  時として起こりうる、間違った認識や偏見に基づく言動などがあったとしても、社会で受け入れないという民主主義の力を強めていくことこそ重要です。行政の施策はすべての国民に公平に運用するのが原則であり、人権問題の相談、教育、啓発活動は、憲法に基づき一般施策で行うのが当然ではありませんか。

  本法の重大な危険性、問題の第1は、国会審議においても本法律を必要とする「立法事実」が明らかになっていません。「現在もなお部落差別が存在する」としその解消を目的にしています。しかし、法務省の統計によるインターネットでの人権侵犯事件は、256件から1869件と10年間で7倍以上に増加しているのに対して、そのうち同和関係は0から7件で推移しており、立法事実は基本的に存在していません。また今回の参考人質疑の中でも、部落解放同盟の「差別はいまだに根深く厳しい」との認識に対して、自由同和会推薦の参考人は「差別の過大評価だと思う」「日本は差別をうまくなくしてきている」と述べ、全国地域人権連代表は「国民の多くが日常生活で部落問題に直面することはほとんどなくなった」「部落は今日ではすでに消滅および過去の歴史的概念になりつつある」と指摘しているのであります。

  第2に、法律上初めて「部落差別」なる言葉がでていますが定義規定がありません。部落とは何をさしているのか、出身者というのはどこまで言うのかなど、国会で法務省も、法案提案者も答えることはできませんでした。定義がないために肝心の何を解消するのかが明確でないこと、またこれまで「部落民以外は差別者」としてきた特定の運動団体の介入を許すとともに、市民の表現や内心の自由が侵害される危険は重大です。

  第3に、不公正な同和行政による特権と利権の復活が懸念されます。「部落差別の解消に関する施策」「相談」「教育および啓発」「実態調査」の条文は無限定で、これが民間運動団体の「あれも差別、これも差別」といった根拠となり、補助金や委託による施策を押しつけられ、学校や自治体、企業や地域、あるいは人権擁護委員にまで、特定団体による教育、啓発が強制されかねません。また各地になお残る個人給付を含む同和対策の特別扱いを固定、助長することにもなります。

  第4は、行政に義務づけられる「実態調査」は、旧同和地区住民を洗い出すという新たな人権侵害を生み出します。また精密調査や行き過ぎた意識調査によって、それ自体が国民の内心を侵害し、分け隔てなく生活している住民の間に新たな壁をつくり出す危険があります。

  これらが、部落問題についての自由な意見交換を困難にし、部落問題の解決に逆行することは明白です。

  16年前の2001年1月26日、総務省地域改善対策室は・膨大な事業によって同和地区を取り巻く状況は大きく変化した・特別対策をなお続けていくことは、差別解消に必ずしも有効ではない等を理由に、特別対策を終了し一般対策に移行することを、「今後の同和行政について」で明らかにしました。そして翌年3月、33年間にわたり16兆円が投下された「同和関係特別対策の終了に伴う総務大臣談話」が発表されました。今回の法制定は、長年の国民、行政の営みと同和問題解決の歴史的到達を踏みにじるものと言わなければなりません。

 

  参議院法務委員会で、法と施策の実施に当たっての附帯決議が可決されています。過去の民間運動団体の行き過ぎた言動等、部落差別の解消を阻害していた要因を踏まえ、これに対する対策を講じること、等を求めています。

◆指摘しました本法の危険性・問題、そして附帯決議の受け止めと、法に基づく施策の実施に当たっての基本姿勢について、知事にお伺いをいたします。

 

■県知事 次に、人権行政に関しまして、「部落差別の解消の推進に関する法律」に基づく施策の実施にあたっての基本姿勢などについて、お尋ねがありました。

「部落差別の解消の推進に関する法律」は、部落差別は現在もなお存在するとともに、部落差別は許されないものであるとの認識の下に、部落差別の解消に関し、基本理念を定め、国と地方公共団体の責務を朗らかにするとともに、相談体制の充実等について定めることによって、部落差別のない社会を実現することを目的として昨年12月に施行されたものであります。

また、同法の附帯決議においては、法の適正かつ丁寧な運用に努めることや、過去の運動団体の行き過ぎた言動等、部落差別の解消を阻害していた要因を踏まえ、これに対する対策を講ずることも併せて総合的に施策を実施すること、さらには新たな差別を生むことがないよう留意して、その内容手法等に配慮することなどが求められています。

本県においては、同和問題に係る差別発言や落書きは、依然として存在しておりますし、最近ではインターネットの普及に伴い、掲示板への悪質な書き込みなどが発生しています。

また、これまで県が実施してきた「人権に関する県民意識調査」では同和問題に係る人権意識は高まってきているものの、依然として、同和地区の人を意識するとする回答が一定寄せられていることからも、同和問題に対する差別意識は今なお残っています。

こうした中で、この法律が施行されたことは、県が取り組んできています同和問題の解決に寄与するものであると考えています。

議員のお話にありました、法の施行によって、不公正な同和行政による特権と利権の復活、さらには新たな人権侵害を生み出すことになりはしないか、といったことについては、附帯決議においても、法に基づく施策の実施等にあたって配慮すべき事項として、具体的に掲げられておりこの附帯決議の内容に十分に留意して取り組んでまいりたいと考えております。

今後、この法律に定める国の施策の内容や国と地方の役割分担等が明らかになりましたら、県としても、附帯決議にも留意して、これまでと同様に、透明性や主体性を確保しつつ、同和問題の解決に向けてこの法律に基づく施策にしっかりと取り組んでまいります。

 

●米田県議 次に、17年前に発覚したやみ融資事件と県政改革に関わってお聞きいたします。

  特定の協業組合等への26億円ものやみ融資が明らかとなり、議会調査特別委員会でのべ59人の証人招致、のべ26人を地方自治法、刑事訴訟法で告発し、元副知事や現職県幹部が逮捕されるという、県政を揺り動かす大事件でありました。

  なぜこのようなことが起きたのか、県が特定の団体・企業や個人に対し、主体性のない判断をしたり、特別の便益を図ろうと対応するなど、行政の古い体質が深く関与していた、同和対策が団体対策や団体の幹部対策に陥り、県が同和対策の基本をゆがめ、極めて異常な判断をした結果である、と議会の調査で明らかにしています。再発防止対策では、県職員の意識改革の推進と公務員倫理の確立などとともに、・同和行政に対する主体性の確保・同和行政の透明性の確保等同和対策事業の見直しの推進、を提起しました。そして、高知県は全国に先駆けて同和特別対策から一般対策への移行、運動団体との話し合いの公開や、地域を限定した施策や調査の廃止など具体的な見直しを行ってきました。

◆今回の法律に基づく施策の実施にあたって、同和行政の見直し、堅持してきた具体的な対応など痛苦の体験を踏まえた県政改革の営みを損ねたり、ましてや逆行するようなことがあってはならないと考えますが、知事の見解を伺います。

 

■県知事 次に、この法律に基づく施策の実施にあたっての、同和行政や県政改革に関して、お尋ねがありました。

県では、特定の協業組合への融資事件を受けて、県政改革に向けての決意を表明するとともに、県と同和関係団体との話し合いにおいては、主体性と透明性を確保することで県民の理解が得られるようにするなどの見直しを行ってまいりました。

具体的には、話し合いを報道機関に公開し、その結果を県のホームページで公開するとともに、参加者の人数と話し合いの時間を制限し、短時間で効率よく行うこととしています。

今後、県としては、「部落差別の解消の推進に関する法律」に基づく施策の実施にあたっても、こうした取組を続けてまいりたいと考えております。

 

●米田県議 ◆また、県政史上最大の事件、やみ融資事件、その歴史と教訓を風化させてはなりません。

幹部職員はじめすべての職員に、その歴史と教訓を継承することなど絶えざる県政改革の推進に今後もどう取り組むのか、改めて知事の見解、決意を伺います。

 

■県知事 次に、過去の融資事件の歴史と教訓を継承することなど絶えざる県政改革の推進に今後もどう取り組むのかとのお尋ねがございました。

県では、特定の協業組合への融資事件を総括し、県政改革の方向性をより具体的なものとするための行動指針として、平成21年3月に「県政改革アクションプラン」を策定し組織として不適切な政策決定を防ぐこととともに、対話と実行を基本に県民本位の県政を推進するため、職員が委縮することなく公平・公正で前向きに仕事ができる組織・環境づくりに取り組むことといたしました。

事件の教訓を継承する取組につきましては、アクションプランの策定直後の平成21年度から、事件の経過や反省を踏まえた県の取組などをまとめた研修資料を作成し職員が、職位が上がる度に受講する研修のメニューに組み込むことで繰り返し学ぶことができるようにしております。

また、誤った決定や選択の動きに、組織として歯止めがかかるよう、意思決定のプロセス公表のルールの徹底、法令順守や費用対効果等の観点からの予算執行のチェックなどに取り組んでまいりました。

平成27年3月に策定した「県政運営指針」においても、この考え方を引き継ぎ、先ほど申し上げました取組が継続できているかについて、毎年度、PDCAサイクルによる点検を実施し、これまでの経緯や取組を風化させることがないよう取り組んでおります。

今後も、こうした取組を継続し、県庁が組織として公平、公正な意思決定を行うとともに、対話と実行を基本姿勢として、県民の皆様の期待と信頼に応え、真の意味での適切な政策判断ができる組織づくりを進めることで、県勢浮揚に取り組んでまいりたいと考えているところでございます。

 

【医療・介護問題について】

●米田県議 次に、医療・介護問題についてお伺いします。

今年は、「地域医療構想」の策定、国保都道府県単位化の準備、さらに5月の31本の法律を一括で強行採決した介護保険の改悪と大きな変動が続きました。さらに来年度は、診療報酬、介護報酬の6年に一度の同時改定の年であり、財務省が大幅なマイナス改定を要求しており、医療・介護崩壊に結びつくとの懸念、反対の声がだされています。医療、介護の基盤の確立・充実は、安心してすみ続けられる高知県を築く上で、また本県の雇用と地域経済にとっても極めて重要な役割を担っています。そこで県の基本姿勢、また具体的取り組みについて伺います。

財務省は10月25日の財政制度等審議会・財政制度分科会で、2018年の診療報酬改定について、薬価部分のみならず、本体部分も引き下げて、「2%半ば以上のマイナス改定」が必要との方針を示しました。また、同時改定となる介護報酬についても、マイナス改定の方向が打ち出されました。
 診療報酬は、2002年~08年にかけて4回連続でマイナス改定が行われ、各地で「医療崩壊」といわれる事態を引き起こしました。その後も、この事態を立て直す抜本的なプラス改定はなされていないまま、14年には実質マイナス改定、16年には再びマイナス改定が行われました。こうした状況の中で、11月8日に中医協に示された「第21回医療経済実態調査」では、16年度の一般病院の損益率はマイナス4.2%と「過去3番目に悪い数値」となり、厳しい実態が明らかとなりました。

 診療報酬の削減は、長時間勤務による医師の過労死、看護師の流産、切迫早産の多発など医療現場の過重労働が医師不足、看護師不足を加速させるという悪循環をもたらしています。中山間地の多い高知県では医療機関そのものが撤退するという深刻な事態につながっています。

 

 財務省は、国民負担の抑制を診療報酬引き下げの理由としていますが、診療報酬は医療機関経営の原資であり、患者に安全・安心の医療を提供するには、必要な人件費や設備関係費を確保できる技術料の評価が不可欠です。 診療報酬引き上げを国民負担と対立させるのは、国民と医師・歯科医師の分断を狙った意図的なもので断じて容認できません。

財務省は、1995年を100として診療報酬本体が「賃金や物価の水準と比べて、高い水準」と主張していますが、この比較方法は、どの年度を起点とするかで大きくかわります。日本医師会はアベノミクスが始まった2012年を起点とすれば16年度の診療報酬本体の水準は賃金や物価より低くなることを示し、データが「恣意的」と批判をしています。削減をいうなら、欧州諸国に比し1.5~2倍と高い日本の新薬の薬価(全国保険医団体や厚労省調査)にこそメスをいれるべきです。

 診療報酬本体引き下げは医療従事者の人件費引き下げにつながりかねず、年率3%の賃金引き上げを目指すとする政府の方針とも矛盾をします。

 介護についても、10月26日に示された介護事業経営実態調査結果では、16年度の全体の平均収支差率は3.3%で、前回調査(13年度7.8%)と比較して大幅に低下しました。

 全国老人福祉施設協議会は、10月5日に発表した「平成 28 年度 収支状況等調査結果 速報」の中で収支差率2.5%に低下し、02年の調査以来最低を記録し、赤字施設は05年以来最大の33.8%になり、「もはや限界 – プラス改定なければサービス維持も困難に」と主張しています。

マイナス改定によって医療機関や介護事業所の経営悪化、現場の労働環境の悪化がさらに進み、閉鎖や診療科の縮小などが起これば、患者さんや地域住民は医療へのアクセスが制限され、介護が受けたくても受けられないといった事態を強いられることになります。また医療・介護分野の就業者の多い本県にとっては、地域経済にも深刻な影響をあたえることは必至です。

◆来年度の診療報酬と介護報酬について、財政制度等審議会が示すマイナス改定の影響をどう把握されているのか。安心してすみ続けられる高知県づくりに逆行するマイナス改定は反対すべきではないか、併せて知事にお聞きします。

 

■県知事 次に、医療・介護問題に関し、まず、診療報酬・介護報酬改定の本県への影響ついてお尋ねがございました。

現在国においては、厳しい財政状況にありながらも、全ての団塊の世代が後期高齢者となる2025年度を見据え、国民の生活の質を向上させるとともに世界に冠たる国民皆保険制度等を維持し、次世代に引き渡すことを目指した取り組みが進められています。

このような状況の中、今月7日に開催されました社会保障審議会医療保険部会において、平成30年度診療報酬改定に当たっての基本認識として、人生100年時代を見据えた社会の実現、どこに住んでいても適切な医療・介護を安心して受けられる社会の実現、制度の安定性・持続可能性の確保と医療・介護現場の新たな働き方の推進などといった考え方が示されたうえで、改定の基本的視点と具体的方向性として、「地域包括ケアシステムの構築と医療機能の分化・強化連携の推進」や「医療従事者の負担軽減、働き方改革の推進」などが挙げられたところであります。

また、介護報酬の改定については、今月6日に開催されました社会保障審議会介護給付費分科会において、団塊の世代が75歳以上となる2025年に向け、国民1人1人が状態に応じた適切なサービスを受けられるよう、地域包括ケアシステムの推進、自立支援・重度化防止に資する質の高い介護サービスの実現、多様な人材の確保と生産性の向上などが基本的な考え方として挙げられています。

今後国においては、来年度の診療報酬や介護報酬の改定に向け議論が本格化することとなります。

現在示されている基本認識などは、本県が進める誰もが住み慣れた地域で、安心して暮らし続けることができることを目指した日本一の健康長寿県構想の方向性と一致するものであり、適切な報酬改定がなされることを期待するところです。

なお、来年度以降、改定された診療報酬や介護報酬による影響については注視していき、関係者の皆様のご意見などもお聞きしたうえで、必要に応じて全国知事会などと連携を図って、国への提言を検討したいと考えております。

 

●米田県議 次に、「地域医療構想」と「地域包括ケア」についてお聞きします。

この10月、高知県社会保障推進協議会が、県下の市町村と国保の都道府県単位化、地域医療構想、子育て支援策などについて懇談をおこなってきました。その中で市町村から、ベッド数削減について「高知県を狙い撃ちにしているのではないか。医療機関も心配している」「在宅をすすめるには訪問医療を増やさないといけないが、自治体独自では対応できない。霞が関は現場の実態がわかっていない」と厳しい意見が出されました。医療サービス体制についても「村には入院施設がなく、どうサービス体制を構築していくかが課題」〔日高〕、「室戸で看護師不足でベッドが廃止となり、田野まで来ている」「香美市には小児科がなく南国市まで行っている。唯一ある産婦人科は産科が近く閉鎖になる」「高度医療の病院は高知市に集中し、何ヶ月かに1度の通院の交通費が大きな負担になっている」などの声がだされています。また、行政区内の医療のニーズ、病床の動向を把握していない、と正直に話す自治体もありました。

 県の医療構想は、4つの2次医療圏ごとの病床数を示し、「急性期、回復期及び慢性期の機能区分については、できるだけ構想区域内で対応することが望ましい」との基本的考えのもとで構成されていますが、4つの医療圏に基づく病床数の判断だけでは、医療圏内での地域的な医療施設の偏在もあり、それぞれの地域に住む住民のニーズに対応できるということにはなりません。

◆今後、さらに市町村ごとに、必要な医療機能はどういうもので、どう確保していくか、県と市町村が十分連携した取り組みが不可欠だと思いますが、健康政策部長にお聞きをいたします。

 

■健康政策部長 まず、市町村ごとに必要な医療機能はどういうものでどう確保していくか、県と市町村が十分連携した取り組みが不可欠ではないか、とのお尋ねがありました。

地域医療構想は日本一の健康長寿県構想の目指す姿である、「県民の誰もが住み慣れた地域で、安心して暮らし続けることのできる高知県」を目指して、一人ひとりの生活の質を向上させる観点から、よりふさわしい療養環境を確保するとともに、地域における病院、診療所、薬局などの医療資源の効率的な配置と、医療、介護の連携を通じた効果的な医療体制の構築を目指すものです。

地域医療構想に掲げたあるべき医療提供体制の実現のため、二次医療圏と一致した4つの構想区域ごとに設置した地域医療構想調整会議において、地域の医療機関や介護事業所、市町村の担当者により、地域の各医療機関が担っている役割や病床の稼働状況の現状把握を行いながら、将来のあるべき医療提供体制についてご議論いただき、各々の医療機関が今後担うべき医療機能について検討し役割を分担していただくこととしています。

一方、議員ご指摘のように市町村ごとの医療資源の分布や地域医療に関する課題は多様であり、個別の市町村の単位で必要な医療の確保について解決困難な課題がある場合は、当該市町村と関係医療機関、医師会等の関係団体との協議に県が積極的に関与し、課題解決に向けて協働して検討していくことが重要と考えています。

これまでも個別に市町村からご相談をいただき、県と当該市町村、関係医療機関により地域医療の確保に向けた協議を続けている事例もあり、引き続き市町村と連携して地域医療の課題解決に努めてまいります。

 

●米田県議 地域医療構想は、政府が施設から在宅へという大きな流れの中で位置づけているものであり、地域包括ケアとメダルの裏表の関係にあります。

来年度は、市町村の第7期介護保険事業計画と県の支援計画がスタートします。第6期計画以後の計画は、「2025年に向け、第5期で開始した地域包括ケア実現のための方向性を承継しつつ、在宅医療介護連携等の取組を本格化していくもの」となっており、医療との関係は、ますます重要となります。

現在取り組んでいる第6期計画は「高齢者が地域で安心して暮らせる地域包括ケアシステムを構築するため、①在宅医療、介護連携の推進、②認知症施策の推進、③生活支援・介護予防サービスの基盤整備の推進、④高齢者の居住安定に係る施策との連携に取り組むこと」となっています。

◆県の第6期介護保険事業支援計画の総括と第7期の支援計画の問題意識について、地域福祉部長に伺います。

 

■地域福祉部長 まず第6期介護保険事業支援計画の総括、第7期介護保険事業支援計画の問題意識についてお尋ねがございました。

第6期介護保険事業支援計画におきましては、日本一の健康長寿県構想のもと、地域の実情に応じた地域包括ケアシステムの実現を目指し、在宅医療、介護連携の推進や認知症施策の推進などに重点的に取り組んでまいりました

その結果、各福祉保健所圏域において病院から円滑な在宅生活への移行を図る入退院時の引継ぎルールの策定や運用に向けた取り組みが始まりますとともに、すべての市町村で認知症の早期の発見と対応のための認知症初期集中支援チームが平成30年4月までに設置される見込みとなるなど着実に進捗しているものと考えております。

また、施設の整備状況につきましては、第6期計画の期間中に、特別養護老人ホームが233床や認知症高齢者グループホーム72床など居住系の介護保険施設367床の整備が進められているところでございます。

一方で、地域によっては地域包括ケアを担うべき医療・介護・福祉のサービス資源が十分ではない場合や、サービス間の連携が円滑でないといった課題などもございます。

このため、第7期計画におきましては、地域包括ケアシステムをより深化推進する段階と位置付け、これまでの取り組みを強化することに加え、県内に整備が進んでまいりました「あったかふれあいセンター」や「集落活動センター」などとの協働により、必要なサービスを確保するとともに、サービス問の連携を強化する、「高知版地域包括ケアシステム」の構築に向けた検討を、市町村や関係者の皆様とともに進めていく必要があるものと考えております。

今後、こうしたことを課題ととらえ、第7期計画の策定や第3期日本一の健康長寿県構想のバージョンアップに向け検討を深めてまいります。

 

●米田県議 介護保険による要支援の訪問、通所介護が市町村実施の「地域支援事業」へ移行させられました。同事業については、専門家のサービスを受けられる道は残ったものの、市町村の総事業費には、上限が設けられており、結果として、サービスの抑制・劣化、重度化による介護財政の悪化、事業者の撤退・雇用の場の減少など、住み続けられる地域づくりに逆行する懸念が極めてつよいこと、「基本チェックリスト」優先で、介護認定を受ける権利が侵害される危険があるなど、この場でも度々取り上げてきました。

さらに、来年度から介護認定率の減少、介護度の改善など「成果」によって市町村を通じて事業所に支払われる介護報酬に傾斜をつける「インセンティブ改革」が導入されます。

しかし、先行実施した自治体においては、介護保険、市町村事業からの無理な「卒業」が強要される事態があきらかになっています。

村瀬博・三重短期大学非常勤講師は「卒業」となった方の追跡調査の結果を国会の参考人質疑〔参・ 厚生労働委員会  2017年5月23日〕で以下のように述べています。

自費のサービス事業所に通っている人が約1割。卒業したものの重度化して介護保険の方へ戻ってきた方が2割。「自宅で元気に生活」していると回答した人が4割以上、しかしその実態は、ボランティアによる月1~2回の「サロン」では回数、内容とも不十分、また送迎がなくなり「行く手段がない」方が多数いることを明らかにしています。結局、「卒業」した方々は、元気に生活している状況ではなく、ほとんどがサービス復活の「待機者」であり、待機している間に重度化する方がかなり見える、と指摘をしています。そして、介護保険法に規定された目的・理念は、「介護が必要になったとしても能力に応じて福祉、医療サービスを利用し、自立して日常生活が営めるようにすること」にあり、介護度の改善だけが成果とする捉え方は介護保険法からの逸脱です、と強調をされています。

また、日本ケアマネジメント学会の服部万里子副理事も、市町村に介護度の改善目標、結果公表を義務付け“成果”が上がった市町村に財政的インセンティブを行えば、市町村が介護認定を厳しくする恐れがある、事業者も改善する可能性で利用者を選別することにつながると批判。

必要なサービスを受けられず、人としての尊厳が守れないことがあってはなりません。それは政府が掲げる「介護離職ゼロ」にも逆行します。さらに重症化がすすめば中長期的には介護保険財政にも悪影響を及ぼします。

◆県内の介護保険の「卒業」に関する状況とインセンティブ改革の問題点をどう捉えているのか。また、インセンティブ改革が導入された場合には、県として利用者のフォローアップをしっかり行い、先行自治体で発生したような切り捨ての防止をとることが必要と思いますが、地域福祉部長に併せてお聞きします。

 

財政的インセンティブの財源として介護保険事業への国の調整交付金の活用と、傾斜配分が、政府でも検討課題となっています。

 これでは介護保険法の目的どおりの「福祉、医療サービスを利用し、自立して日常生活が営めるようにする」取り組みをしているところは交付金が減額されます。違法な罰則といえます。限界集落や一人暮らしの高齢者が多い本県で、一律に「卒業」を求めることは、高齢者を社会的孤立に追いやる危険があります。

 そもそも調整交付金は、自治体の責めによらない要因による第1号保険料の水準格差の調整を行うものです。

◆介護保険における財政的インセンティブの財源に調整交付金を使うことは断じて許されないと思いますが、地域福祉部長のご所見をお聞きします。

 

■地域福祉部長 次に、介護保険の「卒業」に関する状況とインセンティブ改革の問題点について、導入された場合の利用者のフォローアップについて、また、財政的インセンティブの財源に調整交付金を使うことについてお尋ねがございました。

関連いたしますので併せてお答えさせていただきます。

介護保険制度は、高齢者の有する能力に応じ自立した日常生活を送ることができるよう、必要なサービスを提供することを目的としていますし、状態を改善するための支援は、高齢者のQOLの向上や尊厳の保持のためにも重要であると考えています。このため、県といたしましても短期、集中的に状態の改善を図るサービス事業所の育成に市町村とともに取り組んでいるところです。

この取組の中では、市町村に、サービス期間終了時には、必ず事業所などの関係者と話し合いを持ち、必要に応じてサービスを継続するなど、ご本人の状況をふまえた対応をしていただくようお願いしております。これまでのところ、無理にサービスを終了した事例はないと伺っているところですが今後も引き続き、フォローアップを含め慎重な対応を要請していきたいと考えています。

こうした高齢者の自立を支援する取組を積極的に実施する事業所や市町村にインセンティブを設けることは、その取組の推進に一定の効果があると考えています。

一方で、事業所へのインセンティブにつきましては、改善の効果を見込みやすい高齢者ばかりを集めることにつながるのではないかとの懸念なども指摘されておりますことから、介護報酬上の評価については、適正なサービス提供が担保されるよう国において、しっかりと検討していただきたいと考ております。

また、市町村へのインセンティブの付与につきましては、評価に際し、市町村の規模等によって不公平が生じないようにする必要がありますし、その財源としては、介護保険財政調整交付金とは別枠で措置すべきものと考えています。

こうした意見を、全国知事会を通じて提出しているところであり、引き続き国の議論を注視してまいります。

県と致しましては、今後も、高齢者が必要なサービスの提供を受けられることができるようサービスの調整を行うケアマネージャーの資質向上のための研修会の開催や、高齢者の状態に応じたサービスについて個別に検討を行います地域ケア会議の開催への支援などの取り組みを充実してまいります。

 

●米田県議 次に国保の都道府県単位化について伺います。

11月に公表された県の国保運営方針は、国保を「国民皆保険の最後の砦」とした上で、“年齢構成が高く医療費水準が高い一方で、低所得者や無職者の被保険者が多い”と、構造的問題にしっかり言及していること。また、医療費適正化についても「県民誰もの願いである健康と長寿を確保し、生活の質を向上させることで、結果として医療費の伸びを抑えることが重要です。生活の質の向上を図るためには、最後まで自分らしく生きられるよう本人の意向に沿った形で、医療から介護、施設から居宅に移行していく必要があり、療養環境の整備や転院、退院を支援する仕組みづくりに取り組みます。」と削減ありきでない基本姿勢を示しており、極めて重要だと思います。

知事会も国保の都道府県化の議論の中で「協会けんぽ並みの保険料負担率まで引き下げるには約1兆円が必要との試算がある」と保険料格差是正につながる財政基盤の必要性を訴えています〔国保新聞(2014/07/10〕。

◆国民健康保険制度改革における国と地方の協議の中で、国保の財政基盤の強化に向け、来年度から投入される約1700億円を含め約3400億円の公費の拡充が決定されていますが、国保の安定的な運営のためにはさらなる拡充を国に求めるべきと思いますが、知事の決意をおきかせください。

 

■県知事 次に、国民健康保険の都道府県単位化における国費の投入に関し、さらなる国への働きかけについてお尋ねがありました。

今回の国民健康保険制度改革にあたっての国と地方の協議において、全国知事会を始めとした地方団体は、国に対して、国民皆保険を支える重要な基盤である国保が、将来にわたって安定的に運営できるよう、国費の投入による財政基盤の抜本強化を求めてきました。

その結果、平成27年2月に行われました「国民健康保険の見直しについての議論の取りまとめ」において、約3,400億円の公費の披充が決定されました。

また、この議論の取りまとめでは、今回の改革後においても運営の状況を検証しながら、国保制度の安定的な運営が持続できるよう、国保制度全般について必要な検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとされるとともに今後も厚生労働省と地方との間で真撃に議論を行うこととされております。

このため、来年度以降、新たな制度による国保の運営状況を検証しながら、必要に応じ国に対してさらなる財政基盤の強化について、全国知事会を通じ、また市長会や町村会とも連携し働きかけを行い、被保険者にとってなくてはならない国保が、安定的に運営され持続可能な制度となるよう取り組んでまいります。

 

●米田県議 こども医療や福祉医療の自治体独自の窓口負担の軽減にたいする国のペナルティ、調整交付金の減額分について、市町村は一般財源からの繰り入れを行い、高い国保料の引き下げに努めています。

厚労省も減額分は「一般会計等による所要の財源措置を講じられたい」としてきました。[平成23年度国民健康保険の保険者等の予算編成に当たっての留意事項について(通知)」(都道府県民生主管部(局)長 宛)]

 これまでは国保は市町村の運営でしたが、来年度から県も加わるわけで、県としても高すぎる国保料を少しでも引き下げるために、市町村の努力にみあった一般財源での負担が求められるのではないでしょうか。

 少子化対策の一環として、子どもの均等割軽減に、県として取り組むことを提案したいと思います。政府も、来年度から未就学児に対する減額分を廃止しますが、それでうまれた財源は、新たな少子化対策に活用してほしいと自治体に要請をしており、新たな制度を工夫するには、よいタイミングと考えます。

◆課題解決先進県として、子どもを持つ家庭の負担軽減を図るために、子どもに係る国保料の均等割の軽減を全国に先駆けて実施し、国制度としての実現を迫っていく姿勢が問われていると思いますが、実施に向けて検討するつもりはないか、知事にお聞きをいたします。

 

■県知事 次に、国民健康保険料の子どものいる世帯への均等割の軽減の実施について、検討するつもりはないかとのお尋ねがありました。

国民健康保険では、医療給付に要する費用を賄うために被保険者に保険料の負担をお願いしていますが、所得や資産といった能力に応じた負担だけでなく、子どもを含めた全ての被保険者に保険給付による受益に応じた負担をしていただくこととされており、子どもの多い世帯ほど負担が増加することとなっております。

一方で、わが国の少子化の現状は、危機的な状況にあり、将来にわたって国や地方が活力を維持していけるよう、若い世代が安心して結婚し子育てを行うことができる環境を整えるために、幅広い分野での思い切った政策の展開が不可欠となっています。

このような状況から、全国知事会としては、子どもの多い世帯の負担軽減を図るために、国保料の子どもに係る被保険者均等割の軽減措置について、今回の国保制度改革に向けた「国民健康保険制度の基盤強化に関する国と地方の協議」において提案を行った結果、現行制度の趣旨や国保財政に与える影響等を考慮しながら引き続き議論していくとされたものでございます。

ご提案のありました国保料の子どもに係る被保険者均等割の軽減措置を全国に先駆け本県が実施することにつきましては、国保法で、軽減措置に関する政令の定めが必要とされていることなどから法令上問題があると考えられることや、軽減に伴い減収となる国保料に代わる多額の財源が課題となります。

このため、新たな軽減制度の創設は、国において議論をしていただく必要がありますので、今後においても全国知事会を通じ、制度導入について要望をしてまいります。

 

【ビキニ被災】 

●米田県議 次にビキニ事件に関してお聞きします。

10月6日、今年のノーベル平和賞に、核兵器禁止条約成立に貢献した「ICAN」(核兵器廃絶国際キャンペーン)が選ばれました。ノーベル委員会は、「核兵器がもたらす破滅的な結果を人々に気付かせ、条約で禁止しようと草分け的な努力をしてきた」ことを受賞理由としています。条約の前文には「ヒバクシャ(被爆者)」の苦しみと被害に留意するとの文言が盛り込まれ、第6条の「支援」の条項では、核兵器の実験による被爆者に対する医療や経済的支援が明記されました。

2014年9月議会で知事は「国に対して新たな資料に基づく科学的な検証を行うべきだと強く求めていく」と答弁され、県は2年間に渡って健康影響に関する相談会を実施してきましたが、それを契機に、2016年2月、被災船員と遺族の方々10人が船員保険の労災認定の申請を行いました。

◆ICANが成立を求めた条約は、医療的経済的支援を求めている多くの元船員と関係者にとって、大きな意義を持つものと考えるものですが、知事の認識をお聞きします。

 

■県知事 次に、ビキニ事件に関し、まず、核兵器廃絶国際キャンペーンが成立を求めた核兵器禁止条約は 医療的経済的支援を求めている多くの元船員と関係者にとって、大きな意義を持つものと考えるがどうか、とのお尋ねがありました。

核兵器の廃絶と世界の恒久平和を目指した今回の条約制定に向けた被ばく者の方々の活動に深く敬意を表します。

今回の条約では、第6条において、各国は核兵器の使用又は核実験の影響を受けた者に対して、医療ケア、リハビリテーション、心理的な支援や、社会的、経済的に受け入れられるよう言及されているところです。

今回の条約は、世界122の国、または地域の賛成で採択されており、世界中の多くの方々に、被ばくされた方々への支援の必要性が広く認識されたことは大変意義深いことだと思います。

また、我が国は賛成していませんが、条約制定をめぐる一連の取り組みやI CANのノーベル平和賞の受賞を契機として、日本国民の間にも被ばく者の存在とその方々への支援の必要性が再認識されたことは、元船員の方々にとっても大変心強く意義深いものと考えます。

 

●米田県議 さて、本県の要望を受けた厚労省は、900万円の予算を計上し、2015年1月から2016年5月まで、「独立行政法人放射線医学総合研究所」理事・明石まこと氏を代表とする「研究班」に、ビキニ水爆関係資料の線量評価に関する研究を委託しました。2016年5月に発表された報告は、元船員の被曝線量は極めて低く1mSv前後、健康に影響が出る被ばく量ではない、というものでした 。

1954年3月〜5月の間、ビキニ環礁での計6回の核実験による放射能総量は広島原爆の3220倍、それは広島原爆を8年と9ヶ月半、毎日爆発させた量で、一日後の核分裂生成物の放射能総量は6425億2300万キューリとなり、のべ1千隻に及ぶマグロ船が汚染し、汚染マグロは廃棄され、98隻が「死の灰」に汚染、等と記録される規模でした。にもかかわらず、明石氏を代表とする分析班の報告は「被曝したのは第5福竜丸だけ」ということになる、全く事実と科学的検証に耐えられない杜撰なものでした。昨年9月議会で健康政策部長が「もう一歩踏み込んだきめ細かな検証をしていただけないか、国に求めていきたい」と述べ、分析の継続を厚労省に要請した事は、至極当然な事であります。

労災申請に係り放射線影響判断にあたった「有識者会議」は、この明石まこと氏の厚労省研究班が担当しています。非公開とし議事録も作成されておらず、短期間で結論を出すべき労災認定であるのに、労災申請から1年10カ月たった今になっても見解が出せないままの異常な事態となっています。その理由を全国健康保険協会船員保険部は「有識者会議から放射線被災状況の判断が示されていないため」としています。

私どもは、明石氏が行った「ビキニ水爆関係資料の線量評価に関する研究」の収支簿を取り寄せました。そこに、本県を始めとした元船員の現状や病歴の追跡調査の項目や最先端で最新の研究結果を出した歯や血液を分析した研究者のもとへ行き意見を聞いた形跡は見つけられません。結局は、手元にある資料をまとめただけでの分析としか思えないものです。900万円の調査額は相当な調査が可能なものですが、明石氏への毎月支給の給与額だけがコンスタントに記されていることが目に残るものです。

さらに、明石まこと氏がかかわる研究については、新たな不信な事が発覚しています。

11月8日、会計検査院は、平成28年度決算検査報告で、「国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構」が行った、福島第一原子力発電所の事故関連者の被曝線量や関連分析・評価を行う事業について、10万人の事業予算でわずか645人しか収集しておらず、到底、疫学的研究を行う事は見込めないとわかっていたにも関わらず、事業費1億2919万円を受け取ったと指摘、不当事項と断定しました。

この研究開発機構は実は、先に指摘したビキニ水爆の線量評価を行った「独立行政法人放射線医学総合研究所」が名称を変えたものであり、明石まこと氏はその執行の長として位置づいている組織です。

◆厚労省は、県が「もう一歩踏みこんだ調査を」と要請したことに関して応じていません。しかし、これら一連の明石氏にかかわる不正な事象が出てきた以上、ビキニ水爆関係の線量評価の再調査・分析を求めるべきです。その際は、本県が相談会で招いた被ばく線量評価の第一人者で、血液(染色体)・歯(ESR)の検査を行っている広島大名誉教授・星正治グループや、国際学会で染色体分析からの線量評価を発表した元環境技術研究所の田中公夫博士、歯の分析データを持つ岡山理科大の豊田新教授などの名を挙げて求めるべきです。

「県としては被ばくされた船員の皆様方に寄り添っていくことが大事だと考えています」と議会答弁されていますが、その姿勢を堅持し、ビキニ水爆関係の線量評価の再調査を厚労省に要請すべきと考えるものですが、健康政策部長にお聞きします。

 

■健康政策部長 次に、ビキニ水爆関係の線量評価の再調査を厚生労働省に要請すべきと考えるがどうか、とのお尋ねがありました。

ビキニ環礁水爆実験による健康影響については昨年12月に、国に対して更なる検証を実施していただくよう要望しました。

現在も、国家賠償案件として係争中である状況に変わりはありませんが、県としては要望を続けていくことは大切なことだと考えていますので、国には改めて要望をしていきたいと思います。

なお、調査をどの研究者が行うかについては、国が決めることですが、ご指摘のあった方々の研究が行われていることについては前回の要望時に資料として国に提供しています。

 

●米田県議 労災保険の認定においても、また、岩手、宮城、神奈川、静岡、三重、和歌山、徳島、鹿児島などの被災船員・遺族を代表して高知の元船員が救済を求めている国家賠償請求訴訟においても、被曝量の科学的評価が求められ、それは人類と環境に対する放射能核汚染の影響を科学的に明らかにする重要な作業でもあります。

核兵器禁止条約第6条にある支援の対象は、広島、長崎は勿論、ビキニ、マーシャル、チェルノブイリ、福島、その他ネバダ、クリスマス諸島、モンゴル、ウイグル、チベットなど核実験場にある人々であり、地球規模に広がっています。

◆核実験による被害を訴えて、核兵器禁止条約第6条が謳う支援の実効ある対応を求める被災船員がいる本県において、核兵器の使用や核実験がもたらす脅威を明らかにするサミットやシンポジウムなどを開催し、二度とビキニ水爆のような被爆者を出さない運動を率先して行うべきと考えますが、知事のご所見を伺います。

 

■県知事 次に、核兵器禁止条約第6条がうたう支援の実効ある対応を求める被災船員がいる本県において、核兵器の使用や核実験がもたらす脅威を明らかにするサミットやシンポジウムなどを開催し、二度とビキニ事件のような被ばく者を出さない運動を率先して行うべきではないか、とのお尋ねがありました。

核兵器の廃絶は、国家間で取り組むべき重要な課題であり、世界人類共通の願いであると考えております。

本県では、核兵器の廃絶を強く訴え、全面撤廃を推進するため、県議会において、昭和59年には「非核平和高知県宣言」が、平成9年には「高知県の港湾における非核平和利用に関する決議」がなされております。

非核平和高知県宣言にありますように、「あらゆる国の核兵器の廃絶を全世界に強く訴え、核兵器の全面撤廃と軍縮を推進し、もって、世界の恒久平和達成を目指すもの」でありこの姿勢に変わりはございません。

核実験等による健康影響については、平成26年度から28年度にかけて、県内3か所で健康相談会を開催しており、その中で県外講師等をお招きし講演していただいているところであります。この講演会においては、元乗組員だけではなく、家族遺族、県内市町村関係者の方々にも参加いただきました。

今後とも、県として関係者の皆様から要望があればお話をお聞きし、協力できる点があれば対応していきたいと考えており、シンポジウムなどを行う場合には、何らかの形で支援することも検討してまいります。

県といたしましては、核廃絶に向けた努力というのは積み重ねていくべきだと考えており、引き続き、非核平和高知県宣言等を尊重しながら、平和行政をしっかり推進してまいりたいと考えております。

 

【戦争遺跡の保存・活用について】

●米田県議 次に、戦争遺跡の保存と活用について伺います。

 戦争体験を語り継ぐ世代も少なくなる中、戦争の実態を後世に伝える重要な役割は人からものへと移りつつあります。その物、遺跡や遺品の保存も十分な保存がされておらず、後世にどう残し伝えていくかは、大きな課題となっています。

 先日、私たち県議団は高知県護国神社に伺いました。故西村幸吉さんが、パプアニューギニアの戦死者の遺骨収集で見つけ、持ち帰ってこられた遺品が納められているとのことで、その貴重な遺品を見せていただくためでした。何発もの銃弾が貫通した飯ごう、真っ二つに割れた鉄兜、泥まみれになっている軍靴、どれほどすさまじい戦場だったのか、胸に迫る、物言わぬ「証人」に圧倒されました。しかし、これまで展示されたこともなく、保存状況も十分ではありません。

◆県内には、こうした貴重な遺品、遺物が保存、展示されることなく消滅する危機的状況となっています。県として、どのような認識をもたれているのか、文化生活スポーツ部長に伺います。

 

■文化生活スポーツ部長 戦争の貴重な遺品や遺物が保存、展示されることなく消滅する危機的な状況となっていることへの認識について、お尋ねがございました。

戦争の遺品や遺物を、将来にわたり保存し、展示公開することは、本県の歴史を次世代に引き継いでいくうえで重要なことであると考えております。

県ではこれまでも、県立歴史民俗資料館におきまして、戦時資料について収集、保存を行いますとともに、常設展示室の近代史コーナーで展示公開も行ってまいりました。また、平成27年度には、県の遺族会を通じ、戦没者ご遺族の方々から、戦地からの手紙や軍服、勲章など266点の資料を寄贈いただき、その活用を図っているところでございます。

今後におきましても、本県の戦争の歴史を後世に伝える重要な資料の収集・保存や、展示公開に努めてまいります。

 

●米田県議 さて、先の9月県議会で吉良県議が、旧陸軍歩兵第44連隊の講堂や弾薬庫の保存について質問いたしました。それに対し知事は、「県が取得するには高いハードルがある」としながらも「慎重に判断したい」そのため、「当該土地については売却手続きがすすめられようとしている段階にあり、検討可能な時間は限られているのではないかとの危惧がございますので、その点については財務事務所に要請したい」と答弁されました。そして11月1日に高知財務事務所に、民間への売却手続きを凍結するよう文書での申し入れをされ、財務事務所からは、11月16日入札公示予定をいったん留保するとの回答がよせられ、現在に至っています。

この間の県のご努力に敬意を表したいと思います。そこで、何点か伺います。                   

◆まず、県は、今後県文化財として指定する価値があるかどうかを専門家などの意見を聞き判断するとしていますが、具体的にどのような対応をされているのか。これまでの意見聴取ではどのような意見が出されているのか、教育長に伺います。

 

■教育長 旧陸軍歩兵第44連隊の講堂や弾薬庫について、県文化財として指定する価値があるかどうかを判断するためにどのような対応をし、これまでどのような意見が出されているのかについてお尋ねがございました。

県教育委員会といたしましては、先程の知事の答弁にもございました通り、旧陸軍歩兵第44連隊弾薬庫等の文化財としての評価については、県文化財保護審議会の建造物、史跡を所管する部会の意見をお聞きして判断したいと考えており、現在は議論の材料となる情報収集を行っているところです。

本物件につきましては、高知市が調査を実施しておりますことから、まず、高知市からこれまでの経過をお聴きし、調査に関わった専門家から調査の内容を、聴き取りをおこなっております。

また、同様の施設に関する全国的な文化財としての指定状況や施設の現況等について把握するため、明治期の国土防衛史を研究されている専門家から全国的な状況をお聴きするとともに、全国の都道府県に対して照会を行ったところでございます。

今後、収集した情報を整理した上で、年内に県文化財保護審議会の部会を開催したいと考えております。

 

●米田県議 ◆「旧陸軍歩兵第44連隊の弾薬庫等を保存する会」の方々が、知事への申し入れを提出した際、副知事からは、「高知大学や国とも話をしてみたい」とのお話をいただいたと伺っていますが、その後こうした話し合いの場が持たれたのか、この点は副知事に伺います。

 

■副知事 「旧陸軍歩兵第44連隊の弾薬庫等を保存する会」との面談後の話し合いの状況についてお尋ねがございました。

旧陸軍歩兵第44連隊の弾薬庫等につきましては、現在、教育委員会において、高知市が行った調査結果の精査や全国の状況調査等の情報収集を行っており、こうして収集した情報を整理した上で、県文化財保護審議会の部会を、先程教育長がお答えしました通り、年内に開催して文化財としての価値についてご意見をいただくとのことですのでその結果を踏まえ、関係機関と協議を行っていきたいと考えています。

 

●米田県議 ◆全国的に見ても貴重な建物、戦争遺跡であることは明確で、どのように保存、活用するかを巡ってはもう少し検討協議を行い、精度を高める必要があり、県として主体的な保存活用のために取り組むべきと思いますが、知事にお伺いをいたしまして第一問といたします。

 

■県知事 最後に、旧陸軍歩兵第44連隊の講堂や弾薬庫の保存活用についてお尋ねがございました。

旧陸軍歩兵第44連隊の弾薬庫等の保存活用につきましては、9月議会でもお答えしましたとおり、県が文化財を取得するのは極めて限られたケースであることや広い土地全体の活用を考える必要がるといったことを鑑みれば、県が土地・建物を取得してまで行うには相当ハードルが高いと考えますが、まずは、文化財としての価値について専門家の意見をお聞きして、慎重に判断してまいりたいと考えております。

このことについては、教育委員会において、年内に県文化財保護審議会の部会を開催して文化財としての価値についてご意見をいただくこととしていると聞いておりますので、その結果や関係機関との協議を踏まえて考えてまいりたいと考えております。私からは以上でございます。

 

【第二問】

●米田県議 それぞれご答弁ありがとうございました。再質問をさせていただきます。

 朝倉・44連隊の弾薬庫等の保存・活用についてですが、おととい9日に、旧陸軍歩兵第44連隊弾薬庫等の保存と活用を考えるシンポジウムに参加させていただいて、本当に改めてその価値の大きさというか、全国にないそういうお話をお聞きしてなんとしても、という思いを強くしています。その中で、様々な意見が出されましたが、保存・整備することによって、歴史に向き合い学び伝える場として第二の生命が宿る、得ることが出来るということが語られていましたし、埋蔵文化財の専門家です。また、建築物を調査された方は、様々な考え方の人を含めて、未来に備えて、遺跡を維持することが、今、大切ですという訴えをされていました。

 知事が言われたように、確かに、ハードルが高いということかもしれませんが、真摯にそのひとつひとつを今、取り組みをされているので、敬意を表したいと思います。

 同時に、ですね、ぜひ、知事、また教育長、現地も見ていただいて、十分、百聞は一見に如かずではないですが、実感を持って、その遺跡・史跡がどうかということを、自らの目と足できちんと見ていただきたいなというふうに思いますので、その意思についてどうかということをお聞きしたいと思います。

 二つ目は、農業被害のことで、新しく収入保険制度というものがありますけど、聞くところによると、青色申告をされた方しか、対象でないということになると、また、一部の人しか保険の対象にならないと、大体2~3割というふうに聞いているのですがそういう問題点もあれば、改善をまたしていかないといけないんじゃないかと思うんですけれど、その点はどうでしょうか。その2点お伺いします。

 

■県知事 先ほど、ご答弁申し上げた通りでございますけれども、私どもとしてもかなり丁寧な対応をさせていただいておるつもりでございますが、いずれにしてもやはり、この文化財としての価値がどうかというところが非常に大きなポイントになりますので、その点について、文化財保護審議会の部会が開催されますから、そのご意見を聞いてですね、判断させていただきたいとそのように思います。

 ちょっと、私現地をお伺いできるかどうか、スケジュール等ともございますので、もし、可能であれば、お伺いできればと思いますが、ちょっとまだわかりません。

 

■教育長 現地につきましては、文化財保護審議会のご意見をいただく際に判断する材料になるとは思いますので、できるだけ現地を確認させていただきたいとそのように思います。

 

■農業振興部長 収入保険制度につきましては、今、農業共済組合とかが中心になりまして、制度の周知を図っているところでございます。お尋ねがございました加入の要件でございますけれど、基本的にはですね、5年以上の青色申告実績がある方が対象でございますけれど、制度加入時につきましては、緩和措置がございまして、一年分あれば加入できるという取扱いもございます。そういったことも含めまして、また、農業者の皆様には、周知をはかっていきたいというふうに考えているところでございます。

 

●米田県議 ありがとうございます。農業被害を受けた方は本当に大変な深刻な状況にありますので、ぜひ、部長が言われたように、寄り添って、解決のために、軽減のために、ぜひまた尽力をお願いいたします。

 できれば、文化財審議会の意見を聞くとともに、現地もできたら知事もわからないけれど、できたら行くと、教育長も行かれるということで、ぜひ、現場をみていただいて、本当に文化財としての価値があるかどうか耳で聞くと同時にやっぱり、体感をしていただきたいなということで重ねて要望しておきたいと思います。

 最後に、ビキニの問題で知事は、シンポジウムとかサミットをする場合に、支援をしますといわれましたけれど、支援ももちろん、していただきたいんですが、私が提起したのは、県として、高校生の津波サミットみたいに本当にビキニの被災で自らの健康と、人生を取り返そうとして頑張っている高知県の人々のそういう思いをくんで、県行政としてイニシアをとって、そういうサミット、シンポジウムをこの高知県で、ですね。ぜひ先進的な取り組みをしていただきたいということを重ねて、要望して私のすべての質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。