議会報告

  • 2017年12月25日
    2017年12月議会 「職員の退職手当に関する条例の一部を改正する条例案」への反対討論 吉良富彦県議(2017.12.21)

●吉良議員 私は日本共産党を代表し、職員の退職手当に関する条例の一部を改正する条例案に反対し、修正案に賛成する討論を行います。

本条例案は、2月1日以降に退職する職員の退職手当を平均約79万円引き下げるというもので、本年度末退職予定者の既得権を奪う暴挙といわざるを得ません。すでに2012年の条例改編で400万円もの引き下げを受け、さらに今回、一方的な減額を行う事は公務労働者の生涯設計に大きな影響を及ぼすものです。

  退職手当は、人事院の見解にあるように、退職後の生活を支える重要なものであり、職員は現行の退職手当の支給水準を見込んで生活設計を立てています。年金支給年齢の引き上げもあり、民間は退職後フルタイム再雇用だとしても、公務の場合には、定員管理上短時間の再任用などが主であり、退職後の生活に不安を抱えているうえに、この不利益変更は、断じて許されません。

今回の見直しの根拠としたものは、法的に民間準拠とは定められていない退職手当に関して、人事院が政府の求めに応じて行った民間との比較調査です。それは法的な権能をもった勧告ではなく、単なる意見に過ぎません。退職手当は、最高裁判例で賃金とされ、「公務員の退職手当法詳解」でも、賃金の後払い的な性格を有しているとしています。人事院も見解で、退職給付は職員の退職後の生活設計を支える勤務条件的な性格を有していると述べ、退職手当の労働条件性を認めています。労働条件としての退職手当を、法的根拠もなく、労働組合との合意もなく、一見解が出たからと、政治主導で一方的に不利益変更を決めることは、公務労働者の権利侵害であり、断じて認めることはできません。条例案は撤回すべきです。

さらに問題なのは、雇用保険による退職給付適用がないという公務の特殊性を無視した比較調査方法です。官民比較調査は、公務員にはないが民間には支給される雇用保険による退職給付をカウントせずに、退職手当額だけで比較して、78.1万円公務員が上回るとしています。実際に老後の生活、退職後の生活を考えた場合に、民間であれば、事業主負担も含めて、雇用保険に基づく退職後の手当の支給という形が見込めるのに、公務の方にはないという、その点は、退職後の生活保障との観点では本来比較の対象になり得べきことです。しかし、こういった点が比較検討されておらず、しかも、厳しい再就職規制と退職後も課される守秘義務など、公務の特殊性を踏まえた官民比は較になっていないこの調査結果は不当であり、それに基づく条例案は認めることはできません。

政府は退職手当の性格を「賃金の後払いあるいは生活保障という側面もあるが、勤続報償という性格が一番強い」として、長期勤続への報償だと言う姿勢です。そうならば、労働条件として扱っている民間の退職手当と比較を行う事自体、そもそもが、筋が通らず調査は無効であると言えます。有効と強弁するならば、政府も「労働条件」だと認めるべきでしょう。何よりも5年ごとの一方的な「官民均衡の確保」の閣議決定による『見直し』は、労働権の侵害であり取りやめるべきものであり、それを無批判に追従する県の姿勢を認めるわけにはまいりません。

これまで本県は、地域の民間給与との均衡をはかるため毎年の公民格差にもとづき給与や期末勤勉手当など見直し、本年度、官民格差調査の対象とした平成27年度の翌年、平成28年度、国が月例給0.17%引き上げても据え置きにするなど国家公務員の引き上げを下回る水準にあります。こうした経緯と給与実態を全く考慮せず、一方的に国と同じ調整率引き下げ改定を行うなど、断じて容認できません。

今回の条例案による不利益は、年度途中退職手当額に止まらず再任用希望職員に及びます。手当削減という身に覚えのない不利益を回避するため、条例案の定めた2月1日の実施日までに退職という道を選んだ職員は、年度末での定年退職という再任用受験資格を失ったので、この12月に発せられた再任用合格通知は取り消され、退職後の生活の支えが奪われるという重大な事態に陥ります。辞めざるを得ない原因を作っておいて辞めるとペナルテイーを課すような理不尽なことは許されません。 

私どもは、条例案の撤回を求めるものですが、この様な事態を鑑み、少なくとも、実施期日を来年度以降へと修正するよう強く求めるものです。

県は、今回の条例実施を年度途中の2月1日とした理由を、国は1月1日としており4月からとなると国家公務員を上回る退職手当となり県民の理解が得られないからだとしています。しかし、2012年の退職手当削減実施日を同様の理由で3月1日としたにも関わらず、県内のほとんどの市町村は新年度4月1日からの実施とし、年度途中退職者の不利益を回避する措置をとりました。これへの批判の声は上がっておらず全市町村民、すなわち県民の理解をえたという事実があります。また、他県でも年度内ではなく、4月1日施行した団体が22県あったにもかかわらず何の不都合も生じていません。

今回の改訂にあたっても9団体が4月1日実施としており、また、県内市町村議会での条例案は出されておらず、前回と同様の実施時期になると予想されます。施行を4月1日とし、年度当初に予定された退職手当額416人の退職予定者に支給し、再任用の既得権を守るよう求めるものです。

以上、職員の退職手当に関する条例の一部を改正する条例案に反対し、修正案に賛成する討論といたします。同僚議員のご賛同をよろしくお願いいたします。