議会報告

2012年2月定例会 中根佐知議員

議発第10号、米軍機の低空飛行の中止を求める決議(案)について、日本共産党を代表して提案理由を述べ、議員各位の賛同をお願いするものです。
 平成元年以来、高知県物部川及び吉野川流域において、米軍機による夜間飛行や低空飛行訓練が繰り返されてきました。なかでも、平成6年10月の早明浦ダム、平成11年1月土佐湾沖の米軍機墜落事故は、県内外に大きな衝撃と反響をもたらし、高知県議会としても厳しい抗議と訓練中止を米軍に要請するよう、政府への要請を繰り返してきました。 これまで平成3-8年知事名で7回の中止要請、平成10年総務部長名で1回、県議会としても平成2-7年の間に計5回の中止要請。昨年末12月28日には嶺北地域の4町村の首長連名という異例の形で中国四国防衛局に中止要請書を提出したことに続いて、今年1月には外務大臣と防衛大臣に高知県知事の名で中止要請をしたところです。
 全国知事会は、国の施策や予算に関する提案・要望時に毎年、低空飛行に対する中止の要請を政府に出しており、不安と怒りは多くの県にまたがっています。
 各地で要請や抗議が繰り返されるにもかかわらず、超低空を含む低空飛行訓練が行われ、高知でも昨年来飛来回数が増す中で、再び一大惨事が発生するのではないかと、高知県民は言い尽くせない不安と恐怖を抱えて生活しているのです。
 2008年1月11日、広島県知事は、広島市中心部に飛来した戦闘機の低空飛行訓練について、政府を介さず直接、アメリカ合衆国駐日本国特命全権大使と在日米軍司令官にあてて、抗議文を送っています。その中には、99年の日米合同委員会で合意されている、「低空飛行訓練については、安全性の確保及び住民の影響軽減のための具体策について、人口密集地域に妥当な配慮を払う」等の6項目や、「騒音が発生しやすい気象条件の時は、広島市上空の飛行を回避するよう努めるよう岩国基地航空管制官に指示を出す」という2004年の米海兵隊岩国航空基地司令官宛の抗議文に対する返書にも反していると厳重に抗議し、低空飛行訓練を即時中止するよう、強く抗議要請をしています。
 日本国民は、米軍基地があれば、被害があるのは仕方がないと考えがちです。しかし、アメリカ国内では、「基地周辺の市民に被害を与えて基地は存在できない」とされています。また、大統領の軍隊として特別な地位があり、アメリカの連邦環境法や州の環境法に縛られてなかった米軍も、海外も含めて基地の環境汚染が見つかったのを契機に、1996年に国防総省指針4715,5号を策定し、日本ではこれが日本環境管理基準になり、これまで8回にわたって改訂されています。2000年には「環境原則による共同発表」が日米で行われ、基地に隣接する地域住民や軍の関係者と家族の健康と安全を確保することとし環境分野の建設的協力を継続することの重要性が強調されています。「日米関連法令のうち、より厳しい基準を選択するという基本的な考えのもとで作成される日本環境基準に従って行われ、2年ごとに更新するための協力を強化する」とかかれていますが、アメリカの基準は日本の国民向けには全く守られていません。
 騒音問題でもアメリカでの米軍機の離発着は周辺住民に飛行機の姿がほとんど見えないほど配慮されており、訓練は海岸線であれば市街地から80キロ離れた洋上で行われているといった状況です。
 海外では、多くの場合、野生動物の保護のために人が生活していないところでも低空飛行を禁止しています。アメリカ国内でも、基本的に禁じられており、グアムのアンダーセン空軍基地では夜間飛行訓練が、モグラのような夜行性動物の生息に影響を与えるからと禁止される状況がある中で、日本では低空飛行が繰り返されているのです。実態からみれば、日本人は野生動物やモグラ以下の扱いを受けていることになります。
 また、米軍機は、日本の航空法の適用化にはなく、守る必要がない状況になっており、世界でも日本だけが米軍の無法地帯になっているような状況です。
 近年、日本一の森林率で中山間地の多い高知県では、防災・救急救命活動を行う県消防防災ヘリ、ドクターヘリの活動が頻繁となり、地域住民の命を支えています。 ヘリコブター離着陸場適地調査でリストアップされている場所は今でも279箇所を数え、救急救命と防災にとって大きな期待と任務を背負っています。その活動中に突然米軍機が飛来する状況では、安心して命を守る仕事に取り組むことができないという、あらたな状況での危機感も大きくひろがっています。
 いのちの安全を脅かす低空飛行訓練をただちにやめ、アメリカ国内の基準や国防総省の指針、また日米の共同発表にのっとり、高知県民の不安を取り除くよう要求することや、県民の生命、財産、平和と安全を守る立場から、具体的に抗議・要請を続けることは、今、大変重要になっています。
 県議会として、知事の県民の生命を守る姿勢を後押しし、県民が安心して空を見上げることが出来るよう、力を尽くしましょう。在日米軍に対して改めて厳重に抗議するとともに、ただちに低空飛行訓練の中止を求めるために、決議を上げ、姿勢を示そうではありませんか。願いを込めて提案説明といたします。