議会報告

  • 2012年06月27日
    消費税問題、オスプレイ、原発問題、新エネルギー防災対策、高知県長寿県構想について、生活保護行政、介護保険制度 について

2012.6月議会 代表質問 中根佐知 議員

質問項目

  1. 消費税増税
  2. オスプレイ配備について
  3. 原発の安全性
  4. 新エネルギー
  5. 防災対策について
  6. 長寿県構想
  7. 生活保護行政
  8. 介護保険制度
  9. 第二問

■中根佐知 議員

日本共産党を代表して質問を行います。

1.消費税増税

3党合意による消費税増税について、国民世論の多数も反対しており、地元紙をはじめ地方紙の多くの社説も公約放棄、増税先行、民意無視と批判しています。私たちは、消費税増税にたよらず、社会保障の充実と財政再建を行う方策を提言し、県民との対話を重ねてきましたが、引き続き増税を実施させないために奮闘することを表明して質問に入ります。

政府は、消費税増税は「全て社会保障経費に充てる」と説明をしてきました。現在社会保障費は、34.8兆円であり、増税分13.5兆円を足すと48.3兆円になるはずですが、5月22日の国会質疑で、厚生労働大臣は、増税後の社会保障費について「41.3兆円」と答弁しました。そして「7兆円はどこに消えたのか」との質問に、副総理は、赤字国債分などに「置き換わる」ことを認めました。以下、知事に伺います。
 国民、県民に説明してきた内容と違うことについてどう認識しているかお聞きします。また、増税だけ先行するやり方が、国民の理解を得られると思うか、お聞きします。

知事は、「この改革が経済や暮らしにマイナスの影響を与える側面も考慮する必要がある」として、増税の実施の前提として、地域経済状況ふまえることや逆進性対策など全国知事会の立場を説明してきました。
 知事が説明してきた実施の前提を欠いているのでありませんか。あわせてお聞きします。

■尾﨑正直 県知事

中根議員のご質問にお答えをいたします。
 消費税の増税分の使途についての認識、増税だけが先行するやり方について及び増税実施の前提を欠くのではないかとのお尋ねがありました。関連しますので、併せてお答えをいたします。
 消費税率引き上げによる増収分につきましては、平成24年2月17日に閣議決定されました「社会保障・税一体改革大綱」において、「その使途を明確にし、官の肥大化には使わず全て国民に還元し、社会保障財源化する」とされておりまして、その全額が社会保障制度の充実及び安定化の財源であると認識しております。
 平成24年5月22日の国会における「いつまでも赤字国債で社会保障費を賄うということは続けられませんので、その部分の置き換わりというものもある」という岡田副総理の答弁につきましては、社会保障費のうち、これまでの赤字国債で賄わなければならなかったものが、消費税の増収分によって賄われますことにより、将来に負担をまわさず、安定的に社会保障が運営できるようになるということを示したご発言はないかと考えております。

また、我が国の将来の社会保障制度は、しっかりとした財源に裏打ちされた持続可能な制度としての再構築が必要であり、社会保障改革と税制改革は一体で議論されるべきものと考えます。

今回3党により合意されましたものにつきましては、法案に反映され今国会で審議されると承知しております。また、公的年金制度や高齢者医療制度など社会保障制度の持続可能性の確保と機能強化にはなお、多くの課題が残されておりますが、これらについても有識者とともにさらに議論のうえ、社会保障制度改革推進法の施行後1年以内に必要な法制上の措置をとることとされていると承知しております。今後、スピード感をもってしっかりとした議論が積み重ねられることを期待をしております。

消費税の引き上げに際しては、私がこれまでも申し上げてきましたように、第一に地域経済状況を踏まえた実施時期の判断、第二に消費税の逆進性対策、第三に地域主権改革をはじめとする国の徹底的な行政改革、の3条件について、対策が講じられることが必要であるということでありますが、以上の条件に関連したことがらについてこの度3党による合意がなされていると承知しております。
 消費税増税は、国民生活に大きな影響を与えるものでありますので、今後も引き続き、国会での充分な議論が行われ、その過程で国民や県民の皆様に丁寧な説明を行っていくべきと考えておりますし、地方に影響を及ぼすものにつきましては、「国と地方の協議の場」などを通じて、主張していく所存でございます。

■中根議員

消費税増税は、高知県が進める住み続けられる地域づくりに困難をもたらします。

医療機関の保険診療は非課税となっており、医療機関は医薬品や診療材料、医療機器の購入にかかった消費税を転嫁できず、損税として負担をしています。全国自治体病院協議会が緊急に実施した調査では、負担額は、平均で年間1億円以上、500床以上の病院で3億円以上となっており、同会会長は「現在でも経営は青息吐息であり、このままでの増税では経営への影響が大きすぎてなりたたない」と発言をしています。
 日本医師会のシンポジウムでも、損税は年間で1診療所平均202万円、1病院2250万円になり、消費税増税は死活問題となると述べ、特に、高度な医療機器や医薬品を多く使う急性期病院と、救急医療の受け入れが多い病院ほど、消費税の影響が大きくなると指摘をされています。
 医療センターや県立病院の負担の実態と増税による影響をどうなるのか。また、県下の医療全体への影響についての認識をお聞きします。

増税分を価格に転嫁できず、店舗の廃業や過疎地域のバス路線の撤退の加速が危惧されます。国土交通省の調査では、乗り合いバスで、消費税を運賃に転嫁できたのは、導入時に5割、5%への増税時には3割にとどまっています。
 「買物難民」が増大する危険があるのではないか、増税の影響と対策についてお聞きします。

■知事

次に、医療機関が負担している控除対象外消費税、いわゆる「損税」に関して、高知医療センターや県立病院の負担の実態と、消費税が増税された場合の医療全体への影響についてお尋ねがありました。
 医療設備や医療機器などの費用には消費税が課税されている一方、保険診療が非課税であり、医療機関はその消費税を医療費に転嫁できないために、控除対象外消費税が発生をいたします。
 それに対する措置として、国では、診療報酬に消費税分の上乗せを行っていますが、医療関係団体からは充分でないとの指摘もありますため、今般の消費税率の引き上げの動きの中でも適切な対応がなされるべきだと考えております。
 高知医療センターと県立病院の平成22年度決算では、支出に係る消費税額がそれぞれおよそ3億9千万円、2億8千万円となっておりまして、消費税率が引き上げられた場合はさらに多額になりますため、診療報酬の改定などにより十分な対応がなされなければ、病院の経営にも影響はあるものと考えられます。
 また、県内の他の医療機関についても、同様に一定の影響はあると思います。
 この問題につきましては、厚生労働省が、今月20日に、中央社会保険医療協議会に「医療機関等における消費税負担に関する分科会」を立ち上げまして、医療関係団体の代表者も参加して診療報酬改定における対応の検討を始めたところであります。
 県といたしましても、医療機関に過度の影響が生じることがないよう、こうした検討の動向を注視していきたいと考えております。

 次に買い物弱者に対する増税による影響とその対策についてのお尋ねがありました。
 消費税の増税は、県民生活に少なからず影響を及ぼし、それに伴って、中山間地域の零細な事業者への影響も考えられなくはありません。
 他方、今回の増税で、社会保障の充実や安定化が図られ、現在、中山間地域で暮らしている方々の生活が守られるようになるといった側面もあります。

もとより、人口の減少や高齢化の進行といった影響により、中山間地域の事業環境や生活環境は、厳しい状況にありますことから、引き続き住み慣れた地域で安心して暮らしていくための生活環境を維持していけますように、現在、実施しております生活支援の取り組みなど中山間地域の総合対策にしっかりと取り組んで参りたいと考えております。

2.オスプレイ配備

■中根議員

米海兵隊垂直離着陸輸送機MV22オスプレイは、開発段階から墜落死亡事故が多発し、今年に入ってからも4月にモロッコ、6月にフロリダ州で墜落事故を起こしています。オスプレイの配備が計画されている沖縄では、県議会をはじめ全ての自治体で、配備反対の決議があがっています。そのオスプレイは、沖縄に配備後、本州北部や四国、九州で低空飛行訓練を計画していることが明かになりました。その結果、訓練は現状より約21%増加すると想定されています。本県は、早明浦ダムへの墜落事故を経験し、最近も防災・ドクターヘリの運航への危険性から、県としても危険な低空飛行訓練の中止を求めてきました。
 オスプレイは、エンジン停止時に緊急着陸するためのオートローテンション機能がなく、日本の航空法では飛行が禁止されている機体です。 
 関係自治体と連携し、オスプレイの配備反対を、国に強く働きかけるべきだと思いますが、知事にお聞きします。

■知事

次に、オスプレイの配備に関しまして、関係自治体と連携し、オスプレイの配備への反対を国に強く働き掛けるべきというお尋ねがございました。
 日本の防衛に関わるオスプレイの配置につきましては、問題視をされていますオスプレイそのものの安全性について、国が国民に対して説明責任を果たすべきと考えております。
 配備・搬入が予定されています沖縄、山口の両県はもちろん、飛行訓練が行われる予定の本県などの関係県、さらには全国民に対して、国が責任を持って説明すべきであると考えますが、現段階では、今年4月のモロッコでの事故や今月14日のフロリダ州における事故につきましては、原因の十分な検証及びその対策がとられているとは言い難い状況だと考えています。
 国は、防衛省内にオスプレイの安全性を専門的に評価するチームを設置し、米国任せではなく、独自で事故を検証する姿勢を示していますので、是非とも国民が納得できる明快な説明をするよう強く望みますし、本県に対しても丁寧に説明いただくよう、既に防衛省にも伝えているところでございます。
 一方、米軍機による飛行訓練により、本県では過去に2回の墜落事故が発生しています。
 そのため、これまでも飛行回数の増加などを踏まえ、度々、低空飛行訓練の中止につきまして、国へ要請してきたところです。
 こうした中でオスプレイが配備され、本県上空での訓練回数が増加することは、仮に機体の安全性が確保されていたとしても、事故発生のリスクの増加に繋がり、嶺北地域をはじめ、県民の皆様の不安の増大に繋がるものと考えております。
 このため、本県としましては、機会あるごとに、県民の安全を脅かす低空飛行訓練そのものの中止につきまして、引き続き国へ強く訴えて参ります。

3.原発の安全性について

■中根議員

次に原発の安全性について知事にお聞きします。
 福島原発事故から1年3月が経過しましたが、福島県内外で避難生活を送る人たちは16万人にものぼり、命と健康、暮らしと営業に深刻な影響を与え続けています。
 “安全神話”にどっぷりつかり、過酷事故を招いた原発行政の抜本的転換させることは、福島事故の最大の教訓の1つです。
 ところが野田首相は、暫定的な安全基準のもとで、部分的にしか対策がとれてないもとで、周辺自治体がもとめた夏場の電力供給対策に限定をという声も無視して、将来にわたる基幹電源として原発再稼動に踏み切った。このことは、国民の声、福島原発事故の教訓を無視した暴挙です。

日本共産党は、昨年発表した提言で低エネルギー社会への転換と自然エネルギーの本格的導入により、5~10年以内を目標に原発から撤退するプログラムを政府が策定することを提案しました。そして、老朽化など危険がとくに大きい原発の廃炉などをすみやかに決断、実行するとともに、安全対策について、地元住民の合意が得られないものも停止・廃炉にする、とそのプロセスを明らかにいたしました。これは世論調査の声と一致する内容です。

愛媛県知事は、「安全最優先」と発言しましたが、そうであるならば伊方原発に再稼働の条件はありません。
 4月20日、私どもが行った政府交渉で、経済産業省は、3月末に発表された南海トラフ三連動地震の新想定について、伊方原発のストレステストには反映されていないことを認めました。南海トラフの巨大地震モデル検討会は、想定エネルギーで3倍、波源域を約2倍に拡大し、震源域が伊方原発のすぐ近くまで拡大しました。また、同検討委員会では「南海トラフの巨大地震と、内陸の地震との連動という視点が必要」と指摘をされています。

伊方原発の基準地震動値は570ガルで、保安院は、その1.5倍まで炉心損傷が起こらないと判断しました。しかし、昨今の地震では、2000ガル以上の揺れが計測されています。電力会社は、伊方原発は堅い岩盤上にあると説明していますが、従来の揺れ対策は、横揺れが中心であり、縦揺れ対策はほとんど無視されてきました。縦揺れは堅い岩盤の方が良く伝わり、減衰しません。阪神・淡路震災レベルが記録された縦揺れ、848ガルを「想定外」として無視することは絶対に許されません。
 伊方原発の基準振動値570ガルが「妥当」とした入倉幸次郎・原子力安全委員会耐震安全性評価特別委員会・前委員長は、東日本大震災を受けて、ある番組の中で、「私は570ガルを見直すべきだと思っている」「東日本大震災から何を学ぶかが非常に重要」と発言をしています。 
 地震・津波対策について、新想定を踏まえ、安全を確保したものになっているか、認識をお聞きいたします。

■知事

次に、原発の安全性についての、一連のご質問にお答えします。
 まず、南海トラフ3連動地震の新想定を踏まえ、安全を確保したものになっているかというお尋ねがありました。
 南海トラフの巨大地震については、多くの県民の皆様が不安を感じているところであり、今回、伊方原発が想定震源域の中に入ったことから、南海トラフの巨大地震が伊方原発の安全性に与える影響について検証することは、必要不可欠と考えています。
 このため、本年4月11日に開催した四国電力との勉強会において、南海トラフの巨大地震の想定地震域、想定波源域の見直しに伴う伊方原発の安全性への影響について確認を行いました。

四国電力からは、南海トラフ地震による地震動および津波の高さは、伊方原発における基準地震動及び敷地の高さに対して十分に小さいことから、伊方発電所への影響はないと考えられるとの説明があったところです。その上で、国の検討会から順次提供される断層モデルのパラメーター等を入手し、これに基づいて、改めて精微な伊方原発への影響について確認していくとの報告もあわせて受けております。

その後、四国電力に確認したところ、国からのデータを入手し、現在検証中とのことでしたので、その結果が分かり次第、公表と説明を求めると共に、検証結果を踏まえた上で、新想定による南海トラフ巨大地震に対する安全性が十分に確保されるよう引き続き強く求めてまいります。

■中根議員

今回の「ストレステスト」はもともと原発がどの程度の地震や津波に耐えられるか、コンピュータで計算しただけのものであり、とくに1次評価は深刻な炉心損傷を起こすまでの余裕がどの程度かを見るだけのものです。しかも、老朽原発についての実証データが無い中での計算です。テストの実施主体が電力会社であり、安全審査をする安全・保安院の相当数は原子力メーカーなどの出向者です。
 ストレステストの1次評価だけで、安全性は十分確保できたといえないと思うがお聞きします。

■知事

次に、ストレステスト1次評価による安全性確保についてお尋ねがありました。

そもそも、ストレステストは、法令に基づく定期検査において安全性が確認された原発について、更なる安全性の向上と安全性についての国民・住民の方々の安心・安全を確保するために導入されたものであり、その意味では、安全性の確保に一定寄与するものではないかと考えております。
 とは言え、福島原発事故を十分反映した安全基準ができていない中で、ストレステストの一次評価をクリアすることのみをもって、安全性が十分確保できたとまでは言えないのではないかと考えております。
 このため、国においても、福島原発事故の原因分析を踏まえ、暫定的ではあるものの、現行法令上の規制要求を超える新たな安全基準を整備し、再稼働の条件としているところであります。
 また、6月20日には、原子力規制委員会設置法が成立し、原子力の安全規制を一元的に担う新体制が9月までに発足する見通しとなりましたので、発足後は、福島原発事故の知見や教訓を踏まえたしっかりとした安全基準の策定に、早急に取り組んで頂きたいと考えておるところでございます。

■中根議員

「事故をおこしてならない」という立場で徹底した対策をとることは当然ですが、事故は起こりうるものとして対策をとることが、今回の福島原発事故の教訓です。
 事故の被害を拡散させない対策である水素爆発防止策は実施されたのか。作業員の被曝を防ぐ重要免震棟と緊急時対応拠点となるオフサイトセンターは確保されているか。伊方原発へ続く道は一本道の下り道です。地割れや斜面の崩落で外部からの支援が出来ない事態が発生するのではないか。こうした問題への対策の進捗状況についてお伺いいたします。

■知事

次に、伊方原発における安全対策の進捗状況について、幾つかのお尋ねがありました。
 四国電力におきましては、福島第一原発の事故を受け、国から示された非常時の電源確保など緊急安全対策に取り組んでいるほか、基準地震動に対する耐震裕度を2倍まで確保することなどの独自の安全対策にも取り組んでおられるものと承知しております。
 そうした中でお尋ねのありました項目について四国電力に確認しましたところ、まず、炉心の燃料が露出した場合における建屋内での水素爆発を防止するための対策につきましては、既に電源車からの給電による換気手段を整備しているとのことですが、さらなる安全性向上の観点から、原子炉格納容器内に水素処理装置の設置及びフィルタ付きベント設備の設備について、検討を進めているとのことでありました。
次に、重要免震棟につきましては、昨年12月に免震構造を備えた総合事務所が建設されております。
 オフサイトセンターについては、原子力災害対策特別措置法に基づき、既に伊方町役場の庁舎内に設置されておりますが、設置場所が伊方原発から5キロ圏内と近いことから、現在、国において行われております設置基準の見直しによっては、移転の必要が出てくるものと承知しております。
 また、緊急時において、幹線道路が断たれるなどにより外部からの支援がない場合でも、所定の時間内は電源や水源の確保ができ、安全対策を行うことができるとお聞きしております。
 さらにはその間に、迂回路を利用して要員が現場に駆けつけ、支援のために必要な機材等を、専用の港を使って船舶により輸送することや、海上保安庁や自衛隊、警察などへの協力要請等あらゆる手段を検討しているとお聞きしております。
 四国電力におきましては、福島第一原発事故を受けて、一定、安全対策が講じられてはおりますけれども、徹底して更なる安全対策を講じるよう、求めてまいりたいと考えております。

■中根議員

次は避難対策です。ヨウ素剤配布を含む現実事故対応の準備と避難計画の策定も不可欠です。そのためにもSPEEDIなど活用した放射性物質の拡散予測を早期に実施する必要があります。私たちが実施した文部科学省交渉では、拡散予測の調査の予算はある、と回答しました。

過酷事故が発生した場合の、放射性物質の拡散の予測、避難対策など計画策定の進捗状況についてお聞きいたします。

■知事

次に、過酷な事故が発生した場合の放射性物質の拡散予測や避難対策などの計画策定の進捗状況についてお尋ねがございました。
 伊方原発で福島第一原発と同様の事故が発生した場合、見直しが予定されています国の「防災指針」では、屋内待避や安定ヨウ素剤の服用などについての防護措置が必要となる地域は、原発からの距離が50㎞圏内となっております。
 本県では、四万十市及び檮原町の一部が該当しますことから、地域防災計画に原発事故対策に関する章を設け、基本的な方針を盛り込むとともに、アクションプランとなる行動計画の策定を10月を目途に取り組んでいるところであります。
 この行動計画をより効果的なものにするためには、SPEEDIを用いた放射性物質の拡散予測に基づき、放射能による影響範囲をシミュレーションしておくことが重要であります。
 現在、伊方原発で実際に事故が発生した場合には、SPEEDIを用いた拡散予測が、文部科学省から本県にも届く仕組みとなっております。
 しかしながら、事故が発生する前の拡散予測は、防災対策を重点的に充実すべき地域とされる30㎞圏内の自治体には、要求に応じて提供されますけれども、それ以外の自治体には、本県のように一定の防護措置が必要な地域であっても提供されないことになっております。
 このため、30㎞圏内の自治体にも、SPEEDIによる事故が発生する前の拡散予測を提供し、実効性のある防護措置を円滑に講じることができるよう、全国知事会を通じ国に要望することにしておるところであります。

■中根議員

原発の巨大な危険から一刻も早く抜けだすことが必要ですが、そもそも原発は経済性などにおいても行き詰まっている未完の技術です。その象徴が使用済核燃料の問題です。現在、伊方原発で保管している使用済み核燃料は、1436体です。原発3基が稼働すれば、毎年新たに80~90体の使用済燃料が発生し、格納プールの容量は、2070体分なので、あと7年ほどしかもちません。また、伊方原発から六ヶ所村に搬出した使用済燃料体は420体あります。核燃料サイクルは、巨額の費用をかけながらまったく見通しがなく中止が検討されています。「原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会」は、即時原発廃止と使用済み核燃料の全量直接処分が最も経済的であるとの試算を発表しています。中止されれば、六ヶ所村は中間貯蔵施設ですので、伊方原発に使用済燃料体が返却され、格納プールには約2年分の余裕しか残りません。

また、伊方原発にある「死の灰」の総量は、使用済燃料がウラン重量換算で1100tあり、使用後3-5%が核分裂生成物ですので、約33-55トンと推計されます。広島型原爆1発の死の灰は800gですので、すでに4~7万発分の「死の灰」が蓄積されていることになります。負の遺産をこれ以上増やしていいのか問われています。
 原発政策を考える上で、使用済核燃料をどう保管、処理していくのか、明確になることが前提と思いますがお聞きします。

■知事

次に、原発政策を考える上での使用済み核燃料の保管、処理の問題に関する見解についてのお尋ねがありました。
 お話のありましたように、原発政策を考える上で、使用済み核燃料処理の問題は、非常に重要であると考えています。
 現在、国の原子力委員会では、使用済み核燃料を「直接処分」する方針を含めた3つの選択肢を決定しまして、中長期的なエネルギー施策について検討を行っている政府の有識者会議である「エネルギー・環境会議」に提出することになっておりますので、その動向を注視していきたいと考えております。
 使用済み核燃料については、再処理を行うにせよ、直接処分を行うにせよ、安全に処分するまでには相当な年月が必要と思われ、また、多くの課題が残されております。こうしたことも考慮いたしまして、原発への依存度を徐々に徐々に減らしていくことを一つの大きな方針とすべきだと主張してきているわけであります。

4.新エネルギー

■中根議員

次に、自然エネルギー政策について、林業振興・環境部長にうかがいます。
 7月から自然エネルギーの固定買取制度がスタートし、技術開発なども新たな活況をみせています。自然エネルギーの普及を、地域づくりに結び付けて推進するためには、「地域に売電益が還元する」仕組みづくりと、「乱開発などを防止し、住民合意で推進するルールづくり」が重要です。

自然エネルギーの先進地、ヨーロッパでは市民が出資して設置し、売電益を地域に還元する取組みが中心となっています。全国には、北海道の市民風車「はまかぜ」や長野県飯田市の自治体と民間企業、市民が共同してすすめている「おひさまファンド」や岡山県の「備前みどりのエネルギーファンド」などが良く知られています。飯田市は、保育所などの公共施設の屋根を、市民ファンドによる太陽光パネルの設置に貸出しています。
 高知県においても自治体、企業、協同組合と協力し、まず、モデル事業を実施し、早急に具体例を示すことが重要だと思いますが、現状と課題について、お聞きします。
 また、取組みをすすめるためには、意欲をもった個人や事業者を支援する事業に精通したアドバイザーの存在が不可欠です。現在の体制と充実する必要性について伺います。

自然エネルギーの活用は、地域の資源を活用することから、住民が計画段階から参加し、十分な情報提供を行って勧めることが不可欠です。風力発電には騒音や景観などの問題、メガソーラーにも反射光への苦情など様々な事例が報道されています。
 用途に応じた地区の区分け(ゾーニング)も含め、自然エネルギー導入にあたってのルールづくりの必要性について伺います。

■林業振興・環境部長

自然エネルギー政策についての一連のご質問にお答えします。
 まず、自然エネルギーの普及を地域づくりに結びつけていくための具体例を示すべきではないか、現状と課題はどうか、とのお尋ねがありました。
 県では、昨年11月に、県内企業や民間団体、地元市町村などによる「こうち再生可能エネルギー事業化検討協議会」を設置し、お話のありました他県の取り組み事例なども参考に、地域の自然エネルギーを地域で最大限に活用していくための発電事業のスキームについて検討してまいりました。
 現在、ここで検討したスキームの実現に向け、検討の熟度を高めているところですが、その際の全体的な課題といたしましては、事業展開の核となる組織づくりや資金調達の方法などが、また個々の課題といたしましては、用地の確保や電力会社の送電網への接続費用などがございます。
 今後は、ただ今申し上げました課題を中心に検討のスピードをあげて、具体化を図ってまいりたいと考えております。

次に、自然エネルギーの普及を進めるために、意欲のある個人や事業者を支援する体制の現状とその体制を充実させることの必要性についてのお尋ねがありました。
 現状の支援体制といたしましては、先ほど申し上げました「こうち再生可能エネルギー事業化検討協議会」におきまして、太陽光発電、風力発電、小水力発電の各検討部会を設け、事業化に意欲のある県内企業の方々などにもご参加いただき、それぞれの事業化に向けて協議を行ってまいります。
 この協議会や各検討部会には、外部の専門家にもアドバイザーとしてご参加いただき、事業化や資金調達などについて、専門的な立場からサポートをいただいております。
 現在、先ほど検討中ということで申し上げました、地域主体による自然エネルギーを活用した事業展開の核となる組織が、県内各地における発電事業の立ち上げにむけたコーディネートを行うことができるよう、詰めの作業を行っているところであり、今後は、検討の熟度を高め、地域で意欲を持った個人や事業者を支援する体制の更なる充実を図って参りたいと考えております。

次に、自然エネルギーによる発電事業の導入にあたって地区の区分けなどのルールづくりの必要性についてお尋ねがありました。
 自然エネルギーを活用した発電施設の導入にあたっては、太陽光や風力などエネルギーの種別ごとの特性によって適地が限られて参ります。加えて、法令上の制約として、土地の開発許可や水利権に関する許可などがあり、特に、1万キロワットを超える風力発電については、今年10月からは環境影響評価法の対象施設となることから、設置に当たっては、地域での合意形成などに配慮することが求められてまいります。
 こうしたことから、自然エネルギーによる発電事業が可能な場所はおのずと限られることになりますので、あらかじめルールを作ることまでの必要性は少ないのではないかと考えております。

■中根議員

小水力発電については、本県の潜在能力は高く、三原村の福祉施設の取組みが報道されましたが、今後、全国的な普及の中で、課題の1つである発電施設の低コスト化も期待されます。それだけに適地の調査をしっかり行うことが重要です。農業関係は調査が進んでいますが、それ以外も含めた調査が必要です。
 特に、最近は用水路に設置されるマイクロ水力発電、さらに小さいピコ水力発電の設置が注目をされていますが、水利権は先に申請したものに発生することから無計画にすすむと、例えば市町村が数百kWの小水力発電を設置しようとした時に、建設できないという事態も発生しかねません。
 「地域全体の計画」としてすすめるためにも、適地の調査か不可欠と思うがお聞きします。
 国は、今年度の家庭用太陽光発電設備の設置補助制度について、23年度補正予算で基金を造成し、必要額は確保しているとしていますが、今後については不透明な部分がたくさんあります。この補助制度は、節電意識の向上をはかるためにも、継続して行うよう財源を措置すべきだと思いますが、ご所見をお聞きします。
 県は、今年度、家庭用太陽光発電設備の設置補助制度を廃止しています。本格的な太陽光発電を積極的に推進するために、また、市町村を応援するためにも設置補助制度を拡充すべきだと思いますが、いかがですか。

■林業振興・環境部長

次に、小水力発電の適地の調査について、お尋ねがありました。
 小水力発電は、豊かな降水量を有する本県にとりまして、中山間における自然エネルギーの導入事例として期待されるものと考えております。
 そのため、県では、国の緑の分権改革推進事業などにより、公営企業局において平成22年度から23年度にかけて、物部川流域の5箇所をはじめ県内から30箇所あまりの地点で発電事業の可能性について調査を実施いたしました。
 また、昨年11月には、学識経験者や民間団体、関係自治体等に参画いただき、「こうち再生可能エネルギー事業化検討協議会」の下に「小水力発電検討部会」を置き、適地の情報を共有し、事業化の可能性や地域の熱意などを参考に、有望地点の選定を行ったところです。
 今年度も引き続き、公営企業局において市町村の要望を基に15箇所程度の適地調査を実施することとなっており、その調査結果を積極的に提供することなどにより、市町村における或いは地域における計画的な小水力発電の導入を支援していまいります。

次に、国の家庭用太陽光発電の設置補助制度の継続について、お尋ねがありました。
 現在、国では、住宅用太陽光発電設備の導入に対する補助としまして、建設単価に応じて、上限額29万9,700円から34万9,650円の補助制度が継続されていますが、設備の価格が低下していることも踏まえ、平成25年度末で廃止する方針であるとお聞きしています。
 この補助制度につきましては、これまで太陽光発電の普及に大きく貢献してきましたが、普及が拡大するにつれて設備の価格も低下していることに加え、固定価格買取制度の施行により急速に太陽光パネルの普及が進めば、導入コストが大幅に低下することが見込まれますことから、制度の見直しが行われることとなったものと受け止めております。

次に、県の家庭用太陽光発電設備の設置補助制度の拡充についてお尋ねがありました。
 県におきましては、県産木材を活用した住宅の新築や増改築にあわせて、太陽光発電設備を導入する場合に補助制度を設けておりましたが、導入コストが低減するにつれて順調に普及が拡大していること、また国におきまして余剰電力を有利な金額で買い取る固定価格買取制度など手厚い支援策や市町村における支援制度も充実してきたことから補助制度につきましては一定の役割をおえたものと考え、予算化を見送ったところでございます。今後は先ほども申し上げましたようにメガソーラーをはじめ、小水力発電や風力発電など地域の自然エネルギーを最大限に活用し、地域が主体となった導入を進めることなど新たな取り組みの展開などに力点をおいてまいりたいと思います。

■中根議員

自然エネルギーの普及とあわせ、省エネルギーも極めて重要です。東京都は、くらしや経済に無理のない「賢い節電3原則」の徹底を進めるエネルギー方針を5月に発表しています。エネルギーの効率化は、企業にとってもメリットがあり、県も機敏に省エネ投資への支援を導入したところです。特に、この間、情報と市場を活用した「需要側管理」や「節電発電所」の活用が重視されています。節電分を発電として評価するネガネット取引、節電分をまとめあげる(デマンドレスポンス・アグリゲーター)などのとりくみもはじまっています。
 四国電力管内においても、省エネルギー、ピークマネジメントを推進する真剣な取り組みが必要です。 高知県として四国電力に積極的に提案すべきと考えますがお聞きをいたします。

■林業振興・環境部長

省エネルギー、ピークマネジメントを推進するよう四国電力に求めていくべきではないか、とのお尋ねがありました。
 今夏の厳しい電力需給状況を踏まえ、四国電力においては、新聞広告やホームページ、チラシの配布などを通じて、広く県民の皆様へ節電を呼びかけるとともに、節電に対するインセンティブを引き出すため、新たな電力料金メニューも導入するなどの取り組みも行うとお聞きしています。

具体的には、7~9月のこの夏の節電で、契約電力500KW以上の大口需要家に対しては、四国電力が要請した週の平日ピーク時間帯の最大需要電力が、前年同月の最大需要電力を下回った場合に、電気料金の割引を実施するという「夏季ウィークリー調整プラン」を、契約電力500KW未満の高圧小口の需要家に対しては、当月の最大需要電力が前年同月の最大需要電力を下回った場合に、電気料金の割引を実施する「夏季デマンド調整プラン」を導入するというものでございます。
 このような電力会社の取り組みに加え、省エネルギーやピークカットなどの節電対策の推進については、需要者側の取り組みも重要となりますので、県といたしましては、自らが率先して省エネに取り組みますとともに、節電の取り組みの具体策などの情報提供を行うなどの県民への普及啓発に努めてまいります。

5.防災対策

■中根議員

次に、防災対策について、お聞きします。
 南海地震について「新想定」が発表されました。発生頻度は極めて低いながらも、その巨大な津波は衝撃を与えています。その「津波から逃げる」ためには、1分半~2分続く震度7の強い揺れへの備えが重要です。阪神・淡路大震災の被害者の9割以上は、地震発生後の家屋倒壊が原因でした。そこでお聞きします。
 住宅の耐震化をさらに加速すべきです。耐震化率と、加速化させるために解決すべき課題となっている問題、対策について土木部長に伺います。また、この際、一室だけての耐震化も含めた措置を検討すべきではないでしょうか。
 緊急輸送用の県道、また地域の避難経路になっている県道の橋梁の耐震化を急ぐべきですが、実態と今後の対策について土木部長に伺います。
 また、市町村道の耐震化についても、県としての支援を強めるべきだと考えますがいかがですか、あわせて伺います。

急傾斜地の対策は、市町村から約130箇所の要望がだされ、約半分の60ヶ所について順次工事が進むことになっていますが、今後の計画はどうなっているか。土木部長にお聞きいたします。
 耐震対策を加速化させるために、震度7を体験できる起震車及び津波体験車を、運転手、操作員付きで運用できる体制とともに新たに配置すべきではないか。危機管理部長にお聞きいたします。

■土木部長

防災対策の一連のご質問のうち、まず住宅の耐震対策について、現状の耐震化率と併せて、加速化させるために解決すべき課題とその対策について、また、この際、一室だけでの耐震化も含めた措置を検討すべきではないか、とのお尋ねがございました。
 住宅の耐震化については、本県では平成27年度までに耐震化率を90%程度とする目標を掲げて取り組んでおります。平成15年度に65%であった耐震化率は、平成20年度に推計したところ70%程度となっており、年に約1%向上してございますが、さらに、耐震化のスピードアップを図って参りたいと考えております。
 住宅の耐震化の主な阻害要因として、平成21年度に国が実施した政策レビューの結果によりますと、①耐震化の必要性に関する認識、②耐震化コスト、③業者・工法などに対する信頼性、の三つであるというふうに言われております。
 一つ目の耐震化の必要性に関する認識については、リーフレットの作成・配布、防災イベント等への出張相談窓口の設置、自主防災組織等への出前講座の実施などを行っております。
 二つ目の耐震化コストについては、既存の壁を活用した低コストで合理的な補強計画の普及・啓発と、熟練した技術者が増加したことで、安価な改修工事が増加しております。さらに、改修工事費に対して、従来の60万円に加えて平成22年度の途中から30万円の上乗せを行い、最大で90万円の補助を実施しており、住宅所有者の負担軽減を図っております。
 三つ目の業者・工法などに対する信頼性については、設計事務所及び工務店の登録制度、市町村職員による現場検査の実施、住宅所有者が納得できる合理的な補強計画の普及に取り組んでおります。
 これらの取り組みによりまして、平成20年度以降、300戸程度であった耐震改修の実績が、昨年度は、2倍を超える695戸となっております。今年度は、さらに戸数を増加させて、800戸の実施に向けて取り組んでまいります。
 なお、一室だけの耐震化については、倒壊した住宅から自力で脱出することができなければ、地震後におそってくる家事や津波から必ずしも命を守ることができない場合や、倒壊した住宅によって避難路が閉塞する場合が考えられます。県としては、少なくとも1階部分を耐震改修して、住宅の倒壊を防ぐことが大事だと考えており、平成20年度から1階部分のみの耐震改修についても補助の対象としているところです。

次に、緊急輸送道路や避難経路の橋梁の耐震化についてお尋ねがございました。
 橋梁の耐震化につきましては、まずは南海地震発生時に緊急車両の通行や物資輸送のための緊急輸送道路上の橋梁について、落橋などの甚大な被害を防止する104橋の耐震対策を優先して実施しており、平成27年度には完了の見込みでございます。
 その他の道路においても、被害を受けた場合、復旧に期間を要する規模の大きな橋梁、孤立集落が発生する橋梁や地域の避難経路に位置づけられた橋梁など、重要な橋梁については耐震化を図っていく予定です。
 そのため、本年度からそれらの対策が必要な橋梁を抽出し、対策費用の算出、優先順位などの検討を市町村と連携をとりながら行っていきたいと考えてございます。
 市町村道にある橋梁の耐震化を進めるためには、まず管理者であります市町村の計画づくりが必要ですが、未だ進んでいないのが実情です。
 そのため、県としては、担当者会や個別協議の場を通じて、速やかな計画の策定をお願いしています。
 今後、市町村が計画を策定したのち、迅速に橋梁の耐震化を進めていけるよう、必要な予算を確保してまいります。

次に、急傾斜地対策の今後の計画について、お尋ねがありました。
 県内には約18,000の土砂災害危険箇所があります。このうち、対策工事が終わったものは、平成23年度末で約1600箇所、約9%にとどまっています。
 このような状況のもと、県におきましては「いついかなる土砂災害が発生しても犠牲者を出さない」を基本理念に、ソフト対策とハード対策が一体となったミッションゼロプロジェクトを策定し、土砂災害対策を推進しています。
 これは、通常の降雨による土砂災害のみならず、地震時の土砂災害の防止にも役立つものと考えております。
 ソフト対策としては、災害情報の伝達や避難が早くできるように計画避難体制の整備を図るための土砂災害警戒区域等の指定を進めております。
 また、区域の指定に併せて、町内会や学校、特別養護老人ホームなどの災害時要援護者関連施設で防災学習会を開催し、土砂災害に対する日ごろの備えやいざという時の対応などについて啓発活動を行っております。
 ハード対策としては、地域や市町村との連携・協力のもと、人命を守る観点から、災害時要援護者関連施設や避難所等の重要な施設を優先して、対策を進めております。
 お話しのありました急傾斜地対策につきましては、現在、事業化を要望する箇所として、市町村から約130箇所の要望をうけておりますが、人命を守る観点から重要な施設を優先的に整備する前提のもと、要望箇所を精査し、順次、対策工事を進めていく方針でございす。
 対策の必要なその他の箇所についても、早期に着手できるよう、所要の予算確保に努め、引き続き、土砂災害からの被害者ゼロを目指して取り組んで参ります。

■危機管理部長

まず、起震車や津波体験車の新たな配置などについて、お尋ねがありました。
 現在県が保有する起震車は、昨年度に2万人を超える方々が体験されるなど、非常に有効に活用されております。起震車の運用にあたっては3カ年の運用計画を作成し、県内各地の小学校を中心とした巡回体験を優先して実施をしております。こうした巡回に昨年度は延べ186日間をあてておりますが、車両の保守点検に要する期間などもあり、土曜日あるいは日曜日を中心に自主防災組織などへの貸し出し需要に十分に応じ切れていないという状況が続いております。
 また、起震車の保管場所であります消防学校から県内各地への移動や起震装置の操作を市町村や消防の職員の方にお願いしている関係もあり、運用に必要な人員の確保が難しく、貸し出しに一定の制約があることも、現状での問題点となっております。
 3月31日に内閣府が公表した推計結果では、従来の想定を上回る強い揺れや巨大な津波が予測されております。揺れからまず身を守り、津波からはすぐ逃げることを徹底するためには、繰り返し実際に体験し、学習できる起震車や津波体験車が有効である、と認識しておりますので、今後より多くの県民の皆さんに体験をしていただけるよう、起震車や津波体験車の新たな配置や、運転操作業務の外部委託について、引き続いて検討を深めてまいります。

■中根議員

この間、緊急防災減災事業債にあわせた交付金の創設、住宅耐震施策の拡充、土木などの技術職員OBによる支援組織の発足など、県政は、スピード感をもって、次々と施策を打ち出していると評価しています。
 こうした姿勢に対し、南国市は、「5分で逃げる」方針のもと、13基の避難タワーの建設を打ち出し、6月に大型補正予算を組みました。香南市も3年間で8基、奈半利町も2基追加するなど敏感に対応しています。
 ところが、県都・高知市の反応が極めて鈍いのではないか、と危惧をしています。
 高知市は、この2年間、避難タワーの設置計画はありませんし、設置についても、土地は住民が無償提供をすることを基本としているとのことです。住宅の耐震化では、非木造住宅や避難道のブロック塀の耐震化を導入していません。保育所について、県は、ガラス飛散防止フィルムや避難車の購入について、幼稚園、認定こども園に対して補助を新設しましたが、高知市は公立保育所のフィルム設置は実施していますが、保育所の多数を占める民間保育園の防災対策について「運営費に含まれる」となんら支援をしていません。
 市町村の判断とは言え、県人口の4割を占め、長期浸水の被害も予想される県都の対策がこれでいいのか、県都には、周辺自治体からの通勤、通学している住民も多数います。
 トップ会談も含めて、対策を抜本的に前進させるために、県としても働きかけをすべきではないかと思いますが、知事にお聞きします。

■知事

次に、高知市の防災対策の取り組みについて、お尋ねがございました。
 本県人口の45%が集中する県都・高知市は、まさに本県の政治、経済、教育、交通など様々な機能の中心地であり、県全体の防災対策を考える上でも、高知市の防災対策は極めて重要であります。
 今回県が公表しました第一弾の津波浸水予測では、高知市でも3地区で新たに津波避難計画の策定が、また、5地区で既存計画の見直しが必要となるなど、市として南海地震対策を加速化する中で新たな対応が必要となっております。
 高知市では、この4月から防災対策部を設置して体制を強化した上で、市の職員が地域に入って市民の皆さんと話し合いを重ねながら、平成25年度までには見直しも含めた津波避難計画の策定を完了させる予定だと伺っております。 議員からは、高知市の反応が鈍いのではないか、とのご指摘がありましたが、都市部ゆえの困難性として、地縁の薄さから地域でまとまっての取り組みが進みにくい、といった実態も一部にはあろうかと思います。
 そうした中で、現時点では津波避難タワー建設は具体化しておりませんが、中高層建築物が多いという特性を生かした取り組みとして、避難ビルの指定を重点的に進めておられます。その成果として、平成22年度末には20箇所であった避難ビルが平成23年度末には4倍近くの77箇所に増えたと伺っておりまして、対策は着実に進んでいるものと考えております。
 また、避難路におけるブロック塀の耐震化対策の遅れにつきましては、避難計画の策定にあわせて避難路の位置づけが決まっていくことや、市内に約3万5千棟残っている古い耐震基準の木造住宅への対応を優先していることなどが原因であり、今後の作業の進捗に伴って、高知市でも対応が進んでいくものと考えております。
 高知市と県の防災担当部では、幹部職員が参加した意見交換会を5月に開催し、地域ごとの避難計画策定への具体的な対応や避難ビルの指定に関する問題点など、課題の共有化を図るとともに意思疎通を図っております。
 夏に予定をされている私と市長が直接会談する県市連携会議においても、今年度に入ってからの南海地震対策の進捗状況をお伺いしますとともに、県の取り組みについてもお伝えするなど、今後も率直な意見交換を重ねてまいりたいと考えております。

■中根議員

6月は男女共同参画推進月間です。
 今、ちょうど23日~29日は推進週間にもなっています。
 今回は、男女共同参画問題と関連して女性の視点と防災対策に絞ってお聞きします。
 東日本の大震災以来、地震・防災対策の見直しが進められています。多くの犠牲の中から、救援復興を進めるとともに、貴重な教訓をくみ取って、今後に生す努力を、誰もが望んでいます。
そんな中で、先日NPO法人「イコールネット仙台」の宗片恵美子代表理事が来校しソーレで講演をされました。阪神大震災の時、非正規雇用が多い女性の解雇やDV問題、子育てや介護の苦労など、「女性の抱える困難」が明らかになっていた。教訓を生かそうと仙台市内の女性を対象にとった「災害時における女性のニーズ調査」をもとに、昨年3月1日に中央防災会議で、問題提起をしたわずか10日後に東日本大震災が起こった。具体的対策が間に合わなかった苦い体験をバネに、宗片さんたちは避難所を回りました。

避難所では、みんなが必死に対応していましたが、広い体育館に少しの仕切りもなく、夜は若い女性が見知らぬ男性の隣で眠れない、着替える場もない、生理用品や粉ミルクへの配慮がない、仮設トイレが男女一緒等々、非常時でも少し工夫をすれば緊張を和らげることができるのに、こうした要望がなかなか実行されませんでした。
 女性は日々の生活の中で子どもや高齢者など弱者に気を配り、命を支えています。また、命を生み出す性として、男性と違った複雑な体の構造をしています。こうした条件に培われた細かな気づきがあるのも事実です。「もっと女性の視点を防災に取り入れるべきだ」とこの体験を提言にこの方はまとめています。
 「防災対策に関する意思決定の場に女性を登用する。各種防災政策において、女性の視点を反映させるため、防災担当部局に女性職員を積極的に配置していく。避難所運営に女性の視点を反映させる。弱者を抱える女性の多様なニーズに応じた支援を。災害時におけるDV防止のための取り組みの推進。教育の推進。」など、こまかな提言はどれをとっても高知県でもいかすべきものです。
 昨年、県防災会議52名の委員の中に、女性委員が3名登録されました。それまで0名でしたから、前進面だととらえていますが、十分だと言えるものでもありません。今こそ、女性の参画を強めるときではありませんか。市町村や地域の防災に関する会議でも同様に、女性の視点をしっかりと生かすべきです。
 県の防災会議の女性委員の参画をどう増やしていくおつもりですか。また、県として市町村への周知はどのようにするのか、男女共同参画本部長である知事に伺います。

■知事

次に、防災会議への女性委員の参画促進についてお尋ねがありました。
 地域における防災力を向上させるうえでは、地域の生活者の多様な視点を防災対策に反映させることが必要となります。
 そのため、防災に関する政策・方針決定過程や消防団活動などの防災現場への女性の参画を拡大し、男女共同参画の視点を取り入れた防災体制を確立することが大変重要であり、このことは、東日本大震災で改めて強く認識したところであります。
 昨年3月に改訂しました「こうち男女共同参画プラン」におきましても、「防災分野での男女共同参画の拡大」を重点課題の一つに掲げ、県防災会議等への女性の参画や、女性防火クラブの活動支援などの取り組みを進めております。
 その中で、高知県防災会議につきましては、一昨年の12月に条例を改正のうえ、災害時における女性特有の生理的・医学的な問題やDVなど女性の人権擁護の課題に対応するとともに、防災対策全般において女性の視点を取り入れていくため、高知県看護協会長、高知県女性相談支援センター長、商工労働部副部長の3名の女性委員を登用いたしたところであります。
 さらに、6月20日には「災害対策基本法」が改正され、地域防災計画に多様な主体の意見を反映できるよう、これまで充て職となっていた都道府県及び市町村の防災会議の委員に、自主防災組織のメンバーや学識経験者を任命できるようになりましたので、県としましても、来年の委員の任期満了の際には、女性委員のさらなる登用について検討していきたいと考えております。
 また、市町村に対しましても、今回の災害対策基本法改正の周知にあわせまして、法改正の主旨を踏まえ、市町村防災会議への女性委員の参画を進めて頂くよう、働き掛けていきたいと考えております。

6.長寿県構想

■中根議員

次に、健康長寿県構想に関連して伺います。
 6月5日に厚生労働省が発表した平成23年の人口動態統計によると、高知県の出生数は前年より274人減の5244人、これまでの過去最少は平成21年の5415人でしたから、それを171人も下回る過去最少の出生数となりました。これは、人口1千人当たりの出生率でみても全国平均の8,3に対して高知県は6,9で全国46位、過去最低となっています。
 にもかかわらず、妊娠22週から生後1週間未満の周産期死亡率は5,7で全国平均の死亡率の4,1をうわまわってワースト1位、生後1年未満に死亡した乳児死亡率は3,4で全国平均の2,3をうわまわるワースト4位です。
 この数字に、いささかショックを覚えた人は少なくないと思います。周産期死亡率悪化の原因についてどう認識しているのか、健康政策部長に伺います。

■健康政策部長

日本一の健康長寿県構想に関しまして、まず、周産期死亡率が悪化した原因についてお尋ねがありました。
 出生率の少ない本県では、1件の死産または乳児死亡によって死亡率が大きく変動いたしますが、周産期死亡率につきましては、平成2年以降、全国とほぼ同じ水準で推移してきました。
 しかしながら、平成23年の周産期死亡率は妊娠満22週以後の死産が平成22年の14件から23件に増加したことが大きく影響して、全国の平均値を上回るという結果となりましたことは誠に残念だと考えております。
 引き続き、専門家で構成する協議会におきまして、全ての周産期死亡例の分析に努めますとともに、確実な妊婦検診の実施などによる母胎管理の徹底と、地域の産科診療所と高次医療を担う病院との連携を強化することなどによりまして、日本一の健康長寿県構想に掲げます「周産期死亡率の低さが、全国上位の水準を維持している」という目指すべき姿の実現に努めてまいります。

■中根議員

出産はすべて順調なものではありません。直前まで問題がなくても急変するため、出産できる体制を整えることは県行政のもっとも基本的な役割です。深刻な数値が出ていることと無関係だと思えない医師の配置についてお聞きします。
 現在、高幡保健医療圏に産婦人科医師がいない、安芸保健医療圏に一人の医師のみの状況がつづいています。麻酔科医師の数も十分とは言えません。この間、医師不足がずっと課題になっていますが、検診は地元で受けることができてもいざ出産となると遠くの病院まで行かなければならない、高知市の親類を頼って出産を待つなど、経済的にも精神的にも肉体的にもより多くのリスクを負うことになっているのが現状です。
 産むことのできる病院体制、医師の確保の見通しはどうなっていますか。今や待ったなしの状況です。医師の確保が出来ず、より安全な出産が各医療圏内で出来ないのであれば、出産予定の病院の近くに出産まで待機できるマタニテイハウスを作るとか、通院費の補助制度を作るとか、早急に特別な対応をすべきだと思いますがいかがですか。健康政策部長に伺います。

■健康政策部長

次に、分娩取扱医療機関の状況や医師確保の見通し、また妊婦の宿泊施設や通院経費などについてお尋ねがありました。
 分娩取扱医療機関につきましては、医師をはじめとする周産期医療従事者の確保が困難であることなどから減少傾向にあり、結果として中央保健医療圏域に偏在している状況にあります。
 また、周産期医療を担う医師の確保につきましては、若手医師の県内定着を促進するための医師養成奨学貸付金の貸与者のうち、将来的に産婦人科を志望している医学生が4名、既に産婦人科の診療に従事している医師が5名おり、今後の定着が期待されます。
 県といたしましては、医師を派遣して頂いている県内外の大学に出向いて県内の実情をお伝えし、県内の分娩施設への医師派遣の継続や再開について引き続きご協力をお願いするとともに、県外からの医師の招聘や情報収集に取り組んでまいります。
 なお、地域医療を維持していくためには、一時的な不足を補うだけでなく、他の医療機関の状況や医師の転出など、さまざまな要因による変化に対応できるよう、地元大学などから安定的に医師派遣が可能となる体制づくりが重要でありますことから、高知医療再生機構や高知地域医療支援センターなどと連携して若手医師のキャリア形成を支援することなどによりまして、周産期医療を担う医師が安定的に確保できますよう努めて参ります。
 次に、分娩施設へのアクセスに時間を要することへの不安感や、金銭的・時間的な負担の状況などにつきましては、県としても認識しておりますので、まずは、妊婦が妊娠管理やお産に対する不安を感じたときに、気軽に相談できる相談体制の整備について検討を進めることとしています。
 加えて、高知市池にあります「ドナルド・マクドナルド・ハウスこうち」において平成22年3月から分娩待機される方の宿泊を低廉な料金で受け入れておりますので、医療機関等を通じて周知し利用の促進を進めてまいります。
 これらの取り組みによりまして、安心して出産できる環境整備に努めて参ります。

■中根議員

日本一の健康長寿県構想の中では、周産期と乳児の死亡率の改善のためには2500グラム以下の体重で生まれる赤ちゃんの割合にも注目しています。平成22年には、全国平均が9,6%に対し、高知県は10,5%、実に10人に一人が低体重のリスクを持って生まれているのです。また、妊婦健診を未受診のまま出産に至るケースが7件、妊娠の届出が遅く、妊娠6から7カ月以降が66人、8カ月以降の届出が31人、分娩後の届け出が8人との現状も大変気になるところです。今後の課題のひとつに、母体管理と健康教育の推進があげられていますが、思春期からの無理なダイエットが妊娠中の母体や胎児の発育に少なからず影響があることなど、男女を問わず思春期からの健康教育の中にしっかりとりいれることが重要だと考えます。
 学校教育での取り組みの大切さをどう受け止め、推進しようとしているのか、教育長に伺います。

■教育長

周産期と乳児の死亡率の改善のためには、思春期からの健康教育が重要であるが、学校教育での取り組みの大切さをどう受け止め、推進しようとしているのか、とのお尋ねがございました。
 学校では、これまでも小学校から児童生徒の発達段階に応じた健康教育を体育・保健体育の授業や総合的な学習の時間などで行っております。
 特に、思春期は、大人の体に変わっていく大切な時期にあたり、将来、健康な生活を送るためには、体重などの適切な管理や栄養バランスのよい食事を摂ることが必要であることを理解させるなど、学校教育においても、子ども達が自分の健康に自信が持てる取り組みが大切であると考えております。
 このため、高等学校においては、教科書と併せて文部科学省が作成・配布した副読本、「健康な生活を送るためには」などを活用して、健康教育に取り組んでいます。
 さらに、県教育委員会では、各学校の実態に応じた健康教育を進めるため、専門医などを講師として派遣する事業を実施して参りました。
 今後とも、児童生徒一人一人が何よりも健康であることの大切さについての意識を持つことが出来るように、家庭をはじめ地域の関係機関と連携を図りながら、学校での健康教育の取り組みに支援を行って参ります。

■中根議員

この間、子どもの定期・任意予防接種の種類が広がってきました。どれをとっても不必要なものはなく、予防接種で重篤な病気にかからないようにする大切なものばかりです。0歳児の予防接種スケジュールは、生後2か月がワクチンデビューで、現在、1歳までに5種類、3歳までに合計7種類のワクチンを子どもの体調を見ながら、ワクチンによっては一種類で4回接種することになります。いくつかのワクチンを同時接種することも可能とのことですが、それは子どもの体調次第。日程管理をしながら、親の気配りと働く事業所の理解がなければ、全てを接種することにはなりません。
 職場の協力を得ることなど社会的協力体制はもちろんですが、予防接種を受けやすくする工夫や制度づくりも必要です。病院での夜間接種や土曜・日曜に接種できる体制づくりが必要だと考えますが、健康政策部長にお聞きします。

■健康政策部長

次に、予防接種を受けやすくするための工夫や制度づくりについてお尋ねがありました。
 現在、市町村が行います予防接種につきましては、県民の皆様の利便性を高めるため、予防接種を実施している県内の役270の医療機関であれば、受ける方の住所地に関わらずどこでも接種が受けられる体制としております。
 また、半数近くの医療機関は、土曜日の接種も実施しておりますので、予防接種を受け入れやすい体制は一定整備できているものと認識しております。
 一方、予防接種法では、接種後に副反応が起こった場合に対応するための専門医療機関との連携体制を構築することが求められており、現状では、これに対応するためには夜間休日よりも平日の昼間の接種が望ましいと考えています。
 このため、予防接種の種類が増えた現在では、全ての予防接種を受けていただくためには、保護者が働いている職場の理解が必要となりますので、予防接種の必要性や接種回数などについて、チラシの送付等により事業所への啓発を行っていきたいと考えています。

■中根議員

少子化問題については、県議会も少子化対策・子育て支援特別委員会を設置し、平成21年2月に最終報告書を出しました。私も委員として参加しましたが、少子化問題の底辺には経済政策、産業政策の問題があるとしたうえで、働き方の改善を含む労働政策にも大きく関連してくる問題でもあり、本来そうした分野にも踏み込んだ調査、検討をすべきであるが、時間的制約の中で議論を尽くせなかったことを述べています。産業振興計画も健康長寿県構想も男女共同参画の意識調査にしても、各部局を横断する施策です。
 この際、出産・子育てに関わる具体的な実態・意識調査を行い、生活実態と課題、県の施策への評価をリアルにつかんで生かすべきだと考えますがいかがですか。地域福祉部長に伺います。

■地域福祉部長

少子化問題について、出産や子育てに関わる具体的な実態・意識調査についてのお尋ねがありました。
 お話にありましたような実態・意識調査を通じて、出産や子育てなどを取り巻く現状や課題を明確にすることは、施策の進捗管理、あるいは、新たな施策立案を行う上で、欠かせない視点だと考えています。
 これまでも、子ども・子育て支援については、子どもを取り巻く様々な環境や課題などを踏まえ、平成22年3月に、後期の「高知県次世代育成支援行動計画」、いわゆる「こうちこどもプラン」を作成し、地域における子育て支援サービスの充実や、職業生活と家庭生活との両立の推進、母性及び乳児等の健康の確保などの取り組みを進めて参りました。また、それぞれの取り組みの進行管理については、関係部局が責任を持って取り組み、少子化対策推進本部などを通じて議論を行うとともに、全庁での情報共有や確認を行って参りました。
 また、この2月に取りまとめた「第二期の日本一の健康長寿県構想」では、県民ニーズへの対応やPDCAサイクルによる検証を通じて、例えば、母体管理の徹底や周産期医療体制の確保、子ども・子育て支援施策の充実など、出産・子育てに関わる取り組みのバージョンアップを図ったところです。
 こうした、プランや計画などに基づき、少子化の問題については、関係部局における幅広い対策が必要ですので、それぞれの部局において、現状やニーズを的確に捉え、主体的に取り組みを行うとともに、少子化対策推進本部などで全体調整を行いながら、「結婚期」、「妊娠から出産期」、「子育て期」といったライフステージに応じた総合的な少子化対策を推進してまいりたいと考えています。

■中根議員
次に、認知症について伺います。
 高齢化に伴って増えている認知症への対応が極めて脆弱です。地域型や基幹型の認知症疾患医療センターの設置や、介護との連携体制の構築がなされようとしていますが、患者が病院に行くことを拒むために、進行を遅らせる早期治療が出来ない悩みを、多くの家族が持っています。患者の尊厳、自らの生き方、高齢化に寄り添いながら、認知症の早期発見と治療が出来るようにすることが切望されています。
 そこで、認知症対策として、患者にとって敷居の低い形で病院を受診できるよう、特定健診の中に認知症検査を導入するなど、早期発見の手だてを取ることが必要ではないか、地域福祉部長にお聞きします。

■地域福祉部長

次に、認知症対策として、患者にとって敷居の低い形で病院を受診できるよう、特定健診の中に認知症検査を導入するなど早期発見の手立てを取ることが必要でないかとのお尋ねがありました。
 高齢化の進行に伴い、認知症の方は今後さらに増加することが予想されますが、早期に発見することにより、回復することが可能なものや、薬により進行を遅らせることが出来るものがあることから、早期発見と早期支援が大変重要であると考えています。
 しかし、認知症の診断は初期であるほど難しく、その判断には、高度な検査機器と熟練した技術を要する検査が必要とされており、健診などの集団方式では検査が難しく、専門医療機関での受診が必要となります。
 こうしたことから、県では、高齢者にとって身近なかかりつけ医が、日常の診察を通じて、高齢者の変化をいち早くキャッチし、認知症の早い段階で専門医療機関につなげていただけるよう、かかりつけ医に対する認知症への対応力向上のための研修を実施し、これまでに延べ736人の方に受講して頂いています。
 また、かかりつけ医からの認知症診断等についての相談やアドバイスを行う認知症サポート医の養成研修をこれまでに16名の方に受講して頂いています。
 今後においても、県医師会のご協力をいただき、さらにかかりつけ医やサポート医の要請につとめ、地域のかかりつけ医を中心とした医療の連携のしくみづくりを進めることにより、認知症高齢者の早期発見・早期支援に取り組んで参ります。

7.生活保護行政

■中根議員

次に生活保護行政について、地域福祉部長にお伺いします。
 芸能人の母親が生活保護を受けていた報道をきっかけに生活保護たたき(バッシング)が強まり、これに乗じて生活保護水準の引き下げ、申請権や受給権の侵害など制度改悪が進められようとしていることは到底容認できるものではありません。いうまでもなく生活保護制度は、憲法25条に基づき国民の生存権を保障する制度であり権利です。あるべき生活保護制度の議論については、事実と憲法、生活保護法等に基づいて冷静に、誠実に行うことは当然のことです。
 今回の事例は、息子である芸人が当時100万円以下の収入しかなく扶養できなかったこと、その後仕事、収入が増えるなかで福祉事務所と相談して母親への援助額を増額した、と言う内容であり、いわゆる「不正受給」に当たるものとはいえません。「不正受給」とは、故意に収入や資産を隠し、また少なく申告するなどして生活保護を受けることだと考えますが、今回の事例についてどう認識されているのか、地域福祉部長にお伺いします。

厚労省や一部マスメディアは「不正受給」が蔓延しているかのようにあおっていますが、その厚労省の調べでも09年度で「不正」とされた額は約102億円で生活保護費の0,33%です。このなかには、高校生が小遣いにあてたアルバイト代を申告していない場合も「不正受給」とされています。生活保護費の99%が適正に運用されているのであります。もちろん不正は許される物ではありませんし、なくすことは当然のことではありますが、一部の悪質ケースを受給者全体の「不正」であるかのように印象づけるやり方は事実に基づかない不当なものです。これらは受給者の人権と、申請権を脅かす恐れがあるものであり、地域福祉部長はこの点についてどう受け止められるのか見解をお聞きします。 次に扶養義務問題について伺います。

民法では、877条2項に定められた三親等内の親族は相対的扶養義務者とよばれ、家庭裁判所が「特別の事情」があると認めた例外的な場合だけ扶養義務を負うものとされています。また扶養義務について、厚生労働事務次官通知等では「民法上の扶養義務は、法律上の義務ではあるが、これを直ちに法律に訴えて法律上の問題として取り運ぶことは扶養義務の性質上なるべく避けることが望ましいので、努めて当事者間における話し合いによって解決し、円満裡に履行させることを本旨として取り扱うこと」としています。また「扶養が保護の要件であるかのごとく説明を行い、その結果、保護の申請を諦めさせるようなことが有れば、これも申請権の侵害にあたるおそれがあるので留意されたい」との見解を示しています。
 生活保護法上、扶養は保護の要件ではないことは明らかだと思いますが、地域福祉部長の見解を伺います。

芸能人の母親の保護受給問題も利用して、いま厚生労働省は「生活支援戦略」と称して生活保護基準の引き下げなどと共に、扶養義務を果たしてもらう仕組み、受給者の扶養が困難という親族にはその理由の証明を義務づける、と言う検討をすすめています。
 現在でも申請者の親族に扶養意思の確認が行われており、申請をためらう人が少なくありません。またこれまでも札幌市で3人の子どもの母親が、北九州市では障害者の男性が、それぞれ扶養を理由に申請を受け付けてもらえず餓死する、と言う事件など記憶に新しいところです。諸外国でも扶養義務者の範囲は同居の配偶者、成人でない子の親に限られています。
 しかし今回親族まで所得・資産調査などを行い、扶養を押しつける、扶養困難の証明を義務づける、こうした事態になればますます生活保護を受ける権利を脅かすことになることは明らかであります。全国生活と健康を守る会連合会会員の「私のひとこと」には、「扶養を求められた家も生活苦に陥り、貧困が増え、本人も親族も共倒れになる」「扶養が強制されれば保護を受けにくくなり、自殺、心中が出てくることは必至です。やめてください」など不安と危惧、怒りの声がつづられています。地域福祉部長は、厚労省の見直し検討についてどう受け止めているのか、また要保護者や国民の不安、危惧を受け止め、必要な人が受けられないことがないように、受給権を侵さないように国に求めるべきと考えますが御所見を伺います。

■地域福祉部長

次に、生活保護についての一連のご質問にお答えさせていただきます。
 まず、不正受給の認識、受給者の人権と申請権、扶養義務についてのお尋ねがありました。関連しますので、併せてお答えさせていただきます。
 不正受給については、生活保護法第78条に不実の申請その他不正の手段により保護を受け、又は、他人を受けさせた者について、保護費の返還規定が定められており、具体的にはお話にありましたように、故意に収入を申告しなかったり、過少に申告したときなどが、不正受給にあたることとなります。
 本県においても法第78条に基づく返還命令のほとんどがこうした事例となっております。
 お話にありましたように、一部の不正受給のケースをもって、受給者の人権と申請権が脅かされるようなことがあってはなりませんので、最低生活を維持することが困難で生活保護の適用が必要な人には、適切な保護が実施されるよう、取り組んでいくことが大切であると考えています。
 また、生活保護法の扶養義務の取り扱いについては、生活保護第4条で、「扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべて保護に優先して行われるものとする」と規定されており、扶養が可能な扶養義務者には、その責任を果たして頂くことが必要であると考えています。
 しかし、扶養義務者の状況によっては、扶養ができないことがありますので、扶養義務者がいるからといって、保護を受けられないということではありません。

尚、お話のあった芸能人のケースについては詳細な内容を承知しておりませんのでコメントできませんが、担当する福祉事務所で今申し上げたようなことを踏まえて適切な対応がなされるものと考えています。

次に、生活保護基準の見直しについての受け止め、また、必要な人が生活保護を受けられないことがないよう国に求めるべきではないか、とのお尋ねがありました。
 厚生労働省は、6月4日に「生活困窮者対策と生活保護制度の見直しに取り組むための生活支援戦略」の骨格を示し、その中で①生活保護基準の検証・見直し ②地方自治体の調査権限や医療機関に対する指導権限等の強化 ③ハローワークと一体となった就労支援の抜本強化 等について検討がされており、その中で、お話にありました、扶養可能な方に適切な扶養義務を果たしてもらうための仕組みづくりについても、検討されることとなっております。
 ただ、具体的な検討はこれからですので、県としましては、今後の検討状況を注視してまいりたいと考えています。

■中根議員

次に、住宅扶助について伺います。
 県下のある市のことですが、保護申請者の地域では基準額、限度額の住宅費では住居を構えることはできない、として1,3倍まで認められる特別基準の設定を求めました。ところが市の福祉事務所は、設定の必要はない、としてかたくなに認めようとしていません。しかし、これは保護の実施要領にある「世帯員数、世帯員の状況、当該地域の住宅事情によりやむを得ないと認められるものについては限度額に1,3を乗じて得た額の範囲内において・・・・必要な額を設定して差し支えない」とする見解に反していると言わざるを得ません。県としてこの事例についてどのように助言、指導してきたのか、また実施要領に照らしてどう考えるのか地域福祉部長の見解を伺います。

また別のある市の事例ですが、刑務所出所者が申請に行きましたが住居がないとだめだと言われ、市が住居を斡旋している市民を紹介し保護の申請に至りました。しかし問題は、敷金、礼金等の費用は市からの貸し付けとなり、保護決定後に保護費から分割徴収されています。結局保護申請時点で借金を背負わせることになり、分割返済により最低生活費を食い込み、生活を脅かすことになっています。

厚労省社会・援護局長通知には、住宅費について「保護開始時において安定した住居のない要保護者が住宅の確保に際し、敷金等を必要とする場合・・・必要な額を認めて差し支えないこと」としています。今回の事例はこの通知を適用すべきであり、最低限度の生活を脅かすことは認められません。地域福祉部長は、この事例をどう受け止めどう援助、指導するのか伺います。また、安定した住居がなく友人宅などに身を寄せている場合も、この通知に基づいて敷金、礼金等住宅費を支給すべきと考えますが合わせてお聞きします。

この質問の最後に、今日の生活保護受給者の増加の要因、背景に、とりわけ小泉政権以来の構造改革路線による格差と貧困の拡大、雇用の破壊と社会保障の切り捨て・後退など国民の生存権を脅かす政治にあることは明らかです。何よりもここにメスを入れること、同時に今後の制度のあり方については保護受給者の意見に耳を傾けるとともに、憲法25条にもとづく国民の生存権保障の観点から議論、検討をすることが求められていると考えます。生活保護受給者の増加の要因、背景について、また制度のあり方検討について地域福祉部長の見解をお聞きします。

■地域福祉部長

次に、住宅扶助の特別基準の設定について、お尋ねがありました。
 本県における住宅扶助の限度額は、2級地の高知市で32,000円、3級地のその他の市町村では26,000円となっております。
 国の定めた保護の実施要領では、世帯員の数や状況、地域の住宅事情により、やむを得ないと認められる場合には、限度額の1.3倍の範囲内で特別基準の設定が認められており、これまで、高知市やいの町では、この特別基準が適用されているケースがあります。
 県としましては、これまでも住宅扶助の特別基準の適正な適用について、福祉事務所に周知を図ってきており、必要な場合には、適切な対応がなされるものと考えています。

次に、敷金や礼金の支給についてお尋ねがありました。
 国の通知では、安定した住居のない要保護者が、住宅の確保に際して、住宅扶助の基準額以内の家賃で住居を確保した場合には、住宅扶助基準額の3倍以内の額で、敷金や礼金などを支給できることになっています。
 県としましては、これまでのこの通知の取り扱いについて、各福祉事務所に周知しており、適切な対応がなされているものと考えています。
 また、お話にありました友人宅などに身を寄せて他の住居に転居する場合には、その具体的な内容で個々に判断することになりますが、国の通知に沿った内容であれば、敷金、礼金などの支給ができるものと考えられます。

次に、生活保護受給者の増加の要因等と制度のあり方検討について、お尋ねがありました。
 国が本年4月に社会保障審議会に提出した資料によりますと、生活保護受給者の増加については、①稼働年齢層においては、雇用の場が減少し、失業者や非正規雇用労働者が増加する中で、生活保護に移行しているケースが増加していること ②また、高齢者層においては、高齢化と単身世帯の増加に伴い、所得の低い高齢者が生活保護に移行するケースが増加していること が主な要因と分析されており、こうした傾向は、本県でも同様であると受け止めています。
 また、制度のあり方については、国において、生活困窮者の自立に向けた生活支援体系の構築と生活保護制度の見直しについて、一体的に検討するため、本年4月に社会保障審議会の中に「生活困窮者の生活支援のあり方に関する特別部会」が設置され、検討が進められているところです。
 この部会には、全国知事会をはじめ地方3団体の代表も委員として参加しており、県としましては、この部会での審議の状況を注視してまいりたいと考えています。

8.介護保険

■中根議員

最後に、介護保険について、以下地域福祉部長に伺います。 
 今年4月から介護報酬と医療報酬が同時改定されました。この改定は「社会保障と税の一体改革」の2025年に向けた「急性期中心の入院医療と地域包括ケアシステムの実現」の第1弾として行われたものです。
 本来の「地域包括ケアシステム」は住み慣れた地域で保険・医療・介護サービスを含む福祉サービスの提供を住民のニーズに応じて一体的に提供できるシステムであり、実現できればすばらしいものです。しかし、政府の進めようとしているものは「自己責任と市場化」を土台として、医療・介護の一体的削減が目的となっています。
 このため、今回の改定は、医療も介護も実質マイナスの改定となっています。
 確かに介護報酬の改定率だけをみると在宅1,0、施設0,2%で、プラス1,2%となっています。しかし、介護報酬ベースで2%に相当する介護職員処遇改善交付金を組み入れたため、実質0,8%を超えるマイナス改定となりました。

各事業所の当てはめ作業で、改定の影響が大きいのは訪問介護の生活援助、通所介護、施設の三つ。生活援助は時間区分と報酬が見直され、改定前の「三〇分以上六〇分未満」(二二九単位)と「六〇分以上」(二九一単位)が、「二〇分以上四五分未満」(一九〇単位)と「四五分以上」(二三五単位)に、大幅な時間短縮と報酬削減となりました。現場からは一人暮らしや老々世帯をはじめ、多くの利用者の生活に支障をもたらすと、強い怒りの声が上がっていますが、現場の声をどのように把握されておられるか地域福祉部長に伺います。

通所介護は時間区分が大幅に見直され、最も利用者が多い「六~八時間未満」が「五~七時間未満」「七~九時間未満」になります。多くの事業所は職員の勤務時間に合わせて六~七時間で組んでおり、「五~七時間未満」の時間区分では報酬ダウン。「七~九時間未満」にすれば増収ですが、勤務体制の変更など新たな人員体制が必要となり、経営が困難となります。とりわけ身近な地域で密度の高いサービスを提供している小規模のデイサービスセンターへの影響が深刻となっています。どのように問題点をつかまれておられるか伺います。「7~9時間」区分設定に7時間5分でも認定可能にするなど各県で工夫もされています。本県でも対策が必要だと思いますがどのような検討と対策がされているか伺います。

■地域福祉部長

次に、介護保険の一連のご質問にお答えいたします。
 まず、介護報酬の改定における訪問介護の生活援助や通所介護の時間区分の見直しなどについてお尋ねがありました。関連しますので、併せてお答えさせていただきます。
 今回の見直しは、訪問介護の生活援助については、サービスの提供実態を踏まえると共に、限られた人材の効果的な活用を図るなどの観点で、また、通所介護については、利用実態等を踏まえて見直しが行われたものとされています。
 こうした中、県としましては、今回の改訂による時間区分に応じて一律にサービスの提供時間が設定されることなく、あくまでも、適切なアセスメントとケアマネジメントに基づいて利用者の状態に応じて必要なサービスが提供されるべきものだと考えています。
 ただ、今回の訪問介護の生活援助の見直しに対して、利用者の方からは、サービスが少なくなるのではないかという不安の声や事業者の方からは、個別のケースの状況に応じて訪問回数を分けたということなどをお聞きしています。
 また、通所介護については、現実的には人員面等で従来のサービス提供時間を維持することとなるため、報酬の引き下げとなるケースでは、利用者にとって自己負担分が軽減されるというメリットがある一方で、事業者にとっては、減収となっているとの声をお聞きしています。
 県としましては、今回の時間区分や報酬の見直しが、利用者への必要なサービスの提供に影響が生じていないか、また、事業者の経営にどんな影響が生じているかなど、今後とも実態を把握してまいりたいと考えています。
 併せて、今回の見直しも踏まえ、利用者にとって、より適切なケアプランが作成されるよう、ケアマネジャーに対する研修を実施してまいります。

■中根議員

施設の基本報酬(施設サービス費)は軒並みマイナスで、特に要介護1、2の報酬が大きく引き下げられています。あわせて特養ホームでは、多床室の介護報酬がより引き下げられました。軽度の利用者、低所得者を施設から締め出すものとなっています。低所得者の多い本県への影響が深刻ですがどのようにとらえておられるか伺います。
  「待ったなし」となっている職員の処遇改善については、前述のように、今改定の改定率は現状の処遇改善交付金の水準を確保しうるものではありません。政府は、処遇改善交付金を介護報酬に組み込むことで国庫負担を大幅に削減し、さらに次期法「改正」で計画している「総報酬割」導入によって、その国庫負担そのものを保険料財源に振り替え、処遇改善に対する公的責任を徹底的に縮小し、回避しようとしています。
  これでは、今でももっとも離職率の高い介護職員の確保もままなりません。国への要望と同時に県の雇用対策として、人件費補助制度を創設すべきと思いますが伺います。

介護保険の質問の最後に、具体的な利用者からの改善を求める問題について伺います。
 要支援1の認定を受けた80歳代の女性は、同一敷地内二棟の家を構え、息子夫婦とは別の家で生活しています。息子夫婦は自営業で外出することも多く家事援助の申請をしました。しかし、担当課は同居家族がいるため保険は適応できないとの対応となっています。平成20年8月25日に厚生労働省老健局から「同居家族等がいる場合における訪問介護サービス等の生活援助等の取り扱いについて」という通知が出されています。
 その中では、「同居家族がいることのみを判断基準にして・・・一律機械的に決定することがないよう」と記され訪問介護サービスの利用者向けチラシの見本まで添付されています。その趣旨からみても、厚労省通知に則り、市町村を指導すべきと思いますがお伺いいたします。

■地域福祉部長

次に、施設の介護報酬の改定による、軽度の利用者や低所得者への影響についてどう捉えているのか、とのお尋ねがありました。
 今回の介護報酬の改定は、介護職員の処遇改善の確保、賃金・物価の下落傾向、介護事業者の経営状況等を踏まえて、プラス0.2%の改定がなされ、例えば、特別養護老人ホームでは、ほとんどの報酬区分で基本報酬が減額となる一方で、これまでの国の交付金で行われていた介護職員1人あたり月額1.5万円の処遇改善が、介護報酬の加算措置として新たに設けられています。
 この改定において、特別養護老人ホームでは、要介護1から5のすべての報酬が引き下げられ、お話にありましたように要介護1・2などの軽度の方の報酬の下げ幅が若干大きくなっていますが、県内の利用状況は、要介護3から5の重度の方が約94%となっており、施設運営への影響は少ないものと受け止めています。
 また、ユニット型個室に比べて、多床室の介護報酬がより引き下げられた形となっていますが、これは、入所者の尊厳の保持と自立支援を図る観点から、より一人一人の意思と人格を尊重したケアを行うユニット型個室の整備を促進する、従来からの国の方向性が改めて示されたものとなっています。
 こうした中、本県ではこれまで、特別養護老人ホームの整備にあたっては、低所得の入所者が多いことなどを踏まえ、一律にユニット型個室ということではなく、一部多床室を認めるなど、本県の実情に応じて整備を進めてきたところです。
 また、報酬の引き下げに伴い、利用者負担も軽減されますので今回の報酬改定が低所得の方の入所に、ただちに影響を及ぼすものとは考えていません。
 ただ、今回の報酬の引き下げによって、利用者へのサービスの低下を招くことがないよう、また低所得の方の利用に支障が出ないよう、施設の実情を把握してまいりたいと考えています。

次に、介護職員の確保に向けて、国への要望と併せ、県の雇用対策として、人件費補助制度を創設すべきではないか、とのお尋ねがありました。
 介護職員の処遇改善に取り組む事業者に対して、介護職員1人あたり月額1万5千円を交付する介護職員処遇改善交付金については、昨年度末をもって終了しましたが、本年度からは、介護報酬への加算措置として、引き続き介護職員の処遇改善が図られることとなりました。
 県内では、現在855の事業所、率にして76.8%の事業所でこの加算措置を活用した取り組みが行われており、昨年度までの交付金を活用した事業所の割合(76.5%)とほぼ同じ割合となっています。
 また、県では、他の産業に比べて、「介護人材の確保に支障をきたすことのないような報酬の設定」について、国に対し提言を行ってきたところです。
 今後とも、処遇改善加算の利用状況や事業者の方々のご意見もお聞きしながら、介護人材の確保策等について必要な提言を行って参りたいと考えています。
 お話のありました、雇用対策としての人件費補助制度の創設につきましては、介護保険制度は公費負担1/2、保険料負担1/2で賄われる「保険制度」であることや、人件費が介護報酬の50%以上を占める主要な経費であることから、県独自での支援は困難であると考えています。
 ただ、介護人材の確保は大きな課題ですので、これまで、広く県民の皆様に福祉・介護の仕事について、理解して頂くためのイベントの開催やテレビ番組での広報などに取り組んできたところです。
 今後とも、介護福祉士の養成施設や事業所などの関係団体とも連携しながら、福祉・介護の仕事に対するイメージアップ広報や福祉人材センターでのマッチング支援など、必要な介護人材の確保ができますよう積極的に取り組んでまいります。

最後に、同居家族等が居る場合における訪問介護サービス等の取り扱いについてお尋ねがありました。
 訪問介護サービスの生活援助の利用については、利用者が一人暮らしであるとか、同居家族等の障害、疾病の有無などに限定されるものではなく、適切なケアプランに基づき、保険者である市町村が、個々の利用者の状態に応じて具体的に判断することとなります。
 この判断にあたりましては厚生労働省の取扱通知にある「同居家族等がいることのみを判断基準として一律機械的にサービスに対する保険給付の支給の可否について決定することがないよう」、これまで、県として、各保険者に周知を図って参りました。
 お話のありました事案につきましては、保険者である市町村において、この取扱通知も踏まえ、判断されたものと受け止めておりますが、取扱通知の主旨・内容につきましては、改めて、各保険者に周知してまいりたいと考えています。

9.第二問

■中根議員

どうもそれぞれにありがとうございました。残り少ない時間ですが二問行います。
 知事にオスプレイの問題ですけれども、沖縄をはじめ和歌山県、山口県、各知事さんたちもこれは導入は反対であるという声をはっきりとあげてらっしゃいます。今でも危険な状況が高知県などでもたくさんあるわけですけれども、こうした中山間地を持っている全国の県でオスプレイがオレンジルート、ピンクルート、ブルールートというふうに7つのルート、日本全国のいわば山間地のルートを通ることになりますから、みなさん共通の危機感を持ってらっしゃると思います。
 このオスプレイそのものの危険性もさることながら、米軍の低空飛行訓練にこれほど日本の国の国民達が危険にさらされていいのか、という問題だと思いますので、ぜひとも協力してはっきりとした声を国に向かって更にあげていただきたいと要望したいと思います。

二つ目は防災会議の問題です。6月20日に中央の方が政府の方が防災会議に女性とは書いていませんが、多様な趣旨から検討できるそういう人たちを入れなさい、ということを改定したということがありました。
 高知県などを見ていたら、防災会議は本当に役職で選定をされていますので、条例を改定しない限り、これ以上に例えば、女性が色んな視点で入ってくるというのは無理ではないかと思われます。こうした条例改定も含めて必要なところには今やはり企画立案、検討の時点で女性の目線が必要なわけですから思い切った対応をとって頂きたいというふうに思うのですが、そういうことも含めてもう一度この点についてはよろしくお願いします。

あと、危機管理部長に起震車、津波体験車は私も体験して初めて、本当にこれは恐ろしいということを痛感しまして、こうした体験をたくさんの人がすることが大事だと思います。これまでも要望してきましたけれども、ぜひ運転する人も含めて配置をして初めて防災のところに起震車が行くことができますから、その点もぜひお願いしたいと思います。
時間がなくなりましたので、以上お願いします。

■知事

オスプレイの点については、他県の連携も含めまして効果的な対応策をよく模索していきたいと思います。
 女性の視点を防災対策に生かすという重要性は私も全く同感でありまして、実際、応急時、復旧・復興時において、被災地に実際応援に入った色々県職員から話を聞きましてもですね、その点が非常に重要だったという話もたくさん聞いてきたところでもあります。どういうやり方があるか、色々あろうかと思いますが、実質的に女性の視点が取り入れられるようによく工夫をしていきたいと思います。

■危機管理部長

起震車の件、昨年から引き続いての課題だというふうに認識はしております。課題だというのは、やはり起震車が増えるなりすれば、それは多くの方々に利用もしていただける、という部分もありますし、課題の一つには、やはりこの起震車一台といっても相当金額の必要なものになります。当然、お話のあった運転・操作というところでの人員の配置なりになりましても一定コストがかかってくるものであります。私ども、お答えした検討を深めていきます、という部分はここは昨年からの課題である中でも一番大きい財源として国庫補助事業の導入、他にもやはり効果的に配備をするために活用できるような制度なりはないか、とそういったことを詰めていくということでございまして、その点をご理解いただきたいと思います。