議会報告

  • 2012年07月06日
    「公的年金2.5%の引き下げに反対する意見書」への賛成討論

塚地佐智 議員

私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となっています議発第13号「公的年金の2,5%の引き下げに反対する意見書議案」に賛成の立場から討論を行います。
 6月に支給された年金の金額を見て、各地で怒りの声が渦巻いています。消費者物価変動分0・3%が減額されたことに加え、介護保険料の値上げが通知をされたからです。
 今後も、特例水準解消として過去の据え置きの「差額」分と称して2.5%が3年間で減額され、1年目分として12月支給分から0.9%減額をされます。年金支給総額は、年間50兆円ですので、年間ベースで約6000億円の給付減となります。10月分からは、後期高齢者医療の保険料と介護保険料のアップが更に反映されることとなります。後期高齢者医療制度の保険料は、平均年額で5万8141円と9・9%の負担増、65歳以上の介護保険料も年平均で7500円余の負担増となります。国保税が引上げられた自治体も少なくありません。支給されるたびに少なくなっていく年金となっています。
 とりわけ基礎年金だけの人の給付額は、平均月額5万円にも満たないきわめて低いもので、これをさらに削減することとなり、一方で医療・介護で保険料負担は増えるわけですから、ただでさえ厳しい高齢者の生活をいっそう追い詰めることになるのは明らかなものです。これでは生きていけない、こうした悲鳴とも言える声が県内各地で上がっています。
 政府は「物価下落にあわせる」といいますが、過去に物価下落にかかわる「差額」は実態として1.7%しかなく、2.5%の引き下げに道理はありません。基準となる98年から2010年の物価は3.6%下がっていますが、年金給付も2011年度までに1.9%下がっているからです。
 しかも消費者物価下落の主力は、液晶テレビ、ビデオ、パソコンなどで、食料品などは下がっていませんし、水光熱費・医療費などは上がっており、年金生活者の日常の必需品では、負担は減っていない現実を反映をしていません。高齢者にとって負担の大きい税金、社会保険料の負担増は、「消費者物価」調査の対象外であり、99年以降の介護保険料、高齢者への増税などは反映されていませんから、まさに実態を無視した設定と言えます。
 今、日本経済の最大の問題は、貧困と格差の拡大による内需不足によるデフレ不況です。日本経済の6割を支えている家計の消費が冷え込んでいるからで、それが経済成長もストップさせ、税収減と長期債務残高の対GDP比の悪化という悪循環を生み出しています。年金削減、支給額削減は、経済と財政をさらに悪化させることとなります。
 自治体研究所の京都大学教授の岡田知弘理事長は、年金の減額が地域経済にとっても重大な影響を与えることを指摘しながら、多くのマスコミが高齢者と若者を対立的に描いていることを見直し、長野県栄村を例に、疑問を呈しています。栄村は、人口2500人、高齢化率40%台で、年金経済は推計10億円であり、その額は、村役場の財政規模の3分の1、村の小売販売額に相当しています。その年金は、福祉医療事業所、小売店、大工、タクシー運転手の仕事と所得の源泉になっており、「地域における経済循環と再生産の視点でとらえると、年金給付によって若者の雇用と所得が確保される側面も見える」と述べています。こうした状況は、中山間地の集落の多く存在している本県にとっても重要な視点といえ、地域経済を守る上でも支給減額は認められません。
 政府与党は、さらに、今後の課題として、毎年0.9%支給額を減少させる「マクロ経済スライド」を導入を検討するとしています。また、支給開始年齢の引き伸ばし68~70歳にするというものです。
 こうした改悪は、若者の年金への信頼をますます低下させ、年金保険料収入の未納の拡大、年金崩壊へすすんでいくものとなります。年金の充実、国連人権規約委員会から勧告されている最低年金の導入にこそ踏みきるべきときです。
 年金の給付削減を中止し、最低保障年金の確立に踏み出すことは、消費税の増税頼らなくても財源の確保は可能です。
 第一に、証券優遇税制によって、1億円をピークに所得税負担が下がりつづける税制度のゆがみをただすこと。高額所得者の保険料上限の見直しをすること。
 第二に、一部大企業だけが活用している特権的減税の廃止。高所得の役員の保険料の事業主負担の上限をなくすこと。
 第三に、働くルールの確立をすることです。90年代後半以降、国全体の社会保険料収入は伸びていません。雇用者報酬の低迷、派遣や非正規雇用の拡大がその原因です。一方で、大企業は内部留保を急増させました。その内部留保を、非正規雇用の正社員化、賃上げやサービス残業の一掃などにより、国民に還元をすれば、社会保険料収入が拡大するとともに、消費不況を克服し、経済をまともな成長のレールにのせ、税収増・社会保険料増が可能となります。こうした方向にこそ踏み切るべきときです。
 高齢者の生活苦を一層深刻にする公的年金の削減ではなく、充実にむかうことが、くらしの実態からみても、経済活性化、財政再建にとっても重要な意味を持つことをお示しをし、 なにとぞ、本意見書に賛同いただくことをお願いを申し上げて私の討論といたします。