議会報告

  • 2014年07月07日
    6月県議会 米田稔県議の代表質問と答弁/⑤子ども・子育て支援新制度(2014.06.25)

 

子ども・子育て支援新制度

 

●米田県議

次に、来年4月から実施されようとしている子ども・子育て支援新制度について知事に伺います。

同制度は、保育所をはじめ子育て支援をどう充実させるかという視点から議論がはじまったものではなく、経済成長戦略の一環としてスタートしました。国民的な反撃で、児童福祉法24条1項の市町村の保育実施義務は残りましたが、事業者と利用者の直接契約、企業参入を容易にする規制緩和など、保育を市場化することが基本となっています。

実施主体は市町村ですが、尾崎知事は知事会の次世代育成支援対策プロジェクトチームリーダーをつとめており、基本点な考えについてお聞きします。

 新制度は待機児童解消を理由としていますが、市町村が保育所整備に二の足を踏んできたのは、国の定める基準が極めて貧困なためです。国基準では、保育料は3歳以上児で月額10万円を超える大変高い額となっています。また、今は一般財源化されていますが、「運営費補助基準」では、保育士の配置数が実態より少ない、保育士1人の人件費も400万円程度しかなく、多くの市町村が持ち出しを強いられてきました。

先日公定価格案がしめされましたが、国の低すぎる基準が改善され、市町村の超過負担を解消するのか、また子育て施策がさらに前進できる財政の枠組みとなっているのか、知事にお聞きをします。

 

■知事

子ども・子育て支援新制度に関し、まず、市町村の超過負担は解消するのか、また、子育て支援施策が前進できる財政の枠組みになっているのか、とのお尋ねがございました。

子ども・子育て支援新制度は、本格的な人口減少社会が到来する中、子どもを生み、育てたいという希望を持つ方を、国や地域を挙げて、社会全体で支援する新しい支え合いの仕組みを構築することを目指すものであります。

その仕組みの中で、子どもの最善の利益を図るために、子育て支援の中心的な役割を担う保育所や幼稚園、認定こども園などへの確実な財政支援は、大変重要なことと考えております。   

私は、国の子ども・子育て会議に、全国知事会の次世代育成支援対策プロジェクトチームのリーダーとして参加し、職員の処遇の改善や、保育士の配置基準の見直し、また、地域の子育て支援の充実などについて、強く発言してまいりました。

その結果、新制度においては、例えば、職員の処遇の面では、現在実施されている職員の勤務年数に応じる給与加算への更なる上乗せが図られております。

また、保育士の配置では、3歳児について、国の基準よりも手厚く職員を配置している施設に、加算措置が講じられるとともに、地域の子育て支援として保護者の相談に応じる補助職員を配置した場合の加算も新たに計上されるなど、新制度は、子育て支援施策の推進につながるものと考えているところです。

また、これまで保育士を手厚く配置するために、独自で財政負担を行ってきた市町村にとっては、今回の職員配置に関する加算措置により、財政負担の軽減にもつながるものと考えております。

なお、国からは、公定価格の細部について、保育所や幼稚園、認定こども園などからいただいている意見や要望も踏まえて、最終的な単価設定を行っていくとお聞きしております。

県といたしましても、今後の公定価格の決定に向けた動きを注視してまいりたいと考えております。

 

●米田県議

 市町村の保育実施義務は残りましたが、保育所に入所できなかった人は、認定こども園や小規模保育など地域型保育の利用を市町村の斡旋をうけて直接契約しなくてはなりません。

 保育の必要性について親の就労を基本に優先順位をつけますが、障害児をかかえて親のどちらかが就労していない場合や両親が不安定な非正規労働など貧困などのリスクを抱える家庭の点数が低くなり入所できない懸念があります。保育所に入所できない場合、他の施設では直接契約となり、施設側が利用者を選択するために入所はさらに困難になります。入所出来ても、保育料以外の上乗せ負担や質的に劣る条件での保育で我慢しなければなりません。例えば小規模保育のB型では保育士は半分でよい、C型では研修をうければ保育士でなくてもよいとなっています。

障害をもつ子どもやリスクを抱える家庭の子どもが、体制のしっかりした保育所で保育を受けられることが重要と思いますが、県としてどう考えているのか教育長にお聞きします。

 

■教育長

障害を持つ子どもや厳しい事情の家庭の子どもなどへの保育についてお尋ねがございました。

議員からお話がありましたように、すべての子どもが一人ひとりの状況に応じた適切な保育を受けることのできる環境を整備することは、大変重要であると考えております。

現在、市町村では、入所にあたり、子どもの障害や両親の不安定な就労など、いろいろなご事情のある家庭については、柔軟に受入れを行っているとお聞きしておりますが、保育所が定員に達しているときなどは、希望していても入所ができない場合がございます。

この場合、現在の制度では、保護者は、認定こども園など他の受け入れ可能な施設の紹介を市町村から受けるものの、入所申請等の手続きは直接施設に対して、保護者が行わなければならず、大きな負担がかかっております。

来年度からスタートする子ども・子育て支援新制度のもとでは、保育と幼児教育に関する制度が一本化されることにより、保育所や幼稚園、認定こども園への入所申し込みの窓口が一本化され、市町村は、保護者の希望に応じて、保護者の就労状況や子どもの実態を考慮し、適切に対応ができる施設を斡旋するなどの調整を行うこととなります。

また、子どもを受け入れる施設においては、利用の申し込みに対し、特別な場合を除き、応諾する義務が課せられております。

こうしたことから、支援を必要とする子どもそれぞれの状況に応じた施設の利用が図られるとともに、保護者自らが施設を探すといった負担も軽減されることとなります。

また、保護者負担金について、文房具代など利用料以外の費用徴収が行われる場合は、保護者世帯の所得に応じて、その一部を助成する市町村事業も実施されますことから、保護者の負担軽減も図られることになります。

県といたしましても、一人一人の子どもに応じた質の高い保育が提供されるよう、保育士等への研修の充実を図っていくことにより、これまで以上に充実した保育サービスの提供に努めてまいりたいと考えております。

 

●米田県議

厚労省が発表した2013年の保育所の死亡事故報告では、利用園児数に対する事故発生率は、認可外は認可保育所の45倍となっています。この点からも質の担保はきわめて大事です。

子どもに平等に良質の保育を提供することが重要と考えますが教育長にお聞きします。

 

■教育長

認可外保育施設も含めた平等で良質な保育の提供について、お尋ねがありました。

現在、県内に約100か所ある認可外保育施設につきましては、保護者自らの意志で、認可外保育施設を選択する方もいらっしゃるなど、認可を受けた保育所とともに地域の保育ニーズの一部を担っていただいております。

ただ、認可外保育施設については、設置基準がゆるく、また、公的な支援も少ないことから、受入体制や保育環境の面で課題を抱えているところもございます。

子ども・子育て支援新制度においては、認可外保育施設が条件を満たせば、認定こども園や地域型保育事業への移行ができますので、そうなれば県や市町村の指導・監督の実施とともに、公的な支援を受けることができるようになり、より良質な保育の提供につながるものと考えております。

そのため、県といたしましては、できるだけ多くの認可外保育施設が新制度に移行していただけるよう、該当施設の職員に必要な研修を実施するとともに、市町村に対しても、管内の認可外保育施設の実態を十分把握し、新制度への移行を進めていただくよう要請しているところでございます。

今後も、市町村と連携しながら引き続き移行を促し、保育サービスを必要とする全ての子どもに対して、質の高い保育・教育を提供することができるよう取り組んでまいります。

 

●米田県議

来年4月実施といいながら、制度の細部は決まっておらず、自治体関係者からとても間に合わないとの声が聞こえています。なにより保護者へ説明がなされておらず、きわめて複雑な制度を短期間で周知するのは不可能だと思います。

実施の延期も含め、保護者の理解をえる機会を十分保障するべきだと思いますが、知事にお聞きします。

 

■知事

新制度の実施の延期を含め、保護者の理解を得る機会を十分保障すべきではないか、とのお尋ねがございました。

子ども・子育て支援新制度については、先月、来年4月からの施行が正式に決定され、国の職員が直接各地域に出向いての説明会も始まっております。

これまで、県及び市町村では、子ども・子育て支援会議を設置し、保護者の代表の方々もメンバーに入っていただき、新制度における事業計画の作成に取り組んでまいりました。

また、事業者においては、当初から想定されていた来年4月の新制度実施を見据えて、認定こども園等への移行準備などを行っており、新制度の実施時期を延期させることは、かえって混乱を招くものと考えております。

県では、これまで市町村や事業者を中心に、新制度の説明会を実施してまいりましたが、今後は広く保護者の皆様に対しましても、この制度の実施主体である市町村と連携しながら、新しい保育サービスの内容や利用手続きの方法、利用者負担などの説明に努め、新制度を円滑にスタートさせるよう取り組んでまいります。