議会報告

  • 2014年07月07日
    6月県議会 土佐電鉄と県交通の再編に関する吉良富彦県議の質問と答弁(2014.06.30)

●吉良県議

土佐電鉄と高知県交通の両社の株主総会が6月27日に開かれ、両社を統合する議案がそれぞれで承認されました。これによって本県の公共交通を担い県民の足を守ってきた両社の歴史は幕を閉じることとなりました。県が設置した「中央地域公共交通再構築検討会」での合意が結果的に引導を渡すこととなったわけですが、両社の果たした歴史的役割や両社と人生を共にしてきた従業員、そして愛着や思い出をもつ県民に対して知事はどのような思いをお持ちか、まずお聞きいたします。

 

■知事

土佐電鉄と高知県交通の両社の果たした歴史的役割や、両社と人生を共にしてきた従業員、そして愛着や思い出を持つ県民に対してどのような思いを持っているのか、とのお尋ねがありました。

土佐電鉄は、明治36年の設立以来、110年にわたり、戦前から戦中の激動の時代を経て、戦後の高度経済成長まで本県の産業の発展とともに、歩んでこられました。

いまでも県民からは「とでん」の愛称で親しまれておりまして、路面電車・バスは、県民の通勤や通学を支えております。路面電車は、その存在、これが高知の観光資源ともなってきました。

高知県交通は、昭和19年に設立をされ、70年にわたり、「赤バス」の愛称で、県民に親しまれてきました。かつては、県内、津々浦々まで路線が張り巡らされ、文字どおり「県民の足」として、親しまれてきたところでございます。

今回、そうした歴史のある会社を清算するというご判断がなされていこうとしているわけでありますが、この間、県民の足を守るため、ご苦労されてきた両社の株主、役員、従業員、OBなどご関係の皆様方にとって、会社の歴史に幕が閉じられるのは、万感の思いあるのではないかと思います。この思いを受け止めていかなくてはなりません。

特に、株主の皆様の大変重いご判断に対しまして、心から敬意を表したいと思います。

このたびの再構築スキーム案は、多額の債務のもとに経営が立ちゆかなくなっているという現実を見据え、多くの関係者の理解と協力のもとに取りまとめられたものであります。

新会社が、将来にわたって持続可能な公共交通となりますよう、県といたしましても、今回の関係者の皆様の想いを引き継ぎ、県民の期待に応えるためにしっかりと役割を果たしてまいりたいと考えております。

 

●吉良県議

「中央地域公共交通再構築検討会」で合意された統合に向けた再編スキームでは、新会社は巨額の行政の出資、税金投入を前提にして経営がなされることになっています。投入する額は、県と12市町村、それぞれ5億円づつ、合計10億円、新たな公金を支出するには県民への説明責任が不可欠であります。

まず、明らかにすべきは、新会社への出資者として今まで以上に経営に対して責任を持つ立場になる県自体の指導監督能力に対する県民の不信にどうこたえるかであります。

なぜならば、暴力団問題に至るまでの土電の組織、経営体制上の問題点について昨年5月から7月の2か月間調査を行った「外部調査委員会」は、「土電は元会長の個人商店的な状態であった」「元会長及び元社長に対する取締役・監査役による監視・牽制が機能していなかった」「経営陣のコンプライアンスに対する意識・理解が欠如しているうえ、諸規定も整備されていない」などと結論付け、これらへの是正が喫緊の課題だと指摘をしています。

しかるに、長年、県の職員を退職したものが土電の役員や監査役についているうえに、今議会、わが党の米田議員の代表質問に対し副知事が答えたように、「平成21年度からは、専任の理事職を置き、高知県公共交通経営対策検討委員会を設置するなど、公共交通事業者、県民代表も交え、積極的に議論を行い、事業者に対する助言、提案などを行って」きたというにもかかわらず、わずか2か月の外部調査委員会の調査で指摘されたコンプライアンスの諸規定がないことなど含め気づいていないか気づいていても適切な指導・監督などには至っていないということから先の事態を迎えたとも言えます。

副知事は「適正に対処してまいりました」と答えていますが、このようなことを見逃す程度の調査指導監督能力しかないようでは、5億円も出資する新しい会社の経営に対するチェックなどできないのではないか、というのが県民の率直な気持ちであります。

平成21年度から設置した専任の理事職、及び、高知県公共交通経営対策検討委員会は期待されるに十分な機能は果たしていなかったと考えますが、その原因をどう把握しているのか。また、そのことを新会社に対する県としての指導監督にどのように生かすおつもりなのか、お聞きをいたします。

 

■副知事

専任の理事職及び高知県公共交通経営対策検討委員会は、期待されるに十分な機能を果たしていないとのご指摘と、そのことを踏まえた上での新会社に対する県としての指導監督について、お尋ねがございました。

交通運輸政策担当理事職につきましては、県民の暮らしや産業の振興を図るうえで不可欠な交通・運輸システムに関する事項を総合的に推進するため、平成21年に設けた職であり、交通や物流の仕組みの課題を洗い出し、対策を講じるという役割を担ってまいりました。

職の設置以降、JALの名古屋線の廃止や、中山間地域において深刻となった住民の移動手段の確保という課題、お話にありました公共交通の経営対策の検討など、なかなか前が見通せない課題が山積しておりましたが、昨年3月にはFDAによる名古屋線が復活したほか、中山間地域では、多様な移動手段の実現が進んできました。

また、公共交通経営対策検討委員会での検討や答申、県議会公共交通問題調査特別委員会でのご説明など、これまで様々な検討や取り組みを重ねてきておりました中央地域の公共交通の課題は、このたび土佐電鉄、高知県交通の経営統合という形で、大きく動き出しました。このことは、この間の地道な取り組みが実を結んだものと考えており、私は評価をしております。

お話にありました土佐電鉄の一連の問題への対処は、県としての通常の交通事業者に対する指導、助言の範囲を超える、極めて特別なケースではございましたが、この間の対応は適切なものであったと考えております。

新会社につきましては、県が出資することになりますので、持続可能な公共交通スキームの実現に向け、県としての責任、権限の範囲でしっかりと関わっていく考えでございます。

 

●吉良県議

副知事は「新たな再構築スキーム案は、全額、行政が出資する、いわば、県民の会社となりますので、県が出資という形でかかわっていくことになれば、これまでの立場に加え、県民の声をしっかり伝えるなど株主としての役割と責任をはたしてまいります」と述べられました。しかし、具体的にどのような手法で役割と責任を果たすおつもりなのか、以下、副知事にお聞きします。

一般的に、株式会社にあっては、持ち株が過半数を超える比率を有していると、普通決議で取締役や監査役を自分の思い通りに選任することができ、会社の日常業務についてほとんどすべてのことを決定することができます。さらに2/3以上の持ち株比率を有していると、特別決議で定款の変更や減資などの会社の重要方針を決議することもでき、まさに会社を支配することができます。50%を出資するとする県は、経営陣に関する議決権限を持つわけですので、経営への発言力は非常に高まる事になりますが35%をもつ高知市をはじめとする関係市町村との意思疎通を図り最大限の合意を図る事が大切になってくると考えます。関係市町村とはどのような組織的協議を経ながら7月中旬に設立される「新会社設立委員会」に臨み、出資行政としての総意を反映させていこうとお考えか、お聞きをいたします。

 

■副知事

「新会社設立委員会」への対応について、関係市町村とどのような協議を行いその総意を反映させるのか、とのお尋ねがございました。

「新会社設立委員会」は、新会社の役員構成や社名、社内組織体制などの重要事項を協議・決定する予定としております。従いまして、県や高知市だけでなく株主となる関係自治体全体の意思を反映させていくことは重要だと考えております。

現時点では、関係12市町村のうち、9市町村の議会で、新会社への出資が、まだ審議されておりませんので、確定したことは申し上げられませんが、全ての市町村で承認さ

れれば、速やかに県と関係12市町村の意見交換の場を設け、今後の対応について協議してまいりたいと考えております。

そのうえで、自治体としての総意を県と高知市で「新会社設立委貞会」に反映させていきたいと考えております。

 

●吉良県議

副知事は、これまでの立場に加え県民の声をしっかり伝える、と述べています。株式会社ではなく一部事務組合ならば、従前同様それぞれの自治体から組合議会に議員を選出することで民意の反映を促す事になります。今回は、株式会社への出資となり、地方公営企業法などの対象となりません。どのような手法でもって経営に県民の声をしっかり反映しようとお考えかおききします。

議会との関係についてお聞きします。県が出資比率25%以上の団体は、議会に対して決算報告を行わなければなりません。しかし、それは、議会として組合議会に議員を選出して、経営に関する議決に直接かかわることではございません。再編スキームの進捗状況や、新会社の四半期ごとの決算報告など定期的な経営報告などを、議会に対して行わせるべきだと考えますが、お聞きをいたします。

 

■副知事

どのような手法でもって新会社の経営に県民の声を反映しようと考えているか、また、経営状況の議会への定期的な報告をするべきだがどうか、とのお尋ねがございました。関連しますので、併せてお答えをいたします。

新会社の事業再生計画の実施状況などにつきましては、関係市町村と連携し、四半期ごとに開催予定のモニタリング会議にて、経営者と協議していくことを考えていますので、こういった場で、県やそれぞれの市町村に届いた利用者の意見などを、経営者に伝え、反映していくことになると考えております。

また、再生計画の進捗状況や経営状況は、現時点では、担当部局から所管の委員会にて定期的にご報告させていただきますとともに、その場で賜ったご意見は、新会社へお伝えをしていきたいと考えております。

 

●吉良県議

この間、国の相次ぐ交通運輸の規制緩和政策の推進によって、鉄道、バスの路線廃止など地域公共交通が衰退し、自家用車を利用できない高齢者等、移動が大きく制限される移動制約者が増大しています。自動車中心の交通政策により交通事故や環境問題の発生などの弊害も生まれ、さらに、高速ツアーバス事故初め、公共交通機関事故も相次いでいます。昨年12月の交通政策基本法の成立に続き、この2月、今後の地域公共交通に直接影響をもたらす地域公共交通活性化法の一部が改正されました。そこでは人口減少や高齢化を考えると、運輸政策の側面からだけの対策では対応できないという事で、「まちづくりと一体化したコンパクトな公共交通の再編」「持続可能な地域公共交通網の形成」「当該計画の作成主体に都道府県を追加」と、県の役割が新たに明記されました。

福祉・医療計画と交通計画、福祉部局と運輸部局の適切な分担によって、まちづくりと新会社の経営を後押しする取り組みが、県に求められていると考えるものです。これらの流れをどう交通政策に反映させ新会社の経営にいかしていくのかお聞きをいたします。また、高知県公共交通維持活性化対策フォローアップ委員会の積極的な位置づけをどう図っていくのかもお聞きいたします。

 

■副知事

福祉・医療計画と交通計画をどう新会社の経営にいかしていくのか、また高知県公共交通維持活性化対策フォローアップ委員会の位置づけについて、お尋ねがございました。

本年5月に改正された「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」では、交通政策基本法の基本理念にのっとり、地方公共団体が中心となって、まちづくりと連携し、面的な公共交通ネットワークを再構築することが求められております。

今後、新会社において、具体的なバス路線再編の作業に入っていくことになりますが、その際には、これらの法の精神を踏まえ、まちづくりの視点や、高齢者や障害者など交通弱者の円滑な移動の確保といった視点を反映することができるような仕組みを考えていく必要があるのではないかと考えております。

現在、県では、路線バスや路面電車、鉄道など各交通機関ごとに、具体的な課題と取組項目、目標を設定した「公共交通維持活性化プランカルテ」を作成し、実施機関自らによる検証と、お話しにございました、「公共交通維持活性化対策上フォローアップ委員会」による検証・評価を行い、その意見等を事業者の経営や取り組みに反映させるシステムを導入をしております。

新会社では、経営の安定化を図るため、利用促進策や増収対策に積極的に取り組むこととしておりますが、その進捗管理や点検評価にあたっては、フォローアップ委員会の活用を図っていく中で、外部の客観的な意見等をしっかりと取り租みに反映させ、新会社の経営改善の実効性を高めてまいりたいと考えております。

 

●吉良県議

社員の労働環境など待遇面についての考え方を尋ねた我が党の米田議員に対し副知事は、「新会社設立委員会など、社内において協議検討されるものと承知しております」と、第三者的な答弁を行っています。

しかし、昨年11月、交通政策基本法の審議を行った衆議院国土交通委員会で政府は「運輸事業に従事する交通関係労働者の処遇の改善という事は、交通機能の確保向上それから交通安全を確保するうえで非常に重要な課題だと認識」していると、事業基盤の強化や人材育成などの中に労働環境の改善も含まれる、としっかりと位置付けていることを見ても、県として、労働者の処遇向上に向けた提案を新会社設立委員会にしっかり行うべきと考えますが、お考えをお聞きしたいとお聞きいたします。

「実ワッパ時間が労働時間」、この言葉は、先日、土佐電鉄の電車運転手や県交通バスの運転手の労働実態についてお聞きした時の言葉です。実ワッパとは、電車やバスのハンドルを握っている時間だけが勤務時間としてカウントされ、次の電車に乗務するまでの待機時間は勤務時間から外され認められていないという事です。業務上の連絡、次の乗務員への引き継ぎに必要な時間などがあっても、それは、労働時間から外されて長時間拘束の勤務が強いられているのです。運行従事者の肉体的・精神的な状態、技術力が安全運行に直結します。交通運輸の現場においては、国土交通委員会での審議を紹介するなど、労働者の賃金、労働条件の適正化こそ安全確保の必要条件であることを「新会社設立委員会」で明確に示し、労働環境改善を図るよう、県として求めるべきだと考えますがお聞きいたします。

 

■副知事

労働者の賃金や、労働条件の適正化こそ安全確保の必要条件であることを「新会社設立委員会」で明確に示し、労働環境改善を由るよう求めるべき、とのお尋ねがありました。

先日の米田議員のご質問に対してもお答えいたしましたが、交通事業者にとって、安全・安心な運行の確保は、何よりも優先されるべきものですし、そのための人材の育成や労働環境の整備の必要性についても論を俟たないところであり、十分に意を用いてまいります。

今回の検討会におきましても、両社の社長が、「社員の安全・安心に対する意識の高さ」は主張されておられましたし、厳しい経営状況の中にあっても、運行の安全・安心に関する投資には特に意を用いてきたとのお話しもございました。

このようなことから、現在、社員の皆様の安全・安心な運行の確保についての環境と意識は十分に備わっているものと受け止めております。

給与に関する考え方につきましては、先程、武石議員の質問でお答えをいたしましたが、その他労働条件等に関して、同業他社と比較して著しく環境が異なるというようなことがあれは、新会社設立委員会で検討の俎上に上がるのではないかと考えております。

 

●吉良県議

多くの欧米先進諸国では、公共交通を公的な助成で支えているケースがほとんどです。住民の交通権を保障し充実させるには、地方自治体の積極的関与が重要であり、それを保障する人材・財源が必要です。地域公共交通など交通政策が進んでいるフランスの交通政策にかける予算は2兆円にも上りますが、政府の地域公共交通の確保維持改善事業予算は300億円とあまりにも少なすぎます。人と環境にやさしい街づくりをすすめ地域公共交通の整備・拡充を図るための予算増額を、県として政府に求めるべきだと考えますがお聞きをいたします。

 

■知事

地域公共交通の整備・拡充を図るための国の予算の増額を、県として政府に求めるべきだ、とのご指摘についてお答えをいたします。

「交通政策基本法」及び関連法では、国民の「日常生活等に必要不可欠な交通手段の確保等」を、国や自治体が積極的に行っていくことや、地方公共団体が先頭に立って、まちづくりと連携した持続可能な地域公共交通ネットワークサービスの形成を推進することが求められております。

今回の再構築スキーム案は、「使い勝手の良い公共交通」を目指し、路線の再編に加えて、系統の番号化や乗継制度の充実などの取り組みを進めていく計画となっておりますし、また乗換拠点などの強化も必要となってこようと思われます。

実施にあたりましては、相当の整備費用が必要となると考えられますことから、今後、関係市町村等を含む、関係者との協議をすすめながら、必要となる補助制度の拡充や予算増額等について、国に対して、積極的に提言をしていきたいとそのように考えております。

 

【第二問】

●吉良県議

この地域交通というのは、私たちが一番日常的に利用する交通でして、暮らしと密接に結びついているわけです。いま、しかし、この地域交通が、高知県あるいは高知市中心の中央地域だけでなくて、全国各地で、大きな隘路にたたされていると、そして、その再生・拡充にむけた取り組みも見られてきております。四国の中でも、高松などが街づくりで機能をまとめたり、あるいは先進的な松山だと言われていますが、それぞれの県庁所在地での取り組みもすすんでいると思います。先進県と自負をしている本県ですので、ぜひともこの高知において、地域活性化に向けて、この交通網、日常の地域交通を守っていく、先進例となるような取り組みを心から求めていきたいと思います。

過日、地域公共交通に詳しい高知工科大学の地域連携研究室のお話を伺いました。

これは路線バスではないので、そのままその取り組みが当てはまるというわけではありませんが、高知県の果たしてきた四万十町のコミュニテ―バスに対する役割は非常に大きいものがあったと思います。そういう意味で、うんと蓄積を高知県はしているなぁということを痛感しております。

特に福祉的な役割を果たすようになって、地域の商店街の売り上げも伸びてきたというような具体的な効果も出ておりますので、ぜひこれらのことを中央地域、路線バスの改善に向けても位置付けていただいて、県民の足を本当に守っていただきたいということを切にお願いいたしまして私の質問といたします。