議会報告

  • 2014年07月07日
    6月県議会 国会に憲法改正の早期実現を求める意見書への反対討論 中根佐知県議(2014.07.04)

中根佐知県議が反対討論をした「国会に憲法改正の早期実現を求める意見書」(提出者:加藤獏県議、中西哲県議、土森正典県議)の全文は以下のとおりです。

  日本国憲法は、昭和22年5月3日の施行以来、今日に至るまでの約70年間、一度の改正も行われていない。

 しかしながら、この間、我が国をめぐる内外の諸情勢は劇的な変化を遂げている。 中でも、我が国を取り巻く東アジア情勢は、一刻の猶予も許されない事態に直面している。さらに、家族や環境などの諸問題や大規模災害等への対応も時代の変化とともに要請されている。

 このような状況の変化を受け、さまざまな憲法改正案が各政党、各報道機関、民間団体等から提唱されている。国会でも、平成19年の国民投票法の成立を機に憲法審査会が設置され、憲法改正に向けた制度が整備されるに至った。

 よって、国におかれては、新たな時代にふさわしい憲法に改めるため、憲法審査会において意法改正案を早期に策定し、国民がみずから判断する国民投票を実現するよう強く求める。 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

 

中根佐知県議の反対討論

私は日本共産党を代表して、ただいま議題になりました議発第9号「国会に憲法改正の早期実現を求める意見書案」に反対の立場で討論を行います。

日本国憲法は、いうまでもなく恒久平和主義と、国民主権、基本的人権の尊重を三大原則にした日本国の最高法規です。憲法をもとにあらゆる法律、条例がつくられることはもちろんのこと、憲法の条項の一つ一つは国民に保障する権利の定義が中心で、国家が国民に対して権力をみだりに使えないように制限をかけることが大原則になっています。世界の国々からは、あの悲惨な侵略戦争を経て、二度と戦争をしないと誓った日本の平和主義には高い評価が寄せられ、世界に広げる運動もおこっていることは広く知られているところです。

この重要な憲法を、「早期に変えよ」との意見書案が、今日の本会議には自民党から提出されましたが、この意見書案には変えなければならない具体的な事例も、必然性も示されておらず、ずさんで余りにも乱暴な意見書案となっています。

国の大本である憲法を変えるというのなら、国に向かって数の力で意見書を突き上げるのではなく、具体的内容を示し、国民的議論をしっかり保障することにこそ県議会は力を注ぐべきだと考えます。

以上述べたうえで、3つのことを指摘しておきます。

一つは、施行以来「一度の改正も行われていない」ことが、今、憲法改正を促す理由にあたらないことです。よく改正の引き合いに出される「新しい人権」などは、現在でも包括的人権保障を定めた憲法13条、幸福追求権などによって対応できています。憲法を「新しい人権」に対応させるために改正するというのであれば、先ずその人権の性質・具体的内容等について国会などで議論を尽くすべきですし、そのうえで、法律をつくればいいのです。そのような過程が国民に示されていない現状で、「新しい人権」を憲法改正の理由にすることはできません。むしろ、「一度の改正も行われていない」ということは、現行憲法が長い間国民に受け入れられ、支持されてきたことを示しているのではないでしょうか。多くの県民から急いで憲法をかえよとの声が寄せられるどころか、今、憲法を守れとの声が大きくなっています。

二つめは、「我が国を取り巻く東アジア情勢は、一刻の猶予も許されない事態に直面している」と述べている点についてです。確かに今、中国や韓国などの周辺諸国との関係は悪化しています。しかし、その大きな原因は、安倍内閣の歴史認識や行動にあるのであって、現行憲法が理由などでは決してありません。また、「一刻の猶予も許されない事態に直面」という表現が北朝鮮からの武力攻撃の懸念を示しているのであれば、現行憲法下でも個別的自衛権によって対応可能であり、そのことは現在までの政府解釈によっても明らかなはずです。それにもかかわらず、なぜ今憲法改正が必要になってくるのでしょうか。良好な外交関係は、あくまで平和的な国家間相互の対話を通じて築かれるべきです。日本と周辺諸国の関係悪化の原因も分析せず、いたずらに脅威をあおる意見書の認識は、誤ったものであると考えます。

三つめは、国民が自ら判断する国民投票を実施するよう強く求めていますが、各種世論調査でも、安倍内閣が推進しようとしている憲法9条や96条の「改正」については、反対が上回っています。国民の意思を考えると、その必要はないのです。

さらに、問題なのは、本総務委員会での意見書質疑の中で、「新たな時代にふさわしい憲法とは何を指しているのか」との質問に自民党議員から、「それは自民党の日本国憲法改正草案よ」との発言がありました。2012年4月に自民党が発表した憲法改正草案は、9条を改正して集団的自衛権を行使できる「国防軍」をつくり、天皇を元首とし、基本的人権を「公益及び公の秩序」によって制限できるようにするなど、日本国憲法の基本原理を根本から覆す草案で、決して許すことのできないものです。自民党の憲法改正草案ありきの意見書は撤回すべきだと考えます。

今日、7月4日は高知大空襲があった日です。69年前の早朝、高知市は米軍の無差別爆撃で炎に包まれ450人を超える方がなくなりました。生き残った体験者の皆さんは、もう戦争は絶対にしてはならないとの思いで、つらい体験を語り続けています。

日本国憲法は、人の命を戦争で奪ったり奪われたりしない戦後の69年の歩みをつくってきました。世界と日本の人々の大きな犠牲の上につくられた平和の歩みを妨げる憲法改悪、国の方向転換はしてはならない、戦争する国作りはしないという国民の声は大きいのです。そこに耳を貸し、心を寄せ、現日本国憲法を守ることこそ21世紀の平和国家作りであり、日本のゆるぎない進むべき道ではありませんか。

日本国憲法99条は、「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う」と規定しており、特別公務員である県議会議員も、この条文の趣旨に沿った議論・判断をしていく義務を負っています。

今回の意見書案は、国民の平和への思いを踏みにじり、議論が深まっていない段階で、憲法「改正」を政治主導で急ぐあまり、具体的な内容のないものです。

県内の多くの団体からも抗議が寄せられ、「憲法は国家の在り方、目指す方向を決めたもので、70年間改正していないなど、漠然とした理由で国民投票を求めることは言語道断で、高知県議会の見識が疑われる内容である」と憲法改正をやみくもに進める意見書案の提出を撤回することを強く求めています。高知県議会として県民世論を大切にし、反映させるとなれば、本意見書はあげるべきではありません。

同時に、現行憲法の諸原則を生かした国づくり、地方自治・政治の推進こそ、今、求められていることを強く申し上げ、反対討論といたします。