議会報告

  • 2014年07月07日
    6月県議会 地域包括ケアシステム構築のため地域の実情に応じた支援を求める意見書への反対討論 岡本和也県議(2014.07.04)

私は日本共産党を代表して、議発第10号「地域包括ケアシステム構築のため地域の実情に応じた支援を求める意見書案」に反対の立場で討論を行います。

本意見書案は、税と社会保障の一体改革の円滑な進行をと述べ、重大な問題がある地域医療介護総合確保法を推進するとなっています。これらを基本に部分的な改善点を個々要求したものになっていますが、これらの改善点は国会審議を通じて指摘されて来たところあり、日本共産党も具体的に指摘して来たものであります。にもかかわらず、今回改善を求める意見書案を提出してきたことは、いかに問題が大きいかが判断できます。その事を承知の上で、充分な審議もせずに強行採決を行ったことに、改めてこの法律を成立させた自民、公明与党をはじめ、賛成した他の政党に対し反省を求めるところであります。

今回、このような意見書案を提出すること自体、責任ある行為とはとても思えません。この様な意見書案を提出するのであれば、法律の抜本的な見直しを求める意見書案でなければならない事を申し添えておきます。

改めて地域医療介護総合確保法の問題点を指摘させていただくと、

まず増税は社会保障のためといいながら、社会保障分野は大規模な給付減と負担増になっています。この法律は負担増にとどまらず、高度急性期の病床を半減させることを頂点に、病床数を抑制し、介護についても軽度者を特養ホーム利用から排除し、要支援の通所介護、訪問介護は、基準のない市町村事業にするという、川上から川下に渡って、給付を抑制するもので、国民が必要な医療・介護を受けられない事態が生じる事は必至です。とりわけ、中山間地が多く、過疎・高齢化の進行している高知県にとって、その影響はきわめて大きいものです。

 

次に診療報酬についてです。

政府は、これまで「在宅重視」を掲げ、多くの医療機関がその方向に協力してきました。しかし、この4月から月2回以上定期的に訪問診療する場合、老人ホーム、グループホーム、サービス付き高齢者住宅、マンションなど「同じ建物」に住む複数の患者を「同じ日」に診察すると、「在宅時医学総合管理料」などの点数が、従来の4分の1以下に、「訪問診療料」もほぼ半額にするという大幅な改悪がされました。あまりにも乱暴な改悪に多くの批判の声が起こり、厚労省は、月2回の定期訪問のうち1回については、同じ日に介護施設などの同一建物で複数の患者の診療をしても、報酬は減額されないことが決まりましたが、影響はきわめて大きいものがあります。

高知市内のある診療所では、当初案では月500万円の減収、緩和策のあとでも、医師が同一日に診察しないように負担を増加させても250万円の減収とのことでした。年間にすると3000万円であり、深刻な影響を与えています。サービス付き高齢者向け住宅協会が、3月12日、この診療報酬削減に対し、提携する医療機関を対象とした緊急アンケートの集計結果を公表しています。回答者の16.5%が「医療機関の廃止」「高齢者の住まい向け訪問診療の廃止」、22.6%が「体制の見直しや診療の効率化を行い、訪問診療を続ける」と回答しています。

 とりわけ人口密度が低く、往診の距離が長い地方都市、家族の介護力が弱く施設入所の多い本県にとっては、事業の撤退など、きわめて大きな影響が出てきます

本県はこれまでも中山間地など条件不利地の事業所が実施する訪問介護、訪問看護に対して県単独で補助を実施し、努力しています。この事からも、医療、介護の制度設計が、都市部を中心としたもので、中山間地、過疎地の状況を考慮したものになっていません。

 

次に、介護保険要支援者へのサービスの切り捨てについてです。
 厚生労働省は当初、要支援サービスの全面廃止を検討していました。これは要支援サービスを、基準もなく安上がりなボランティア任せとなる現行の介護予防・日常生活支援総合事業の全面的実施を狙ったものですが、同事業は昨年3月時点で実施自治体は37と、全く機能をしていません。全面廃止の案に対し、予防給付がなくなることで悪化が進み、かえって費用がふえる、受け皿がない、自治体格差が広がるなど国民的な批判を受け予防訪問介護と予防通所介護のみを廃止とし、訪問看護など他のサービスは現状のまま予防給付に残す案に修正をしています。

しかし、要支援サービス利用者134万人余のうち、予防訪問介護は59万5,000人、予防通所介護は60万7,000人に上り、修正してもその影響は極めて大きいと言わなければなりません。予防訪問介護と予防通所介護が廃止されれば、必要なサービスを受けられない事態が生まれ、在宅で生活できない事態が出てきます。
 また、介護予防サービス費では、予防訪問介護と予防通所介護は、約6割に当たります。現状でも、地方では事業所の経営が厳しく、サービスを提供するために、県単独で事業所に補助を出すなど努力しているところです。しかし予防訪問介護と予防通所介護が廃止となれば、頑張っている事業所も成り立たなくなり、撤退が相次ぎ、地域で住み続ける基盤が失われることにつながります。

これが本質です。国民多数の願いを踏みにじって強行した地域医療介護総合確保法そのものの抜本的見直しこそが求められているのであります。一部の手直しで済むものでないことは明らかであります。

今回の改悪により、国民の受ける負担は消費税3パーセント増税と社会保障での新たな負担を合わせると10兆円。しかし、新年度予算に占める社会保障への充実のための予算は、国会審議で明らかになった様に、たったの5000億円です。増税だけして社会保障は切り捨てです。

この様に国民には犠牲を押し付けて、新年度予算では相変わらず軍事費の増強、国土強靭化のもとに1メートル1億円かかるといわれる湾岸環状道路整備や整備新幹線の着工などに見られる大型公共事業への税金投入、予算がないからと高校授業料無償化の廃止、さらに高知県などの地域で保有台数の多い軽自動車税の増税、さらに内部留保が270兆円もあるといわれる大企業には法人税の減税とセットで利益の上がっていない中小法人に対する外形標準課税適用拡大による増税計画、巨大な利益を上げてきたトヨタ自動車が5年間法人税を払ってなかった事など大企業への優遇税制の実態、言えばきりが無いほどの地方いじめ社会的弱者いじめの政治が横行しています。

こんな政治の大本を変えなければならない事を申し上げえて反対討論といたします。