議会報告

【質問項目

1、知事の政治姿勢/消費税、地方創生、原発

2、災害対策

3、四国新幹線

4、とさでん交通

5、子どもの貧困、少子化・子育て支援

6、男女共同参画社会

7、野中兼山生誕400年

 

【政治姿勢①-消費税増税】

 

●中根県議

4月に消費税が増税をされ、個人消費や住宅建設が大幅に落ち込み、7月になっても低迷が続いていることが、8月29日に発表された政府の経済指標で明らかになっています。

GDPの約6割は個人消費です。総務省が発表した家計調査によれば、7月の消費支出は実質で5.9%の減少、4月から4カ月連続の落ち込みです。家庭用耐久財など家具・家事用品が14.6%減、洋服など被服および履物が7.4%減、教養娯楽9.6%減の落ち込みが顕著です。住宅建設も、国土交通省が発表した住宅着工統計で7月は前年同月比14.1%の大幅減となっています。

 深刻なのは「アベノミクス」による異次元の金融緩和、円安誘導により、物価が上昇し続けていることです。全国消費者物価指数は、生鮮食品を除く総合指数は前年同月比3.3%の上昇と、14カ月連続上昇です。一方、家計調査で見た勤労者世帯の実収入は実質6.2%減と、10カ月連続の減少です。

政府は求人が増えたといいますが、中身が問題です。総務省の労働力調査では、安倍政権発足前の2012年は平均で正規雇用3,340万人、非正規雇用1,813万人でしたが。この7月の数字は正規3,307万人、非正規1,939万人となっています。増えたのは非正規であり、正規は34万人も減っているのです。

安倍晋三首相の経済ブレーンで内閣官房参与を務める本田悦朗静岡県立大学教授でさえ、9月1日のロイターのインタビューで、増税による景気下振れは「想定外」に大きかったと認め、消費税率10%への引き上げに懸念を表明しています。8%増税を決定した時の年率は、瞬間風速でプラス3%台でした。その後、急落しますが、その瞬間風速でもって消費税増税法の付則第18条、いわゆる「景気条項」を適用しない判断をしました。しかし、4~6月期の成長率は、年率でマイナス7.1%という想定外の結果となっています。

この間、私たちは、県信用保証協会、県園芸連、県商工会議所、県漁連、経営者協会を訪問し、消費税問題で懇談を実施してきました。「天候不順、燃料高騰、そして消費税で園芸はたいへんな事態」「アベノミクスの効果は感じられない。県経済にとって深刻なのは倒産件数もそうだが、休業、廃業がその5~6倍の規模に広がっていること。信用保証をした資金額も減っている」「一部の企業は業績が上がっているかもしれないが、高知県はほとんどが中小企業。あまり効果はない。賃金が上がっている状況ではない」と厳しい声ばかりです。

私たちは、応能負担の原則に逆行する消費税増税、大企業減税の財源に使われてきた消費税そのものに反対ですが、少なくても付則第18条に基づく増税を中止するのが筋だと思います。

実質賃金、可処分所得が連続して低下しているもとで、消費税増税の環境にはないと思いますがいかがでしょうか、知事にお聞きいたします。

 

■知事

消費税増税について、お尋ねがございました。

従前より申し上げておりますとおり、確実に進行する少子高齢化などの社会情勢の変化に対して、しっかりと財源に裏打ちされた持続可能な社会保障制度を確立するために、消費増税は必要であると考えております。

他方、7月の全国の有効求人倍率が1.10と高い数字を引き続き維持するとともに、7月の現金給与総額も前年同月比で2.4%増となっているものの、個人消費については、様々な経済指標を見ましても、4月の消費増税や天候不順などの影響もあり、伸び悩んでおります。

政府が発表した9月の月例経済報告でも、5ケ月ぶりに景気の基調判断を下方修正しておりまして、消費増税の時期を来年10月からとするかどうかについては、引き続き、経済状況を見極めていく必要があると思っております。

安倍総理も、これまで「経済状況などを総合的に勘案して年内に判断する」旨の発言をされておりまして、総理には適切な判断をお願いしたいと考えています。

 

【政治姿勢②-地方創生】

 

●中根県議

政府は、政権最大の課題として、「元気で豊かな地方の創生」を掲げました。地方は、人口減少や高齢化などに直面をし、日本社会にとって「死にいたる病」ともたとえられる状況にあり、その打開の手立てをとることはまったなしの課題です。しかし、原因をしっかり分析しないがきり、政治が作り出した構造的問題を解決できません。

輸入自由化など農林漁業を切り捨ててきたことと、大型店舗の出店自由化など地域経済の破壊、結婚や子どもを産み育てることができない非正規雇用のまん延、高額の医療の窓口負担や教育負担などOECD諸国で最低クラスの所得再配分機能がもたらした生活の安定の破壊などが、過疎化と少子化の原因ではないでしょうか。地元紙も社説で「死に至る病がそう簡単に完治するはずはない。竹下政権時の『ふるさと創生』を持ち出すまでもなく、過去には同様の取り組みで十分な成果を出せなかった例が多い」「国の政策が、なぜ成功しなかったのか。過疎対策に本気で取り組むというのなら過去の取り組みを検証し、その轍を踏まないよう教訓を生かすことから始めなければならない」と指摘をしていますが、当然の声です。

まず、少子化、過疎化を生み出した原因と、過去の対策が成功しなかったことへの認識を知事にお聞きいたします。

 

■知事

少子化、過疎化を生み出した原因と、過去の対策が成功しなかったことへの認識について、お尋ねがございました。

まず、少子化の進行につきましては、直接的には「子どもを生む年代の女性の数の減少」と「出生率の低下」が原因でございますが、その背景には、経済的な問題に加えて、国民のライフスタイルの変化、出生率の低い大都市圏への若者の流出など様々な要因が重なり合っているものと考えておりま

す。

また、過疎化につきましては、そもそも高度経済成長に伴い、第1次産業を中心とする農村漁村地域から第2次・第3次産業を主な産業とする都市部に向けて若者を中心として大きな人口移動が起こり、その後も、働く場所や収入の問題などから、過疎地域に若者を呼び戻すことができなかったことが主な原因だと考えております。

国におきましては、こうした問題に対応するため、少子化対策ではエンゼルプランや次世代育成支援対策推進法、過疎対策では、過疎地域に関する特別措置法の制定などを通じて取り組みを進めてまいりましたが、過疎地域における道路の整備など一部に効果は見られましたものの、抜本的な解決に

は至っていないものと考えております。

このことは、例えば、一言に少子化対策と言っても、地方では結婚支援、都市部では待機児童の解消といったように重点的に取り組むべき課題が異なっているにも関わらず、地域の実情に応じた政策が十分でなかったこと、結婚や出産、子育てに対する経済的負担の軽減が十分でなかったこと、企業の地方移転や過疎地域での若者の雇用、収入の増加につながるような産業の育成など東京一極集中の回避に向けた抜本的な対策が十分でなかったこと、などが要因ではないかと受け止めております。

国におきましては、今回の地方創生を進めるにあたりまして、地方の目線に立つとともに、これまでの施策の延長線上にはない異次元の施策を展開していただきたいと考えております。

 先ほど申し上げました3点について、知事会とも連携をし、政策提言をおこなってきておりますが、その政策提言をつうじて、国においても一定の理解が図られてきておると、私としては考えているところでございます。地方目線に立った背策の展開を引き続きお願いを申し上げたいと、そのように考えております。

 

●中根県議

出てきている対策では、地方拠点都市を重点的に整備し人口流出を防ぐとか、過疎地でも中心的な集落に必要な施設を集約するなど、過去に成功しなかった政策の焼き直しでしかありません。政策の基本が、地方では人口の大幅な減少が避けらず、各地域が自立するのは困難であることを前提に、コンパクトとネットワークでどう対応するかにとどまっていることが最大の問題です。

食や水、空気の提供、国土保全などで重要な役割を果たしている中山間地域の重要性をしっかり位置づけ、その地に若者が定着し、住み続けられる状況をどう築きあげるかの視点を欠いては、地方創生はありえないと思います。所信表明でも述べられていますが、再度、知事の認識をお聞きいたします。

 

■知事

地方創生に関して、中山間地域の重要性についてお尋ねがございました。

中山間地域の農業産出額は、全国の産出額の35%を占めており、中山間地域の農業が衰退すれば、国民の食・生活に多大な影響が生じるなど、中山間地域の果たしている役割は大きいもの、と考えておりまして、中山間地域が消滅すれば、都市部自体も存続が危ぶまれるのではないかと考えております。

こうしたことから、今回の地方再生を成し遂げるためには、中山間地域の重要性をしっかりと位置付けた上で、都市部と中山間地域が共生できるような対策を進める必要があります。

その際、本県が進めております「集落活動センター」のように、意欲のある方々が中山間地域の活性化に向けて頑張っていくための拠点が必要だと考えています。

国におきましては、こうした視点に立って、都市部だけでなく、中山間地域にも若者が住み続けることができる、地方創生を実現していただきたいと思いますし、県としましても、中山間総合対策本部を通じ、全庁を挙げた施策を展開するとともに、全国知事会とも連携しながら、政策提言を行っていきたいと考えております。

 

●中根県議

国が地方創生を掲げるなら、直ちにとるべき課題があります。各地のJAが発表した米の価格も異常な低下、過去最低が相次いでいます。前年を2千円から3千円も下回り、1俵1万円を切る事態が続出しています。高知県も例外でありません。天候不順の影響で1等米が少ないことが追い討ちをかけています。農水省が試算する1俵の生産費1万6千円には遠く及ばず、「米作って飯が食えない」状況です。放置するなら、米を作る農家がいなくなり、地域経済、地域社会の崩壊に至るきわめて深刻な状況にあります。

政府は、今年から経営所得安定対策、10アールあたり1万5千円を半減させ、米価変動補てん交付金も事実上、廃止したことが、事態をいっそう深刻にしています。米価下落の要因は、過剰米が増えて米価が下落することを承知しながら、政府が対策をとらなかったことにあります。5年後に需給調整から撤退する方針も価格下落に追い打ちをかけています。また、機会の提供にすぎず、全量輸入が義務づけられていないMA米を、毎年、枠一杯の77万トンを輸入し続けていることも昨今の米価下落の大きな要因となり、農家を苦しめています。

地域経済、地域社会を支える基幹産業である農業を守るにふさわしい抜本的な米価下落対策が必要ではないかと思いますが、知事の認識をお聞きいたします。

 

■知事

米価下落対策について、お尋ねがございました。

本県における平成26年産の米価の状況は、時期や品種により価格差はありますが、例えば、最も生産量の多いコシヒカリは60kg当たり9千6百円と、これまで最も低かった平成22年産を下回るといった、かつてない低い価格となっており、こうした米価の状況は、本県に限らず、全国でも同様となっております。

このような米価の状況について、県内の稲作農家の方からは、「この米価だと肥料代や機械経費などの生産費を賄うことができなくなる」といった声もあがっており、稲作農家の方にとりましては大変厳しい状況であると認識しております。

米価下落の背景としましては、人口減少や少子高齢化、食生活の多様化などによって、米の消費量が減少し続けている中で、ここ数年、米の需要に対し過剰な作付となっているため、恒常的な米余り状態となっていることなどが考えられます。

今後も、こうした米価の下落傾向が続けば、特に、生産コストが高く、小規模農家の多い中山間地域を中心に、離農する農業者や耕作放棄地が増えるのではないか、といったことが懸念をされます。

県としましては、このような懸念が現実のものとならないよう、まずは、需要に応じた米生産を行うことが最も重要であると考えております。

このため、国の「水田活用の直接支払交付金」を最大限に活用しまして、主食用米から飼料用米を中心とした非主食用米への転換を推進してまいります。

また、主食用米に対しては、国の「米の直接支払交付金」や、収入が減少した場合に一定の補てんが受けられる「収入減少影響緩和対策」への加入促進に取り組んでまいりたいと考えております。

こうした取り組みを市町村やJAなどの関係機関と一丸となって進めていくことにより、今後とも稲作農家の方が安心して農業を続けることができるように努めていかなければならないと考えているところです。

 

●中根県議

地方創生というなら、政府には、地方の声に真摯に向き合う姿勢が不可欠です。その点で、地方政治にかかわるものとしても極めて懸念する事態がうまれています。

沖縄では、辺野古新基地建設反対の意思が、昨年、県議会や全市町村首長、議会による「オール沖縄」の建白書として政府に提出されました。それが、昨年末、知事が「県外移設」の公約を投げすて、埋め立て承認をすると、そのことをもって工事がどんどん強行される。その事態に対し、県民の8割が反対し、県議会も反対の意見書を可決。地元名護市長も反対していますが、この圧倒的な反対の声を無視し、内閣はこの9月に「もう過去の問題」だと発言しました。

 県民が、地元自治体が、県議会が反対しているのに、事業をすすめていく。沖縄だけの問題ではありません。地方自治に対する政府の姿勢が問われています。

住民や議会、地元自治体の意思を無視して政府が事業を強行することは、地方自治の軽視、無視ではないか、知事にお伺いをいたします。

 

■知事

普天間飛行場の辺野古周辺への移設に関して、住民や議会、地元自治体の意思を無視して、政府が事業を強行することが、地方自治の軽視、無視ではないか、とのお尋ねがございました。

一般論として申し上げれば、地元自治体が反対しているにもかかわらず、国が事業を強行するといったことが望ましくないのは言うまでもありません。

沖縄県には在日米軍の専用施設の74%が集中するなど、その負担は大変大きなものがあり、沖縄県民の中に、普天間飛行場の辺野古周辺への移設に対する不安があることや、移設反対を訴えて当選された名護市長が受け入れを拒否されていることも承知しています。

一方で、沖縄県知事は苦渋の決断であったと察せられますが、普天間飛行場周辺の県民の皆様の安全確保のために、関係法令に基づき埋め立てを承認しています。

既に、沖縄県知事の承認があり,事業が進められてる中で、私から申し上げるべきことはありませんが、いずれにしましても、政府におかれては、沖縄県民の皆様の不安の声も踏まえ、丁寧な説明を繰り返していくことが必要ではないかと考えているところでございます。

 

【政治姿勢③-原発】

 

●中根県議

原発問題について伺います。

 8月26日、福島地裁は、原発事故で避難を強いられ自殺した女性の遺族が起こした損害賠償訴訟で、東電に約4,900万円の支払いを命じました。判決は、「展望の見えない避難生活への絶望と、生まれ育った地で自ら死を選んだ精神的苦痛は極めて大きい」と因果関係を認定。その上で「住民は避難を余儀なくされ、ストレスで自死に至る人が出ることも予見できた」と東電の責任を厳しく指摘をしています。福島県では自殺に追いやられた人は数十人にのぼり、その人の数が年々増加をしています。

5月21日、大飯原発の運転差し止めを命じた福井地裁判決は、人格権という「この根源的な権利が極めて広範に奪われる事態を招く可能性があるのは原発事故以外に想定しにくい」と指摘しましたが、ふるさとを丸ごと奪ってしまう、異質の危険性をもっていることを、司法の場が連続して断罪したものといえます。

原発のもつ異質の危険性についての認識を知事にお伺いいたします。

 

■知事

原発の持つ異質の危険性に対する認識について、お尋ねがありました。

福島原発の事故は、我々がこれまで経験したことがないほどの大規模な原子力災害であり、事故による直接的、間接的被害は広範囲かつ長期に及んでおります。

被災地では、今もなお多くの被災者がふるさとを追われ働くこともままならない厳しい生活を強いられており、こうした現実に胸の痛む思いがしてなりません。

本県におきましても、ひとたび伊方原発で事故が起これば、その影響を直接的、間接的に受ける恐れがあることから、伊方原発の安全確保には非常に強い関心を持っており、福島原発のような事故は絶対に起こしてはならないという強い思いを持っております。

 

●中根県議

福島原発事故に最前線で対応した吉田元所長の政府事故調査委員会による聴取記録が公表されましたが、きわめて重要な問題が明らかになっています。2号機の圧力が高く注水できない状況について、「われわれのイメージは東日本壊滅ですよ。完全に燃料露出しているにもかかわらず、減圧もできない、水も入らないという状態。ここで本当に死んだと思ったんです」と語っています。本当に危機的な状況だったわけです。

この事態が避けられたのは、2号機の格納容器底部が小さく損傷し、結果として安全弁と同じような役割を果たし、圧力が低下し注水が可能となった幸運、4号機の「機器仮置きプール」にも普段にない大量の水がはられ、その水が使用済み燃料プールに偶然にも流入し、暴走が食い止められた幸運がかさなったものです。

こうした幸運がなければ、「東日本壊滅」は現実のものとなっていたことを、改めて真剣にうけとめなくてはなりません。

あらためて事故の教訓と安全対策の徹底について知事の決意を伺います。

 

■知事

事故の教訓と安全対策の徹底への決意についてお尋ねがありました。

今回公開された政府の事故調査・検証委員会による聴取記録からは、原子力安全に対する過信から、過酷事故に対する事前の防止策・防災対策、事故発生後の被害防止策について十分な対策が取られておらず、原子力に対する国民の信頼を揺るがすほどの深刻かつ大規模な事故になったことがあらためて明らかとなり、このことは教訓として我々は決して忘れてはならないと認識しております。

こうした事故の教訓を踏まえ、新規制基準では、多層の対策を用意する「深層防護の徹底」や、安全確保の基礎となる電源の信頼性の強化、地震や津波などの自然現象等の想定の大幅な引き上げと防護策の強化に加えて、設置の許可を得た原子力施設に対しても最新の規制基準への適合を義務づける、「バックフィット規制」も導入されています。

国は、新規制基準に基づいて、安全対策について様々な角度からの検証を徹底していただき、基準に該当しない、安全性の確保のされない原発は稼働させないとの姿勢を堅持していくべきだと考えています。また、電力会社においては、安全対策に終わりは無く、一層の安全対策を追求していくとの不断の努力が必要だと考えています。

本県としても、四国電力に対して、勉強会などを通じて、南海トラフの巨大地震による影響なども含めた安全対策について、詳細な説明を求め、徹底した安全の確保を行なっていただくよう、今後とも強く要請を行っていきたいと考えています。

 

●中根県議

ところが、新規制基準は、欧州など採用されているメルトダウンを防ぐためのコアキャッチャーも、航空機事故にたいする格納容器の二重化も採用されていません。電源も欧州は独立4系統を確保していますが、規制基準は2系統です。避難計画も規制基準の対象となっていません。以前よりは対策はすすみましたが、とても世界一の基準ではありません。

津波・地震大国である日本で世界一の基準は最低限の条件ですが、最先端の対策さえ求められていない事態をどう評価しているか知事にお聞きします。

 

■知事

津波・地震大国である日本において、世界一の規制基準は最低限の条件であるが、最先端の対策さえ求められていないことについてどう評価しているかとのお尋ねがありました。

新規制基準は、福島原発事政の反省や国内外からの指摘を踏まえて、大規模な自然災害への対策強化に加えて、重大事故対策を規制の対象とし、新しい基準を既存施設にさかのぼって適用することを法的に義務づけるなど、常により高いレベルの安全対策を追求して行くものとなっています。

そのため、技術の進展に応じて電力会社が、最新の技術を選択することを妨げないように、特定の技術を指定せず、安全対策に必要な機能や設備の性能を規定しているものと認識をしております。

ご指摘のありましたコアキャッチャーを例に申し上げますと、基準ではコアキャッチャーの設置を義務付ける代わりに、この施設が果たす「原子炉内の溶融した核燃料を受け止め、冷却水等で冷却する」機能が果たされる対策が講じられていれば良しとしているところです。

また、原子力規制委員会における審査の状況や資料も原則公開のもと実施されており、審査に係る資料等もホームページ等で誰でも閲覧できるようになっており、より透明性が高いものになっています。

一方、避難計画につきましては、国が一方的に実効性のあるなしを審査するのではなく、関係自治体と一体となって国として取り組んでいくことを表明しており、内閣府に原子力災害対策担当室を設置し、現在、関係自治体と連携をとりながら既に企画立案に当たっております。また、来月から現在

の担当室を廃止し、新たに原子力防災の専門部署を設けることとしており、支援体制の充実や原子力防災体制の一層の強化が期待されるところであります。

いずれにいたしましても、原子力規制委員会も電力会社も、福島原発事故の教訓を忘れることなく、安全対策には終わりないとして、新たな知見に基づく不断の努力を続けていただくことが、原発の安全性を確保するうえで極めて重要であると考えています。

 新規制基準についても常に新たな知見を得ればそれを取り込んで進化していくというそういう姿勢で国はあり続けてもらいたいと考えているところでございます。

 

●中根県議

 四国電力が、基準地震動を、570ガルから650ガルに引き上げることを明らかにしています。基準地震動については、この10年間で基準地震動を超える事象が5回観測されており、その原因として過小評価する計算方法になっていることをこれまでも指摘をしてきました。

四国電力は、基準地震動を超える事象が頻発している原因をどう分析しているのか。また、その教訓をどう生かしていると説明しているのか、林業振興・環境部長にお聞きいたします。

 

■林業振興・環境部長

四国電力は、基準地震動を超える事象が頻発している原因をどう分析しているのか。その教訓をどう生かしていると説明しているのかとのお尋ねがありました。

ご指摘のありました、全国の原発施設のうち4つの原発に5回にわたり想定されていた基準地震動を超える地震が到来していることについて、大飯判決では、「地振動を推定する複数の方式について選択の誤りがあったではないか等の議論があり得ようが、これらの問題については今後学術的に解決

すべきもの」としています。

現在、原子力規制委員会で実施されている新規制基準による原発施設の審査において、基準地震動の設定に多くの時間が費やされていますが、学術的に最新の知見に基づいた審議が行われていると認識しています。

ご質問のありました伊方原発の基準地震動については、これまで四国電力から、発電所の立地する敷地に最も影響を与えると予想される地震として、敷地近くを通る中央構造線断層帯をリストアップした上で、地震断層の長さや断層面の傾斜角度などを揺れが大きくなる厳しい条件で想定して発電所

における地盤の揺れを評価し、さらにそれを上回るよう、余裕を持って設定しているとの説明を受けています。

また、これまで570ガルとしてきた基準地震動について、北海道留萌地震を「震源を特定せず策定する地震動」として考慮することとし、その結果、620ガルの地震動を追加したとの説明を受けたところですが、さらに、「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」についても、計算手法の見直しや計算結果に余裕を多くとるなどにより650ガルに引き上げ、現在、原子力規制委員会において、新規制基準適合性に係る審査を受けている最中であると認識しています。

いずれにしましても、基準地震動については、現在、原子力規制委員会において、こうした四国電力の考え方を含め、慎重に審査を進めているところであり、今後結果が明らかになった時点で、四国電力から詳しい説明を求め、その内容についてしっかりと確認を行ってまいります。

 

●中根県議

 「原発は安価でない」ことも日に日に明らかになっています。先日、エネルギー問題の調査機関として実績のある米国企業系「ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス」が、原発電力は、風力の約2倍、太陽光と同レベルであることを示しました。また、この電力自由化で電気料金の引き下げ競争がすすむなど、原発がなりたたなくなるため、原発で発電した電気に一定の価格を決めて電力会社の収入を保証する制度の検討が経産省ではじまったこともそのあかしです。異質の危険性をもち、安価でもなく、核のごみの処理方法もない、破綻したビジネスモデルです。自然エネルギーの普及は、第一次産業と関連性が強く、売電収入など地域活性化に欠かせません。

先日、九州電力が、送電網の容量不足を理由に、自然エネルギー買取契約の中断を発表しましたが、自然エネルギーの爆発的な普及にむけた投資こそ必要ではないか、また四国で中断という事態はおきないのか、林業振興・環境部長にお聞きします。

 

■林業振興・環境部長

自然エネルギーの普及に向けた投資の必要性や、四国で買取契約の中断が起きないかについて、お尋ねがございました。

自然エネルギーの普及につきましては、本県は、豊富な森林資源や全国トップクラスの日照時間など、優位な自然条件を有していますことから、新エネルギービジョンを策定し、官民協働で太陽光発電事業を行う「こうち型地域還流発電事業」や、木質バイオマス発電などに取り組んでいるところです。

しかしながら、電力需要の少ない中山間地域を多く抱える本県は、電力会社の送電網が脆弱であり、接続可能量に限界があるため、これまでも一部の地域では接続問題で発電施設の導入を断念するケースが起こっており、導入促進を図るうえで大きな課題となっています。

一方、国の新たな「エネルギー基本計画」では、再生可能エネルギーについて、2013年から3年程度、導入を最大限に加速しでいくとしており、再生可能エネルギーの導入促進を加速させるために送電網の整備等について、早急に道筋を示すよう、国に対して要望を続けてまいりました。

議員よりお尋ねのありました自然エネルギー買取契約の中断につきましては、四国電力管内においても、太陽光発電の導入が急速に進み、昼間の電力の需要と供給のバランスに悪影響を及ぼす恐れがあることから、再生可能エネルギー設備の接続可能量等について、早急な検討を行うため、10月1日以降、住宅用など余剰買取となる10キロ未満の太陽光発電を除いて、新たに受付する送電網への接続にかかる契約の申込みについて、接続の可否についての回答を保留すると、本日、四国電力は発表いたしました。

これにより、現在、県内で進められています民間等の事業計画にも支障が生じ、順調に進んできた普及拡大の動きにブレーキがかかるのではないかと懸念しておりますので、今後の見通しなどについて、四国電力からしっかりと説明していただく考えです。

いずれにしましても、送電網の強化は必要ですので、引き続き国に対して送電網の整備等について要望を行ってまいりますが、ご指摘の一つにありました自然エネルギーの爆発的な普及を実現させるためには、安定した出力を確保するための蓄電技術の開発や低コスト化など、本格的な対策に取り組んでいく必要があると思います。

 

【災害対策】

 

●中根県議

災害対策について伺います。今年6月の集中豪雨、8月の台風12号・11号と連続した風水害は高知県にとっても甚大でした。

特に広島市では、時間雨量101ミリに達する雨量で、想像を超える災害を引き起こしました。後日、防災科学技術研究所は、国交省レーダーの観測データの分析から、今回の異常な大雨を降らせた原因について、「広島市で線状降水帯が長時間停滞したのは、バックビルディング型形成によって、線状降水帯が形成されたためと考える」と発表しました。集中豪雨のメカニズムについて研究している気象研究所の加藤輝之室長が、「条件がそろえば日本のどこでもバックビルディング型形成による線状降水帯形成は起こると考えられる」と述べているように、このような現象は今後も起こる事を想定しなければなりません。

本県としても今回のような異常気象を教訓とした取り組みが求められますが、知事のお考えをお聞かせください。

 

■知事

広島市で起こったような異常気象を教訓とした取り組みについてお尋ねがございました。

今回、広島市では、いわゆるバックビルディング現象などによる異常な降雨により大きな被害をもたらしましたが、こうした集中豪雨は、日本全国で起こりえるものだと思います。

本県でも、今回の台風第12号、第11号による豪雨では、嶺北地域などで1時間の最大雨量が100ミリを超えるとともに、仁淀川町などでは総雨量が2,000ミリを超えました。また、過去にも98高知豪雨や平成13年の西南部豪雨などが発生していますので、今後においても県内のどこでも集中豪雨が発生し大きな災害が起こり得るという危機意識を持たなければならないと考えております。

従前より、高知地方気象台から気象情報を随時入手し、県民の皆様や市町村、関係機関に向けて早め早めに注意喚起を行ってまいりましたが、引き続きこうした対応の充実を図ることが大事だと思っております。

先月の広島市での土砂災害では74名の死者、昨年の伊豆大島では39名の死者・行方不明者、本県においても昭和47年の繁藤災害では60名の死者を出していますように、大規模な土砂災害は多くの人命に関わる被害を出してまいりました。

県民の皆様には、集中豪雨や土砂災害に対して日頃から警戒感を持っていただき、強い雨が降る予報が出た場合には、テレビやラジオ、インターネットなどでその後の気象情報を確認していただく必要があります。

このため、県のホームページ「こうち防災情報」では、気象情報のほか河川の水位や土砂災害に関する情報など、災害に関する様々な情報を提供しているところです。引き続きこうした点について、広報、啓発を徹底して行っていくことで、県民の皆様が早め早めの対応がとれるよう努めていきたいと考えています。

また、集中豪雨の発生が少しでも早く予測できれば、県や市町村は事前の対応が可能となり、県民の皆様の早期の行動にもつながることとなりますので、国に対しましては、ゲリラ豪雨など突発的・局所的な自然災害に関する予測抜術の開発に取り組んでいただくよう政策提言を行いたいと考えているところであります。

 

●中根県議

災害に強い街づくりについて何点か伺います。

先ず、命を守るための情報提供です。市町村は、防災行政無線システムで、住民に防災情報の提供を行っています。最近では、携帯電話によるエリアメール、テレビによるテロップ等による提供も行っているところです。しかしながら、今回、台風11号の様な暴風雨が吹き荒れている中では、屋外に設置した外部スピーカーでは情報伝達は十分機能することはできません。

今回、広島県で起きた集中豪雨で時間雨量が急激に増えた時間帯は、午前2時から午前4時の間で、深夜住民が寝静まった後での集中豪雨と避難勧告に、住民はその状況を十分に知りえないでいた可能性があります。

今、紹介した2点の問題に関して、防災行政無線の現状を市町村と連携し、検証し、改善する必要があるのではないか、危機管理部長の考えをお聞かせください

 

■危機管理部長

災害対策について、防災行政無線の現状や改善の必要性についてのお尋ねがございました。

市町村が整備、運用している防災行政無線は、専用の周波数を用いて屋外スピーカーなどにより、避難勧告等の緊急情報をいち早く住民の皆様に伝達するものです。

防災行政無線で使うスピーカーの設置にあたっては、一般的に、周辺の雑音や人家の分布状況、地形などを考慮し、十分に聴き取れる位置に計画されていますが、気象状況や家の構造などによっては、聞こえにくいこともあります。そのため、県内の市町村では、屋外スピーカーだけではなく、放送が始まると自動的にスイッチが入る戸別受信機を各家庭に配布しているところもあります。

災害時の緊急情報は、住民の皆様に確実にお伝えすることが重要ですので、県内の27市町村では防災行政無線、8つの市町村ではケーブルテレビ等の既存のネットワークを活用した有線放送、そのほか全ての市町村で携帯電話の緊急速報メールやテレビによる緊急速報を活用するなど様々な手段をもちいて伝達されています。

県では、昨年度、現在設置されている屋外スピーカーの設置時点の計画を点検いたしましたら、放送が届かないと思われる地域もありましたので、屋外スピーカーの増設など防災行政無線の充実をはじめ、様々な情報伝達手段の組み合わせなどによって、そうした地域をなくすよう、市町村と協議していくこととしております。

 

●中根県議

高松市では、地震や台風などの災害時に緊急放送が自動で流れる防災ラジオを製作し、購入費の一部を市が負担して市民に格安で提供しています。このラジオは待機状態にしておけば、緊急時に自動でスイッチが入り、FM高松を受信する仕組みになっていて、緊急地震速報や市が発令する避難勧告などが最大音量で放送され、他局の放送を聞いていても緊急時には割り込み機能がついています。

この防災ラジオの普及を本県でも検討できないか。危機管理部長にお聞きします。

 

■危機管理部長

本県での防災ラジオの普及についてお尋ねがございました。

議員からお話しのありました高松市の取り組みは、防災行政無線の戸別受信機に代わるものとして、高松市に放送エリアが限定されているラジオ局を通じて、専用のラジオから住民の皆様に緊急情報をお知らせするものだとお聞きしており、災害情報を伝達する新たな手法と思っております。

先ほどお答えしましたとおり、屋外スピーカーの放送が届かない地域の解消に向け、市町村と協議を行うこととしておりますので、緊急情報の伝達手段の一つとして、高松市の取り組みを情報提供したいと考えております。

 

●中根県議

次に土砂災害の防止についてです。県内でも土砂災害から人命を守る目的で県独自の「がけくずれ住家防災対策事業」などの事業を行っています。高知県のように森林面積が84パーセントの地形では、住宅の裏は崖が多く、特にこの事業が必要です。「がけくずれ住家防災対策事業」では、住民の要望に対して5、6年待ちはざらで、10年目にやっとできたとの県民の声をこの間聞いてきました。

市町村と連携をとって、十分な予算措置が早急にとられるよう、県としても取り組む必要があると考えますが、土木部長に伺います。

 

■土木部長

「がけくずれ」住家防災対策事業の予算措置について、お尋ねがありました。

「がけくずれ」住家防災対策事業は、市町村が行う事業で、県は、この事業の促進のため、事業費の1/2の額を補助しています。

8月の台風第12号及び第11号による災害を踏まえ、県では、市町村に対して、「がけくずれ」住家防災対策事業の必要な箇所についてヒアリングを実施しました。この結果、市町村が要望する全ての箇所を採択し、事業の実施に必要な県負担分2億6千8百万円を、今回の補正予算案に計上しているところです。

今後とも、必要な予算の確保に努めてまいります。

 

●中根県議

次に住宅などの浸水対策についてです。対策として、知事提案説明にも市町村と相談しながら排水ポンプの新設を検討するとあります。浸水を経験した県民にとっては喫緊の要望です。

早急の対応が求められますが、改めて知事の考えをお聞きします。

■知事

住宅などの浸水対策について、早急な対応が求められるのではないかとのお尋ねがありました。

台風第12号及び第11号により、本県の雨量も広い範囲で記録的なレベルに達し、約2千戸の家屋の浸水被害が発生しました。

この被害に対しましては、これから実施する浸水被害の原因分析に基づき、河川改修などの治水対策を早期に実施してまいります。

特に、今回、多くの家屋浸水が発生した日高村の日下川流域、いの町の宇治川流域、四万十町の吉見川流域については、河川改修だけでなく内水を排出するためのポンプ整備や流域の保水・遊水機能の確保など、国や地元自治体と連携した総合的な治水対策を講じる必要があります。

このため、9月1日に国・県・地元自治体をメンバーとする「日下川浸水対策調整会議」及び「宇治川浸水対策調整会議」を開催し、再度災害の防止に向けて協議を始めました。また、四万十町の吉見川についても、協議会の設置に向け準備を進めているところです。

これらの協議会におきまして、流域の特性に応じた効果的な治水対策を検討するとともに、それぞれの機関が役割を分担したうえで、早期に効果が発揮できるよう取り組んでまいります。

 

●中根県議

関連して河床掘削の実施ですが、住民からの要望も数多く出され、今議会でも補正予算に含まれているところです。

引き続き今回のような集中豪雨に見合う取組が必要ですが、土木部長の考えをお聞きします。

 

■土木部長

河床掘削に関して、引き続き今回のような集中豪雨に見合う取り組みが必要と考えるがどうかとのお尋ねがありました。

今回の台風第12号及び第11号では、県内の河川において、異常な土砂の堆積などが多数発生し、緊急に対応しなければならない箇所から、順次、河川掘削などを実施しています。

しかし、限られた予算のなかで、これら全ての箇所を実施するのは困難ですので、緊急を要する箇所の対策の実施に必要な補正予算を、今議会に提出しています。残りの対策が必要な箇所についても、次年度以降、順次実施してまいります。

今後とも、河床掘削など、河川の適切な維持管理のために必要な財源の確保に努めていきます。

 

●中根県議

鏡ダムの操作について土木部長に伺います。

  8月5日、高知新聞が「豪雨の中で鏡ダム越流をギリギリ回避した高知県職員、放流量を巧みに操作」との記事を報道しています。現場職員の必死の対応に心から敬意を表するものです。

  同時に、いま紹介した様な記録的、ゲリラ的な集中豪雨が頻繁に発生する可能性が強まっています。また、さらに異常な豪雨によっては鏡川の越流による浸水地域の大幅拡大が予想される、との研究報告がされています。今後職員の経験の蓄積と危機対応能力のいっそうの向上が求められるとともに、今日の異常気象に対応する鏡ダム操作規則の見直しが必要ではないかと考えます。

例えば、洪水期間を7月1日から9月30日までとしていることや、その洪水期間の制限水位を、7月と9月21日から30日の期間標高68メートル、8月1日から9月20日までの期間63メートルとしていることなどを見直すべきではないでしょうか、お伺いします。

 

■土木部長

今日の異常気象に対応する鏡ダム操作規則の見直しが必要ではないかとの、お尋ねがありました。

現在の鏡ダム操作規則は、限られたダムの容量の中で、ダムに水を貯留して上水道などに安定供給する「利水」と、空き容量を確保して洪水を調節する「治水」の相反する2つの目的を達成するために定められています。

その中で、ダムの水位については、夏場は洪水に備えて低く、また冬場は、渇水に備えて高く設定しています。

現在の鏡ダム操作規則は、ダムへの最大流入量を毎秒1,450トンとする計画に基づいて定めています。

夏場の8月1月から9月20日までの間は、治水容量を最大に確保するためにダムの水位を63メートルに制限しています。

今回の台風第12号は、この時期に襲来し、ダムへの最大流入量は、毎秒1,422トンでしたので、現在の操作規則に基づき、洪水調節を行うことができました。

このような出水が今後、季節外れの時期に発生したとしても、現在の操作規則に定められている予備放流を適切に実施し、洪水の前に予めダムの水位を63メートルに下げる放流を行うことで、夏場と同等の「治水」機能を最大に確保することが可能となっております。

これらのことから、現在の操作規則を運用していくことが適切であると考えています。

 

●中根県議

また国等に対して、12~24時間先の精度が高い洪水予測情報・メッシュ情報の提供、局地的豪雨に係る観測・予測の精度向上・高度化を働きかけるべきだと思いますが、お聞きします。

 

■土木部長

国などに対する、精度が高い洪水予測情報の提供、局地的豪雨にかかる観測・予測の精度向上、高度化の働き掛けについての、お尋ねがありました。

ダムを適切に操作するためには、事前の降雨予測が重要ですので、その精度の向上が必要であると認識しています。

国においては、台風・集中豪雨などに対する防災情報の強化に向け、新たな気象衛星の打ち上げや気象情報の処理システムの強化などに、既に取り組んでおり、事前の降雨予測の精度の向上が期待されているところです。

こうした取り組みの成果のひとつとして、降水域の分布をより詳細に予測する「高解像度降水ナウキャスト」が本年8月7日に公開されております。

こうした国から得られる情報を有効活用し、より一層、適切なダムの操作に取り組んでおります。

今後も、国による降雨予測の精度の向上、高度化の取り組み動向を注視しながら、必要に応じ関係部局と連携し、政策提言を行ってまいります。

 

【四国新幹線】

 

●中根県議

「四国における鉄道の抜本的高速化」について知事にお伺いします。      

四国4県とJR四国が費用負担をして基礎調査を行い、4月18日に、フル規格新幹線整備の妥当性を確認した、との発表を行いました。そして、四国の経済活性化や国土強靱化の名の下に、新幹線の整備計画への格上げに向けた動きを加速させようとしています。しかし、様々な問題があり、また四国に暮らす住民の願いと合意に基づくものとは言えず、「新幹線整備ありき」で進めることは決して認められるものではありません。

 まず基礎調査の結果についてです。

  今回の調査結果の最大の目玉とも言える「費用対効果を評価する」とされる費用便益分析において、ケース3、四国新幹線と横断新幹線を結んだケースで初めて1をこえ1.03としていますが、その根拠が示されていません。しかも東北や北海道新幹線の1.1よりもまだ低い。また、16年後の2030年の開通、それから50年間運行期間、70年先まで、試算としています。

いったい、どれほど信頼性、科学性があるのでしょうか、お伺いします。

主な整備効果として、山陽新幹線の代替え機能、四国のイメージアップ効果、新幹線沿線地域の人口減少傾向の抑制、経済活性化に寄与などなど列挙していますが、一つ一つ真剣に科学的に検討しているとは全く思えません。先日、四国観光議員連盟総会の講演で、JR四国元社長、日本観光振興協会高知支部長は、新幹線が通過したところは全部栄える、開通したところは間違いなく発展している、とのお話には全く驚きです。

整備効果についてどのように検討、検証してきたのか、お聞きします。

 

■知事

四国における鉄道の抜本的高速化について、基礎調査の費用便益分析の信頼性や整備効果の検討経過についてお尋ねがありました。関連しますので、併せてお答えいたします。

四国の鉄道高速化の検討の背景には、全国で新幹線の開業・延伸が進む一方で、四国だけが新幹線の空白地帯となっていることから、他地域と比べて相対的に交通利便性が低下し、地域間交流が阻害され、四国の一体的発展が危倶されているとの状況があります。             

今回の基礎調査は、新幹線の導入について、関係者間での議論の基礎とするとともに、機運の醸成を図ることを目的に、四国4県、四国運輸局、四国経済連合会、JR四国等で構成する「四国の鉄道高速化検討準備会」が、昨年度に、鉄道等の公共交通機関に関する調査実績がある、「一般財団法人運

輸政策研究機構」に委託して実施したものであります。

費用便益分析につきましては、国土交通省作成の「鉄道プロジェクトの評価マニュアル」に基づいて算出されており、現在、国の基本計画にとどまっている「四国新幹線」のうち徳島・松山間と、「四国横断新幹線」の岡山・高知間を、ルートの工夫も加えて同時に整備した場合に、社会的観点から

費用対効果を評価した費用便益比が、「1」を超える結界が得られたしたものであります。

また、新幹線導入による整備効果として、経済波及効果や、時間短縮効果などが定量的に示されております。

費用便益分析や整備郊果の信頼性、科学性についてのお尋ねでございますが、今回の基礎調査は、あくまで次の段階の検討に入っていけるかどうかを判断するための調査であり、現時点で想定されるデータ等に基づき試算されたものと受け止めておりますし、その調査手法につきましては、国のマニュアルや、国が他の整備新幹線の収支採算性等を検討する際に用いた手法や事例等を参考に試算・検討されたものであり、信頼できるものと考えております。基本計画にとどまっている四国の新幹線計画の整備計画への格上げの前段で必要となる、法に基づく国の調査を求めていくに足りる内容となっているとの受け止めもいたしているところであります。

 

●中根県議

費用の点でケース3は、建設費が1兆5,300億円との想定ですが、事業費はさらに増額することも十分予想され、莫大な税金投入となることは明らかです。また地元負担が3分の1求められることになり、厳しい地方財政状況の中で、県民負担の増大や財政運営のいっそうの困難を招くことになります。

高知県の財政負担、また県財政への影響をどのように試算し、考えているのか伺います。

最も重要な地域住民の移動権、交通を保障する在来線に影響を与えることは必至で、重要な問題です。2012年4月、JR四国社長はインタビューに答えて「在来線はだいたい第3セクターがやる」「都市間の輸送は新幹線で、都市圏内、地域圏内は在来線で役割分担」と述べています。そして各地でも新幹線建設に伴い、在来線の第3セクター移管が起こっています。先日九州新幹線の調査に伺いましたが、在来線からのJRの撤退、特急便の減便・廃止、料金の大幅な値上げ、騒音・振動被害など深刻な課題が山積していました。

結局在来線は切り捨て、自治体などに丸投げして莫大な補助金、税金投入を押しつけることになり、新幹線整備という大規模な公共事業によって、地域住民の日々の足が奪われることになるのではありませんか、お伺いします。

この計画は69年の新全総、日本列島改造論を反映し、73年に基本計画が決定されて以来調査が行われてきましたが、事業のめどが立たない中で2008年度予算の執行を中止してきたものです。

今後財政負担がいっそう求められ、また「新幹線整備ありき」ですすむ「四国の鉄道高速化連絡会」からの脱退を検討すべきと考えますが、見解を伺います。

少なくとも高速バスや高速道路、航空機など多様な代替交通機関と比較することや総合的に検討すること、新幹線導入のプラス面だけでなく費用面や移管される在来線などマイナス面も提示して議論を行うことが大切だと考えますが、いかがですか。

 

■知事

県財政や在来線への影響、四国の鉄道高速化連絡会との関係、プラス面・マイナス面の幅広い検討の必要性などについてお尋ねがありました。関連しますので、併せてお答えいたします。

新幹線が整備、導入されますと、各都市間の移動時間が大幅に短縮されることなど、地域経済の活性化等が期待されますが、新幹線の具体的な検討を進めるためには、まずは国による地形や地質や供給輸送力、建設費用などの調査が必要となります。

そのため、本年4月に基礎調査の結果が発表されて以降、四国知事会や四国4県議会正副議長会、「四国鉄道活性化促進期成会」などにより、国土交通省に対して、基本計画にとどまっている四国の新幹線の整備計画への格上げに向けた調査・研究を行うよう、提言や要望活動などの取り組みを行っているとごろであります。

今回の基礎調査で示されました整備事業費は、他の線区の所要額を基に算出ざれたものでございますので、今後、国が調査を実施するといったことになれば、精査されていくものであります。

現時点では、地元負担やそれに伴う県財政への影響などをお答えできる段階ではございませんが、整備事業費の負担や並行在来線の問題などは、新幹線の整備にあたってクリアすべき条件に挙げられている重要な課題でございますので、今後検討を進める中で議論が深まっていくものと考えております。

今後に向けては、四国の鉄道高速化連絡会などを通じて国の動きを注視しますとともに、他県や関係者団体との連携を図ることが重要だと考えており、県としましては、今後とも、県議会や県民の皆様方、経済界などからも広くご意見をいただきながら、他の3県やJR四国と連携し、プラス面・マイナス面ともに検討を深めてまいりたいと考えています。

 いずれにしても、四国における鉄道の抜本的高速化にむけた取り組みは意義ある取り組みだと考えており、ぜひとも検討段階を前に進めていくべきものであると考えているところであります。

 

【とさでん交通】 

 

●中根県議

公共交通再編について副知事にお伺いします。             

  土佐電鉄111年、高知県交通70年の歴史に幕を閉じ、明日から新会社「とさでん交通株式会社」がスタートすることになりました。「県民の会社」として、住民の交通権を保障する役割を果たすことが強く求められると共に、県行政の権限と責任はいっそう重大になっていると考えます。

公共交通に責任を持つ県として、また2分の1の出資金を保有する株主として、二重の意味での権限、責任をどう受け止めているのか、決意と合わせてお聞きいたします。

 

■副知事

公共交通に責任を持つ県として、また2分の1の出資金を保有する株主として、二重の意味での権限、責任をどう受け止めているのか、決意と併せて、お尋ねがありました。

明日から「とさでん交通」としてスタートすることとなりますが、これまで、中央地域における公共交通の再構築に向けた取り組みについて、検討が進められる中、関係各方面から、土佐電鉄や高知県交通の事業運営や経営面、更には行政としての関わり方等について、数多くのご意見をいただきました。

県としましては、そうしたご意見やご要望を正面から受け止め、今後の会社の取り組みに対し、指導、助言をしっかりと行う必要があると考えております。

県は、これまでの交通政策を担う立場に加えて、とさでん交通の最大株主としての立場も有することとなります。

そのため、担当理事を非常勤取締役として経営に参画させることとしております。

また、事業再生計画を検証するモニタリング会議の場においては、進捗状況等について確認を行うとともに、必要な意見を申し述べることとしております。

これまでの交通政策を担う立場としては、利用者目線に立った路線再編や、利用促進・増収対策などの事業改善に向けて、交通事業者や関係市町村などとともに、当事者の一人として、県民の皆様からのご意見やご要望を施策に反映することとしております。

将来にわたり、持続可能な公共交通の実現に向けて、会社の健全な経営基盤の確立を図ることで、県として、しっかりとその責任と役割を果たしてまいりたいと考えております。

 

●中根県議

 この新会社が県民から「大きく変わった」と信頼されるためには、何よりこの間の暴力団問題をはじめ明らかになったコンプライアンスとコーポレイトガバナンス欠如への厳しい検証、反省と、コンプライアンスの確立等をめざす仕組みと不断の努力が問われると思います。しかし、今回もこれまでと同じような県警察OBなどを監査役に据えるなど、何も変わっていないではないかなどの県民の声が上がっています。

コンプライアンスの確立をめざすシステムと取り組みへの決意について伺います。        

 

■副知事

コンプライアンスの確立を目指すシステムと取り組みへの決意について、お尋ねがございました。

「とさでん交通」では、コンプライアンスの確立・強化を経営方針の柱のひとつに位置付けており、現在の土佐電鉄の体制や取り組みをベースとしながら、内部統制やリスクマネジメントの観点も含めて、コンプライアンス体制の更なる充実、強化に取り組んでいくとの方針が示されております。

申し上げるまでもなく、コンプライアンス体制の確立は、現代の企業経営において不可欠なものとなっておりますが、とりわけ、とさでん交通は、自治体が全額出資する形で公共交通事業を営む会社であり、会社の成り立ちや事業内容の面からみても、より高い規範意識が求められる会社と言えます。

そのため、県民の信頼と協力のもとに、事業を展開していくためには、社員ひとりひとりが経営方針に掲げた「コンプライアンスの確立・強化」や、「接遇・サービスの向上」、「安全、安心の徹底」に向けて、たゆまぬ努力と強い決意を持ち続けていただくことが重要となってまいります。

県としましても、とさでん交通に対しましては、不断の取り組みにより、コンプライアンス体制の更なる充実を図ることを期待をし、また、求めてまいりたいと考えております。

 

●中根県議

新会社は、出資金は全額自治体負担、形は「公設民営」ですが、名実共に「県民の会社」です。

県は、その半分を負担しており、会社の運営、経営そのものに責任を持つ上でも、必要な執行部署に県職員を派遣、出向することも検討してはどうかと考えますが、伺いします。                                                            

次に、関係機関との連携強化として、公共交通改善に対する協議機関とモニタリング会議の立ち上げ、設置が提案をされています。

その進行状況についてお聞きします。

 

 

■副知事

ときでん交通への職員の派遣についてと、公共交通改善に対する協議機関とモニタリング会議の進行状況について、お尋ねがありました。関連いたしますので、併せてお答えをいたします。

持続可能な公共交通を実現していくためには、事業者の経営努力はもとより、行政をはじめ関係者がそれぞれの役割を果たすと同時に、多くの県民の皆様の協力が必要となってまいります。

県としましては、会社の業準に直接従事する形となる職員の派遣は考えておりませんが、公共交通事業の改善策を協議する場に積極的に関わることで、県の役割を果たしていきたいと考えております。

その協議のメンバーとしましては、関係する自治体ととさでん交通に加え、学識経験者などを想定しており、事務局は会社内に設置することを予定をしております。

その役割は、路線再編に向けた検討のほか、路線バス・路面電車の利便性、収益性の向上を図る具体策の検討などを行うことを予定をしており、県としましても、しっかり関わっていくことで交通政策上の課題等を協議の場に反映させていきたいと考えております。

また、事業再生の進捗状況をチェックするモニダリング会議が、四半期に一度開催されますので、県としましても、内容を十分に確認をし、必要な意見を述べていきたいと考えております。

公共交通事業の改善を目的とした協議会、モニタリング会議ともに、現時点では、具体的なスケジュールは確定しておりませんが、早急に体制を整えるよう、準備を進めているとお聞きしております。

 

●中根県議

次に、6月議会で副知事は、「今回の再構築スキーム案は、事業者の経営努力や増収対策により一定の収支改善が見込まれて」いる、「両社がそれぞれ単独で事業を行うケースと比較して、行政経費は抑制される計画となって」いる、と説明されています。

スタートする新会社に具体的にどのように計画されているのか、また今後の見込みについて改めてお伺いします。

 

■副知事

事業者の経営努力による収支改善や行政経費の抑制が新会社でどのように計画されているか、また今後の見込みはどうか、とのお尋ねがございました。

事業者の経営努力や増収対策による収支改善につきましては、再構築検討会で示されました利用促進・増収対策のロードマップをもとに、随時、改善、充実を図り、各種の増収施策を実施することとしております。

増収施策としては、分かりやすく使いやすい路線再編やダイヤの改正、さらには乗継割引制度の充実など、利便性の向上を図り増収に繋げていくことが柱となっており、10月からは、路線バスの系統番号化の導入のほか、まだ一部分ではありますが、地元から要望が寄せられていた路線の新設や、200円均一エリアの拡大、乗り継ぎ割引ポイントの増設など、サービスの拡大、充実を図ることが、先日発表されたところです。

また、経費削減につきましては、統合効果として、①組織構造の効率化、②燃料など各種コストの見直し、③子会社の費用構造の見直しなどを見込んでおりますが、これまでの取り組みの結果、概ね計画どおり進めることができていると報告を受けており、今後も着実な取り組みを期待をしているところです。

今後も、事業再生計画のもとに、県民の皆様のご意見や、外部環境の変化を分析しながら経営改善を行うことで、目標である3年目の単年黒字化、実質債務超過の解消が図れるものと認識をしております。   

 

●中根県議

同時に「県民の会社」と言うものの構成メンバーに県民、利用者の参加が保障されていません。すくなくとも県として、あるいは市町村と連携して県民、利用者の意見を反映する場を持つこと、県民参加を保障することが必要だと考えます。県民の交通権を保障すること、そして利用を促進することが経営改善・増収に直結するのであり、県民のニーズ、また現在あまり利用していない人も含めた潜在的なニーズをリアルに掌握し反映することが決定的に重要だと考えますが、見解を伺います。

 

■副知事

県民の潜在的なニーズを掌握し反映することへの見解について、お尋ねがございました。

公共交通を取り巻く経営環境は、人口減少の進展などにより、今後さらに厳しさを増すことが想定をされています。

経営の健全化のためには、現在利用されている方や観光客に対する利用促進策はもちろんのこと、現在利用されていない方々のニーズを汲み取り、それに応え、新たな利用の喚起に繋げていくことが重要であると考えております。

 県外のバス事業者では、収集・分析したデータに基づき、路線の見直し、停留所の新設、ダイヤの見直しなどによって、潜在需要を堀り起こし、利用者の増、ひいては収支の改善につなげた事例もございます。

とさでん交通からは、「データに基づく経営」を経営戦略の柱として、他県の成功事例なども参考にしながら、県民の潜在的なニーズを把握し、それを具体的な施策に展開していくとの考えが示されておりますので、そうした取り組みに大いに期待をしておりますし、またサポートもしてまいりたいと考えております。

また、利用者目線に立った取り組みを進めていくためには、新たな体制の下で、公共交通事業の改善策を協議する場が設けられますので、そうした場では、広く利用者の声や潜在的なニーズを汲み取ることができるよう、工夫もしていく必要があると考えております。

 

●中根県議

この8~9月に新日本婦人の会が公共交通アンケートを実施し、回答が寄せられています。

意見では、「公共交通機関は本数が少なく料金も高いので利用しなかった」「利用したくても目的地までの便や本数がないので車を使うことになる」「バス停の停留所に自転車置き場があるともっと利用しやすいと思う」「65歳以上の老人は子ども並みの半額料金にすれば利用者は多くなるのではないか」「電停に柵がなく危険、障害者がもっと利用できるよう低床電車をもっと増やしてほしい」「車いす利用時に段差があり自力で乗車困難なのでスムーズに乗れるよう工夫してほしい」などなど沢山寄せられています。

これらの意見、要望をどう受け止められるのか、またこうした県民の取り組みをどう評価し、今後反映していくのかお伺いします。

 

■副知事

県民の様々な意見、要望をどう受け止め、どう評価し、今後反映していくのか、とのお尋ねがごつざいました。

利用者目線に立ったサービスを徹底していくためには、まずは、広く利用者や県民の意見に耳を傾けることから始めることが必要だと思います。

いただいた意見に対して、効果や採算性、実現可能性、優先度など、様々な角度から真剣に検討を加えるなどの姿勢を期待をしております。

先程、議員からお聞かせいただいた、アンケートに基づくご意見等につきましては、それぞれ実体験等に基づくものだと思われますので、公共交通の利便性向上策の検討の際には参考にさせていただきたいと考えております。

 

●中根県議

公共交通を利用する際、障害を持っている人のうち精神障害のみなさんに障害者割引が適用されていません。

知的障害や身体障害と同じく割引適用の制度を作るべきだと考えますがいかがでしょう

 

■副知事

精神障害のある方への割引軸度の創設について、お尋ねがございました。

精神障害のある方への運賃の割引制度については、現在、県内の乗合バス事業者14社のうち7社が、精神障害者保健福祉手帳による運賃割引サービスを実施をしており、鉄道では土佐くろしお鉄道が、同様のサービスを提供をしています。

平成24年度には、「一般乗合旅客自動車運送事業標準運送約款」に、運賃割引の対象として、「精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている方」が追加されたことを受け、県としても県内の公共交通事業者などに対して、精神障害のある方への割引サービスの創設を要請をしたところです。

割引サービスの実施は減収となることから、これまで土佐電鉄や高知県交通では、厳しい経営状況を理由に、実施されていなかったというふうに承知しておりますが、県としましては、未実施の事業者に対して、改めて割引サービスの創設を要請してまいりたいと考えております。

 

【子どもの貧困、少子化・子育て支援】

 

●中根県議

子どもの貧困問題と少子化・子育て支援について伺います。

昨年6月、子どもの貧困対策の推進に関する法律がつくられ、その基本理念には「子どもの貧困対策は、子ども等に対する教育の支援、生活の支援、就労の支援、経済的支援等の施策を、子どもの将来がその生まれ育った環境によって左右されることのない社会を実現することを旨として講ずることにより、推進されなければならない」また、「子どもの貧困対策は、国及び地方公共団体の関係機関相互の密接な連携の下に、関連分野における総合的な取組として行われなければならない」とされています。

2012年の国民生活基礎調査を見ると一世帯当たりの平均所得は、537.2万円で、2003年の調査と比較すると42.5万円も少なくなっています。貧困率は16.1%、こどもの貧困率が全体の貧困率を上回り、過去最悪の16.3%となりました。中でも、ひとり親世帯の貧困率は54.6%で世界的にみても極めて高く、今の日本経済を「子どもの貧困」の観点から考えると、親や大人の雇用状況の悪化や生活状況の悪化がこどもの貧困に及んでいます。こどもの将来を危機から救うためには、「子どもの貧困対策推進法」に基づき、国・自治体での具体的取り組みを進めることが緊急に問われています。

先日8月29日、政府は子どもの貧困に関する大綱を閣議決定しました。社会経済情勢の変化や、子どもの貧困に関する状況の変化、大綱に基づく施策の実施状況や対策の効果等を踏まえ、おおむね5年ごとをめどに見直しを検討するとし、2017年7月ごろには対策法の成果を反映した子どもの貧困率を厚労省が発表する予定としています。が、残念ながら大綱の中に「子どもの貧困」率をゼロにするための数値目標が示されていません。  

 推進法の第9条では、「都道府県はこどもの貧困対策の計画を定めるよう努めるものとする」と記されており、高知県としても緊急の取組が求められています。

計画の策定を急いで行うべきだと思いますが、県としてどう取り組み、対策を具体化するために計画をどうつくっていくのかお聞きします。

また現在、各都道府県別の「子どもの貧困率」という統計は出されていません。少なくとも県ごとの実態を明らかにし、改善の数値目標を示す必要があると考えます。

貧困の概念は幅広いものです。高知県のこどもの実態調査を行い、いろいろな角度から改善する指標を示すことができるようにすべきだと思いますが、いかがでしょうか、あわせて地域福祉部長に伺います。

 

■地域福祉部長

 子どもの貧困対策についての計画をどうつくるのか、また、計画策定に当たり、本県の子供たちの実態調査を行い、独自の改善すべき指標を示すべきではないか、とのお尋ねがありました。

 全ての子供たちが、家庭の経済環境などに左右されず、夢と希望を持って育つことのできる社会をつくるための子供の貧困対策に関する計画づくりは、本県の将来を支える人材育成にもつながりますことから、早急に取り組むべき重要な課題だと考えています。

先月、閣議決定されました国の大綱では、生活保護世帯の子供の進学率や就職率など25項目の指標を設定し、その改善に向けて、「教育」「生活」「保護者に対する就労」「経済的支援」の主に4つの分野で、政府が今後5年間に重点的に取り組むべき40の施策が示されたところです。

今後、県におきましては、大綱で定められた4つの分野を中心に、教育委員会をはじめとする関係部局との連携も図りながら、子供の貧困対策を総合的に推進するための具体的な取組みについての検討を進めて行く必要があるものと考えております。

その際には、現状で、本県と全国を比べますとかい離の見られる改善すべき指標もございますので、関連する分野の有識者などからの御意見をいただくなど、本県の実情に沿った実効性のある計画となりますよう留意してまいります。

併せまして、議員のお話にありました本県の子供たちの実態調査に基づく独自の改善すべき指標の設定などにつきましても、計画づくりを進める中で、その必要性を検討してまいりたいと考えております。

いずれにいたしましても、子供の貧困問題の解消は、国と地方が連携して、早急に社会全体で取り組まなければならない大きな課題だと認識をいたしております。

 

●中根県議

文部科学省は所得の低い家庭が多い公立小中学校の教員を、来年度からの10年間で2,000人増員し、塾に行けない子どもに放課後補修を行うことで貧困の連鎖を断ち切ることをねらいとして、来年度の概算要求に200人分の4億円を盛り込むと報道されています。

教員の増員について、高知県では該当する学校が何校あるのか、10年間の教員配置を国にどのように要望していくのか教育長に伺います。

 

■教育長

文部科学省の概算要求で示された貧困対策にかかる教員の増員について、お尋ねがございました。

文部科学省は、平成27年度の概算要求において、今後10年の新たな教職員定数改善計画の案を発表しました。その中には、お話にありましたように、家庭環境や地域間格差による教育格差の解消に向けて、10年間で2,000人の教員を配置するという内容が含まれていますが、この計画は、今後、財務省との予算折衝などを経て決まるものであり、まだ確定したものではございません。

また、具体的な配置基準についてもしめされておらず、現時点で該当する学校や加配教員数を想定することは困難でございます。

一方で、本県は、全国と比較しても就学援助率が高く、経済的にも厳しさをともない教育環境が整わない家庭も数多くあり、こうしたことが児童生徒の学びに影響してきている状況もございます。

こうした課題に対応し、すべての児童生徒に学習習慣を定着させ、基礎学力をしっかりと身につけさせるため、本県では、これまで独自に中学校の学力向上に向けた教員の加配措置や学習支援員の配置に努めるとともに、国に先駆けて、少人数学級編制を実施してきました。

また、国に対しても、こうした教育課題の解決を図るための教職員定数の充実と拡大を提言・要望してきたところでこびざいます。

今後も、予算の編制に向けた国の動向を注視してまいりたいと考えておりますし、さまざまな機会を捉えて、国に対し、本県の実情を説明しながら、教職員配置の充実を図ってまいりたいと考えております。

 

●中根県議

一方で、これまで貧困の連鎖を断ち切る重要な手立てが学習支援であるとして、全国94自治体で実施されている厚生労働省の「セーフティネット支援対策事業」である無料塾は、来年度から新たに実施される「生活困窮者自立支援法」の枠組みに移り、これまで全額国の負担であったものが、2分の1の補助になってしまいます。関係者は財源をどこに求めるのか当惑しています。

高知市をはじめとする実施市町村の、この間の取り組みが評価され、県も実施市町村を拡大するとしてきました。国に対し、これまでと同様の予算措置を求めるべきだと思いますが、地域福祉部長に伺います。

 

■地域福祉部長

県下で取組みが進んでおります学習支援事業への国の財政支援措置に関するお尋ねがありました。

県では、これまでも、生活保護受給世帯の子供たちをその主たる対象とする学習支援事業に取り組んでまいりましたが、1町2名の実施に留まっておりました。

今年度からは、こうした子供たちを含め、生活困窮世帯の子供たちがその対象となる、生活困窮者自立促進支援モデル事業による取組みへと変更したこともあり、現在、3町1村の教育委員会との調整が整い、支援の対象となる子供たちが69名へと拡大を見せております。

来年度からの生活困窮者自立支援法施行後の学習支援事業につきましては、生活困窮者を支援する取り組みのひとつとして、国の補助率が2分の1とはなりますものの、一方でセーフティネット支援対策等事業費補助金につきましては、ここ2年間、国の財源不足による別財源での手当てを余儀なくされるなど、不安定な予算措置のもとでの事業実施となっていたという経緯もございます。

今後は、法律に基づく補助事業として位置付けられ、安定した財源の確保が図られますことから、その面では各自治体におきまして、学習支援事業の更なる拡大に向けまして、安心して取り組むことが可能になるものと考えております。

 いずれにいたしましても、県といたしましては、低所得の家庭の子供たちが十分な教育を受けられず、結果として貧困が世代を超えて連鎖するということに陥らないよう、少しでも多くの子供たちの教育の機会均等を図ることにつながりますこうした取組みの拡大に向けまして、町村の教育委員会などとの連携を図ってまいりたいと考えています。

 

●中根県議

少子化への対応と子育て支援も、急ぎ手立てが必要です。知事会が、7月15日に少子化非常事態宣言を発表し、「今こそ思いきった政策を展開し、国・地方を通じたトータルプランに総力を挙げて取り組むべき時である」ことを宣言したのは記憶に新しいところです。       

高知県も努力を重ねてきていますが、多面的な取り組みが必要で、なかでも働き方の改善と子育て・教育費用の思いきった軽減なしに少子化を解消することはできません。最近では、社会を支える国民を育てる観点から大学卒業までを見通した支援策が必要だとの議論もおこっています。

子育て支援への本気度を、財政的にもどう示していくかという点で、再三取り上げていますが、子どもの医療費助成を県として中学校卒業まで、所得制限なしで無料にすることは、大きな子育て支援につながると考えます。自治体間の制度格差が広がり、人口の多い市レベルでは、助成の枠が十分ではありません。

非常事態宣言を実効あるものにするためにも、決断の時だと考えますが、以下、知事に伺います。

こどもの医療費無料化を、国に要望することはもちろんですが、国が施策として実現するまで、県が子どもの医療費無料化の拡充を、1日も早く行うべきだと思いますがいかがですか。

 

■知事

子どもの医療費無料化についてお尋ねがありました。

子どもの医療費につきましては、子どもが生まれ育った環境によって左右されず、全国どこでも治療費を心配することなく安心して医療を受けられるよう、社会全体で支えていく必要があると考えております。私といたしましても、全国知事会のプロジェクトチームリーダーとして、次世代を担う「人

づくり」に向けた少子化対策の抜本強化に取り組んでおり、新たな子どもの医療費助成制度の創設につきましても、提言しているところであります。

県内の多くの市町村では、ここ数年の間に医療費助成制度の拡充に取り組んできており、中学校卒業まで医療費の無料化を実施している市町村は、所得制限等も含めると、この10月には30か所となり、更に来年度中にもいくつかの市で拡充されるとお聞きしております。

県による助成制度の拡充を行うと、毎年およそ12億円が必要と見込まれますが、ほとんどの市町村で既に中学校卒業まで医療費の無料化が実施されていますので、市町村での財源の振り替えになるだけでは、本当の意味での子育て支援策の充実にはつながらないのではないかと考えております。

このため、国への政策提言を引き続き積極的に行うとともに、次世代を担う子どもたちの健やかな成長と発達、少子化対策として、どのような支援策が、最も効果的であるのか、十分な検討を行ってまいりたいと考えているところであります。

 

●中根県議

また、国保の保険料の均等割りについても、子どもの数が多ければ多いほど重い負担となり、国保世帯にとって深刻な負担となっています。少子化対策や子育て支援に逆行するものです。

国に対して保険料のこどもの均等割りの見直しや保険料の軽減を提案すべきではありませんか、お聞きいたします。

 

■知事

次に、国民健康保険料の子どものいる世帯への均等割の見直しや保険料の軽減について国に提案すべきではないかとのお尋ねがありました。

国民健康保険料は、医療給付に要する費用を賄うために被保険者に負担をお願いしているものであり、所得や資産といった能力に応じた負担だけでなく、子どもを含めた全ての被保険者に保険給付による受益に応じた負担をしていただくこととされておりまして、子どもの多い世帯ほど負担が増加することとなっております。

しかし一方で、わが国の少子化の現状は、全国知事会が非常事態宣言を出さざるを得ないほど危機的な状況にあり、将来にわたって国や地方が活力を維持していけるよう、若い世代が安心して結婚し子育てを行うことができる環境を整えるために、幅広い分野での思い切った政策の展開が不可欠となっております。

このような状況から、全国知事会では、特に税制について、子どもが多いほど有利になる制度や子育て等に伴う経済的負担の軽減に資する制度の創設などの検討を国に対して要請を行っているところであります。

ご提案のありました国民健康保険料の子どもの均等割の見直しや軽減については、子どもの多い世帯の負担軽減を図るために大事なことではありますが、見直しに伴い減収となる保険料に代わるべき財源をどうするかといった課題もあります。両面で検討をしていくべき必要があるものと考えているところであります。

 

【男女共同参画社会の推進】

 

●中根県議

男女共同参画社会を推し進める立場から男女共同参画推進本部長の知事に伺います。

女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約、女子差別撤廃条約が国連で1979年に採択されて35年、日本が批准したのは1985年ですから29年が経過しました。男女平等社会実現の流れの中で、1999年に男女共同参画社会基本法が制定されて今年で15年になります。先日の東京都議会や国会での女性議員へのセクハラやじ発言の顛末に、国際的にも驚きをもって報道され、日本社会の人権意識もこれくらいのものかとひんしゅくを買ったことは、この間の「男女の個人としての尊厳を重んじ、男女が性別による差別的取扱いを受けないこと、男女が個人として能力を発揮する機会が確保されること、その他の男女の人権が尊重されることを旨として行われなければならない」と男女参画社会基本法第3条に明記し努力してきたことが、まだまだ不十分であることを突き付けられた思いです。

人権意識と啓発活動がいかに大切かを感じますが、本部長として、こうした事例をどのように感じているのか、また、どのように学習や研鑽をひろげて行こうとしているのかお聞きします。

 

■知事

先日の東京都議会や国会での女性議員へのやじの事例をどのように感じているのか。また、どのように人権意識に関する学習や研さんを広げていくのか、とのお尋ねがありました。

今回の東京都議会等における、女性へ結婚、出産を強要するかのような一連の発言は、セクシャル・ハラスメントであり、こうした女性に対する人権侵害の発言がされたことは、非常に残念であると感じております。

男女平等の大原則に立ち、さらには男女共同参画社会の実現に向け、今後とも、粘り強く、意識啓発に取り組んでいく必要があると考えております。

高知県では、こういった啓発は、幅広い年代に向け、かつ、多くの機会を通じて取り組むことが必要と考えておりまして、こうち男女共同参画センターや人権啓発センターにおける講演会の開催や、市町村や団体、学校等教育機関が行う研修会への講師派遣、また、様々なメディアを通じた広報などに取り組んでおり、今後ともさらなる内容の充実を検討してまいりたいと考えています。

 

●中根県議

安倍政権は、「女性の活躍」を掲げ、「女性が輝く日本」をめざすとうたいあげています。しかし、男女共同参画は進むどころか、正規労働者の長時間・過密労働や、非正規雇用やパート等、女性が担ってきた不安定雇用が男性にも広がり、ブラック企業やカローシ、ワーキングプアーの言葉が蔓延する事態になっています。ワーク・ライフ・バランスの実践を意識できず、家庭さえ維持できない中で、労働環境を整えないまま男性並みの就業率にしていこうとするのは、結局豊かな男女共同参画社会から遠くなってしまいます。政権が、女性の労働力に焦点を合わしている時こそ、高知県の男女共同参画社会づくり条例に基づくプランを進め、豊かに生きていくために必要な女性の声を施策に行かせるよう、参画率も上げていかなければなりません。

昨年末、「こうち女性団体ネットワーク」の皆さんが、「働く女性の実態と改善を求めるアンケート」に取り組み、県内28市町村217人から回答が寄せられました。年齢、家族、雇用形態、年収、仕事を続けられるか、結婚・出産・介護などで退職したことがあるか、働き続けるにはどのような施策が必要か、昇格の要請があればどうするか、不安要因は、など等、回答をまとめています。

まとめでは「アンケートを集約していく中で、あらためて高知県の女性の働く環境の厳しさを実感することができた。女性の賃金の低さが浮き彫りになり、女性がその能力を生かし、意欲を持って働き続けるためにも、労働条件や、環境の改善、子育て支援や高齢者の介護支援の充実などの施策が急がれる。女性が出産や育児で退職せずに働き続けられるように、公的支援だけでなく、企業、職場の意識改革ももとめたい」と結んでいます。

2011年~2015年のこうち男女共同参画プランの実践も残すところあと1年です。この間の総括をどのように行い、次のプランに臨もうとしているのですか。今の課題を明らかにし、プランを実効性の高いものにしていくためにも、審議会の議論の基になる高知県の女性の実態を、男女共同参画社会づくりの観点で調査すべき時ではないかと考えますがいかがですか、あわせて伺います。

 

■知事

こうち男女共同参画プランの総括と、次期プラン策定に向けて実態調査をすべきではないか、とのお尋ねがありました。

現在の「こうち男女共同参画プラン」につきましては、男女共同参画社会の実現に向け、計画期間が満了する平成27年度未における目標値やモニタリング指標を設定し、PDCAサイクルに基づく進捗管理を行いながら取組を進めております。

現時点の進捗状況としましては、子育てしやすい職場環境づくりに積極的に取り組んでいる「次世代育成支援企業」の認証企業数や、女性が農業経営へ参画することを牽引する農村女性リーダーの認定者数の増加、また、プラン策定時に男性のみであった高知県防災会議委員に7名の女性委員が加わるなど、着実に進んでいるものもある一方、県の審議会等の委員の男女構成比など進捗が十分でないものもあります。

こうしたことから、全体として、取組が前進しているものの、さらなるスピードアップが必要な状況であると受け止めているところであります。

こうした中、本年度より、女性の活躍の場のさらなる拡大に向けて、高知家の女性しごと応接室の開設などの新たな取組も始めているところであります。

これから来年度にかけまして、プランの改定作業に取り組んでまいりますが、本年度は、県民意識調査を行うこととしておりまして、男女平等や性別役割分担意識といった経年変化を把握するための項目のほか、女性が働きやすい環境づくりに関する新たな項目もお聞きをし、本県の女性の実態把握を行ってまいりたいと考えています。

来年度は、この意識調査の結果や、これまでの取組や本年度の新たな取組の成果と課題をしっかり分析いたしますとともに、様々な分野の委員から構成されます、こうち男女共同参画会議でのご議論や、パブリックコメントなど幅広く県民の皆様のご意見を賜りながら、検討を進めてまいりたいとそのように考えているところでございます。

 

●中根県議

男女共同参画社会基本法第4条には、「男女共同参画社会の形成に当たっては、社会における制度または慣行が男女の社会における活動の選択に対して及ぼす影響を出来る限り中立的なものとするように配慮されなければならない」とし、慣習の中にも男女共同参画社会づくりの風を入れていく必要が述べられています。この慣習の中の意識改革こそ、社会づくりにとって大切だと考えますが、まだ古い慣習のままで改善されていないことが目に留まりました。

どの自治体でも同様に、多くの皆さんの努力や栄誉をたたえて表彰が行われています。その中で、知事から消防活動に25年以上尽くされた消防団員の妻に、「消防団員内助功労者の感謝状」が贈られています。消防活動は危険を伴い、災害の時に飛び出していく大変な任務ですから、その家族の支えについて感謝することに異議があるものではありません。ただ、「内助の功」とは、「家庭において、夫の外部での働きを支える妻の功績」の意味であり、消防の感謝状も団員に妻がいなければ、父や母や子どもがいても、その家族には感謝状が贈られることはありません。

他県では、妻も含めた家族に送る感謝状に変えているところが多くあり、男女共同参画推進本部長の知事名で、「内助の功」と書かれた文面が感謝状として贈られることに違和感を覚えるものです。直ちに改善すべきだと思いますがいかがですか。

 

■知事

消防団員内助功労者への感謝状について、お尋ねがございました。

消防団員は、消火活動や河川氾濫時の警戒、土砂崩れが発生した際の人命救助など、昼夜の別なく、危険と隣り合わせの現場で、地域の防災力の要として、地域住民の生命、財産を守る活動を行ってくださっています。

団員の皆様が、長年にわたり、こうした消防団活動を行うには、ご家族、特に配偶者の理解と協力は欠かせないものであり、そのご労苦に報いるため、消防団員内助功労者として、感謝状を贈皇しているものであります。

この感謝状は、妻に限らず、夫も含めた配偶者を対象としており、そのことは市町村や消防関係者に定着していますが、内助という言葉は、一般的に、妻が家庭にいて夫の働きを助けるという固定的な性別役割分担を連想させますことから、感謝状の趣旨が伝わるような表現を今後検討したいと考えております。

 

●中根県議

また他の分野でも県行政のかかわる制度や慣習の中に配慮すべきものがないか、職員が意識を持って点検に心がけ改善すべきだと考えますがいかがですか、お伺いします。

 

■知事

県行政の関わる制度や慣習の中に配慮すべきものがないかを職員が意識を持って点検に心掛け改善すべきではないか、とのお尋ねがございました。

男女共同参画社会を、さらに推進していくためには、県行政に携わる職員一人ひとりが、日ごろから、男女共同参画の視点や人権意識を持って業務を進めるとともに、気づきがあれば速やかに、改善・改革に取り組んでいく姿勢が重要であると考えております。

このため、毎年、全庁を対象に男女共同参画・女性問題に関する研修を実施しておりますほか、新規採用職員の研修や、それぞれの職場での人権研修などを通じて、個々の職員の男女共同参画に対する意識を高めていくよう努めております。

今後は、①職員が感性を磨き、時代や環境の変化を敏感にとらえるための研修、②既存の制度や枠組みにとらわれず、様々な視点から物事を考えるための研修、③自ら改善すべき点や課題を見出して業務を進めるための研修等を、一層充実することで、男女共同参画の意識も十分に備えた職員の育成

に努めてまいりたいと考えております。

 

【野中兼山生誕400年】

 

●中根県議

野中兼山生誕400年の顕彰について伺います。

野中兼山は、江戸時代初期の土佐藩家老として27年間在任し、コメの生産向上をはかるために、堰や灌漑用水などの農業土木施設を建設するとともに、上方との海上交通の安全を確保するための港湾施設を建設しました。

吉野川、物部川、仁淀川、四万十川の後ろ川、松田川に造られた堰は13、堰から13本の用水路がのびて、農地を潤し、運河として高知城下への物資の輸送に使われています。また、浦戸、手結、室津、室戸津呂、佐喜浜の港は、位置の選定や港口の向き、波や砂の対策、規模など、すばらしいものです。その偉業は、卓越した先見性と計画性に見ることができる画期的なものだと高く評価されています。今でも、小学生の社会科の地域教材として、身近な地域の堰や用水路、掘り込み港湾が、兼山の取り組んだ事業として紹介・学習されています。

兼山が生まれて、来年は生誕400年です。これまで、野中兼山や野中婉を顕彰し、その偉業を文化遺産として次の世代に渡していくために努力を続けているボランイティア団体の皆さんや研究者の皆さんから、功績を顕彰する行事ができないかとの声が上がっています。

この声にこたえ、ぜひとも400年の歴史に合わせて学び、またとない高知県をしっかりと見る機会を逃すことなく、県もこのような取り組みに支援を考えてはと思いますがいかがですか、文化生活部長のご所見を伺います。

 

■文化生活部長

地域で検討の声があがっております「野中兼山生誕400年」の取り組みに対する県の支援についてお尋ねがございました。

歴史上の人物に関係の深い市町村や地域の皆様が、それぞれの思いで、節目にあわせ、その功績を称え、広く知っていただく様々な取り組みを行うことは、地域の魅力の発見や発信、地域の活性化にもつながりますことから、大変素晴らしいことであり、県といたしましても歓迎するところでございます。

県では、これまでも県民の皆様が行う、さまざまな文化・芸術活動に対し、名義後援や広報への協力といった支援を行ってきておりますので、お話の取り組みに対しましても、こうした支援が可能であると考えております。

また、本年度から、県民の皆様が主体となっておこなう、地域の魅力を引き出し、地域の活性化につながるような文化・芸術活動に対して、公募形式で財政的支援を行う、「高知県芸術祭 KOCHI ART PROJECTS」を新たに実施をしております。

このような情報を提供することで、地域の皆様が行う多彩な取り組みについて支援をして参りたいと考えております。

 

【中根第二問】

 

●中根県議

 子どもの貧困の問題です。

 先ほど、計画づくりに取り組んでくださるというお話がありました。知事も知事会などの中で大変がんばっていらっしゃることは承知の上ですけれども、子ども貧困の問題というのは本当に日本社会の歪みそのものでして、そうした点では多方面で、多義で、そして思い切った応援が必要だと考えています。ですから、再三ですけれども、子どもの医療費の問題やまた国保の問題なども出させていただきました。思い切った対応をしなければ、この少子化問題や子どもの貧困の問題も、つい最近から言われている話ではありませんので、そのあたりでは国もさることながら、高知県の計画をしっかりつくりながら、思い切った対応、独自の改善点をおこなっていくという地域福祉部長のお話は大変心強く思いました。

同時にその心強い思いを、スピード感を持ってやっていただきたいと思いますが、そのスピード感のあたりを一言、地域福祉部長にお願いしたいと思います。

 

■地域福祉部長

 子どもの貧困問題につきましては、特に生活保護世帯の進学率とか、ひとり親世帯の支援とか、非常に大きな課題を抱えた全国的な数字と比べましても、本県特有に数字的にも厳しい状況もございます。そういうことも反映しまして関係部局、特に教育委員会の教育支援策とか、重要なものがいくつか考えられておりますけれども、そういうところと連携を強化して、課題意識、そして議員おっしゃったスピード感を持って取り組みをやってまいりたいと考えています。

 

●中根県議

 災害について伺います。

今回、いろいろあげさせていただきましたけれども、土木部長にお願いします。バックビルディング型降水現象というのを、私たちも本当に、雨が降るたびにドキドキするという状況になっています。この間、高知に降った雨の中にもこの形があったように思います。そういう意味では、先ほど来のポンプの問題などもそうですけれど、これまでの排水量では十分ではない状況が沢山あるように思います。

そういった点では、いま大丈夫だからではなくて、想定外を想定するという意識でこれから取り組んでいただきたいのですが、決意を伺います。

 

■土木部長

 降雨について、想定外を想定した対策が必要でないかというお尋ねでございますけれど、もちろんこういった想定外を想定するということは、災害を考える上で重要な観点でございます。しかしながら、これをハード整備ですべておこなうということにつきましては、相当なお金、それから長い期間かかるということから、私ども、ポンプだけではなくて、河川の整備、ダムについても、確立降雨というのを一定定めまして、それもしかも段階的にそれに達するように、長い時間かけながら、少しづつでも改善していくというこういった対応をとっています。その間につきましては、やはりハードだけではなくて、ソフトな対策と申しましょうか、災害についての住民の方、そもそもの危険の認識ですね、災害に対する認識、こういったものを合わせまして、決して人任せにしないということで、住んでおられる方がまず認識をしていただいて、例えば非難の行動を迅速にしていただくとか、こういった活動も合わせまして、ハード、ソフト、両面、達成していくことによって、防災・減災の方をすすめていくという考え方に立っているところです。

 

●中根県議

 精神障害者の割引の問題をお答えいただきました。何度か議会で取り上げさせていただいています。

県が出資をする県民の交通機関になったということであれば、「これは実施をします」、「する方向で検討をします」というふうにお答えになったのかもう一度副知事にお願いします。

 

■副知事

 精神障害者の方々に対する割引ですが、これ最終的に割引をするかしないかということは会社が判断することです。県としましては、先ほどお答えしましたように、未実施の会社に対してはしっかり割引をとうことを要請はしてまいりましたが、明日から「とさでん交通」という新しい会社も発足いたします。これを機会にですね、「とさでん交通」始め、未実施の会社に対してしっかりと要請をしていきたいと考えてます。

 

●中根県議

 男女共同参画の慣習の問題です。先ほど、お答えいただきまして、改善・検討しますというお答えでした。

実はですね、この慣習の問題、意識の変化の問題、本当に難しい問題ですよね。県庁前にいま高知市の観光協会が大きな看板を立てていまして、そこに一方では、「生きの良さ、笑顔も味も、土佐心」という観光のキャッチフレーズと、もう一方に「ありがとう、内助の妻と、土佐めぐり」という標語をかかげてあります。

私、最初にそれを見たときにあまり気持ちがよくありませんでした。なんと男性目線で土佐の観光を語るんだろうかと。ちょっとしたことなんですけれど、そういうことが意識をつくり、社会をつくっていくという点で知事に最後に、研修をどうやって職場の中や地域の中で生かしていくかということがとても大事なので、その点の所見をお聞かせください。

 

■知事

 例えば、消防団員の方の配偶者に対する内助の功感謝状でありますか、最初は善意で始まったことでありまして、配偶者の方に対する感謝の意も公に示すべきであろうということでやりはじめたものであろうかと思います。誠に気持ちは善意として始めたものでありますが、ただ時代の流れに応じて、これをみて不快に思われる方も出てくるということ、そうことに思いを致さなければならないだろうと、そのように思います。こういう形で、多くのことが時々の時代の状況に応じて、善意であったものが残念ながら今の時代にはそぐわないということも出てくる、これはやはり時代の流れに応じた見直しというものを不断に続けていくということが大事だろうとそのように思うわけでございまして、やはりこういうことは不断にそういうことに気を付けるということが、基本の基本だと考えているところでございまして、県行政なんかが最たるものとしてこういうことに気を付けていかなければいけないのだろうと思います。

 我々としてまず県職員に対して、しっかりこういうことについての意識啓発をしますとともに、より一般の啓発についてどうあるべきか、新しい参画プランを考えていく中で、より強化した啓発方法などについて考えてみたいと思います。

 

●中根県議

 先ほどの内助の功を辞書で引きますと、もういまはせっかくの言葉だけれども、男女共同参画も進んできて、あまり使われなくなってきているという注釈までついています。難しい問題ですけれど、男性も女性もがんばれる時代目指して、ぜひ計画もよろしくお願いします。