議会報告

  • 2014年10月15日
    9月県議会 カジノ賭博の合法化に反対する意見書への賛成討論 米田稔県議(2014.10.14)

私は、日本共産党を代表して只今議題となりました議発第15号「カジノ賭博の合法化に反対する意見書議案」に賛成する立場から討論を行います。 

法律が禁じるカジノ賭博を合法化するカジノ解禁推進法案、特定複合観光施設区域整備推進法案の行方が臨時国会の焦点の一つに浮上しています。安倍首相は1日の参院本会議で、「観光振興、地域振興、産業振興に資する」として、あらためてカジノ解禁に前のめりの姿勢を示し、菅官房長官も3日の会見で、「(今国会で)成立させるべく全力で取り組んでいる」とのべました。しかし、モラルや人間社会を崩壊させる政治は許されません。賭博は多数の負ける人を犠牲にし、一部の者がもうけをはかろうとするものです。目先の利益さえ見込めるなら、多くの人の苦しみなど度外視するというのでは、まともな政治、社会とはいえません。

日本でカジノ賭博は犯罪です。刑法は「賭博をした者は、50万円以下の罰金又は科料に処する」、「賭博場を開帳し、又は博徒を結合して利益を図った者は、3月以上5年以下の懲役に処する」等定め、カジノ行為やカジノ開設等を厳格に禁じています。なぜ刑法は賭博を禁止しているのか。最高裁判決は、賭博行為は、勤労など正当な原因によらず、単なる偶然の事情によって財物を手にする思いがけない幸運を得ようと相争うことは、国民を怠け者の浪費家にし、健康で文化的な社会の基礎になる「勤労の美風」を害するばかりか、副次的な犯罪を誘発し、国民経済の機能に重大な障害を与えるおそれすらある、と説明し、そして賭博行為は、社会の風俗を害する行為として処罰することとされている、と規定しているのであります。

カジノ推進派の方は、弊害が出ることは認めながら、ギャンブル依存症などの様々な対策を取る等と言っています。しかし、いくら対策を取っても依存症や犯罪などを含め日本社会への弊害を防止することができないことは明らかではありませんか。いろいろ対策をとっても防止できないからこそ、法律、刑法でカジノ賭博そのものを禁止しているのであります。日本で最初に賭博の禁止令が出されたのが689年、持統天皇の「双六禁止令」と言われています。社会を荒廃させる賭博は認められないということを、1千年以上にわたり取り組んできたわけです。長い歴史的な経過や、様々な事件を踏まえての法体系であること、賭博行為を禁止した刑法の重みを受け止め、カジノ賭博の合法化はきっぱり止めるべきであります。

しかし今日日本では、競馬、競輪など6種目の公営賭博が実施され、「遊技」という欺瞞的な扱いで、パチンコ・パチスロという実質的な賭博行為があふれかえっています。その結果、日本は、世界でも突出したギャンブル依存症大国となっています。

厚生労働省研究班の調査で、日本の成人の4.8%、男性8.8%、女性1.8%、推計536万人にギャンブル依存症の疑いがあることが明らかにされました。ギャンブル依存症は、ギャンブルへの衝動が抑制できず、経済的、社会的、精神的問題が生じているにもかかわらず、やめることができない病気です。世界保健機関は精神疾患と定義しており、世界的にその対策と治療・回復のための社会基盤づくりが課題になっています。研究班は同じ方法で行われた比較可能な諸外国の調査結果もあわせて公表しました。アメリカ1.58%、フランス1.24%、韓国0.8%などとなっており、日本の高さが際立っています。一方、対策は軽視され、医療機関を受診する依存症患者は年間わずか500人であり、大多数の患者と家族、周辺の人たちは、適切な救済を受けられず、苦しみ続けています。さらにカジノをつくりギャンブル依存症患者を拡大、多重債務問題再燃の危険を増大させることは、決して許されるものではありません。また暴力団などの反社会的勢力の跳梁ばっこの舞台を提供する結果を招く可能性も高いものであり、認められません。

カジノ推進派は、高規格施設であり厳格な規制のもと、優良顧客だけを集めるから依存症患者は増えない、様々な社会的問題を起こすことはないと主張します。しかし、現在国会に提出されているカジノ法案に、そのための具体的な方策は何も書かれていません。そもそも、そんな規制や対策などできるはずがないからです。厳格な対策をとっているというシンガポールは、開業後4年でカジノ入場禁止者は20万人を超え、自己破産も1.5倍に急増しています。

 カジノ推進の名目に、成長戦略の目玉、経済の活性化が掲げられていますが、韓国、米国等ではカジノ設置自治体の人口が減少したり、また、多額の損失を被ったという調査結果も出ています。何より賭博場は、物作りでも、純粋なサービス業でもありません。経済対策、成長戦略というなら少なくとも新たな付加価値を生み出し、人々の暮らしを豊かにするものでなくてはなりません。しかしカジノは、人の金を巻き上げるだけで何の価値も生み出しません。これが経済対策などといえるでしょうか。また外国人観光を口実に、外国人からカネを巻き上げていいのか、そのどこがおもてなしといえるのか、これも問われていると思います。

カジノは多くの負ける人たちから収奪して利益を得るものであり、ギャンブル依存症や多重債務問題をはじめ、家族を含め多くの人々の生活や人生を破壊しています。そのような多くの人々の犠牲の上に成り立つ「観光及び地域経済の振興」や「財政の改善」など、本来あるべき観光、地域経済の振興、財政の改善とは全く無縁であり、また、期的に持続可能なものではありません。本県のように一次産業にしても、観光にしても地域の資源に光をあて、県民参加ですすめている産業振興、持続可能な社会づくりや、アメリカなどで成果をあげている中小業者支援と一体となった思い切った最低賃金引き上げなど、まともな、人間らしい経済対策にこそ力を注ぐべきです。カジノ解禁を推し進めているのは、パチンコ、パチスロ機器メーカーとかPFI関連業者や「ハコ物」施設に関係する大手ゼネコンです。特定業界の目先の利権のために、日本社会をゆがめるカジノ解禁を許すべきではありません。

いま、日本弁護士連合会が反対の意見書を決議、全国カジノ賭博場設置反対連絡協議会が結成されるなどカジノ賭博合法化に対して国民の不安と反対の声が広がっています。今月初めに実施した朝日新聞の全国世論調査では、カジノ解禁法案に「賛成」が30%、「反対」は2倍近くの59%となっています。国民多数の声を踏みにじり、カジノ賭博合法化に突き進むことは決して許されるものではありません。カジノ解禁推進法案はキッパリ廃案にすべきであります。

以上カジノ賭博合法化に反対する意見を述べ議発第15号の賛成討論と致します。同僚各位のご賛同を心からよろしくお願いいたします。、「カジノ問題の本質は、経済効果うんぬん、依存症対策うんぬん、という政策論争の次元ではなく、利権がらみの賭博場解禁をゆるすかどうかという点にある」、「カジノ問題の本質は、経済効果うんぬん、依存症対策うんぬん、という政策論争の次元ではなく、利権がらみの賭博場解禁をゆるすかどうかという点にある」