議会報告

【質問項目】

1、知事の政治姿勢/アベノミクス、地方創生、沖縄、原発

2、医療介護

3、子どもの貧困

4、とさでん交通

5、リマ水域

 

【知事の政治姿勢】

 

●吉良県議

安倍首相が解散総選挙を実施し、昨日結果が出ました。消費税10%への増税を、国民の7~8割が反対する声に押されて、1年半先送りすることの「是非」を問うという理由でしたが、実態は、アベノミクスでは国民の生活はよくならず、さらに原発再稼働の判断、集団的自衛権の行使のための法整備など国民の多数が反対する事項を前にして、支持率が大きく下がる前に、政権を維持したいという、個利個略によるものでしかありませんでした。

 国民が増税に反対するのは、4月からの消費税率の8%への増税が国民の消費を落ち込ませ、経済を急速に悪化させているだけでなく、発足から2年近くになる安倍政権の経済政策「アベノミクス」が、国民の暮らしを悪化させ、日本経済を破たんの際に立たせていることがだれの目にも明らかになってきているからです。読売新聞の世論調査では、景気回復を「実感していない」という答えが79%と圧倒的です。産経新聞の11月23日付け「日曜経済講座」は「消せない8%の衝撃」として「民主党は3党合意による消費税増税が景気悪化の元凶だと素直に認めるべきだ」「首相も判断ミスを犯した。日銀総裁は異次元緩和をすれば消費税増税による悪影響を相殺できると首相に進言したのだ」と批判しています。

 安倍政権は発足以来、「経済再生」を第一の課題に掲げ、異常な金融緩和や財政支出の拡大など「アベノミクス」を推進してきましたが、再増税の延期を決定したことは、「アベノミクス」と増税路線が破たんしたことを証明したものです。

それを統計数字が証明しています。2年前の2012年7~9月と今年の7~9月の数字を比較しますと、正規雇用の労働者は22万人減少しました。非正規雇用者は123万人増加し、非正規雇用の割合は、37.1%と1.6ポイント上昇し、年収200万円以下のワーキングプアは、1,119万9千人と29万9千人増えています。これが雇用増の実態です。その結果、実質の雇用者報酬は4,320億円減少、実質の個人消費も2兆1,186億円減少です。貯金なし世帯の割合は26.0%から30.4%へと4.4%も増加しています。一方、資本金10億円以上の大企業の経常利益は、7兆円から約11兆円へと4兆696億円増加しています。100万ドル以上の富を持つ富裕層は、9万1千人増加しています。

この2年、国民は貧しくなり、より一層格差が拡大したのではないかと考えるものですが、知事に認識をお聞きします。

 

■知事

安倍政権発足からの2年間で、国民は貧しくなり、格差が拡大したのではないか、とのお尋ねがございました。

安倍政権は、長引くデフレからの早期脱却と低迷する我が国経済の再生に向けて、「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」の3本の矢を放ち、アベノミクスを進めているところであります。

政府が先月25日に発表した11月の月例経済報告では、「景気は、個人消費などに弱さがみられるが、緩やかな回復基調が続いている」とされており、私は、アベノミクスは

全体として経済をよい方向に向かわせているものと思っております。

また、消費税率の引き上げも、しっかりと財源に裏打ちされた持続可能な社会保障制度を確立するとともに、少子化対策などの構造的な課題に取り組み、若い人の暮らしを支えるための財源を確保するという点で、飲まざるを得ない苦い薬だと考えております。

 ただ、経済の好循環を生み出すためには、一定の時間がかかりますし、加えて、4月の消費増税に伴う反動減などもあり、現時点では、お話のありましたように、全国津々浦々にまで、景気回復の実感が届いていないものだと受け止めています。また、いかなる経済政策も、よい効果と共に一定の副作用をもたらす可能性があり、その点への配慮も必用であります。

国におきましては、企業の収益が雇用の拡大や所得の上昇につながり、それが消費の増加を通じてさらなる景気回復につながるという経済の好循環の実現を目指して、成長戦略などを着実に進めていただきますとともに、消費増税に伴う痛みの部分を緩和する低所得者対策、また、現下の景気回復を図るための経済対策を実行していただきたいと思っております。

その際には、地方に経済の好循環をもたらすという視点を特に重視していただく必要があるものと考えておりまして、そうした意味からも、有効な地方創生策の創設を望むものであります。私も、引き続き、積極的に政策提言をしてまいります。

 

●吉良県議

 「アベノミクス」は、異常な金融緩和で国内に出回る資金を増やせば、株高で大企業のもうけが増え、円安で輸出も増えて、労働者の賃金が上がり、消費も増えると宣伝しました。しかし実際には、株高で大企業の含み資産や大資産家の所得が増えただけで、輸出数量は増えず、円安で物価が値上がりし、労働者の実質賃金は増税前から16ヵ月連続で前年を下回っています。高齢者は年金が切り下げられた上の物価上昇に直面しています。GDPの6割を占める家計消費が冷え込んでは、経済の「好循環」は起こりようがありません。失政は明らかです。ただちにやめるべきだと考えるものです。

 9月議会の討論でも明らかにしたように、私たち日本共産党は、大企業・富裕層に応分の税金負担をしてもらう、そのためにこれらへのゆきすぎた減税を元に戻すだけでも20兆円という巨額の税収が確保できることを示しています。また巨額の内部留保を、賃上げ、雇用の安定で国民に還元し、景気を回復させ、税収も増収させる道に切り替えることが必要です。

帝国データバンクは、10月の「円安関連倒産」、負債1千万円以上が39件にのぼり、昨年1月以降で最多を記録したことを発表しています。中小企業比率の高く、第一次産業を基幹産業とする高知県の影響は、燃料費や原材料費の高騰できわめて深刻な状況に陥っています。

異常な金融緩和がもたらした物価上昇が、県経済や産業振興計画にどのような影響を与えているのか、知事の認識をお聞きします。

 

■知事

物価上昇が県経済や産業振興計画に与えている影響についてのお尋ねがございました。

本県の消費者物価は、昨年7月以降、前年比プラスで推移しており、直近のデータである10月の生鮮食品を除く総合指数で103.1、前年同月比2.8%の上昇となっておりますが、これは、本年4月の消費税増税を踏まえれば想定される範囲内ではないかと認識をしております。

一方、個人消費は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動や天候不順の影響がみられるものの、大型小売店販売額など、徐々に持ち直しつつあります。

また、生産活動の面では、鉱工業生産指数をみますと、業種によるバラツキがみられますが、全体としては概ね堅調に推移し、さらに、雇用や所得の面では、有効求人倍率は引き続きかつてない水準で推移しており、雇用者所得も全体的には緩やかに持ち直しております。

これら各種の経済指標を総合的に判断しますと、本県経済は、基調的には緩やかに回復してきていると認識をしておりますが、まだまだ県民の皆様に景気の回復を実感していただけるような生産活動、企業利益、雇用者所得、消費の拡大の好循環には至っていないと考えているところであります。

一般的には、物価の上昇は、消費の手堅さ、手控えを招き、生産面でも原材料価格、物流コストの高騰につながり、売上が増加しなければ、利益を減少させる要因となります。

本県の事業者においても、他県と同様に、物価の上昇による影響が及ぶものと思われますが、いずれにいたしましても力強い経済体質にすることにより、地産外商が隅々にまでいきわたり、経済の縮に対抗できる、そういう経済体質を作り上げていくことが大事だと考えています。そして、それが産業振興計画の役割であります。

本県では、これまでは、全国の景気回復の波に乗ることができず、全国の景気が回復しても、本県は全体としては外部経済とのパイプが細いために、回復できなかった状況に、特に平成12年から22年にかけてあったわけであります。しかしながら、産業振興計画において、付加価値の高い商品づくりを進め、外商活動を積極的に展開してまいりました結果、従前に比べれば全国の景気に連動するようになり、有効求人倍率も過去最高水準になります。

加えて、これまでの取り組みの積み重ねにより、各産業分野を大きく動かすような本格的な取り粗みに挑戦できるようになってまいりました。全国的な景気回復のトレンドともしっかりと連動して、多くの県民の皆様に県勢浮揚の実感を持っていただけるよう、官民一体となって産業振興計画を強力に進めてまいります。

また国においても、こうした地方の取り組みを後押しし、経済の好循環を地方にもたらす実効ある地方創生策の策定をされますよう強く求めるものであります。

 

●吉良県議

 続いて、政府の掲げる「地方創生」に関連してお聞きします。

 9月議会での「中山間地域が消滅すれば、都市部自体も存続が危ぶまれる」との知事答弁は、正論だと思います。問われているのは、そのための方策です。最初の質問も、このことに深く関連しています。まず、最初に「自治体消滅」が喧伝されていることについて伺いします。

「自治体消滅論」は「地方切捨て」を推進するためのイデオロギー的世論操作と考えるものです。地方制度調査会の委員を歴任してきた大森わたる東大名誉教授は「自治体消滅の罠」、これは全国町村会報、平成26年5月19日にと称して、「市町村の最小人口規模が決まっていないにもかかわらず、自治体消滅の可能性が高まるというが、人口が減少すればするほど市町村の存在価値は高まるから消滅など起こらない。起こるとすれば、自治体消滅という最悪の事態を想定したがゆえに、人びとの気持ちが萎えてしまい、そのすきに乗じて『撤退』を不可避だと思わせ、人為的に市町村を消滅させようとする動きが出てくる場合である」と厳しく批判しています。

 そうした中で、全国町村会は、9月10日、「都市・農村共生社会の創造~田園回帰の時代を迎えて」との提言を発表しました。提言は、最近の農村志向の高まりを「田園回帰」と捉え、①少子化に抗する砦、②再生可能エネルギーの蓄積、③災害時のバックアップ機能、④新たなライフスタイル、ビジネスモデルの提案の場として、地方の価値を宣言しています。高知県が産業振興計画で努力している方向と一致する内容だと思います。

「自治体消滅論」への認識について、知事に伺います。

 

■知事

自治体消滅論への認識について、お尋ねがございました。

本年5月「日本創成会議・人口減少問題検討分科会」は、いわゆる「消滅可能性都市」のリストを公表いたしました。

このことをきっかけとして、全国で人口減少問題に対する危機感が広く共有され、少子化、人口減少問題が、国家的な課題であることが強く認識されるようになりましたし、国におきましても、地方創生の中で、少子化、人口減少、地域の活性化の3つを、歴代初めて、三位一体の問題として捉え、対策を講じようとするなど、そのインパクトは大きく、意義のあるものだったと受け止めております。

他方、この提言に基づく様々なご意見の中には、当初、若者に魅力ある地域の拠点都市に投資と施策を集中していくべきだという考え方が示されておりましたので、私も、中山間地域をはじめとする都市以外の地域の切り捨てにつながりかねないのではないかと懸念をいたしました。中山間地域と都市の共生や、本県が取り組んでいる「集落活動センター」のような小さな拠点の必要性を関係者に強く訴えてきたところでございます。

こうした活動を通じて、関係者の皆様には、一定ご理解をいただいてきているのではないかと思っておりますし、先月開催されました「まち・ひと・しごと創生会議」で示された「総合戦略」骨子(案)におきましても、「中山間地域等における『小さな拠点』の形成」といった項目が盛り込まれるなど、中山間地域の重要性は広く認識されつつあるのではないかと思っております。

今後、国におきまして、総合戦略を取りまとめることとしております。引き続き、その動向を十分注視いたしますとともに、必要に応じて、全国知事会とも連携して政策提言等を行うなど、中山間地域も大事にした地方創生になりますよう、取り組んでまいりたいと考えているところであります。

 

●吉良県議

 地方創生というなら、必要な財源は国が責任をもつ必要があります。「三位一体改革」で、地方財源は、6兆8千億円削減されています。その後、「地方の反乱」といわれ、政権交代につながる事態のなか、交付税の総額確保、緊急経済対策など実施されてきましたが、財務省は「リーマンショック対応から平時に戻す」と、地方交付税の削減を狙っています。「総額確保」は、実質的には行政サービスの水準の低下をもたらしています。高齢化で社会保障費は増加していますが、その自然増分に届いていません。

就労支援、自殺防止対策、防災事業など、地方には新たな行政需要が次々と発生しています。いずれもマンパワーを必要とする事業です。2012年12月議会の質問で「新しい南海トラフ巨大地震対策特措法は、東日本大震災の復興の取り組みを教訓にしたものにする必要がある」として、地域の防災対策を推進するには自治体のマンパワー充実が重要であり、職員配置の充実に対応できる内容を、と提起してことがあります。今年2月の記者会見で知事も「マンパワー不足に国として支援すべき。ナショナル・レジリエンス懇談会のメンバーとして、強く述べてきた」と発言しています。

「総額確保」ではなく、社会保障の自然増分、行政需要の拡大に対応した財源確保を強く求めていくべきではないか、知事にお聞きします。

 

■知事

行政需要の拡大に対応した財源確保について、お尋ねがありました。

社会保障関係経費に加え、南海トラフ地震対策などの防災・減災対策や地域経済の活性化対策など、地方の財政需要が増大する中で、それに対応できるだけの十分な地方の税財源を確保していくことが必要であります。特に、歳入に占める地方交付税の割合が高いなど、本県のように財政力の弱い団体にとっては、極めて重要な問題であると考えております。

そのため、本県としましては、これまでも、地方の財政需要に対応した税財源が確保されるよう、国に対して強く訴えてきたところであります。

 具体的には、増高する社会保障関係経費を含め、今後の地方の財政需要について地方財政計画に的確に反映するとともに、地方の安定的な財政運営に必要となる地方交付税などの一般財源を十分に確保するよう、全国知事会などを通じて繰り返し訴えてきております。

また、例えば、南海トラフ地震対策に関しては、国の手厚い支援制度を盛り込んだ南海トラフ地震対策特別措置法の制定などを働きかけてきたほか、社会保障分野に関しては、地方独自の少子化対策を後押しする少子化対策強化交付金の創設を提言するなど、個別分野での財源確保につながる制度の創設も強く訴えてきており、本県の訴えてきた内容が一定実現してきているところであります。

今後も、社会保障関係経費など地方の財政需要の増大が見込まれますことから、それに対応した十分な税財源がしっかりと確保されますよう、全国知事会などを通じて、引き続き強く訴えかけてまいりたいと考えております。

 

●吉良県議

 地方を元気にするというなら、地方の意見に対し、真摯に向き合う国の姿勢が不可欠だと思います。

9月議会で、県民に対する辺野古新基地建設を強行する国の姿勢について、「一般論としてこのましくない」と答弁されましたが、11月16日投票の沖縄県知事選挙で、辺野古移設に反対する翁長新知事が当選し、重ねて沖縄県民の意思が示されました。また、昨日の衆議院選挙でも、オール沖縄の候補者が小選挙区1区から4区、すべてを勝利したということは、この流れをさらに確たるものとしています。住民、地方自治体の意思を無視し、基地建設を強行することは、民主主義国家であってはならないことです。翁長新知事はインタビューに答えて「問われるのは日本の民主主義国家としてのあり方だ」「沖縄の民意に配慮できないというのであれば、日本の民主主義はアジアや世界から評価されない。粛々と辺野古を埋め立てていくという発想は、世界から民主主義国家としての信頼を失うという意味で、大変な損失になる」と発言していますが、まったくその通りだと考えるものです。

沖縄の事態を許せば、全国どこでも、同様の強権政治に道を開くことになるという私たち自身の問題だととらえるものです。

地方自治の本旨から言って、国に対し、少なくとも計画は凍結することを、全国知事会として要請すべきではないか、知事にお聞きします。

 

■知事

地方自治の本旨から言って、国に対し、少なくとも辺野古への基地移転計画を凍結することを全国知事会として要請すべきではないか、とのお尋ねがございました。

9月定例会におきまして、中根議員の御質問に対し、「一般論として申し上げれば、地元自治体が反対しているにもかかわらず、国が事業を強行するといったことが望ましくないのは言うまでもない」との答弁をいたしました。

これは、国が何ら手続きをとらずに、事業を強行する場合は、一般論として望ましくないとの趣旨であり、辺野古新基地建設に関しては、苦渋の決断であったと察せられますが、当時の沖縄県知事が、普天間飛行場周辺の県民の皆様の安全確保のために、関係法令に基づき埋め立てを承認しているものと理解しております。

既に、沖縄県知事の承認があり、事業が進められている中で、私から申し上げるべきことはありませんが、政府におかれましては、沖縄県民の皆様の不安な声をしっかりと踏まえ、丁寧な上にも丁寧な説明を繰り返していくことが必要ではないかと考えているところであります。

 

●吉良県議

 原発再稼働も同様です。いまだに拡大し続け、原因も究明されていない福島原発事故。それにもかかわらず、再稼働の最終判断は、事業者まかせである、という従来の枠組みは変わっていません。事業者が自主的に結んでいる立地基礎自治体と都道府県の同意にゆだねられています。避難計画づくりを義務付けられている原発30キロ圏内の自治体の意見は無視されています。川内原発では、30キロ圏内の9自治体のうち再稼働に賛同しているは、1市のみです。いちき串木野、日置両市議会は「同意」が必要な「地元」に加えるよう要求し、姶良(あいら)市議会は再稼働反対と廃炉を要求しています。11月6日の衆院原子力問題調査特別委員で東京電力の原子力部門のトップである姉川常務は、「原発の30キロ圏内の自治体の理解がなければ、再稼働させるには十分ではない」と発言しています。

浜岡原発を抱える静岡県の川勝知事は、10日の定例記者会見で、「UPZの自治体は備えをしなくてはならない地域。差し当たってこの方たちをしっかり入れる」「11市町の同意がなければ動かせないことになる」とのべています。同知事は、川内原発に対して「30キロ圏の住民の意向が無視されたという意味では、見切り発車の面がある」と指摘し、「私どもは見切り発車をしない」と発言をしていますが、原発の賛否をこえて、あまりにも当然の主張だと思います。

再稼働の同意要件に法的根拠がないのは異常であり、30キロ圏の住民、自治体の意向を無視してもかまわないというスキームは、地方自治の本旨、住民自治を無視したものと思いますが、知事の認識をお伺いします。

 

■知事

原発の再稼働の同意要件に対する認識について、お尋ねがありました。

川内原発の再稼働の判断における自治体の同意については、法令等の定めにより付与されたものではなく、立地自治体の鹿児島県や薩摩川内市と九州電力との協定によるものと承知しています。

伊方原発におきましても、愛媛県と伊方町が四国電力と協定を締結しておりますので、これに基づいて、事実上、同意なしには再稼働できない、ということになっております。

また、伊方原発周辺に位置する八幡浜市などは事前協議などについて定めた覚書を締結しておりまして、このように、距離に応じて強い発言力を持つ形になっているということは、合理的な姿だと、従前から申し上げているところであります。

本県は、協定に基づいて地元同意する立場ではありませんが、四国電力に対して、勉強会を通じて安全対策の徹底を求め、県民の皆様が日頃から心配されている原発の安全性に対する様々な疑問を率直にぶつけています。それに対して、四国電力も誠意をもって対応していただいているところです。

 このような形で、そのプロセスを公開の場で行うことで、本県においても、住民の皆様や自治体の意向が十分尊重され、誰もが納得できる安全対策が講じられる状況を担保していきたいと考えているものであります。

 

 

【社会保障改革】

 

●吉良県議

社会保障改革についてお聞きします。

地域医療介護総合確保推進法により、必要な医療介護が提供できなくなることが危惧されています。

今回、政府が医療費を抑えるために示した柱が病床機能報告制度と地域医療構想です。

病床機能報告制度は、厚生労働省は「医療機関は、その有する病床において担っている医療機能の現状と今後の方向を選択し、病棟単位で、都道府県に報告する制度を設け、医療機関の自主的な取り組みを進める」と説明し、この10月1日から各医療機関が報告を開始することとされています。

政府によると、川上の改革として病床の削減の具体化を進めようとしています。高齢化人口が一番増える2025年までに202万床ベッドが必要であるのに、それを159万床まで削減する計画です。そのために、まずは36万床ある看護師の配置基準が手厚い7:1病床を、今年度から来年度にかけて2ヵ年で9万床減らすというのです。そして、病床全体でも、高度急性期や回復期など4段階に機能を分けて、病床数を盛り込んだ「地域医療構想」を策定することが都道府県に義務付けられたのです。政府は、医療費の低い地域を「標準集団」と位置づけ、都道府県に支出目標を決めさせ、国は目標を超えた都道府県に対し、原因の分析と具体的な改善策の策定を義務づけ、支出の抑制をというものです。とりわけ、病床再編とベッド削減、平均在院日数削減により、医療給付を減らす役割が担わされ、しかも一つひとつの病院にとって、そのベッド数削減に従わなければ、ペナルティが課せられることにもなります。このように、都道府県や病院に、医療費削減のための義務が課せられることとなってしまうのです。

これまでも患者さんは「在宅へ」と言われ、「遠いところに入院しなくてはならず、入院したら、もう次の転院先を探し始めないといけない」だとか、「在宅と言われても、夜間はどうするのか」などの実態に、この方向はいっそう拍車をかけることとなり、第一線で医療を支えておられる開業医の方々から、「行き場のない患者さんがあふれてしまう」「都市部との医療の格差がほとんど考慮されていない」など、疑問の声が出されているのです。一人暮らしの高齢者の多い本県の影響は深刻だと考えるものです。

地域医療構想の本県への影響をどう認識しているのか、必要な医療が確保されるのか、知事に認識をお聞きします。

 

■知事

地域医療構想の策定による本県への影響と、必要な医療の確保について、お尋ねがありました。

本県は、人口あたりの病院数や病床数が全国で最も多いものの、医療資源が県中央部に集中しているうえ、医療機関へのアクセスが不便な中山間地域が多いという特徴があります。

また、高齢化や過疎化の進行とともに、高齢者の単身世帯が今後も増加することなどにより、しばらくは入院医療のニーズが増加していくことが予想されます。

このような中、地域における効率的かつ効果的な医療提供体制を確保することを目的としまして、本年6月に制定されました地域医療介護総合確保推進法における医療法の改正により「病床機能報告制度」が10月に開始され、各医療機関から病棟ごとに急性期や回復期といった医療機能の現状と今後の方向性についてご報告いただいているところであります。

今後、この報告内容や地域の医療需要の将来推計等を基に、医療機能ごとの病床数の必要量などを含む地域の医療提供体制の将来のあるべき姿を示す「地域医療構憩」を平成28年度までに策定することといたしております。策定にあたりましては、先ほど申し上げた本県の医療提供体制の特徴を勘案しながら、地域の実情に応じて、その地域にふさわしいバランスのとれた医療提供体制を構築することが必要と考えておりまして、これまでも国に対し、全国知事会などを通じてこの点、提言してまいりました。

現在、国においてこの地域医療購想の策定のためのガイドラインが検討されているところでありますが、現時点では病床機能ごとの必要数の算定方式などガイドラインの具体が明らかになっておりません。このため、本県の医療にどのような影響が生じるか判断できる状況にはまだありませんが、地域医療構想の推進によって県民の方々が必要な医療が受けられなくなることがないよう、今後の国における検討の状況を注視してまいりたいと考えているところであります。

 

●吉良県議

 介護分野の切り捨ても深刻です。要支援の通所介護、訪問介護のサービスをボランティアなどが担う市町村の事業に移行させる計画で、必要な介護サービスが受けられない、重篤化して保険財政にも結果として悪影響を及ぼすなど多くの反対、批判の声があがりました。

 その結果、政府は、「専門的サービス」を残すとしましたが、厚労省の資料では、その割合を将来は「5割以下に」することがしめされており、新規にサービスを受ける人を中心に、資格のない常勤の雇用者やボランティアなどによる「多様なサービス」に流しこむ仕掛けが作られようとしています。

その最大の仕掛けは、毎年5~6%増加すると見込まれる要支援者向け給付費を「地域支援事業」に置き換えることで、後期高齢者の人口の伸び率3~4%に抑えるというものです。政府は、上限を超えて、給付費が伸びた場合には、超過分には、国庫補助を拠出しないという脅しをかけ、地方自治体が否応なしに給付抑制に追い立てられていく仕掛けとなっています。あったかふれあいセンターを軸に、新たなサービスが提供できる可能性もありますが、総額に上限がある制度では、全体のサービスが縮小するもとでの話でしかありません。6月12日参院厚労委で厚労大臣が認めたように「必要なサービス切捨ては、介護財政が悪くなるだけ」です。また、多様なサービスの報酬は、現在の介護報酬より低くなり、事業所の経営を圧迫することが懸念されます。高知県は、条件不利地の中山間地の事業所に、県単独で支援し努力していますが、その努力にも逆行するものです。

今回の介護給付費削減の仕組みについて、影響をどう試算、認識しているのか、地域福祉部長にお聞きします。

 

■地域福祉部長

要支援者向けの介護予防給付費の見直しに伴う新たな仕組みの本県への影響と認識についてのお尋ねがありました。

要支援者に対する介護予防給付の新しい総合事業への移行につきましては、今後、一人暮らしの高齢者世帯や認知症高齢者などが増加することなどを踏まえ、今から多様なサービス提供主体の参入を通じて、地域特性を踏まえたサービスの確保が可能となるよう、体制を整備しようとする趣旨の見直しだと認識をしています。

今回の見直しを通じて、要支援者などの身体的機能等が低下した方が要介護状態となることを予防する事業などの充実が図られることにより、認定に至らない高齢者の増加なども期待され、結果として、介護給付費の効率化といった面では、一定の改善が図られるのではないかと考えておりますが、新制度への移行に伴いサービスの提供が確保出来ないといった事態だけは、何としても避ける必要があります。

 このため、県としましても、あったかふれあいセンターなどを活用した新たなサービス提供拠点の整備や新たなサービスの担い手となります意欲のある高齢者の人材養成研修などへの参加を積極的に支援するなど、地域の実情に応じたサービスの提供体制が整備されますよう、市町村への支援をこれまで以上に強化してまいります。

なお、今回の見直しに伴う影響につきましては、現在市町村において、新しい総合事業への移行時期について検討中であることや、国において新たなサービスの単価設定の基準となります介護報酬改定に向けた議論が続いており、現時点での試算には至っておりません。

 

●吉良県議

10月8日、財務省の財政制度等審議会で、2015年度の介護報酬改定について、6%以上のマイナス改定にする考えが示されました。財務省は、介護サービス全体の平均収支差率、8%程度が一般の中小企業の平均値、2~3%を上回っていることを根拠にしていますが、マイナス改定が連続しており、この大幅な削減は、介護の基盤を崩壊させかねません。全国老人施設協議会は、各種調査で経営状況に大きなばらつきが見られるにもかかわらず「平均収支差率だけで報酬の在り方を論じることは、現に厳しい経営実態のある事業もあり、サービス提供を維持する上で大きなリスクを伴う」こと、仮に特養の報酬をマイナス6%とした場合、「5割を超す施設が赤字経営となる」と強く反対をしています。

介護報酬が6%削減されれば、本県への影響は極めて深刻であり、断固反対すべきと思うのでありますが、知事のご所見をお聞きします。

 

■知事

介護報酬が6%削減されれば、本県への影響は極めて深刻であり、断固反対すべきだと思うがどうか、とのお尋ねがありました。

国の財政制度等審議会の議論におきまして、介護サービス全体の平均収支差率はプラス8%程度と、一般の中小企業の水準であるプラス2~3%弱を大幅に上回っており、介護職員の処遇改善加算などの充実は図る一方で、介護報酬の基本部分の収支差を少なくとも中小企業並みとなるように、6%程度削減することが必要との主張がなされていることは承知をいたしております。

また、今後、首都圏を中心にして、我が国が先進国でも例を見ないような超高齢社会を迎える中で、社会保障給付費は、医療や介護などを中心に急激に増加することが見込まれ、介護保険制度の持続可能性を確保するためには、給付の伸びを国民の負担能力の伸びに近づける必要があるとの考え方も示されているところです。

一方で、制度を安定して運営して行くためには、地域の必要性に応じて、その量が確実に確保される必要がありますし、その質についても充実が図られることが欠かせません。

このため、行き過ぎた介護報酬の見直しにより、その量と質がニーズに十分に応えられないといった状況だけは、避ける必要があります。年明けに予定されております介護報酬改定の決定に向けた議論の動向などを注視してまいりたいと考えているところでございます。

 

●吉良県議

医療・介護分野は、生活を支えるとともに、おおむね医療費の半分、介護費用の6~7割は人件費であり、雇用、経済政策しても本県にとっても極めて重要です。とりわけ、本県の女性の就労者の3割は医療・福祉関係であり、全国平均の2割を大きく上回っています。

高齢化が進む地方にとって、医療・介護の充実は、「地方創生」の重要なテーマだと思うのでありますが、知事のご所見を伺います。

  

■知事

次に、医療・介護の充実は、「地方創生」の重要なテーマと考えるが、どうかとのお尋ねがありました。

本県において、医療・介護分野で雇用されている方は、平成24年の調査で5万5千人に上り、全ての産業種別の中で最も多くなっています。また、そのうちの約8割が女性労働者となるなど、医療と介護の職場は地域の雇用の場として、また女性活躍の場としても大きなウェイトを占めており、高齢社会において、医療・介護分野は、地域で安心して働ける仕事を創り出す重要な産業とも言えます。

一方で、地域のニーズに応じた医療・介護サービスを適切に確保していくためには、安定的に医療・介護に従事する人材が確保されることが必要であり、今議会において、「医療介護総合確保法」に基づき人材確保を含む医療・介護サービス確保のための財源として、「高知県地域医療介護総合確保基金」の設置をお願いしているところです。

こうした中、今後とも高齢化が進む本県にとりまして、一人住まいの高齢者の増加のことなどを考慮いたしますと、地域で安心して住める住まいの確保対策などは、医療介護と地域とのかかわりや、益々その重要性、確保対策など、医療介護と地域の関わり、それを後押しする施策が益々その重要性を増してくるものと考えているところであります。

このため、県としましても、配慮を必要とする高齢者などの住まいの整備と確保対策について、また「あったかふれあいセンター」などの地域資源を活用した入居者へのサービス確保策などについて、地域の課題解決に向けた新たな取組として支援したいと考えておりまして、また結果として、そのことが地域での新たな雇用を生み出すことにもつながっていくよう仕組みを検討したいとも考えているところであります。

今後とも、地域が必要とするバランスのとれた医療・介護サービスの提供体制の構築はもちろんのこと、介護や福祉の分野などでの地域の課題解決に向けた市町村などの自主的な取組を積極的に支援することなどを通じまして、医療介護、そして地域の創生、よい相乗効果をもたらしていきたいと考えている所であります。

 

●吉良県議

第6期の介護保険料について伺います。厚生労働省の推計によると、40歳から64歳の介護保険料の2014年度の見込み額は月5,273円になり、介護保険制度が始まって以来、初めて5千円を突破しました。制度開始時の保険料は2,075円であり、14年間で2.5倍にはね上がっています。増大する負担に、政府も低所得者対策を導入し、自ら「公平性を欠く」と否定してきた一般財源の繰入を決定しました。このこと自体が、介護保険のスキームが限界を証明しています。今ある都道府県の財政安定化基金、市町村の介護給付費準備基金を活用して、保険料の引き上げを抑える努力がもとめられています。

 財政安定化基金は、市町村の介護事業の赤字に対応するものですが、制度発足当初には活用されたものの、昨今は見通しが正確となり、ほとんど活用されていないのが実態です。可能な範囲での取り崩し活用が求められます。市町村の介護給付費準備基金は、介護サービスの利用が計画に届かず、結果として黒字になった保険料が原資ですから、3年前の本議会で答弁のあったように「全額取り崩すべき」ものだと考えます。

第6期の介護保険料の見通しはどうなっているか、基金を活用し、保険料を抑制することについて、地域福祉部長に決意を伺います。

 

■地域福祉部長

次に、第6期の介護保険料の見通しと、保険料の上昇を抑制するための県と市町村に設置された。基金取り崩しに向けた決意について、のお尋ねがありました。

先ず、第6期の介護保険料についてですが、現在、市町村において、これまでのサービス利用実績や新たな施設整備の計画などを基に、今後のサービスの利用見込量の推計作業が行われているところです。

また、保険料算定の基礎となります介護報酬の単価につきましては、国において3年に1度の改定作業が行われているところですし、消費税率10%への引き上げが先送りされたことに伴い、低所得者の保険料の軽減措置の拡充策についても財源確保の面からその完全実施が流動的となっており、現時点では保険料の算定には至っておりません。

次に、県と市町村に設置された基金の取り崩しによる保険料の上昇抑制策につきましては、先ず、県に設置された介護保険財政安定化基金ですが、介護保険法に基づき、市町村の保険財政が赤字になった場合に、貸付や交付を行うために設置されたものであり、第5期のみの例外的な取り扱いとして、介護保険法の一部改正により、市町村の保険料の上昇を抑制するための取り崩しができることとされたものでございます。

次に、市町村に設置された介護給付費準備基金につきましては、議員のお話にもありましたように、サービスの利用量が予想を下回ったこと等により、介護保険財政が黒字となった場合に積み立てを行っているものであり、国においても、次期計画期間に歳入として繰り入れ、保険料の上昇を抑制するために充当することも一つの考え方として示されております。

このため、県としましても、第6期計画の策定に向けた市町村とのヒアリングの際には、準備基金の適正な取り崩しについて積極的な助言に努めているところです。

 

 

【子どもの貧困対策】

 

●吉良県議

子どもの貧困対策について伺います。

9月議会で、重要な課題、実効性ある計画をつくるとの力強い答弁をいただきましたが、政府の子ども貧困対策推進法の大綱については、少なくない地方紙が「本気度が伝わってこない」という厳しい指摘をしています。その理由は、子どもの貧困対策は、なにより、貧困の根絶が目標とされるべきですが、同法は、政策目標を「健やかに育成される環境を整備する」とだけ規定しており、貧困そのものの削減・根絶が目標となっていないことにあります。イギリスの「子どもの貧困法」を参照したと言われていますが、「貧困指標の設定とその削減目標の法定」「政府及び自治体の対策大綱策定過程への当事者参加の法定」など取り入れられていません。

以下、高知県の計画を実効性あるものにするために、子どもの貧困対策大綱にもとづく計画づくりの課題、問題点について具体的にお聞きします。

最初に、知事に子どもの貧困に対する認識と解消にむけた決意を伺います。

 

■知事

子どもの貧困に対する認識と解消に向けた決意について、のお尋ねがありました。

子どもの貧困対策は、経済的な困窮に止まらず、子どもたちの様々な可能性の選択肢を閉ざし、その結果として、将来への夢と希望や人生を選択する機会を奪うことにもつながるなど、県としても、課題解決に向けて、早急に取り組まなければならない重要な政策課題だと認識をいたしております。

このため、子どもの貧困の実態などから目を背けることなく、現実を真摯に見つめ直し、子どもの貧困対策は本県の未来への投資であり、そして何よりも子どもたち自身の未来への投資だと捉えたうえで、子どもたちが、生まれ育った家庭の経済状況などに左右されず、夢と希望を持ち続けて育つことのできる環境整備に向け、取組を進めてまいりたいと考えている所でございます。

 

●吉良県議

計画づくりで、最も大事なことは、「子どもの貧困」の定義、削減目標の明確化です。貧困対策を「総合的に推進する」という以上、これなしに、施策の立案、施策への合意形成、検証評価がなりたちません。イギリスの法は、4つの数値目標を定めています。「相対的低所得に関するも目標」「低所得と物質的剥奪の複合に関する目標」「絶対的低所得に関する目標」「貧困の継続に関する目標」の4つです。

これらの目標の中で、所得、相対的貧困の数字だけでなく、「他の子どもが共有する生活体験が奪われている状態の克服」「景気動向、中央値に左右されない指標」「貧困の期間が長いほど世代間連鎖を招きやすいことに着目した指標」など、子どもの貧困を総合的にとらえた視点が極め重要です。

この視点の重要性と、県計画にどう反映させるおつもりなのか、知事にお聞きいたします。

 

■知事

計画策定に当たっての総合的な視点からの支援の重要性と県計画にどのように反映するのかといったことについて、のお尋ねがありました。

本県では、これまでも「教育振興基本計画」での学校教育における学力保障と就学支援などに向けた取組や、「日本一の健康長寿県構想」における次代を担う子どもたちを守り育てる環境づくりなどを通じまして、子どもたちの健やかな成長を支援してまいりましたし、ひとり親家庭の保護者などへの就労や経済的支援などにも、積極的に取り組んでまいりました。

今後は、こうした取組を、子供の貧困対策大綱で示されました「教育」「生活」「保護者に対する就労」「経済」的な支援といった4つの分野で再整理を行い、大綱の基本方針で示されました、貧困の世代間連鎖の解消に向けまして、きめ細やかで切れ目のない支援が行き届きますよう、総合的な視点に立った計画づくりを進めて行く必要があるものと考えております。

具体的には、子供の貧困率だけに止まらず、大綱で示されました県計画に盛り込んだ施策の実施状況や効果を検証・評価するための子どもの貧困に関する25の指標の改善に向け、本県の教育・福祉などに関する施策を25の指標と関連付けたうえで、各々の効果もよく検証したうえで、実効性がもたらされるよう、ようすれば効果的な施策を追加的に盛り込むことなどによりまして、子どもの貧困対策を総合的に推進してまいりたいと考えている所でございます。

 

●吉良県議

大綱の示す指標は、「生活保護世帯に属する子供の進学率、就職率」「ひとり親家庭の親の就業率、その子供の就園率、進学率、就職率」をあげています。

進学、就職は大事なことですが、大綱の基本目標の筆頭に「我が国の将来を支える積極的な人材育成策として取り組む」とされており、一人ひとりの価値よりも人材需要と効率的な育成が優先される懸念を覚えます。重点施策の「大学進学」項目では「意欲と能力がある学生が」という前提がついています。貧困ゆえに、意欲の獲得や能力の顕在化の機会を奪われるというリスクそのものの解消が目的となっていない、そういう不十分さがあります。

今年3月、学力学習状況調査の結果から、学力に影響を与える要因を分析した耳塚寛明・お茶の水女子大学副学長による文科省の委託研究が発表されています。家庭所得と両親の学歴を加味した「社会経済的背景」の関する項目では、社会経済的背景が低い児童生徒が「3時間以上」勉強して獲得する学力の平均値は、最も高い層が「全く勉強しない」という児童生徒の学力の平均値よりも低い、という衝撃的なものです。報告は、「この意味で、学力格差というのは、教育問題というよりは、社会問題として把握したほうが正しいと考えます」と指摘しています。

 きちんと食事が確保されていること、自分を表現できる服装ができること、一人になったり勉強に集中できる空間があること、本に親しんだり、クラブ活動に参加できる環境があること、家族で芸術文化にふれたり、旅行など外の世界に触れられることなど、子どもの成長過程にどのような環境・資源が用意されているかが、極めて重要だということです。

貧困によるリスクの解消が最も重要であり、そのための指標と、部局を横断した総合的な推進体制が必要と思うのですが、地域福祉部長にお聞きします。

 

■地域福祉部長

子どもの貧困対策について、貧困によるリスクの解消のための指標と、部局を横断した総合的な推進体制についてのお尋ねがありました。

子どもの貧困対策につきましては、子どもたちの将来が、その生まれ育った家庭の事情等により閉ざされ、結果として貧困が世代を超えて連鎖するといった貧困のもたらすリスクの解消に向けて、子供の貧困に関する25の指標の改善が図られるよう、総合的に取り組む必要があるものと考えております。

このため、計画の策定の際には、乳幼児期から就職に至るまでの間において、子どもたちの意欲を引き出し、個々の能力が発揮できる学習・就学支援などといった教育面での支援策に止まらず、大綱で示された4つの分野にわたる重点施策の総合的な推進が図られるよう、留意しておく必要があります。

併せて、こうした重点施策を推進するにあたりましては、県として早急に取り組まなければならない県政の重要課題と位置づけ、教育委員会や商工労働部などの関係部局とも連携の強化を図りながら、本県の子どもたちの貧困問題の課題解決に向け、取り組んでまいりたいと考えています。

 

●吉良県議

 大綱の別の指標は、「スクールソーシャルワーカーなどの配置」「就学援助制度に関する周知状況」「奨学金の貸与基準を満たす希望者のうち貸与を認められた者の割合」と行政の実施状況の目安です。

 しかしまず、この施策が積極的に役割を果たすかどうかが検証されていません。例えば奨学金のほとんどは、卒業時に数百万円の借金背負わす「教育ローン」です。仕送りも減少する中、借金もできるだけ少なくしたい、そうした重圧が、ブラックバイトが蔓延する原因ともなっています。無批判にこれらの施策を肯定すべきではありません。

特に違和感のあるのが「就学援助の周知」です。就学援助は市町村で水準が違います。

周知でなく、その水準が十分なのか、そして必要な家庭が受けられているかを指標とすべきではないでしょうか。教育長にお聞きします。

 

■教育長

子供の貧困対策に関連し、市町村が行う就学援助についてのお尋ねがございました。

まず、就学援助の水準につきまして、市町村によって援助対象となる費目が異なっているのは事実ですが、生活保護を受給している世帯に対する修学旅行費、また、準要保護世帯に対する修学旅行費、新入学時及び進級時の学用品費や学校給食費は共通して援助されております。その他の、例えば、通学用品や校外活動の費用などについては、それぞれの市町村の実情に応じて援助されているものと受けとめております。

県といたしましては、今後も市町村が安定的かつ充実した就学援助制度を運営していけるよう、全国都道府県教育長協議会などを通じて、国に対して、十分な財政措置を講じるよう働きかけを続けてまいります。

支援の必要な世帯に確実に就学援助を行っていくためには、こうした制度を住民の皆様にしっかり周知していくことが重要であります。そのため、国の「子供の貧困対策に関す

る大綱」において、取組指標として「入学時」や「進級時」に必要な書類を配付している市町村の割合が盛り込まれたものと受けとめております。

指標としては、制度の周知状況ではなく、援助を要する世帯数に対する実際の支給状況とすべきではないかとのご指摘につきましては、必要な世帯に漏れがないようにとのご主旨だと思いますし、そのことは大変重要と考えますが、就学援助は、あくまで申請に基づいて実施する制度ですので、そういった形で、数字を押さえるのは現実的にはなかなか難しいのではないかと思うところでございます。

 

●吉良県議

 大綱には重要な指摘もあります。「基本方針2」は「子供の貧困対策を進めるに当たっては、第一に子供に視点を置いて、その生活や成長を権利として保障する観点から、成長段階に即して切れ目なく必要な施策が実施されるよう配慮する」としています。また、「施策の実施に当たっては、対象となる子供に対する差別や偏見を助長することのないよう十分留意する」という内容も重要です。

例えば、「公的保育」は、子どもの発達を保障する施策であり、多様な所得階層の家庭の子どもが通園することで、スティグマを生みません。

低所得者対策という視点ではなく、一般施策の充実の中で「権利を保障」する観点が極めて重要ではないかと考えるものですが、地域福祉部長にお聞きいたします。

 

■地域福祉部長

子どもの貧困対策を進める際には、一般的な施策を充実させる中で、子どもの「生活や成長の権利を保障」するといった観点が極めて重要ではないか、とのお尋ねがありました。

子どもの貧困対策を進めるに当たりましては、基本的には、一般的な子どもに関連する施策がベースとなり、子どもたちの成長を育む環境や、教育・保育などが受けられる条件などが整備されて行く中で、その改善と充実が図られることにより、世代間を超えた貧困の連鎖が断ち切られ、結果として、子どもの貧困問題の解消へとつながることが何よりも重要です。

このため、子どもの貧困に関する指標の改善に向けまして、計画に基づく具体的な施策を実施して行く際には、生活保護世帯やひとり親家庭の子ども、あるいは社会的養護を必要とする子どもなどといった、支援を要する緊急度の高い子どもたちに優先的に施策を講じるような配慮が必要なのはもちろんのこと、差別や偏見を助長することのないよう、十分に留意する必要があるものと考えております。

 

●吉良県議

 子どもの貧困解消と逆行する動きが政府内部から聞こえてきます。

第一は、生活保護の児童養育加算、母子加算の引き下げの懸念です。10月21日に開催された社会保障審議会・第19回生活保護基準部会では、住宅扶助だけではなく、子どものいる世帯に対する扶助や加算についても短時間ながら議論が行われています。 厚労省は直ちに削減する意向を示したわけではありませんが、検討のためのたたき台を提出しています。児童養育加算においては「一般の夫婦子世帯における生活扶助相当支出額と均衡がとれるものとなっているか」、母子加算においては「一般のひとり親世帯における生活扶助相当支出額と均衡がとれているか」という比較検討の方法です。すでに、今年5月30日の財政制度等審議会に提出された参考資料では、夫婦子1人世帯・ひとり親世帯のいずれにおいても、「生活保護基準額のほうが一般低所得世帯より高い」という結果を示し、「各種加算・扶助を加えた有子世帯の生活保護水準は、低所得の有子世帯の消費水準を上回っている。有子世帯の加算・扶助のあり方・水準について総合的な見直しが必要」と断じています。

これは、生活保護水準にも達していない、あってはならない層をどう改善するのかの視点に立っておらず、子どもの貧困対策推進に逆行しています。あってはならない層との比較をすること自体が大問題であり、比較自体が間違っています。

生活保護基準は、モデル世帯との水準均衡方式をもとに決定し、世帯の構成が違っても、その基準を確保するために、子どもがいれば、教育扶助の適用、児童扶養加算を行い、その二人親世帯の生活基準を維持するために、一人親世帯には母子加算を実施しています。低所得世帯との比較となれば、それは、生活保護基準の決定の在り方を、全面的な見直しを意味しますが、そのような検討はなされていません。本来、あってはならない生活保護基準以下の世帯をなくことが政治の役割です。しかも、ひとり親家庭の貧困率は先進国の中でも極めて高く、しかも、就業すると貧困率50.4%から50.9%と高くなる異常な構造が問題です。

子どもの貧困解消に逆行する児童養育加算、母子加算の見直しは、子どもの貧困解消に逆行しており、まったく道理にかなわないと思いますが、地域福祉部長の考えをお聞きします。

 

■地域福祉部長

生活保護制度における児童養育加算及び母子加算についてのお尋ねがありました。

生活保護制度は、「国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という、憲法第25条の規定を具現化するものであり、生活保護制度を国民の信頼に応えられるもの

として維持・継続して行くためには、その時々の経済状況の変化などに応じて、検証と見直しを行うことは必要なことだと考えています。

議員お尋ねの児童養育加算及び母子加算の見直しにつきましても、こうした趣旨から、現在、国の社会保障審議会生活保護基準部会において、その水準や在り方についての検証が行われているものと理解をいたしておりますが、先ほどの知事からの御答弁にもありましたように、県としましても、子どもの貧困対策を重要な政策課題と位置付け取り組むこととしており、今後の国の動向などを注視してまいりたいと考えています。

 

●吉良県議

第二は、貧困が拡大する中、様々な課題に向き合って努力している教育現場で、35人学級をやめ、40人学級にもどす動きです。財務省が、現在行われている公立小学校1年生の35人学級を40人学級に戻すよう文部科学省に求める方針を財政制度等審議会に示しました。多くの自治体が、その必要性を認めて、少人数学級の実施に努力しています。本県も限られた財源の中で取り組んでいます。地方自治体の動きに対し、国が遅ればせながら踏み出した少人数学級を、小学1年生だけで、2年生は、未実施自治体への加配という極めて貧弱なものです。

財務省は、小学校全体のいじめの認知件数や不登校、暴力行為の件数に占める小1の割合を、35人学級導入前の5年間と導入後の2年間について比較し、導入の前後でほとんど変わらないというデータを持ち出し、35人学級には「効果がない」と決め付けています。これはまったく根拠になりません。子どもの不登校や暴力行為には貧困や競争教育の影響などさまざまな要因・背景があり、学級人数の問題だけでとらえることはできません。しかも比較したのは導入直後のわずか2年間です。それをもって「効果がない」と結論付けるのは強引です。国に先立って少人数学級を実施した府県の調査では明確に不登校や欠席者が減ったとの結果も出ています。いじめの認知件数がやや増えたのは、むしろ学級の人数が減って教師の目が行き届くようになり、いじめが発見しやすくなった結果ではないかとの指摘もあります。「きめ細かな指導という意味で35人学級のほうが望ましい」、下村博文文科相もおっしゃっていますが、それは国民共通の願いです。

 財務省の持ち出したデータは40人学級に戻す結論が先にあり、都合よく見えるデータを探し出してきた疑いが濃厚です。こんなやり方は、将来に重大な禍根を残します。40人学級復活方針は撤回すべきだと考えます。

日本の教育への公的支出のGDP比はOECD加盟国で5年連続して最下位です。先進国の中でも、少人数学級は極めて遅れています。

少人数学級の拡大に、国が責任をはたすことこそが求められていると思うのです。知事と教育長、それぞれにご所見をお伺いします。

 

■知事

少人数学級の拡大に向け、国は責任を果たすことこそが求められているのではないか、とのお尋ねがございました。

お話にあった財務省の主張は、いわゆる小1プロブレムに対して35人学級の効果が見られないので、財政的観点から40人学級に戻すべきではないかというものですが、教育は

息の長い取り組みであり、たかだか1~2年の、しかも限られたデータのみをもって、効果をうんぬんするのは、いささか乱暴ではないかと思います。

また、過去の状況から効果を検証し、判定することも重要なことではありますが、新しい学習指導要領、教育改革が目指すところの教育にとってどうあるべきかという未来方向から考えることもそれ以上に必要なことであります。

特に、これからの社会を見た時に思考力や判断力、そして表現力を育成することが重視されなければなりません。そのような力を育成する教育を進めようとした場合に、よりきめの細かい、一人一人の進度に応じた教育を展開していくことこそ重要であると考えます。

これからの教育をどうあるべきか考えれば、1学級当たりの人数は減らす方向にベクトルを向けるべきであると考えておりまして、私自身、文部科学大臣との意見交換会においても、こうした考え方を強く訴えてきたところであります。

また、全国知事会におきましても、少人数学級の充実について国に対して求めているところでありまして、今後も、国の一動向を注視しながら、あらゆる機会を通じて少人数学級の継続や充実を訴えてまいります。

 

■教育長

少人数学級の拡大に向けての、国の責任についてお尋ねがございました。

全国的に、学力の問題に加え、不登校や暴力行為などの生徒指導上の課題が長年の懸案である中で、本県では、これらの課題の解決に向け、平成16年度から全国に先駆けて少人数学級編制の取組を始めてきました。

そして、現在、小学校1・2年生及び中学校1年生に30人学級を、また、小学校3・4年生では、35人学級編制を実施をしております。

こうした取組を受けまして、各学校からは、「きめ細かな指導が可能になり、学力の向上や心の安定が図られる」との声や、「子ども個々の状況にも対応でき、小1プロブレムの解消にも有効」との声も寄せられております。

また、これからの時代に求められる、自ら課題を見つけ、自ら学び、考え、主体的に判断し、問題をよりよく解決していく資質や能力を育むためには、教員が一方的に教え込むだけではなく、子どもたち自身に考えさせる場面や、他者と協働するグループ学習などを授業の中に適切に設ける必要があり、教員には、これまで以上に一人ひとりの児童生徒の状況を把握し、個に応じたきめ細かな教育を実施することが求められております。

加えまして近年、発達障害等により、学校の一斉授業にはなじめず、教員の手厚い配慮を必要とする子どもたちが増加をしており、少人数指導のニーズは高まっております。

こういった状況の中、財政的な制約を考慮せざるを得ない面はありますものの、特に、義務教育段階においては、できるだけ手厚い教員の配置が必要と考えており、今後とも、国に対し、全国都道府県教育長協議会等とともに少人数学級の充実・拡大を働きかけてまいりたいと考えております。

 

 

【とさでん交通】

 

●吉良県議

 2010年2月議会で、米田議員が、生活物資の購入もままならない、いわゆる買物難民問題をとりあげ、移動手段の確保は、中山間地域のみならず高知市においても深刻となっていることを示しその対策を求めました。知事は「生活を支える移動の手段の確保というのは極めて重要な課題」「高齢化先進県として、中山間地域のみならず、都市部においても生じてきているこうした問題に対してしっかり対応していくことは重要」と答弁されていますが、生活の足としての重要な役割があります。

 また、公共交通を整備されることで、気軽に出歩けることが、高齢者の生きがい、健康づくりにもつながります。

例えば、富山市はLRTを中心にした公共交通網を整備しています。車両も低床のバリアフリーで統一するなどし、利用者は平日で約2.1倍、休日で3.4倍に増加しました。割引サービス「おでかけ定期券」の利用者を対象に調べたところ、65歳以上の平均歩数は6,360歩で、全国平均を1,000歩近く上回っており、富山市長は、「歩数増加には健康増進の効果が認められており、医療費に換算すれば年間7,500万円程度の効果になる」と話しています。取り組みは、世界からも注目され、今年9月にはニューヨークの国連本部で報告を行い、10月には富山市でOECDと共催の国際会議を開かれています。地理的条件は違いますが、多いに学ぶべきものがあると思います。

公共交通には、生活者の権利保障、福祉の観点が不可欠だと思いますが、あらためて高齢化先進県として、公共交通の位置づけについて、中山間対策運輸担当理事に伺います。

 

■中山間対策・運輸担当理事

とさでん交通についてのご質問にお答えいたします。

まず、生活者の権利保障や福祉の観点から、高齢化先進県としての、公共交通の位置付けについて、お尋ねがありました。

路線バスや路面電車などの生活に身近な公共交通機関は、安全で快適な生活を送るうえで欠くことのできない社会インフラのひとつですが、人口減少やモータリゼーションの進展等により、地方の公共交通を取り巻く経営環境は、年々厳しさを増している状況にあります。

一方で、高齢化の進展などに伴い、公共交通を必要とする自家用車などの移動手段を持たない、いわゆる交通弱者といわれる方々は増加しており、買物や通院などのための移動手段として公共交通の役割は、今後、ますます大きくなってまいります。

こうした背景のもと、公共交通に対する自治体の積極的な関わりや責任が求められてきているところです。

本県では、人口が集中する高知市を中心とした県中央地域においても、県民に最も身近な公共交通の維持が困難に陥ったという状況の中で、持続可能な公共交通ネットワークの実現を目指し、関係者の協力のもと、新たな枠組みで、とさでん交通がスタートしたところです。

バスや電車は、県民の日常生活を支える大切な交通手段ですので、これまで以上に、多くの県民の皆様に必要とされ、安心・安全に利用される公共交通機関となることが求められており、関係者が力を合わせて実現を目指していくことが必要があるものと考えております。

 

●吉良県議

 一方、経営環境については、9月議会では人口減少もあり、今後さらに厳しさを増すこと、

そのもとでも、県民目線による利便性向上の利用促進策により、潜在重要を掘り起こし、増収を図るとともに、統合のメリットを生かした経費削減で、目標である3年目の単年黒字化、実質債務超過の解消が図れるとの認識が示されました。

  経営改善の努力は必要ですが、経営改善は、何よりも公共交通の責務を果たすためのものです。とりわけ全額自治体出資の会社として「福祉の増進」に資することが求められます。

  事業再生計画にあたっては、公共交通としてどのような役割を果たすのかが基本になるべきです。車いすの障害者やカートなどを押して歩行している高齢者も利用できるなど生活者としての権利保障の観点、自転車での通学・通勤、観光などともリンクさせるなど環境負荷の少ない社会づくりへの目標を持ち、PDCAサイクルを効かせて取り組む必要があると思います。

県民の生活環境の改善として、どのような目標を持っているのか、中山間対策運輸担当理事にお聞きします。

 

■中山間対策・運輸担当理事

公共交通としてどのような役割を果たすかが基本となるべきだが、県民の生活環境の改善としてどのような目標を持っているのか、とのお尋ねがありました。

とさでん交通は、通勤や通学をはじめ、県民の、日常生活を支える交通手段として、多くの県民の皆様に利用され親しまれる存在となることが期待されております。

そのためには、企画立案、実践を行う現場に、常に利用者の声が届き、検討する仕組みが必要であるとの考えから、事業者と行政、有識者等で構成する「中央地域公共交通改善協議会」を立ち上げ、広く県民の皆様からのご意見やアイデアを募り、公共交通事業の改善を図っていくことといたしました。

とさでん交通が県民の皆様の日常生活を移動手段として保障し下支えをするものでございますので、今後、そうした場でいただいたご提案や利用データなどをもとに、利便性の向上や使い勝手の良い公共交通とするための取り組みを進めることで、県民の皆様の生活環境面の改善などにも、つながっていくのではないかと考えております。

 

●吉良県議

3年後に黒字化する、という経営目標に枠をはめられ、低床のバリアフリー車両への切り替えなど利便性向上の思い切った投資が抑制されているのではないか、と懸念しています。移動権を保障する点では、「命の道」と命名し、生活者の権利保障として位置づけて、道路整備には、今回の出資とは桁違いの公費を投入しています。今年度、国の地域公共交通確保維持改善事業として、地方公共団体がバス車両を購入して事業者へ貸与する公有民営補助が創設されました。地方自治体に、バス車両更新費用の2分の1を補助する事業です。

低床のバリアフリー車両への切り替えなど、交通弱者の権利を保障することに思い切った施策を展開すべきではないか、中山間対策運輸担当理事にお聞きします。

 

■中山間対策・運輸担当理事

低床バリアフリー車両への切り替えなど、交通弱者の権利保障をすることに思い切った施策を展開すべきではないか、とのお尋ねがありました。

持続可能な公共交通ネットワークを確立していくためには、利用者にとって安全で快適な環境を整えていくことは大切なことであり、事業再生計画では、順次、路線バスの低床

車両化を進め、導入率を、現在の2割程度から、5年後には、5割程度まで引き上げる目標を立てるなど、計画的に車両のバリアフリー化を進めることとしております。

高齢者や障害者などの交通弱者に配慮することは、持続可能な公共交通を実現していくうえで、大切な視点ですので、事業再生や経営の健全化を進める中で、そうした視点も踏まえ、検討がなされるよう、県としても注視してまいりたいと考えております。

 

 

【リマ水域】

 

●吉良県議

次にリマ水域に関して伺います。

リマ水域は、日米安全保障条約締結にともない、足摺岬沖約70㎞の地点に高知県の面積に匹敵する約6,255平方㎞に及ぶ広大な海域を、アメリカ軍事演習用に設定した水域です。1952年7月に漁船の操業制限に関する法律が告示されて以降、月曜日から金曜日まで、通告なく米軍、そして自衛隊の軍事訓練・演習が実施されています。海面はもとより海中での演習の回数は、私どもが調べたところ、昨年は200日以上となっており、その演習内容については、なんら漁業者、県民には知らされていません。

海域一帯はカツオ、マグロ,金目などの好漁場といわれており、漁業者は一貫してリマ海域の撤廃を求めています。本県議会は過去、5回にわたってリマ演習区域解除を求める意見書を全会一致で採択し政府に提出しています。直近の平成8年2月議会の意見書では、カツオ、マグロ、アジ、サバなどの宝庫で全国屈指の好漁場であるにもかかわらず、米軍演習及び同区域周辺における自衛隊の演習は、きわめて厳しい漁業環境下の漁業者に、耐え難い深刻な悪影響を及ぼしていると、日米地位協定見直しと演習区域解除への強力な取り組みを求めています。

尖閣諸島や小笠原諸島の海洋資源を守る事と同様、治外法権的に軍事演習域として一方的に奪われている広大な好漁場水域の撤去を図る事は、厳しい環境のもとにある高知県漁業関係者の長年にわたる悲願であり、産業振興施策のみならず平和で豊かな海を守る県政上、極めて重要な課題と考えるものですが、知事の撤去に向けての決意をお聞きします。

 

■知事

リマ水域の撤去に向けての決意についてお尋ねがございました。

リマ水域は、カツオやマグロの好漁場でありながら、軍事演習区域となっているために、操業が大きく制限され、漁業生産面の損失を招くとともに、この水域を迂回することによる燃油コストの増大が生じるなど、本県の漁業振興の阻害要因となっております。

こうしたことから、県では、県漁連や関係漁協で組織されています「リマ種子島沖縄等対策委員会」とともに足並みをそろえて、長年にわたり演習区域の指定解除に向け、国に要望をしてまいりました。

このリマ水域は、日米安全保障条約に基づく法律により軍事演習区域に指定されたものですので、解除は困難であると受け止めておりますが、本県にとって大切な海域ですので、

引き続き国に対して指定の解除を求めてまいりたいと考えております。

 

●吉良県議

漁業補償についておききします。本水域や周辺水域に関しては、リマ海域や種子島、沖縄等漁業補償事業の対象になっています。そのうち漁場喪失による漁獲減少や演習爆音による魚道攪乱・魚群散逸など、漁獲に対する補償は当初80%行うとの約束であったものが、年々減って、今や30%になっている現状だとお聞きしています。

年々減少している漁業補償について、政府に当初の補償を行うよう求めるとともに、新たな魚種として、キンメの漁獲を対象に加えるよう迫るべきだと考えるものですが、水産振興部長にお聞きします。

また、迂回航行による経費増も深刻です。「高騰する油代も出さないなら、我々の近くの漁場を返せ」との漁業者の憤りの声が聞かれてまいりました。

県として、南方漁場へ向かう際の迂回に費やされる経済的、時間的、労働的負担、油代や諸経費等への補償を政府に求める考えはないか、水産振興部長にお聞きします。

 

■水産振興部長

リマ水域について、まず、政府に当初の補償を求めるとともに、キンメダイを補償の対象に加えるよう迫るべきではないか、また、南方漁場へ向かう際の迂回に費やされる燃料費などの補償を求めるべきではないかとのお尋ねがありました。関連しますのであわせてお答えいたします。

操業制限に伴う補償額につきましては、防衛省が、現地調査を実施したうえで、リマ水域の設定に伴い減少した漁業所得を算定し、その8割を保障するとされております。その中には燃料費などの諸経費が含まれていると承知しております。

キンメダイにつきましては、補償の対象魚種に加えてはしいとの漁業関係者の要望がありますが、現時点では、漁場の形成が確認されていないことから、補償の対象となっておりません。

しかしながら、防衛省は、リマ水域でキンメダイの漁場が形成されていることが確認できれば、補償についての検討に入るとの見解を示しておりますので、県としましては、関係漁業者と連携して、リマ水域でのキンメダイの生息状況などの把握に努めますとともに、漁業の実態を反映した適正な補償が行われるよう国に求めてまいります。

 

●吉良県議

最後に、全国屈指の好漁場であるがゆえに、水域に隣接して操業する事はやむを得ず、その際、演習における艦船の行動や航空機の飛来に常に留意し、不安の中での操業にある漁民の精神的不安と生産意欲減退に伴う損失は、直接的な漁場喪失に加えて大きいと言えます。

米軍はもとより自衛隊のすべての演習の事前通告と演習内容の事前公開を求めるとともに、精神的被害、意欲減退に対する補償を求めるべきだと思いますが、水産振興部長ご所見を伺います。

 

■水産振興部長

演習の事前通告と、精神的被害などに対する補償を求めるべきではないかとのお尋ねが‾ありました。

リマ水域では、月曜日から金曜日の午前6時から午後6時までの間において、漁業の操業が制限されておりますが、演習についての内容は、事前に知らされておりません。こうしたことが精神的不安にもつながっていると考えられますので、県としましては、漁業者の方々が安心して操業できるよう、演習に関する事前の情報提供を国に求めてまいります。

 

 

【吉良県議第二問】

 

●吉良県議

 リマ水域について、私どもが調べたこと等含めて、ご質問したいのですが、先だって防衛省の方にも伺わせてもらいました。直近の県議会の決議に地位協定の見直しという文言があったんですけれども、リマ海域は公海なので、日米地位協定の対象外なのであって、軍事的利用は自由なんだという答弁をなされています。しかし、排他的経済水域なので、それを軍事的利用をして奪っているので、操業あるいは一般航行の安全を図るうえで、そこには補償していくという考えなんですね。ですから、もしそこで事故にあえば自己責任なので何の補償もされないんです。しかし、この県の漁業発達史を見ると、好漁場なのでどうしてもその水域に行くんですね。そうすると常に心配しながら、漁をしていると、「常に不安の念立ち去らず」というふうに書いていますし、「人命保全上、その精神的打撃は大きい」ということものべられています。ですから、この間、県がどのように県議会の決議を反映されてきたのか、向こうの答弁がどういう理由で、例えば、区域は外せないとかいうことが言われているのか、ご報告をしていただきたいと思います。

 県漁連含めて協議をなさっているということですけれど、例えば、制限区域の優良漁場から外せということを言ってどういう答弁が返ってきたのか、あるいは、実弾演習等やられているわけですから、海洋汚染などの水産資源に及ぼす実態をもう少し明らかにして追求していくということもなされているのかどうなのか、それから特にカツオの最盛期の少なくとも3月から7月までは、使用禁止、規制せよと言っているのかどうなのか、言うべきではないかと思うのですが、そこも一歩前進させていくような努力をしていただきたいと、これについても具体的にどうなのか。

 それから、私たちが聞いた時も、米軍ことは何にもわからないんです。今回、12月10日に秘密保護法がとおったので、益々、秘密のベールに包まれて心配しながら操業せないかんということになるわけですけれど、航空自衛隊が2013年248日間、海上自衛隊が85日間と書いていますが、米軍はひとつもわからないんですね。ですからやはりこれはですね、低空飛行の訓練のフライトプランと同じような訓練の通告を求めていく、もちろん先ほど通告を求めているがと答弁はありましたが、やはり求めていくことが必要だと思います。これについてもどういう理由で明らかにしないのかということもお聞きしたい。

 それから県民世論にも訴えていくことが非常に大事だと思います。県議会で5回も決議を挙げているので、知事レベルの国に対する要望か思ったら、部長レベルだと聞いているんですが、それはやはり知事のところで防衛省に対しても、しっかりと県民の利益を守ると、漁業者の不安を解消していくということで、先頭に立って求めていくことが必要だと思うんですけれど、ぜひ答弁をしていただきたいと思います。

 

■水産振興部長

 演習区域の早期指定解除につきましては、ずいぶん前から漁業団体と足並みをそろえて、早期解除についての要望は毎年行ってきております。

 その中で、この区域は、先ほども知事からも答弁いたしましたように、日米安全保障上の重要な区域であるからということで、なかなか難しいというお答えをいただいております。

具体的に、例えば、カツオなどを3月から7月まで禁止すべきだと踏み込んだ内容でというお話もございましたが、それにつきましては、具体的に漁業団体とお話したことがありませんので、どういうやり方があるのかということは、また色々意見も聞いて対応をしていきたいと考えております。

それと通告を求めていくべきだということでございますが、先ほど答弁させていただいたとおり、求めてまいりますけれども、これまでも、安全保障上重要であるといことで、なかなか事前の通告については難しいというお返事でございます。

知事レベルでやるかどうかというのは、重要な問題ですので、また庁内で協議もして対応もさせていただきたいと思います。

 

●吉良県議

知事、やはりこれは知事レベルで国に対してきちんと要望もしていくということが必要だと思いますが、ご答弁をお願いしたいと思います。

それと要望ですが、子ども貧困対策について、現時点での施策がどうなのかということまで、一歩踏み込んで、教育長、奨学金の問題も含めて、いまある実施施策が本当に妥当かどうなのかも含めて、踏み込んで検討していくことが必要と思いますので、ただいまあるものを認めたうえでということではなくて、そういう形での一歩踏み込んだ対策もお願いしたいと思います。

 

■知事

 私レベルで行くことについて検討してみたいとそのように思います。