議会報告

  • 2015年12月28日
    2015年12月議会 伊方原発再稼働容認の知事発言を再考し、国、愛媛県、四国電力に対し、伊方原発再稼働を行わないことを求める高知県としての行動の請願への賛成討論 中根佐知県議(2015.12.25)

 

 私は、日本共産党を代表しまして、請第3号、「伊方原発再稼働容認の知事発言を再考し、国、愛媛県、四国電力に対し、伊方原発再稼働を行わないことを求める高知県としての行動の請願」に賛成の立場で討論を行います。

 愛媛県知事は、安倍首相が原子力防災会議の席上で、「再稼働を推進する責任は政府にある」「事故が起きた場合、国民を守るのは政府の重大な責務」と述べたことをもって、伊方原発の再稼働に同意を表明しました。

 その「政府が責任を負う」という実態はどうでしょうか。福島原発事故では、ふるさとを奪われ、現在でも11万人以上が避難をしいられていますが、加害者である東電と事故を防げなかった政府が、事故の損害賠償を避難指示解除と一体に打ち切ろうとしています。

 避難区域の指定は、住民の意向をあまり考えないまま整理縮小されてきましたが、2017年3月までに、原発にもっとも近い、放射線レベルは年間50ミリシーベルト以上の「帰還困難区域」以外は全て解除し、「避難指示解除準備区域」と「居住制限区域」の2区域、約5万5,000人に対する精神的損害に東電が支払う賠償を2018年3月末で終了、商工者向けの営業・風評被害に対する賠償は2年分を一括で支払い、その後は原則打ち切る方針が提案されています。

避難区域の解除がされても、地域のいたるところに除染で出た汚染土の袋が野積みされ、医療機関の開設、介護や商店、雇用、インフラ整備も整ってはいません。膨大な山林はまったく除染されていませんし、将来的にも除染しない方針です。自殺をふくめた震災関連死は、福島県だけが上昇を続けています。こどもの甲状腺がんが多発し、二順目検査でも発見されています。こうした状況の下で、避難指示の解除と一体に賠償の打切りが提案されているのです。

さらに3万人を越える自主避難者には政府は何の対策もしていません。自主避難とは、政府が決めた年間20ミリシーベルトという避難基準を下回るため、避難地域として認められなかった地域から、自分の決断で避難をした住民です。低線量被ばくの健康影響、特に子どもなどへのリスクを考えると、年間20ミリシーベルトという基準自体があまりにも不十分です。

旧ソ連ですら、チェルノブイリ事故では、年間1ミリシーベルト以上の地域に居住している人は「避難の権利」が認められ、避難をしたいと決断した場合、政府から住宅支援や十分な賠償、教育・雇用の支援などが行なわれています。昨年、国連の自由権規約委員会は日本政府に対し、「委員会は、締約国が福島に許容する公衆の被ばく限度が高いこと、数カ所の避難区域の解除が決定され、人びとが放射能で高度に汚染された地域に帰還するしか選択肢がない状況に置かれていることを懸念する」「締約国は福島原発事故の影響を受けた人びとの生命を保護するために必要なあらゆる措置を講ずるべきであり、放射線のレベルが住民にリスクをもたらさないといえる場合でない限り、汚染地域の避難区域の指定を解除すべきでない」との勧告を出されています。国際的には恥ずべき対応です。

賠償を値切り、福島県民の命と暮らしより、東電の救済を優先させる、これが政府が持つ責任という実態であり、その対応を是とする再稼働同意は、到底、受け入れるわけにはいきません。

そもそも原発は、原爆の材料であるプルトニウムを作る過程の副産物である熱を利用した未完成の技術であり、使用済み核燃料の処理方法も決まっていません。将来の世代に、解決困難な核のごみをこれ以上押しつけることは、倫理的にも許されません。使用済み核燃料処理の切り札とされた核燃料サイクルも、規制委員会ですら、高速増殖炉「もんじゅ」の事実上の廃炉勧告を出さざるを得ない状況になっており、破たんは明確です。

福島原発事故は、原発はもっとも高くつき、重大な環境汚染を発生させる電力であることを明確にしました。多くの先進国が脱原発に大きく舵をきっている状況、産業としても原発大国フランスのアレバの倒産、またジェネラルエレクトロニクス社やシーメンスの原発分野からの撤退、日本では、東芝が、第1次安倍内閣時の”原発ルネッサンス”に乗ってウェスティングハウスを約6千億円という異常な高価格で買収しましたが、原発路線が破たんし今年度末に5千億円という過去最大の赤字を発生させています。

 いまや再生可能エネルギーが世界的にも最大の成長分野で、資源がないと言われてきた日本が資源大国に生まれかわり、地域経済を活性化させる大きな可能性を持っています。この方向こそ、未来ある道ではありませんか。

 しかし、四国電力は、伊方3号機にあたり、脱原発の方向性を何もしめしていません。いまだに、老朽化した1号機、2号機を再稼働させることを前提に、再生可能エネルギーの買い取りに大きな制限をかけています。

 四国電力は、再稼働の理由として「老朽火力の故障による停電の懸念」をあげ、具体的には、昨年12月17日の最大電力503万キロワットと3日後の2基の火力発電の事故がかさなったら、電力供給が混乱をもたらす懸念があったことを示しています。脱原発の方向性を示さない四国電力のこの主張をそのまま認めることは、同様の理由によって、今後、1号機2号機の再稼働にも道を開くことになりかねません。

県民の願いにまったく反するものであり、県経済の発展にとっても大きな禍根を残すものです。

また、四国電力は電力供給について、「四国管内で責任を持つ必要がある」と主張しますが、ここには大きな疑問点が存在しています。電力供給の懸念については、再稼働を進めたい電力会社の主張ではなく、専門家、研究者も含め、県民が納得できる検証がなされていません。再稼働に反対する県民多数の意見を尊重する立場なら、少なくとも原発に批判的な立場の専門家を含めた徹底的な検証を求める責務が県議会にはあり、議会として、検証の場をもうけるべきです。

11月21日、高知県で伊方原発にもっとも近い梼原町の町議会は、再稼働に抗議する意見書を全会一致で可決しました。同意見書表明以降、県内8つの自治体で再稼働反対の意見書が可決をされています。県議会は、懸念にこたえる責務があります。地震大国の日本で、想定外を想定し、この危険極まりない容認論は無責任であることも付け加え、よって、このまま再稼働を、県議会が是とするのは、脱原発をもとめる県の姿勢とも矛盾するとともに、苦難に直面する福島県民の願いや高知県民の願いとも相容れないものです。

以上述べまして、請第3号、「伊方原発再稼働容認の知事発言を再考し、国、愛媛県、四国電力に対し、伊方原発再稼働を行わないことを求める高知県としての行動の請願」の賛成討論といたします。