議会報告

  • 2016年10月19日
    2016年9月議会 「無年金者対策の推進を求める意見書」への反対討論 米田稔県議(2016.10.19) 

 私は日本共産党を代表して、只今議題となりました議発第7号「無年金者対策の推進を求める意見書」議案に反対する立場から討論を行います。

年金の受給資格を得るための保険料支払期間(受給資格期間)をめぐっては、2012年の法改定で、もとの「25年」からすでに「10年」へと短縮されています。ところが、改定法の附則が、この措置の実施時期を消費税率が10%になったときと規定しているために、安倍政権の二度にわたる「増税延期」で実施が先送りされ続けています。諸外国の年金の受給資格期間は、フランス、ベルギー、オランダ、スウェーデンが「資格期間なし」、ドイツ、イタリアが「5年」、イギリス、アメリカ、カナダ、オーストラリア、韓国が「10年」などです。日本の「25年」は異常であり、「10年」への短縮は本来、無条件に行なうべきです。しかも、資格期間の「10年」への短縮で、新たに年金を受給する人は17万人ですが、その人たちの年金支給に必要な国費は300億円に過ぎません。5兆円の消費税増税とリンクさせること自体、理不尽そのものです。本来は昨年10月には10年になっているはずだったのに、実施を来年の9月まで先送りしようとしています。しかも今国会の「年金カット法案」とセットで審議しようとしており、認められるものではありません。すみやかに実現すへぎことを強く求めるものです。

 今、年金をめぐって最大の問題は、安倍政権のもとで「際限なき年金削減」が進められていることです。20132015年度には、「特例水準の解消」という名目で計2.5%の年金削減を強行されました。また、2015年度には、0.9%の年金削減をするマクロ経済スライドが初めて実施され、この4年間、公的年金は▲3.4%という大幅な削減となっています。消費税増税と円安誘導で物価をつり上げながら、年金は減らし続けるという悪政のなかで、高齢者・国民の家計は激しく痛めつけられ、地域経済の落ち込みや消費不振の大きな原因ともなり、社会全体に深刻な影響を与えています。

しかも、安倍政権の年金削減は、これで終わりではありません。政府・厚生労働省は、「マクロ経済スライド」による「調整」を2040年代まで続け、現在、月6.4万円の基礎年金を受給している人の受給額を、10年後には5.7万円、25年後には5.1万円にまで減らすなどの試算を出していますが、さらに、新たな年金制度の改悪案を連打しようとしています。

 そして今国会の年金制度改革法案についてですが、「年金改革支給抑制を強化」と13日付け高知新聞も指摘をしています。政府は、現役世代と年金世代の「負担の公平」を口実にして、いくら物価はあがっていても、現役世代の賃金が下がったとき、あわせて高齢者の年金も下げる、というものです。まさに負のスパイラル、最悪の悪循環であり、到底許せるものではありません。若いときに賃金の下落に苦しんだ世代が、高齢期になったときには大幅に引き下げられた年金しか受け取れない。まさにこれは、現役世代への攻撃でもあります。

 また、ある年の物価が上がらず、年金改定の際に「マクロ経済スライド」で削り切れない「未調整分」が出た場合、その分を「キャリーオーバー」と称して翌年度以降に繰り越し、物価上昇時にまとめて支給を減らすという、新たな削減案も強行をしようとしています。

さらに、昨年12月の閣議で確認した「社会保障改革」の「工程表」では、〇所得が一定額を超える高齢者の年金を「一部支給停止」にする法案、〇年金の支給開始年齢(65歳)を引き上げ、年金支給を先送りにする法案、〇年金課税を強化し、新たな高齢者増税を行なう法案などを、今後国会に提出していくことを、書き込みました。

 現在、貧しい年金をさらに削る政治が続くなか、「下流老人」「老後破産」などの言葉がメディアをにぎわせ、高齢者の貧困が深刻な社会問題となっています。国民の家計を立て直し、将来不安を解消して、経済の好循環を取り戻すには、際限なき年金削減にストップをかけ、年金の増額・充実を図ることが不可欠です。

 議発第7号意見書議案に示されている「年金生活者支援給付金」は、こうした際限のない年金削減路線を覆い隠すもの、また国の悪政の隠れ蓑にするものと言わなければなりません。実際にも、満額の月5千円がもらえるのは40年納付した者だけであり、逆に負担増で吸収されてしまい、無年金・低年金対策にもならないものであり、とても賛成できるものではありません。いま、国、政治がやるべきことは、まず「年金カット法案」を撤回することではありませんか。

 日本共産党は、年金改革について第1段階として安倍政権の年金削減をストップさせ、「減らない年金」を実現し、低額年金の底上げを提案しています。

現行の基礎年金は、受給額の2分の1を国が税財源で負担する仕組みとなっていますが、この仕組みを拡充し、受給者全員に定額(基礎年金満額の2分の1)の税財源を投入する仕組みにあらためます。これが実現すれば、現在、月4万円の年金を受給している人は、受給額が月53千円に増額されます。

 改革の第2段階で、全額国庫負担による最低保障年金制度の確立に進みます。第1段階の低年金の底上げを発展させ、保険料納付にかかわらず月5万円の最低保障額を設定し、その上に、支払った保険料に応じた給付を上乗せする制度をスタートさせます。これにより、国民年金で40年間、保険料を納めた人は、月83千円の年金を受給できるようになり、厚生年金も、給付水準の低い人から底上げがされていきます。

 公的年金制度のなかに、最低保障の仕組みがないのは、先進国では日本だけです。国連の社会権規約委員会からも、「最低年金を公的年金制度に導入すること」がたびたび勧告されています。最低保障年金の導入に足を踏み出せば、低年金・無年金の増大、年金制度の「空洞化」、サラリーマン世帯の専業主婦の「第3号被保険者問題」など、今日の年金制度が抱える様々な矛盾を抜本的に解決する道が開けます。

 これらの改革に必要な財源は、消費税増税と別の道①「応能負担の原則」に立った税制の改革、②国民の所得を増やし、日本経済を成長軌道に乗せる経済の改革によって確保します。こうした改革こそ、今も将来も信頼できる年金を実現していく確かな道であることを訴えるものであります。

 以上議発第7号議案への反対討論とし、同僚議員のご賛同を心からお願いします。