議会報告

  • 2016年12月22日
    2016年12月議会 「平成28度高知県一般会計補正予算」に対する修正案の提案理由説明 中根佐知県議(2016.12.22)

                                    

 私は提出者を代表し、議発第1号「平成28度高知県一般会計補正予算に対する修正案の提案理由を申し上げます。

 本修正案は、第一号議案「平成28度高知県一般会計補正予算」から、「須崎海洋スポーツパーク構想」浦の内湾大嶋海岸の整備にかかる実施設計予算800万円を減額修正するものです。

自然を生かしたスポーツの振興は意義あることですが、須崎市スポーツセンターを活用し、カヌーやオープンウォータースイミングを核として須崎市浦の内地域の活性化を図るという今回の構想は、県政運営の在り方について極めて重大な問題を含んでいます。

県の説明では、地元須崎市で検討が重ねられ、基本構想が練り上げられ、合意されているかのように錯覚してしまいますが、須崎市議会では、この12月議会で、執行部が「唐突なことなので、丁寧な説明をする必要がある」と再三議員への説明がなされたことは、今県議会の吉良議員の質問でも取り上げたところです。須崎市の議会に提案されているのは「辺地債計画変更の議案」で、今回、県が触れていない、平成33年以降の施設整備23千万円分も提案されています。さらに、整備のための辺地債、過疎債を活用した場合の交付税措置を除いた実質負担分の半分を県が負担をするという説明までされています。県議会には負担分の説明はなく、須崎市でも全体の計画もまだ十分議論されずに辺地債の議案が出された段階で、いきなり計画推進のために県が海岸整備に係る実施設計予算を出す提案の仕方は拙速です。県議会に対しては、今回の実施設計にかかる前に全体計画が須崎市でも承認された上で予算提案がされるべきと考えます。

須崎市は、長年財政再建に取りくんで来ました。市民サービスを抑制し、協力を得てきた経過の中で、南海地震等災害に備えた防災対策や老朽化した道路等、インフラ施設の整備や市民が安心して生活できるための事業など、課題は山積している、この認識を少なくない議員や市民が持っています。

今回の多額な整備計画は、この財政再建に、影響が出るとの懸念を払しょくできないと心配する声が広がっているのです。また、「事業を実施するのであれば、議会と地域住民に十分な説明と理解を得るべきだ」、この基本的な部分での心配の声も上がっています。1219日、議会の海洋スポーツパーク構想を報道したテレビを見た須崎市民から、複数の議員に、「初めて知ったが、これまでの我々の我慢を無にするのか」と、怒りの電話が相次いだ、こういう話も聞こえてきました。

そして、十分な説明がされてない地元、浦の内の地域では、「今すでに桟橋などが設置されている坂内の話だと思っていた」「坂内と同じような施設を大島にもなぜつくるのか、坂内を充実させたらいいのでは」「道も広くないのに大丈夫か」「砂を入れてもすぐに流されてしまうところだが」などなど、心配の声が早速上がっています。

整備後の大嶋海岸の管理は、管理協定を特別に結んで須崎市が行うことになり、須崎市の責任と負担は増すことになる計画となっています。須崎市議会も、本日最終日を迎え、県議会と同じ時刻に、海洋スポーツパーク構想に係る辺地債計画変更の議案が、審議をされています。この市議案にたいして、議員の側からの市議会議案として「本事業の具体化に際しては市民と議会に対して十分な説明と理解を求めることを要請する」とした「海洋スポーツパーク構想についての付帯決議」が用意され、大問題、大議論が起こっています。正常だとは言い難い状況です。

須崎市の具体的な議論はこれからです。なのに、海洋スポーツパーク構想の一環として、海岸の改良実施予算をまず県が提案するのは、あまりにも乱暴で拙速です。県の前のめりの姿勢を感じます。スピードがあればいいというものではありません。かつて、国も、県も積極的にとりくんだリゾート推進の中で、須崎市も大きな痛みを伴うことになりました。大失敗を繰り返さないよう、地方自治体は、リアルな現状分析にもとづいた堅実な計画を、主体的に判断して取り組むことが求められています。今回の大嶋海岸整備の県予算案は、地元の声がしっかり反映されてから実施すべきです。

スイミングエリアとしての大島地区の整備は、オープンウォータースイミングを従来の坂内地区から移動するためのものです。須崎の大会は、日本水泳連盟が認定する全国8つの大会の1つですが、1年間に1日、開かれる大会です。日本水泳連盟の「オープンウォータースイミング競技に関する安全対策ガイドライン」は厳しいもので、会場の条件では「透明度」「水質」「砂浜の広さ。競技運営に必要な本部機能エリアが設営可能か。招集エリア、スタート・ゴールエリアが設営可能か」などをあげています。安全対策も多岐にわたって対策を求めています。これまで3回の大会を行ってきた坂内と比較して、「大嶋海岸は広い砂浜とはいえない」「水質は坂内も大島もそれほど変わらない」などの声もあります。

須崎の大会の参加者は年1日約300名です。参加者が全員県外人としても参加料150万、県の説明資料から計算すると経済効果は430万円程度です。6年間を述べにして6000人の県外客を想定して13年後には整備コストを経済波及効果分が上回るという県の経済波及効果試算とは開きがあり説得ある根拠は存在しません。

 また、カキの貝殻がたくさんあるこの地域で、オープンウォータースイミング大会以外に、子どもから大人まで楽しめる個人向け海上スポーツレジャー体験プログラムを実施する計画のようですが、その管理には人も予算も重くかかってきます。

こうした資料を議案説明時に提示もなく、県負担と須崎市に説明されている予算についても何の議論もない状態で「構想」をすすめることが、そもそも問題なのです。地元須崎市でも議論が開始されたばかりであり、須崎市には、最初に必要な費用だけでなく、今後の海岸、施設の維持経費、安全対策の費用など多大な負担をももたらす構想です。丁寧な議論が必要なことは論をまちません。

県が、海岸整備の実施設計予算を計上し、結果的に、須崎市に拙速な結論を急がせるような状況を作ってしまうことは避けるべきです。市議会や市民の審議と結論を待って、具体的な実施内容が確定してから予算提案をすべきと考え、本修正案を提案いたします。

皆さんのご賛同をよろしくお願いいたします。