議会報告

  • 2017年03月21日
    2017年2月議会「共謀罪の創設に反対する意見書議案」への賛成討論 吉良富彦県議(17.03.17)

私は日本共産党を代表し、ただいま議題となりました「議発第7号 共謀罪の創設に反対する意見書議案」に賛成の立場から討論を行います。

 安倍政権が早期の国会提出を狙う 「共謀罪」の構成要件を含めた「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案=「共謀罪」法案について、自民・公明の両党はこの21日に閣議決定することに合意したと報道されています。

 そもそも刑法の大原則は、犯罪の結果を現実に引き起こした行為のみを罰し、犯罪の計画・合意があっても内心にとどまる限り処罰しないというものです。それを、277もの犯罪について、何もしていないのに合意だけで処罰するという「共謀罪」法案は、この大原則に背くもので許されるものではありません。

 犯罪の結果からさかのぼり、予備行為の更に手前の「合意」を処罰しようとすれば、人の内心の状態を監視、把握する捜査手段の拡大がもたらされます。国民が国家権力による日常的監視にさらされることになります。内心の処罰と国家による日常的監視は、金田法務大臣が衆議院法務委員会で「思想の自由、内心の自由、そうしたものを対象として(憲法との関係を)検討している」とあからさまに述べている通り、日本国憲法19条で保障する、思想・良心の自由を侵害することにつながるものです。ゆえに、過去3回、今回と同様に「国際組織犯罪防止条約締結に向けた国内法整備のため」と称して、共謀罪を盛り込み、国会に提出された同法案は、国民の反対によって、いずれも廃案となった経緯があるものです。

 以下、今回創設されようとしている法案の問題点について述べます。

政府は、「共謀罪」という呼称を使わず「テロ等準備罪」だから「共謀罪とは違う」と述べ、新たに「組織的犯罪集団による」ことと、「準備行為を行った」ことの二つを要件に加え、また、対象とする犯罪を減らしたと主張しています。しかし、犯罪の共謀という合意を処罰対象にするという共謀罪の本質には何ら変更はありません。見かけのパッケージを変えて国民の批判をそらそうとする意図は許されるものではありません。

そして、今回は、「共謀」という言葉を避け、「(犯罪の)遂行を2人以上で計画した者」という表現を使っていますが、法的には全く同じ意味で、「共謀」を処罰する性格は変わっていません。また、犯罪の準備を行う点を入れた、組織的犯罪集団の行為に限って罰するとしたから一般の人は巻きこまれない、といっているのもごまかしです。なぜならば、犯罪の「準備」として、「資金」「物品」の手配、「下見」など、普通の人が犯罪とは無関係に行う行為が例示されており、「その他の準備行為」という規定とも相まって、どのような口実で犯人に仕立て上げられるかが全く分かりません。

 また、組織的犯罪集団と限定したといっています。しかし、組織的犯罪集団の特段の定義があるわけでなく、労働組合や市民団体であっても性格が「一変」すれば該当するんだと、政府は認めています。つまり、正当な行動であっても、捜査当局が「性格が変わった」と認定すれば捜査の対象になることは明らかです。さらに、対象になる犯罪数を減らしたといっていますが、取り締まられる対象は法文上「テロの共謀」に限定しておらず、277の該当犯罪すべての「共謀」ですから、憲法が保障する思想や内心の自由を脅かす危険は避けられません。

見かけをごまかす政府・与党の小細工ぶりは、「テロ等準備罪」といいながら、そもそも、政府案の本文に「テロ」の文字が全くないではないか、との批判を受けると、あわてて「組織的犯罪集団」の形容詞として「テロ」の文言を入れようとしたことにも示されています。しかも、そのテロの定義については、「宗教や政治団体が純粋な精神的な利益のみを目的として犯罪を行う場合」として、2005年の政府答弁と異なる答弁をおこなうなど、まったくあやふやなままです。

 法案には「国連の国際組織犯罪防止(TOC)条約を実施するため」との目的を新たに書き込むとしています。しかし、21日、137名の刑事法研究者の共同声明をはじめ法曹界の多くの団体が指摘しているように、この条約そのものは「テロ防止」とは全く違い、国境をこえておこなわれるマフィアなどによる麻薬取引などにかかわる経済犯罪を防止するものです。そして、条約の締結のために、共謀罪を設けなければならないということはありません。また、日本は2001911日の同時多発テロ後に採択された条約への対応も含め、テロ対策の国際的枠組みとして、「爆弾テロ防止条約」や「テロ資金供与防止条約」を始めとする5つの国連条約、および、その他8つの国際条約を採択し、57の重大犯罪について未遂より前の段階で処罰できる国内法も持っており、東京五輪・パラリンピック開催の「前提」の「テロ」対策だというのは、まったくの口実であることを指摘せざるをえません。

憲法は個人の精神活動の自由を広く保障しています。その中で、19条にある思想・良心の自由は「精神的自由の母体」とも呼ばれる重要な規定です。人の精神が外部に向かって表現されるときは憲法21条の「表現の自由」となり、内面にとどまるときも宗教的方面に向かえば20条の「信教の自由」、論理的・体系的知識方面では23条の「学問の自由」となります。それら以外の「主義主張」や価値観の形成などにかかわる人の広範な内心領域の自由の保障が、思想・良心の自由の内容です。憲法がこのように人の内心を広く確実に保障するのは、戦前の日本で政府が国民の内面を統制・支配した歴史や、民主主義を敵視した治安維持法体制への厳しい反省に立っているからです。

「目くばせ」だけ、目が合っただけでも成立する共謀・合意の処罰は、内心を犯す重大な違憲の疑いがあるのです。一般国民を広く日常的な監視に置き、盗聴や盗撮、内偵、密告の助長などによって会話や行動に関する情報を集め、その内心を探知、把握する国家の行為は、どう見ても憲法違反です。

大分県警別府署違法盗撮事件のような国民監視の違法捜査が現法下でも行われています。とりわけ、通信傍受(盗聴)の対象犯罪が大幅に拡大された現在、共謀罪が新設されれば、両者が相まって、電子メールも含めた市民の日常的な通信がたやすく傍受されることが強く懸念されます。現に金田法務大臣は、「共謀罪を通信傍受の対象とすることは将来の検討課題だ」と認めています。

今回の「テロ等準備罪」は、憲法に違反し、国民監視の暗闇社会を生み出す憲法違反、立憲主義破壊の法案であり、国民の強い反対で過去3度廃案となった共謀罪とその本質は同一です。今回も世論調査でも国民の反対が上まわっています。

よって、国におかれては共謀罪の創設をしないよう強く求め本意見書議案賛成の討論といたします。同僚議員の賛同を宜しくお願いいたします。