議会報告

【質問項目】
1、 知事の政治姿勢・日米地位協定
2、 知事の政治姿勢・「働き方改革」
3、 教職員の処遇改善
4、 保育士の人材確保
5、 生活保護行政
6、 林業振興

●中根県議 私は、日本共産党を代表し、以下質問をいたします。

【日米地位協定】
●中根県議 まず、最初に、日米地位協定についてです。在日米軍の航空機事故があまりにも多すぎます。今度は、アメリカ空軍三沢基地(青森県三沢市)のF16戦闘機が離陸直後にエンジン火災を起こし、湖に2本の燃料タンクを投棄して同基地に緊急着陸しました。落下現場から最も近い漁船までは約200メートルしか離れていなかったといいます。一つ間違えば住民を巻き添えにしかねない事態でした。
この2年間の主な事故を見ると、海兵隊では、普天間基地のオスプレイが名護市の海岸とオーストラリア沖に墜落しています。エンジンの吸気口のカバーを海上に落下させる事故も起こしました。同基地のCH53E輸送ヘリは隣接の小学校に窓を落下させました。保育園への部品落下も大きな問題です。牧草地に不時着・炎上する事故もありました。海兵隊岩国基地のFA18が高知県沖で、そして、AV8B攻撃機が沖縄本島沖で墜落をしています。
海軍では、三沢基地のEA18G電子戦機が海上に燃料タンクを投棄、横須賀基地を母港にする原子力空母のC2輸送機が沖ノ鳥島沖で墜落。空軍では、嘉手納基地のF15戦闘機やF35A戦闘機の部品落下があり、横田基地のC130輸送機が投下した貨物がパラシュートから外れ、基地内に落下する事故も起こっています。一つ間違えば住民を巻き添えにしかねない米軍機の重大事故が続発しているのです。重大なのは、住民の命を守るために、米軍機の訓練を規制する明確なルールが存在しないことにあります。
 日米地位協定に基づく特例法で、航空機の安全運航に関する航空法の規定(第6章など)が米軍に適用されないことが問題です。
◆米軍機の危険な飛行を野放しにしている特例法の廃止を含め地位協定の抜本改定が不可欠ではないか、お聞きをいたします。

■県知事 中根議員の御質問にお答えをいたします。
まず、日米地位協定について、米軍機の危険な飛行を野放しにしている航空法の特例法の廃止を含め、抜本改定が不可欠ではないか、とのお尋ねがありました。
在日米軍は 日本と極東の平和と安全に寄与する目的で日本に駐留しており、日米地位協定は、この米軍の円滑な活動を確保するとの観点から、日本における施設・区域の使用と米軍人などの出入国や刑事裁判権といった地位について規定しているもので、日米安全保障体制にとって極めて重要なものであると認識をしております。
そうした中で、最近、米軍機の墜落や部品の落下などの事故が相次いでいますが、事故はあってはならないものであり、米軍機の飛行の安全は必ず確保しなければならないものだと考えております。
政府においては、事故が発生する度に、米側の事故調査や再発防止策について、自衛隊の専門的知見も活用し検証を行うとともに、航空機の徹底的な整備や点検、再発防止の対策を講ずるよう米側に強く求めているものと承知しております。
御指摘の米軍機に関わる日米地位協定につきましては、全国知事会が、「航空機の整備点検、パイロット等の安全教育の徹底、住宅地域及び工場地帯上空での飛行制限並びに夜間離発着訓練の中止等徹底した安全対策を講じること」などについて「日米地位協定の抜本的な見直し」を国に求めているところであり、今後も全国知事会の一員として要望してまいりたいと私も考えております。
政府におきましては、日米地位協定をはじめ、米軍機の運用が適用除外となる航空法の特例法について、国民の理解と協力が得られるよう、引き続き事案に応じた取組みを通じて日米政府間でしっかり協議していただきたいと考えております。

●中根県議 国際NGOスタッフとして紛争処理の現場を指揮してきた伊勢崎賢治・東京外国語大学教授は、「地位協定においては通常、『透明性』が非常に重視されており、NATO地位協定においても、基地で行われる訓練の内容を含め、駐留軍の行動については原則的に受け入れ国の許可が必要です。航空機の飛行や物資輸送などに関しても受け入れ国の了承が求められますし、基地から排出されるオイルや排ガスなどの廃棄物処理についても、受け入れ国の環境規制に従うのがスタンダードになっている」、「こうしたことがほとんど無視されて、米軍はいつでも好きなように訓練などを行える上に、制空権までも握っている。そんな不公平な対米協定をもつのは、世界広しといえども日本と、あと韓国くらいだと思います」と指摘しています。
 各国は、地位協定を制定する際にも、もちろんシビアな交渉が行われていますし、その後も状況の変化などに応じて改定が加えられています。
 日本と同じ第二次世界大戦の敗戦国だったドイツやイタリアは、冷戦後に占領時代からある米軍基地の管理権と制空権を回復しました。ドイツでは殺人やレイプなどの「凶悪犯」については、公務内/外を超えてドイツに第一次裁判権があると定めていますし、イタリアでは基地が置かれている地方の自治体に、アメリカ政府と直接交渉する権利まで与えています。いまだに「戦争中」ともいえるアフガニスタンでさえ、2014年にアメリカ・NATOと結んだ地位協定では、国内で罪を犯した米兵がアメリカの軍法で裁かれる場合に、アフガニスタンの政府関係者がその場に立ち会う権利を認めさせました。
 フィリピンでも、基地内での米軍の行動や物資の持ち込みについてはすべてフィリピン側に管理権があって、「核を持ち込まない」という一文さえ明記をされています。環境規制についてもフィリピンの基準に従うときちんと書かれているし、何よりも、協定の一章を割いて「フィリピンの所有権」を規定しているのです。アフガニスタンとの地位協定でも、「アフガニスタンの主権」ということが、文面の中で高らかに謳われています。日米地位協定のどこを見てもそんな言葉はありません。
イラクでさえ、イラク内の米軍基地からの他国への攻撃を禁止しています。
ところが、こうした「交渉」「譲歩」の例外であったのが、日米地位協定です。締結されてから50年以上、その内容はまったく改定されずに来ています。占領下の地位がそのまま継続していることに最大の問題があります。伊勢崎氏は「日本という国家の『主権の問題』。左右の垣根も越えて、早急に取り組むべき課題」だと強く指摘をしています。
◆全国知事会としても諸外国の例を研究し、明確な政策提言と世論喚起を行うべきではないか。知事にお聞きいたします。

■県知事 次に、全国知事会としても諸外国の例を研究し、明確な政策提言と世論喚起を行うべきではないか、とのお尋ねがありました。
全国知事会では、これまでも米軍基地対策の推進として「日米地位協定の抜本的な見直し」を国に対して提案・要望するとともに、ホームページで広く公表しているところです。
また、在日米軍基地に係る負担の状況を広く理解し、共通理解を深めることを目的に、全国知事会の中に、「米軍基地負担に関する研究会」を平成28年7月に設置し、日米地位協定についてもテーマとして取り上げ研究を進めつつあります。
2月の研究会では学識経験者から、米国が諸外国と締結している地位協定について内容や課題を聞くなどして、諸外国の事例の把握にも努めはじめたところです。
今後とも、全国知事会としては、こうした研究を踏まえつつ、国への提案・要望を継続していくことになるものと思っております。

●中根県議 去る12月7日、土佐町小学校の真上を米軍機が超低空飛行で飛び、先日2月14日にはオスプレイが本山町や大豊町の市街地上空を、13時過ぎから15時前にかけて何度か飛びました。
◆有事以外の飛行に際しては、航空法の安全規定を適用するよう、県が被害地域の市町村と連携して国に実効ある対応を求めるとともに、米軍に対し抗議すべきだと思うが、県としてどう対処したのかお聞きいたします。

■県知事 次に、有事以外の米軍機の飛行に際しては、航空法の安全規定を適用するよう、県が市町村と連携して国に実効ある対応を求めるとともに、米軍に対し抗議すべきだと思うが、県としてどう対処したのか、とのお尋ねがありました。
本県では、いわゆるオレンジルートにおいて米軍機による訓練が繰り返されているうえ、過去に3度も墜落事故が発生しており、県民の皆様はこうした状況に不安を抱えていると考えております。
このため、オレンジルートに係る低空飛行訓練については、飛行の高度をはじめ人口密集地などへの配慮といった日米で合意しているルールが守られているか、市町村と連携のもと、騒音の測定値や住民からの目撃情報をもとに実態の把握に努め、その都度、中国四国防衛局を通じて米軍当局に伝えて事実関係の確認を行っているところでございます。
御指摘の12月7日及び2月14日の飛行についても、市町村から県に届けられた情報を集約し、速やかに中国四国防衛局に低空飛行の実態として伝えております。
米軍機による低空飛行訓練については、全国的にも幅広い課題でもあります。
このため全国知事会では、国の責任で騒音測定器を増やすなど必要な実態調査と事前と事前の情報提供を行ったうえで、地域住民の不安が払拭されないまま訓練が実施されないよう措置することを政府に要望し続けているところでございます。
また、本県としても、今後とも米軍機の飛行訓練の動向を注視し、住民に不安や安全への懸念を抱かせるような超低空飛行訓練など異常な訓練が繰り返される場合は、改めて米側に是正の要求を行ってまいりたいと考えているところでございます。

【働き方改革】
●中根県議 次に、「働き方改革」について伺います。安倍首相は本日の参議院予算委員会で、「働き方改革」法案から、裁量労働制の適用拡大を削除すると正式に表明しました。が、多くの反対のある「高度プロフェッショナル制度」創設に関しては、予定通りと強調しています。
この間、労働時間に関するデータをねつ造してまで進めようとしている「働き方改革」は、一体誰のための改革なのか、そこが最大の問題です。
政府の「改革」の目玉とされている「高度プロフェッショナル制度」では、一定の年収の労働者は、どんなに働いても残業代はゼロ。労働時間規制もなくなります。この制度でメリットがあるのは使用者側だけです。労働者側にメリットはなく、過労死をいっそうひどくするだけです。
 この制度の導入を一貫して主導してきたのは経団連です。労働側は、連合も、全労連も、すべての労働団体がこぞって猛反対しています。「高度プロフェッショナル制度」=残業代ゼロ法案が「働く人の視点や立場に立った改革」などでなく、働かせる側――財界の立場に立った制度であることは、明らかです。
 残業時間の「上限規制」にも大きな問題があります。政府案では、残業の上限「月45時間」は原則にすぎず、繁忙期は月80時間、100時間という「過労死水準」の残業を容認するものとなっています。電通は、高橋まつりさんの過労自殺という痛ましい事態をうけ、遺族との合意文書で、繁忙期であっても残業は「月75時間」以内にすると約束をしています。月80時間、100時間の残業を容認する政府案は、この約束からもはるかに後退したものです。総理自身が、高橋まつりさんの死を悼み、「二度と悲劇を繰り返さない」と誓ったことにも反する内容です。
◆労働者の団体がこぞって反対している法案、またデータ偽装のうえに成り立っている法案は撤回すべきと思いますがお聞きをいたします。

■県知事 次に、労働団体が反対する、「働き方改革」に対する法案は撤回すべきではないかとのお尋ねがございました。
我が国は、「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」や「育児や介護との両立など、働く方のニーズの多様化」などの状況に直面しており、投資や技術革新等による生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境を作ることが重要な課題となっています。
「働き方改革」は、この課題の解決のため、働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指しており、企業にとっても、労働者にとっても、早急に進めていかなければならない改革であると考えています。
働き方改革の推進に向けて、政府は、平成28年9月に「働き方改革実現会議」を設置し、「非正規雇用の処遇改善」、「賃上げと労働生産性の向上」、「長時間労働の是正」、「子育て・介護と仕事の両立」など9つの分野について検討した上、その分野ごとに実行計画を決定しており、政府においては、計画に沿った働き方改革関係法案を今国会に提出する方針と伝えられています。
本県では、平成21年度の産業振興計画のスタート以降、多くの皆様による様々な努力が積み重ねられてきた結果、本県の地産外商は大きく進み、今や人口減少下においても拡大する経済へと転じつつありますが、その一方で、各産業分野では人手不足が深刻化するといった状況が生じています。
この人手不足の深刻化という成長の壁を乗り越えていくためには、本県においても、働き方改革の各分野での実行計画を推進するとともに、生産性の向上を併せて進めていくことが必要と考えます。
現在、働き方改革に関し与野党の合意がなされていない状況にありますが、働き方改革で掲げられている項目は、国内の企業の今後の発展と働く方々の生活に関わる重要なテーマでありますことから、国会においてしっかりとした議論がなされることを、期待しているところであります。

●中根県議 労働総研が1月18日に発表した提言の中で、過去5年間の経済成長率は、名目11.4%、実質7.2%で、年平均2.18%、1.4%と、世界平均の2分の1以下にすぎず、民主党内閣3年間の水準1.66%をも下回っていること、日本経済低迷の主因は賃金にあり、2012年と4年後の2016年を比較すると、G7+韓国の8カ国の中で、日本だけマイナス1.05%と賃金が低下していることを指摘しています。2012~16年の4年間に、企業の「売上高」は5.9%しか増えていないのに「経常利益」が54.7%も増える一方、従業員給与は増えず、また、「税引前当期純利益」が70.7%増えたにもかかわらず、「法人税、住民税及び事業税」の納税額は17.4%しか増えていません。その結果、「内部留保」が25.7%、123.5兆円も増え、国内需要低迷の原因となっているとし、デフレから抜け出すためには、経済の6割を占める家計支出、賃金を引き上げ、需要を拡大しなければならないと指摘しています。
 企業に賃金を引き上げる体力は十分にあります。8時間働けば普通に暮らせる社会へと転換すべきです。
 少子化対策の柱として、知事会も「仕事と子育てを両立できる環境整備」を重要な柱とし、男性の育児参加を提言をしています。そのために、思い切った残業規制が不可欠です。
 日本共産党は、「残業は週15時間、月45時間、年360時間まで」という大臣告示を法制化し、これを超える残業を認めないこと、終業から翌日の始業まで最低11時間空けるインターバルを確保するなど、真に働く人の立場に立った労働基準法の抜本改正こそ行うべきだと提案をしています。
◆こうした真の「働き方改革」は、現在の経済の低迷や少子化の打開にむけてもきわめて重要だと思いますがお聞きをいたします。

■県知事 次に、「働き方改革」が、経済の低迷や少子化の打開に向けても重要ではないかとのお尋ねがございました。
先ほど申し上げましたとおり、国の「働き方改革実現会議」では、「賃上げと労働生産性向上」、「長時間労働の是正」、「子育て・介護と仕事の両立」等、9つの分野で検討がおこなわれ、実行計画が決定されているところです。
働き方改革を進めていくことで、企業に必要な人材が育成・確保され、労働生産性の向上や賃金の引き上げ等が図られれば、県経済の活性化や個人消費の拡大にもつながっていくものと考えます。
しかし、前提として、個々の企業において賃上げや勤務時間短縮等を実施しても企業の経営が順調に継続できる環境を作る必要がありますので、県としては、引き続き一連の産業振興策を講じることが重要であると考えています。さらにその上で、来年度から、企業の経営基盤強化のための事業戦略や経営計画の策定・実行支援に、国が新たに設置する「働き方改革推進支援センター」における労務管理等の
専門家による支援を融合させた取り組みをスタートし、企業における働き方改革の推進に向けた取り組みを強化することとしております。
また、こうした取り組みにより、労働条件や職場環境の整備など、県内企業における働き方改革を進めていくことは、ワークライフバランスの推進や、本県が県を挙げて取り組んでいる少子化対策の推進にとりましても、大変重要であると認識しております。
来年度、県内企業の働き方改革を推進していく中で、より多くの企業の皆様に、男性が育児に関する休暇を取得しやすい環境づくりの取り組みを進めていただくとともに、労働条件や職場環境の整備を通じて若者の県内定着を図るなど、少子化対策の取り組みを着実に進めてまいりたいと考えております。
ご提案の、大臣告示の法制化といった事項が果たして実現可能か現段階で判断材料を持ち合わせておりませんが、いずれにしても、先ほど申し上げた通り、働き方改革の取り組みは、経済活性化・少子化対策いずれからも有効だと考えるものであります。

●中根県議 また、知事の提案説明の中で、事業者の理解を図ることが重要であるとし、高知労働局、県、県内の経済団体などで構成する「高知県働き方改革推進会議」の取り組みを通じて進めることに言及をされています。事業者の理解をすすめることは重要です。
◆しかし、「働き方改革」というなら当事者である労働者の多様な意見の反映は不可欠だと考えますが、この点をどう位置付けているのかお聞きをいたします。

■県知事 次に、「働き方改革」において、労働者の意見をどう位置づけているのか、お尋ねがございました。
「働き方改革」の推進にあたりましては、企業の理解を促進していくことはもとより、どのような働き方をしたいのかといった労働者のニーズを踏まえることが不可欠であります。
このため、本県においては、高知労働局が、平成28年1月に、県内各地での働き方改革推進の機運の醸成、課題解決のための共通認識の形成、国、県の雇用対策と労使の自主的な取り組みへの反映を目的に、国、県、労使団体の代表者で構成する「高知県働き方改革推進会議」を設置し、さらに昨年2月には金融機関も加わっております。
県としましては、関係者が一堂に会するこの会議において、目標や取組方針などについて議論したうえで、それぞれの強みを活かした、働き方改革を進めていくやり方が適切だと考えております。
本年度は、会議の構成団体の協力・連携のもと、「企業も個人も成長する働き方改革」をテーマにした講演や、労働環境の改善等を実践した企業の事例発表を交えたセミナー等、働き方改革への理解を促進する取り組みを実施してまいりました。
また、本年1月に開催された、第3回働き方改革推進会議においては、各構成員がそれぞれの立場で、セミナーや広報などを通じた会員や顧客の皆様への啓発などにより、働き方改革推進の機運醸成に取り組むとともに、来年度、高知労働局が設置する「働き方改革推進支援センター」の取り組みと、県が行う事業戦略の策定・実行支援を通じた生産性向上の取組を融合させて、中小企業の支援を行うことについて合意し、各構成員もそれに協力することなどを決定しております。
県といたしましては、今後も、「働き方改革推進会議」を含め様々な場で、企業や労働者の方々のご意見等をお聞きしながら、企業、労働者双方にとって有益となる働き方改革を推進してまいたいと考えております。 

◆県職員の働く条件の改善について、県は主体者して、どういう決意と体制で取り組むつもりか、改めて実態把握は必要ないのか、合わせてお聞きをいたします。

■県知事 次に、県職員の働く条件の改善について、お尋ねがありました。
知事部局における職員一人当たりの時間外勤務の時間数については、ここ数年、微増または横ばいの状態であり、全都道府県との比較では中位の水準で推移しております。しかしながら、業務の効率化等に取り組むことにより、職員の健康増進や、時間外勤務の縮減に一層努めることとしております。
まず、業務の効率化については、庁議の場などにおいても、幹部職員に対し、職員の健康に留意するよう徹底した上で、会議等の見直しや資料作成の簡素化など仕事の仕方や、仕組みを見直すなどの工夫をするとともに、重要でなくなった仕事をスクラップするよう、指示を繰り返しております。
また、今年度からは、月々の時間外勤務の状況等について、私自身が、直接報告を受けており、組織管理や仕事の進め方に活かしているところであります。
次に、業務に取り組む体制については、本県のおかれた厳しい財政状況などを踏まえて、県政運営指針において、平成31年度まで3300人体制を確保することとしており、この規模感を維持する中で、業務の状況に応じてメリハリを利かせて人員配置を行うことが必要であると考えております。
実際に、今年度においても、業務の状況を見ながら、過重勤務への対応が必要な所属に対して、年度途中の増員も行ってまいりました。
来年度に向けては、業務のスクラップや民間活力の活用により業務量の縮減を行った上で、緊急性・重要性が高く、業務量が多いと考えられる分野に重点的に人員を配置することとしています。
さらに、I CTを活用した業務の効率化として、既に試行をしております会議のペーパーレス化やサテライトオフィスの設置に加えて、来年度は、本庁と出先機関などをつなぐWEB会議システムの導入を進めてまいります。
以上のような取り組みを進めておりますが、とりわけ重要なことは時間外勤務の縮減を図ることであり、そのためには、管理職員が、時間外勤務を適切に管理し、把握に努めることが大事であると考えております。
このため、時間外勤務に当たっては、管理職員が事前に命令するとともに、勤務した内容の実績について確認することとしており、副知事を通じて、その徹底を図っております。
併せて、「管理職員は時間外勤務の事前命令に当たって、職員の状況を丁寧に把握すべきだ」といった職員の声があることも承知しており、幹部職員に対して、職員本人の状況等も踏まえたコミュニケーションを図ることにより、風通しの良い職場づくりを行うよう徹底しているところです。
今後も、職員が心身ともに健康で、その能力を最大限に発揮して、より創造性豊かな仕事、より高い仕事をすることができるよう、働きやすい職場環境づくりに努めてまいります。

【教員の処遇改善について】
●中根県議 次に教員の処遇改善についてお聞きをいたします。少子化の中で子育て支援や、高知版ネウボラに県としても取り組んでいます。が、こどもの成長にとっても、親の働き方を応援するためにも大切な役割を担っている保育園と学校で、この間、先生のいない事態が起こっています。

まず、教員について、お聞きいたします。
昨年12月、中央教育審議会は「学校における働き方改革についての中間まとめ」を出して、勤務時間管理の徹底、必要性に乏しい事業の思い切った廃止などを書き込みました。教員の多忙化解消は、誰もが必要だと感じ、「改革のためには国が責任を持って教員定数を増やすべきだ」と全国市区町村教育長の97%が求めている状況です。現在、教員の中には多くの臨時教員、非常勤職員が定数内の臨時教員、非常勤職員として配置されており、正規教員が出産・育児はもとより、突然の病休を取らねばならない事態に対応できず、先生のいない教室が生まれています。これらの背景には、「正規に配置された教員による教育活動」を大前提とした学校現場に想定を超えた臨時教員、非常勤職員が配置されていることが指摘をされています。
◆現在の高知県の定数内の臨時教員、非常勤職員の数と、すべての臨時教員、非常勤職員の数、教員のいない教室の件数と実態はどうなっているのか、教育長にお聞きいたします。

■教育長 まず、臨時教員、非常勤職員の数、教員のいない教室の実態等についてのお尋ねがありました。
平成29年5月1日現在、定数内の臨時教員の数は、小学校で147名、中学校で126名、高等学校で121名、特別支援学校で101名となっています。
次に、病気休暇や産育休取得教員の代替も含めたすべての臨時教員の数は、同じく5月1日において、小学校で238名、中学校で168名、高等学校で171名、特別支援学校で、119名となっています。
非常勤職員の数は、中学校で2名、高等学校で142名、特別支援学校で1名となっており、すべて定数外でございます。
次に、いわゆる「教員のいない教室」の件数と実態についてでございますが、平成29年度4月当初の段階では、学級担任や加配教員を含め全ての教員が配置されています。
また、年度途中に病体や産休等を取得した教員の後補充として、臨時教員を1ケ月以上配置できていなかった案件は、平成30年2月1日までの累計で、小学校24校27件、中学校9校9件、高等学校2校2件、特別支援学校4校7件となっています。
ただ、このような場合であっても、学校や市町村教育委員会の理解、協力を得て、級外教員や教頭等が対応することとしており、学級担任が不在になるような状況にはなっておりません。

●中根県議 県教育委員会は大量退職時代にともない、昨年から教員採用制度を変更し、選考審査の日程を一ヶ月早くし、競技実績や大学等推薦特別選考も含めて初めての取り組みを行っています。昨年2月県議会の塚地県議の質問で透明性を確保した採用審査にすべきとの指摘も行ったところです。全国に先駆けて6月24日に行った採用審査の全応募総数は前年度に比べて574人多い1823人でした。第一次審査の合格者が7月に発表され、8月の第二次審査に臨みましたが、小学校で135人、中学校で38人、全体で197人が第二次審査を受けていません。複数県を受審し、両方に合格し、高知以外で第二次審査を受けるなどした人が小学校で41%、総合計数で見ると24%いる計算になります。合格者の名簿発表が9月、10月、今年1月と行われ、合計343人が採用候補者名簿に登載される状況となりました。
◆なぜ第二次審査辞退者が多くなったのか、この状況で、定数内の臨時教員を4月に配置しなくてよい状況になるのかお伺いたします。

■教育長 次に、教員採用審査でなぜ第二次審査辞退者が多くなったのか、定数内臨時教員を4月に配置しなくてよい状況になるのか、お尋ねがございました。
平成30年度採用は、第一次審査を全国で最も早い6月24日に実施するとともに、関西会場での実施教科等を拡大しました。その結果、議員のお話にありましたとおり、応募者数は、前年度の約1.5倍となる1,823人となりました。
応募者の中には、地元を第1志望とする県外出身者も多く含まれておりましたので、予め第二次審査の辞退が相当数にのぼることを考慮して、第一次審査の合格者を決定しました。その結果197人の辞退者が出たものの、第二次審査の受審者数で比較すると、前年度の503人から本年度は627人となっており、全体で124人増えております。
最終的な採用予定者についても、第2回、第3回の名簿登載者の発表を経て、当初予定していた新規採用教員数を上回って確保できており、県外からも多くの優秀な人材を採用することができました。
一方、定数内の臨時教員数は、退職者数や新規採用教員数、また、再任用の数等にも影響されます。そして、採用においてば一定レベル以上の人材を計画的に採用する必要があり、採用数の拡大には限界もあります。このため、近年の大量退職の状況にあって、必要な教員数をまかなうためには、一定数は臨時教員で対応せざるを得ないと考えております。
いずれにせよ、定数内の臨時教員数については、できるだけ減少させていく方向で、今後も、再任用の拡大や計画的な教員採用に努めてまいります。

●中根県議 複数県に合格したときでも、高知県を選んでもらえるよう、賃金、労働条件、対応の適切さなど、改善が求められていると思います。高知県の労働条件を、県として検証すべきではないでしょうか。一例ですが、近年せっかく思いを抱いて先生になった若年教員が、特に初任者研修の大変さの中で悲鳴を上げています。病気になったり、退職してしまうなど、考えられない事態が起こっています。初年度は、初めての子どもや親に接しながら指導案を作り、教えていくことに全力投球の毎日です。ゆとりのなさに加え、4月に2回、5月に3回、6月に4回、7月に1回、8月は夏休み返上等、学校を離れての一年間続く18回の研修等の状況は、すさまじいとしか言い様がありません。ほかにも公開授業訪問、授業実践レポートの作成、等々、ベテランの先輩先生たちから見ても、大変だと感じられています。教員の働き方改革がいわれ、「多忙化の解消と子どもと向き合う時間の確保や、必要な教育活動を充実するために」を掲げる教育委員会が、まず、改革すべきことがあると感じます。
◆初任者の中で、退職や病休の実態はどうなっていますか。また、子どもと一番より添うべき4月から6月の研修を見直し、改善の検討をすべきであると思いますが、おうかがをいたします。

■教育長 次に、初任者の退職及び病体の実態並びに初任者研修の改善の検討に関するお尋ねがございました。
今年度新規採用教員270名のうち、すでに退職した者は2名であり、また、病気休暇を取得した者が6名、うち3月1日現在では3人が復帰しております。県教育委員会としては、急増する初任者に対するきめ細かな指導・支援に取り組むため、従来からの指導教員による支援に加え、今年度から、退職校長等が務める若年教員育成アドバイザーを配置し、全初任者に対する訪問指導・支援を行っているところです。
一方、初任者研修については、職務遂行に必要な基礎的な実践的指導力や、教員としての使命感等を培うことを目的として行っているものですが、教員の大量退職大量採用によって若年教員の比率が急激に高まる中、初任者をはじめとする若年教員の資質・指導力向上のための研修は、今後の本県の教育水準の向上のためには、必要不可欠なものと考えております。
このため、今年度の小・中・高等学校の教諭についての初任者研修では、教育センター等において18日間の研修を実施し、うち8日間を4月から6月にかけて行っております。これは、教職員の服務、特別支援教育の理解、人権教育生徒指導など教育公務員としての基礎的な資質に関する研修や、学習指導案の書き方、各教科の理解、学級・ホームルーム経営など授業実践力の基礎を身に付ける研修を実施しているものであり、初任者が児童生徒の教育をつかさどる上で必要不可欠な研修を早急に実施しているものです。
 また、初任者が校外で研修を受講する際には指導教員や他の教員による授業の代替や、時間割を調整するなど、各学校において、初任者が安心して研修に参加できる体制を構築しております。
教員は初任者であっても、経験豊富な教員と同じ教育活動に従事することが求められ、その分プレッシャーもあると思いますが、研修等を通じて、一刻も早く教員としての力量を身につけてもらいたいと考えております。

●中根県議 臨時教員、非常勤職員の、処遇改善についても、高知県は全国の県の中でも後れを取っています。会計年度任用職員制度の導入に向けて、全国では、すでに採用の空白は作らない方向で改善された県が多くなりました。現在、採用期間は県立学校のみ4月1日から3月30日と、空白は1日ですが、小中学校は4月1日から三学期終業式の2日後までとなっています。が、なぜか病休の場合は終業式で終わりです。年度末の仕事が終わらなければサービスで働かねばなりません。同じ仕事を次年度も続ける場合は退職金を出すのではなく、前年の12月2日以降次の年度の6月末のボーナスまで続けて支払う、労基法の「同職であるならば、継続して見なすべき」との形も高知県ではとられていません。年休の繰り越しも同じ条件で働きながらも高知県では認められていないのが臨時教員です。
必要な臨時教員を確保するためにも、処遇改善はしっかりと行わなければ、他県に比べて高知に残るメリットがありません。
人が人を育てる最前線の教育現場が、人の心を育てるゆとりを失うことなく、人に寄り添える条件を今こそ整えるべきです。教員の定数は臨時ではなく、正規の教員で整えるべきではありませんか。そのうえで、臨時的任用が生まれるのが当たり前の教育現場、こういう形にすべきです。有能な若い職員が耐えられないような多忙化は、まずとりのぞくべきです。
教育現場では学習指導要領の改訂に伴って、ますます教える内容が過密になっていきます。多忙化解消が叫ばれる中で諸課題が増えていく矛盾は、教育行政が根本的に解決するしかありません。教員を補佐する支援員をいくら多くしたところで、根本的解決にはならないのです。
◆「先生のいない教室は作らないでほしい」との親の思い、「こどもに向き合う時間がもっと欲しい」と願いながら日々過ごしている教員の思いを、どう受け止めるのか教育長にお聞きをいたします。

■教育長 次に、「先生のいない教室はつくらないでほしい」との親の思い、「子どもに向き合う時間がもっと欲しい」と願いながら日々過ごしている教員の思いをどう受け止めるのかとのお尋ねがございました。
これまでにも述べさせていただきましたが、近年、臨時教員志願者の不足により、病気休暇や産育休取得者の代替臨時教員の配置が遅れたり、また、未配置であったりする場合が生じています。
しかし、このような場合にあっても、市町村教育委員会や学校の協力により、いわゆる「先生のいない教室」までには至っておりません。ただ、学校の授業改善等に影響するものでもあり、児童生徒の皆さんや保護者の方々にご心配をかけますこと大変申し訳なく思っているところでございます。
また、教員が、子どもとしっかりと向き合うことができる時間を確保することは子どもたちの成長・発達のためにも、大変重要なことであり、教員の「子どもに向き合う時間がほしい」という思いについても重く受け止めるところです。
このことから、必要な教員数を確保するために努力することはもちろんのこと、例中央教育審議会の中間まとめにそって「学校の働き方改革」にしっかりと取り組むことにより、教員の仕事の魅力が再認識され、教員が誇りをもって働くことができる環境の整備を進めてまいります。

●中根県議 ◆また、人材確保のために働き方を改革し、県教育委員会がすべき具体策が多くあります。正規の採用を増やし、臨時採用期間の空白は県立学校並みになくすなど、教育環境を改善する決意をお聞かせください。

■教育長 次に、教員の正規採用を増やすことや、臨時教員の雇用の空白期間の短縮など教育環境の改善について、お尋ねがございました。
正規教員の採用者を増やすためには、まずは採用審査の受審者数を増加させることが必要です。
採用審査につきましては、先ほどお答えしましたように、日程の前倒しや関西会場での第一次審査の実施に加え、年齢制限の緩和や現職教員などを対象とした特別選考の実施などの制度改善に取り組んできており、すでに成果も現れてきております。
今後、より優れた人材を採用していくためには、教員の仕事の魅力が再認識され、教員が誇りをもって働くことができる環境の整備が必要であり、そのためにも、働き方改革の一層の推進を図ってまいります。
また、小中学校の臨時教員の雇用期間については、平成27年度から、年度末の指導要録の作成や学級編制等の業務も勘案し、修了式の日から2日間延長するよう改善してきたところです。
小中学校と県立学校の雇用期間の差につきましては、県立学校では年度末までかかる入試業務などが加わっているためでございますが、今後、業務の実態も精査の上、検討していきたいと考えております。

【保育士の人材確保について】
●中根県議 次に、保育士の人材確保について伺います。
こどもの誕生は家族だけでなく、社会にとっても未来への希望につながる喜びです。同時に健やかに育てる責任が社会に求められます。子どもを持つ親が誰もが安心して働き続けられる環境の整備の一つである保育所所は、子どもたちが最初にかかわる社会としてだけでなく、親が子どもの成長とともに親としての学習を重ねる親育ちの場でもあり、重要な位置にある機関です。
ところが近年、保育所に入りたくても入れない待機児童が、高知県内でも解消できていません。国の規制改革推進会議は、昨年11月29日に「規制改革に関する第二次答申」を公表し、「待機児童解消」の項目を規制改革項目の筆頭に挙げました。ここで、新たな取り組みとして、従来の市町村単独の取り組みに加えて、待機児童が一定の基準を超え、その解消に都道府県が手を挙げた場合には、国が緊急対策地域に指定し、指定された地域内の待機児童への支援策を強化するための所要の改正法案を提出し、都道府県を中心に対策協議会を作って、広域的に待機児童対策に取り組むことを提言しています。
具体的な規制改革項目を見ると、情報の共有化、広域連携、上乗せ基準の見直し、多様な保育所の参入促進、待機児童数の算出のルール明確化、短時間保育士の活用などの人材確保などの項目を置き、平成32年度までに待機児童解消を目指すとしています。ここには進まない待機児童の解消のために、保育の質の低下につながると懸念される保育の多様化や、大事な保育の上乗せ基準の引き下げなど、側面も垣間見えてきています。
特に国際的にも貧しすぎるとされる国基準(最低基準)を、これまでの各自治体の努力や関係者の運動で改善してきた上乗せ基準を引き下げる方向の打ち出しや、付加サービスに対する追加料金を可能にして企業の参入意欲を促す言及もしていること等も、児童福祉法24条1項に基づく市町村が責任を持つ公的保育をゆがめることになるものです。
◆高知県の待機児童の実態はどうか、高知県の場合、上乗せ基準を引き下げるなどの根本的解決に逆行する規制改革推進会議のいう県主導の協議会は開催すべきではないと思うがどうかお伺いいたします。

■教育長 次に、保育士の実態改善に関連し、本県の待機児童の実態と、国の規制改革推進会議が提言する県主導の協議会は開催すべきではないと思うがどうか、とのお尋ねがございました。
本県の待機児童について、平成29年4月1日現在では、高知市のみ73人、10月1日では、高知市をはじめ、香南市、南国市、四万十市など、県全体で約200人となっています。
 待機児童の多くなっている高知市については、保育所の定員に対して、入所児童数の割合が平成29年4月1日現在で約80%と全体的な定員の余裕はありますが、保護者の保育ニーズが北部と西部地域に偏ってきており、この地域の受け入れる施設が十分でないことや、年度途中で新たに保育士を確保することが難しいことが主な要因とお聞きしております。
また、10月に待機児童が見られた高知市以外の3市の待機児童は、すべて0歳児となっており、年度途中で増加する0歳児を受け入れる施設の余裕がないことや、高知市と同様に年度途中で新たに保育士を確保することが難しいことが主な要因とお聞きをしております。
国の規制改革推進会議から提言のあった県を中心とした協議会については、待機児童解消を目的として、都道府県を中心に市町村等の関係者全員が参加し、保育の受け皿確保のための市町村の整備計画の精査、保育所等の広域利用の推進、保育人材の確保と資質の向上等について協議するものでございます。
 待機児童の対策としましては、これまでも県として年度途中の乳児の受け入れに対応するため、事前に保育士を確保するための補助制度などを整備し、市町村を支援してまいりました。
しかし、先ほどご報告しましたとおり、高知市を中心に待機児童が多くなっている状況でありますので、その対応策について、関係市町村や関係団体等の方々と協議を行っていくことが必要と考えており、この協議会の設置について検討していきたいと考えております。

●中根県議 待機児童問題は突然始まったことではなく、政府は「待機児童ゼロ作戦、2002から04年」以降、次々と打ち出してきました。が、それらは、保護者が願う認可保育所の整備ではなく、今ある保育園への定員超過入所や保育への企業参入容認、必要とされた園の庭や給食の自園の調理などの最低基準の規制緩和や弾力化が中心でした。2016年からは、国基準を超える加配人員は保育士以外も30時間程度の研修で配置できる要件の弾力化が行われています。保育所入所を求める保護者は、保育環境や保育条件が整備され、居住地の近くで就学前まで預けられる施設を求めています。これらを整え、また子どもの成長にも責任をもって対応できる保育士の確保こそが求められています。
 保育士不足はこれら待機児童解消と一体の問題として全国共通の課題です。劣悪な処遇のために職業として選べなくなっている状況を解決しない限り保育士不足も、待機児童も、保育の質と量の確保もありません。中でも賃金の低さは大問題です。市町村自治体の努力だけでなく、東京都では給与補助や、保育従事職員宿舎等借り上げ支援事業「一戸当たり月82000円」、千葉県では、保育士一人に処遇改善費として月2万円など、市町村などと協力しながら課題解決に乗り出しています。
◆保育士がなぜ資格を持ちながらも仕事に復帰できないのか、最大の課題を何だと考えているのかお伺いをいたします。

■教育長 次に、保育士が資格を持ちながら仕事に復帰できない最大の課題は何と考えているのか、とのお尋ねがございました。
平成26年に高知県社会福祉協議会において、保育士登録を行い保育所等の勤務経験があるものの、平成26年12月から平成27年1月にかけて、勤務していないと思われる方を対象にアンケートを行っております。
その中での、現在、保育所・幼稚園に勤務していない1番の理由は、妊娠・育児中で仕事との両立が難しい、という理由であり、2番目は、体調不良や体力的にきつい、といった回答となっております。
また、平成27年12月の国の保育士等確保対策検討会における資料においても、保育士の再就職に当たっての課題となるものは、1番が「子育てや家庭との両立」であり、以下「労働条件・賃金・待遇」「健康・体力・気力」と続いております
 このように保育士の資格を持ちながら、仕事に復帰できない原因としては、議員のご指摘にあった賃金の低さももちろんございますけれども、最大の課題は、子育てや家庭と仕事の両立を妨げる保育士の働き方にあるものと考えております。

●中根県議 ◆市町村任せにせず、高知県でも他県に学んで、生活できる水準の賃金にしなければ、人材確保は成り立ちません。思い切った課題解決の施策を実行して保育士不足の解決をもとめるものですがいかがでしょうか、お伺いいたします。 

■教育長 最後に、本県でも他県に学んで、思い切った課題解決の施策を実行して保育士不足の解決を求めてはどうか、とのお尋ねがございました。
 議員のお話にありました東京都や千葉県の事例については承知しておりますものの、本県におきましては、先ほど申しましたように、再就職に繋がっていない最大の要因としましては「子育てや家庭と仕事の両立」が挙げられます。
県としましては、保育士の働き方など労働環境の改善に向けて所長・園長の組織マネジメントの強化を図るための管理職研修や、市町村の園長の代表者等が委員となっている高知県幼保推進協議会などで、働きやすい環境整備に向けた園運営のあり方について、周知を図ってまいりました。
また、県が行っている施設指導監査においては、勤務時間などの組織運営が適切に管理されているか、労働基準法等を遵守しているかなど監査を行い、働きやすい環境づくりに取り組んでいただくよう園への指導も行っております。
 一方、保育士の賃金につきましては、平成28年に厚生労働省が行いました「賃金構造基本統計調査」によりますと、保育士の全国平均賃金21万5,800円に対し、本県は21万9,600円とわずかではありますが、上回った結果となっておりますものの、高知県の全業種の平均賃金25万8,100円と比較しますと、まだ低い状況となっております。
保育士の確保のためには、賃金の改善も重要ですので、本県におきましては、まずは、今年度から国が新たに始めました賃金への積み増し加算や、技能・経験に応じ月額四万円または五千円の処遇改善をおこなう加算制度を有効に活用することが必要と考えております。
 しかし、本県においては、特に、技能・経験に応じた保育士等の賃金等への改善の加算制度については、46%の施設のみの活用のとどまっているため、活用していない施設についてその要因を把握するとともに、市町村単位で制度について丁寧な説明を行うなど 活用に繋がるよう助言・支援を行い、賃金等の改善に努めてまいりたいと考えています。

【生活保護行政】
●中根県議 次に、生活保護行政についてお伺いいたします。
国は、今年10月から食費や水光熱費などにあたる生活扶助基準の見直し、生活保護費の削減を行おうとしており、国民の不安と批判が広がっています。
今年は、5年に1度の生活扶助基準の見直しの年となっていますが、生活扶助費総額210億円、1世帯最大5%、平均1,8%削減しようとしています。結果、生活保護を利用している世帯で、生活扶助費が上がる世帯は26%、変わらない世帯は8%、そして下がる世帯が67%、7割近くが引き下げられることになります。生活保護利用世帯の約8割を占める単身世帯では78%が減額となります。
また約15万人の子育て世帯のうち約4割が減額され、ひとり親世帯の「母子加算」は2割カット、「児童手当」に当たる「児童養育加算」も一部減額されます。政府が掲げる「子育て支援充実」とは逆行し、「子どもの貧困」「貧困の連鎖」をさらに拡大することが懸念をされます。
 今回の見直しは、進め方も異常です。まず、2013年度の見直しの影響について何ら調査をしていません。さらに生活保護世帯の消費水準を、一般家庭で最も低い所得階層の消費水準に合わせるという考え方に基づいたものですが、生活保護の捕捉率は2~3割といわれ、下位10%の層には生活保護基準以下の生活をしている人たちが多数含まれており、この層に生活保護の生活水準を合わせれば、生活保護基準は際限なく引き下がるとして、この算定方法の問題点は、すでに前回の改定時にも厚労省の審議会が指摘し、見直すよう要望されていたものを全く無視して進められました。進め方として非常に乱暴です。
生活保護の問題は、制度を利用している人だけの問題ではありません。今日の日本では、貧困は、特別の事情ではなく、倒産、失業、リストラ、病気、親や家族の介護などで職を失えば、誰もが貧困に陥っておかしくない状態におかれています。
また、生活扶助基準の引き下げは、住民税、保育料、介護保険料、就学援助、最低賃金などで、低所得世帯の生活悪化に連動します。生活保護基準を目安にした諸制度としては、「就学援助」「生活福祉資金」の利用、「介護保険の利用料、保険料の減額制度」「障碍者自立支援利用料の減額」「地方税の減免」などに影響してきます。現在3100万人の方が住民税非課税となっていますが、基準が下がれば課税される人が出てきます。住民税非課税なら行われていた諸負担の軽減の対象外となる「高額医療費の負担限度額」「保育料」「介護保険の負担限度額」「障害者・障害児のサービス利用料」「難病患者の医療費」に影響します。
広範な国民の生活に重大な影響を与えるのです。厚生労働省も、医療や福祉、年金など国の47の制度で影響が出ることを明らかにしました。まさに憲法25条に明記された国民の生存権を保障する最後のセーフティネットである生活保護のあり方は、すべての国民の権利に関わる重大な問題です。
◆生活保護基準の見直しによる県への影響をどう捉えているのか、また、国の47の制度や県・市町村の事業などでの影響について、地域福祉部長に伺います。

■地域福祉部長 まず、生活保護基準の見直しによる県への影響、また、国の47の制度や県市町村の事業などへの影響について、お尋ねがございました。
昨年末に国から示されました、生活保護基準の見直し案では、30代夫婦と子ども1人世帯の生活扶助基準額については、高知市が該当する級地であります2級地の1は0.2%増、高知市以外の市町村が該当する級地である3級地の2では4.6%増、また、65歳の高齢単身世帯では、2級地の1は4.9%減、3級地の2では0.3%減となるなど、世帯類型と級地によって現行の基準額との増減が異なっております。
現時点では、国はモデル的な試算を示すにとどまっており、県としましては、実際に生活保護を受けている方にどのような影響があるのかなど今後とも、その生活実態を把握してまいりたいと考えています。
また、就学援助や保育料の免除など国の47の制度への影響につきましては、去る1月19日の政府の閣僚懇談会において、生活保護基準の見直しができる限り他の制度に影響を及ぼさないよう対応することが確認されています。
併せて、県や市町村が行う単独事業につきましても国の取組の趣旨を理解した上で判断するよう依頼を行うことが対応方針として確認されており、こうした国の対応方針について、庁内及び市町村に周知を図ったところです。
このような対応により、今回の生活保護基準の見直しが他の制度に影響を及ぼさないよう配慮されるものと考えておりますが、それぞれの実施主体の判断にゆだねられている項目もございますので、具体的な対応状況について、情報収集に努めてまいります。

●中根県議 5年前の2013年、訴訟も起こっていますが総額890億円、最大10%、平均6,5%の基準額引き下げが強行されました。いまこの引き下げのもとで生活保護利用者は、生活に全く余裕がなく、食事の回数を減らす、入浴回数を減らす、冷暖房は使えない、衣類は買わない、家電製品が壊れても買い換えが出来ない、交際費がないために友人との交流、冠婚葬祭などは控えざるを得ず、社会的孤立状態にあるなど、これが実状なのです。
現在の生活扶助基準でも、憲法25条が保障する健康で文化的な水準とは到底言えません。そのうえ、今回のさらなる生活保護費の削減は、国民をいっそう貧困に追い込むことになり、憲法と生存権を踏みにじるものと言わなければなりません。
◆そこで知事に、生活保護利用者のみなさんの暮らし向きについての認識、また「貧困の連鎖」を断ち切るために制度の充実こそ必要と思いますが、見解をお伺いいたします。

■県知事 次に、生活保護利用者の暮らし向きについての認識、また、「貧困の連鎖」を断ち切るため制度の充実が必要ではないか、とのお尋ねがございました。
 生活保護法第3条におきましては、「この法律により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない」とされ、同法第8条第2項において、生活扶助を含む生活保護基準は、「要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって、且つ、これをこえないものでなければならない」とされております。
こうした生活保護の基本的な考え方に鑑みれば、生活保護を利用されている皆様の暮らしについては、決して経済的に余裕があるものではないと受け止めております。
このため、各福祉事務所のケースワーカーが、おのおのの保護家庭の生活状況を把握し、適切に指導や支援を行っているところであります。
また、貧困の連鎖を断ち切るためには、子育て家庭への支援に加えて、子どもたちが希望する教育を受けることができるような支援が重要となります。
今回の生活保護制度の見直し案においては、子どもたちの健全育成に必要な費用等の検証を行い、学校外活動費用として加算が行われている「児童養育加算」について、3歳未満の支給額が3歳以上の児童と同じ額に引き下げられましたものの、支給対象が中学生までから高校生までに拡充されておりますし、制服等の購入費に充てる入学準備金についても上限が増額されるなど、見直しが行われております。
さらに、生活保護世帯の子どもの大学等への進学を支援するため、一時金を支給する制度も創設されることとなっております。
 他方、県におきましても、大人の貧困と子どもの貧困の連鎖を断ち切るため、日本一の健康長寿県構想や、教育等の振興に関する施策の大綱に基づき、厳しい環境にある子どもたちへの支援にしっかりと取り組んでまいりましたし、今後も対策を強化することとしているところでございます。

●中根県議 今回の政府の生活扶助基準見直しの最大の問題点は、「一般低所得世帯」といわれる所得が最も少ない10%の層に合わせて、生活扶助基準を引き下げるという方針になっていることです。一般低所得世帯で、本来生活保護を利用できる人のうち、実際利用している人は2割程度で(捕捉率20%)、同程度あるいはそれ以上の低所得世帯の多くが生活保護を利用できていないこと、また我が党の志位委員長が国会の基本的質疑で明らかにしましたが、所得が最も少ない10%層の所得推移は1999年から5年ごとに162万円、154万円、140万円、そして2014年134万円、と実質所得が下がり続けていて、貧困が悪化しています。
これらの実態、事実を利用、悪用して、もともと「健康で文化的な最低限度の生活」を送るための最低ラインを定めた基準、生活扶助基準を引き下げようとするものです。さきに”生活保護削減ありき”の、道理のない社会保障切り捨て路線、こう言わざるをえません。一般低所得世帯の方の生活がよりきびしいというのであれば、やるべきことは、生活扶助基準を引き下げるのではなく、一般低所得世帯への支援ではありませんか。
◆「低所得世帯の生活水準がさがった」ことを理由に、生活保護費を削れば、際限のない「貧困の悪循環」をもたらすことになるのではないか、 今回の生活扶助基準見直しに対する認識と、生活扶助削減の方針の撤回・中止を国に求めるべきだと思いますが、知事のご所見をお聞きします。
併せて2013年の削減前の水準に戻すよう求めるものですがいかがですか、お伺いをいたします。

■県知事 次に、今回の生活扶助基準の見直しに対する認識や、国に対し生活扶助削減の方針の撤回・中止を求めるとともに、2013年の削減前の水準に戻すべきではないか、とのお尋ねがございました。
今回、国から示されております「生活扶助基準の見直し」は、国の社会保障審議会の中に設置されました生活保護基準部会の検証結果などを踏まえ、行われております。
具体的には、生活保護基準部会において、「平成26年全国消費実態調査」のデータ等を用いて、専門的・科学的見地から検証を行っています。また、今回の検証では、改めて、生活保護基準と比較する一般世帯として、どのような所得階層が適当であるかについて検証を行うなど、丁寧な検証が実施されたものと承知しています。
その上で、同部会において「世帯への影響に十分配慮」し、「検証結果を機械的に当てはめることのないよう」と指摘されていること等を踏まえ、多人数世帯や単身高齢者世帯等への減額影響が大きくならないよう、個々の世帯での生活扶助費と母子加算等の合計の減額幅を、現行基準から5%以内の減少にとどめるとともに、本年10月から3年間かけて段階的に見直しを実施することとしております。
このように、今回の生活扶助基準の見直しは、客観的な経済指標に基づくものであるとともに、一定、生活保護を受けている方への減額の影響も考慮したものであると受け止めております。
ただし、今後とも今回の見直しが本県にどのような影響があるのか、しっかり把握していかなければならないとも考えているところであります。

●中根県議 生活保護の捕捉率の向上、利用の向上が、待ったなしの課題になっています。
「一般低所得世帯」、所得が最も少ない10%層、その生活水準が、大変困窮した状態に置かれています。その原因の一つとして、生活保護を利用する資格のある人のうち、実際に利用している人の割合(生活保護の捕捉率)が2割程度にとどまっているのです。現在の利用者数は163万世帯213万人ですが、その約5倍、数百万人規模で利用できていない生活困窮者がおられるのではないでしょうか。
◆高知県内の現在の生活保護の捕捉率と今後の調査・公表について、地域福祉部長に伺います。
また捕捉率向上についての基本的な見解と決意についても伺います。

■地域福祉部長 次に、県内の生活保護の捕捉率と調査・公表について、また、捕捉率の向上についてのお尋ねがございました。
生活保護を申請すれば受給が可能な人のうち実際に受給している人の割合、いわゆる「捕捉率」について、国は、「原則として本人等の申請に基づき生活保護を開始することとされており、実際に申請がなければ、生活保護の受給要件を満たすかどうか確認することが困難であることから、調査を行うことは困難であると考える」としています。
本県においても同様に調査や公表は難しいものと考えています。
このことに関わらず、生活保護は、国民生活の最後のセーフティネットであり、「真に保護の必要な方が、保護を受けられない」ということがあってはなりませんので、引き続き、制度の適切な運用に努めてまいります。

●中根県議 次に、「スティグマ」といわれる”生活保護は恥だ”という意識や、生活保護に対する「バッシング」から生活保護を申請することをためらってしまう、こうした障害を急いで解決することが必要です。2013年、国連社会権規約委員会は、日本政府に対して次のような勧告を行っています。「委員会は・・・締約国に対して、公的福祉給付(生活保護のことです)の申請手続きを簡素化し、申請が尊厳をもって扱われることを確保するための措置をとるよう求める。委員会はさらに、公的福祉給付に付随したスティグマ(恥の意識)を解消する目的で、締約国が国民の教育を行うよう勧告する」と述べています。
安倍首相は、国会での志位委員長の質問に答えて、「生活保護を受給することへの偏見をなくし、保護を必要とする方は確実に保護を適用という方針の下、適正な運用に取り組んでいく考えであります」と答えています。
◆こうした国の考えのもと、生活保護が憲法25条の生存権に基づく国民の権利であることを明らかにし、確実に制度を利用できるようにすすめるために制度の広報、周知をどう図っていくのか、 県としてどう取り組むのか、地域福祉部長の見解を伺います。

◆また、絶えず県民、利用者の立場にたって、申請権の侵害をなくし、「水際作戦」を根絶することが急がれます。地域福祉部長の、見解、決意をお伺いいたします。

■地域福祉部長 最後に、生活保護制度の広報、周知への取り組みや申請権の侵害についてのお尋ねがございました。関連をいたしますので、併せてお答えさせていただきます。
住民の皆さまに対する生活保護制度の広報や周知につきましては、制度の概要に加え、相談、申請窓口の所在地や連絡先などを、県のホームページに掲載しています。市町村や市町村社会福祉協議会におきましても、ホームページや広報紙への掲載などを通じて、その周知に努めているところです。
また、利用や申請に当たって、民生委員・児童委員の皆さまに相談がありましたら、市町村の生活保護担当窓口や県の福祉保健所につないでいただいております。
加えて、県が所管をしています町村の生活困窮者の相談窓口からも、平成28年度は24件、平成29年度は1月末時点で14件が生活保護につながっており、生活困窮者自立支援制度との連携した取組みも進めているところでございます。
さらに、県が毎年行います各福祉事務所に対する施行事務監査の際には、「居住地がなければ申請ができない」、「稼働年齢層は保護申請ができない」、「自動車や不動産を処分しなければ申請ができない」などの誤った説明を相談者に対して行うことにより、生活保護の申請を阻むようなことがなかったかといった確認なども行っているところです。
 真に保護の必要な方が保護を受けられないといったことがないよう、市町村にも協力をいただきながら、これまで以上に制度の周知を図りますとともに、生活保護制度の適切な運用に努めてまいります。

●中根県議 2月5日の衆院予算委員会で日本共産党は生活保護を使いやすくするための緊急提案を行いました。これまでに質問をした「国民の権利であることを明らかにし、制度の広報、周知を義務づけること」 、「申請権を侵害してはならないことを明記し、『水際作戦』を根絶すること」、「定期的に捕捉率を調査、公表し、捕捉率の向上に努めること」に加えて、「法律の名称を「『生活保障法』にかえる」という内容です。
 生活保護の利用は恥であるという意識をなくすためにも、その利用は憲法25条に基づく正当な権利だと表明すべきです。すべての国民に生存権が保障され、使いやすい生活保護にするために名称変更をし、国民への周知義務付けのためにも法改正を求めるものです。
◆知事の感想をお聞きすると共に、県としても急いで検討を行い、緊急提案の法制化に向けて国に提言をしてはどうかと思いますが、お伺いをいたします。

■県知事 最後に、生活保護法の名称変更や改正に対する感想、また、日本共産党の緊急提案の法制化に向けた国への提言について、お尋ねがございました。
いうまでもなく、生活保護制度は「国民は文化的で最低限度の生活を営む権利を有する」という、憲法第25条の規定を具現化するものであり、国民生活の最後のセーフティネットとして、憲法の基本理念に沿った制度の運用を図ることが、国及び保護の実施に携わります地方自治体の責務であると考えています。その意味では、生活保護を受給することへの偏見をなくし、真に保護が必要な方が、制度を確実に利用できることが重要でございます。
お話のあった緊急提案は、こうした観点も含まれるものだと受け止めておりますが、国会の中で行われた提案でございますので、まずは、国会において議論していただく必要があると考えております。
いずれにいたしましても、県としましては、引き続き、生活保護制度の広報に努めるとともに、民生委員・児童委員の皆様のご協力などもいただきながら、真に保護が必要な方が、適切な保護を受けられますよう、制度の適正な運用に取り組んでまいります。
私からは、以上でございます。

【林業振興】
●中根県議 最後に林業振興について伺います。
「新たな森林管理システム」を林野庁が発表し、森林経営管理法として今国会で法制化しようとしています。
法案の前提は、「11 齢級となり主伐期を迎えたが主伐がおこなわれていない」として、50 年を迎えた人工林の皆伐を推進するものとなっています。そのために、新たに「資源高度利用型施業」と名づけられた主伐、森の木を全部切る作業に補助金を出すというものがあります。
これは今までの補助金の性格を大きく変えるものです。林業の補助金は、治山事業や森林の育成を行うことで水源涵養機能や山崩れ防止機能、そして、生物多様性などを高め、最近ならCO2の森林吸収源として役立てることを目的に掲げられてきました。森の木を全部収穫する主伐は、公益的機能を失う懸念があるとして、補助金の対象外としていました。それを、個人の経済行為にも税金を投入することになるわけです。
今回の補助制度は再造林とセットで行い、森林の若返りを図るためと林野庁では説明していますが、再び森になるまでに順調でも数十年かかるうえ、植えた苗がシカなどに食べられてしまう可能性も高く、また植林後に下刈りや間伐を行わなければ、森林としてよみがえりません。
◆形だけの再造林では、山の荒廃が拡大する懸念があると思うが、再造林後の森林整備の確実な実践をどう担保するのか、お伺いいたします。

■林業振興環境部長 まず、形だけの再造林では、山の荒廃が拡大する懸念があると思うが、再造林後の森林整備の確実な実践をどう担保するのか、とのお尋ねがありました。
成熟した資源を効果的に活用しながら持続可能な森づくりを進めるためには主伐後に再造林をしっかりと行い、下刈り、除間伐などの森林整備を適切に行うことが重要です。
林野庁では、林業の成長産業化を進めながら森林の多面的機能の維持増進や齢級構成の平準化を進めるため、平成30年度から、伐採した木の枝葉などの集材と、再造林、シカなどの鳥獣害防止施設の設置を一体的に行う資源高度利用型施業への支援を行う予定であると聞いています。 
これは、従来、主伐と別の時期に行っていた再造林を主伐後に行い、主伐で使用した集材機を植え付けのための地拵えや苗木・資材の運搬にも活用することなどによってコストを縮減し、再造林へのインセンティブを働かせようとするものです。
県におきましても、このように主伐と再造林を一貫して行うシステムの構築が重要であると考え、本年度から情報収集や現場での試行を始めており、コンテナ苗を活用した低密度植栽や隔年下刈りなどと併せ、コストの縮減に向けた取り組みを進めているところでございます。
また、再造林や下刈りといった森林整備における森林所有者の費用負担に対する軽減策も併せて行っています。
 今後につきましても、森林の多面的機能の発揮のためには森林の整備が重要であることを森林所有者にも喚起しつつ、国の事業も活用して一貫作業システムの構築を進めるなど、森林整備のコストの縮減を図り、森林所有者の負担を軽減することにより、再造林はもとより、再造林後の森林整備が確実に行われるようしっかりと取り組んでまいります。

●中根県議 今回の「新たな森林管理システム」には、A 材生産の初期段階である11 齢級など、人工林に「短伐期皆伐施業」を適用しようとしていることへの問題点も指摘されています。これから価値を増す森林をさらに成長させる長期的な多間伐施業による持続的・永続的な森林経営が欠けているのではないか、という危惧です。
 スイスに住み、環境と豊かさの両立を目指す方策を研究して「近自然学」という体系にまとめてきた山脇正俊さんによると、スイスの林業の条件は日本よりもさらに厳しい。人件費は日本の2~3倍。山の急峻さも日本より上。材価は日本より安い。でも、チューリッヒ州では補助金ゼロで黒字が出るようになった。鍵は、持続林業に変えること。これは、経済でいえば元金に手をつけるやり方で、利子だけを利用するのが持続林業だ。そういう森を「近自然の森」と呼ぶと説明をしています。
奈良県では、森林の有する生産、防災、生物多様性維持、レクリエーションの四つの機能を一元管理し、持続可能な森林環境管理を行っているスイスを参考として、森林環境管理制度にとりくんでいます。スイスのフォレスター・ロルフ・シュトリッカー氏を招聘して研修を実施しており、その内容が「欧州型森林管理研修報告書」などにまとめられています。研修でロルフ氏は、「日本はスイスと同じく人件費の高い国だから、安い木材を生産しても世界と勝負できない。高品質材生産にこそ活路がある」と訴えています。また、研修をうけ、奈良県知事は「スイスでは高い知識と権限を有するフォレスターが各地域に配置され、誇りと情熱を持って、彼らの一生をかけて、その森林の多様な機能を守っていることがよくわかってまいりました。スイスのフォレスターは、森の健康度を管理する保健師だという印象を強く持ちました」と述べています。
◆本県の林業振興において、持続可能な森林環境管理の視点が重要だと考えますが、高知の実情に見合った多様な森林整備を進めていく高い専門知識と権限を有するフォレスターの位置づけ、必要性についてお伺いし私の一問と致します。

■林業振興環境部長 次に、フォレスターの位置付けと必要性について、お尋ねがありました。
「フォレスター」につきましては、我が国においても、ヨーロツパのフォレスター制度を参考に、森林法が改正され、都道府県や国の職員が「森林総合監理士」として市町村を支援する日本版フォレスター制度が、平成26年度から導入されています。
「森林総合監理士」は、豊富な現場経験と森林・林業に関する高度で専門的な知識や技術を有し、長期的かつ広域的な視点に立って地域の森林づくりの全体像を示すとともに、市町村や地域の林業関係者への技術的支援を的確に実施する者と位置づけられており、林野庁が実施する資格試験に合格した者が登録されるようになっています。県においては、7人が登録されており、林業事務所や森林技術センターに配置されています。
現在、国においては、市町村が主体となって、森林所有者の申し出などにより、林業経営に適した森林は、意欲と能力のある林業経営者に委ね、林業経営の集積と集約化を図ることとし、林業経営に適さない森林は、市町村自らが管理し、森林経営の効率化と森林管理の適正化の一体的な促進を図ることとする「新たな森林管理システム」の導入に向けた準備が進められており、市町村が担うべき役割は、より一層大きくなってまいります。
その一方で、森林林業に対する専門技術や知識を有した職員が配置されている市町村は、限られていますことから、今後ますます、森林総合監理士の要請が高まってくるものと考えています。
このため、県職員の資質向上に努め、登録者数を増やし、市町村への技術的な支援の強化をはかることにより、それぞれの地域の実情に見合った多様な森林整備をすすめてまいりたいと考えています。

【第二問】
●中根県議 二問を行います。「働き方改革」について、知事にお伺いしたいと思います。高知県版の働き方改革推進会議、これ、私不勉強だったんですが、労基局が主催をして、県も参加をして行っているというふうにお聞きをしてインターネットでも見ていました。年に一回ずつ開かれている高知県働き方改革推進会議、様々な議論がされていて、大切な会議だというふうに思うんですが、ちょっと気になったのは、労働者側の代表が、どんな形で参加しているんだろうと思ったら連合の方たちだけでした。もう少し多様な、例えば、農とか、林、とか漁業とかということも含めて、多様な議論がされる形にならなくていいのだろうかという思いがいたします。
 あと、もう一点ですが、今、女性の働き方なども随分と女性の時代などといって、もてはやされるというか、そんな言葉がありますけれども、実際にこういう場には、女性の代表がいないのではないかとそれも大変気にかかるところです。男女共同参画、こういう言葉があるときは光を放つけれども、ある時は、何かの代表の代表ばかりが参加をすることによって、女性であればいいということだけではなくて、そういう視点を持った人がきちんと場に入っていないのではないか。そのことが大変気にかかりますので、分かれば教えていただきたいですし、今後主催者とも相談をしながら、この視点をいつもなくさないで、しっかりと働き方改革の中に、いれていってほしいと、絵に描いた餅にしてほしくないなという思いがいたしますので、ぜひ、この点でお答えいただければと思います。
 それから、県の職員の皆さんの働き方について、随分と管理職の皆さんも心を配りながらという話がありました。3300人体制を維持しながら、ということなんですけれども、県民の皆さんの目から見たら、県庁が夜遅くまで電気がついていて、消えないね、と働き方は大丈夫かという心配の声も聞こえてきます。適材適所、人員を配置したり、入れ替えをしながら、やっていらっしゃることは承知していますが、必要だという時には、やはり人を採用する事、正規で、そういうこともやっぱり考えなければならないんじゃないかと、いうふうに思います。
 あと、教育長に伺います。教員の多忙化の解消が、これまでのお話の中ではなかなか見えてきません。実際に、先生がいない、先生が病休に入った、産休になったその時に、しっかりとクラスをみる先生がいない職場っていうのはあるわけですよね。そんな中で、教頭先生が入ったり、専科の先生が入ったり、色んな形で校内操作をしているのが、今の現状じゃないでしょうか。こうした点では、定数の中の臨時教員が多すぎるというのはどうしても解決しなくてはならない、大きなポイントだというふうに思います。
 また、こうした臨時教員を配置しすぎているために、実際に、臨時教員が必要になった場合に、配置をすることができないというこの悪循環をなんとしても断ち切らなければならない。そのためには、大量退職時代を迎えているその見通しをもっとしっかりと持って、対処してほしいと思いますが、いかがでしょうか。これは保育士にもいえることです。保育士の皆さんが、たった5割しか半分しか、正規の先生が保育所の中にもいないというのは驚きの話でして、こうした点でも改善の余地を求めたいと思いますが、いかがでしょうか。

■県知事 まず、高知県働き方推進会議においてですね、多様な議論を担保すべきではないかという、おっしゃる通りだというふうにそれは思います。
 一応この、働き方改革推進会議は高知労働局さんが主催して設置をされておられるものでありますので、そのメンバー構成について、私がこうすべきということにはならないので、ありますけれども、ただ、いずれにしても、構成員如何に関わらず先程答弁でも申し上げましたが、多様な議論の機会をもって、その働き方改革を多様な視点からすすめていくということは、非常に大事だと思います。
 確かに農林水産業は、どうだろうかとか、さらに、女性の視点はどうかとか、伺いますと、おひとり女性の方もはいっておられるようでありますけれども、ただ、もう一段ですね、多様な議論がしっかりと行われていくことによって、働き方改革の取り組みというものが実効あるものとなりますように、そうすることは大事な視点だと、そのように考えております。また、会議の場などにおいても県の校正んから、そういう提案などもさせていただければとそういうふうに考えます。
 二点目でありますけれども、県庁の働き方改革についてということでありますけれども、確かに、県庁に夜遅くまで電気がついていてご心配をいただくという、そういうお話を私もおききをいたします。先程申し上げましたように、私、今、月に一回各課において、どういう形で残業が行われているか、急増しているところはないかとか、状況はどうなっているかとか、そういうことを行政管理課の方から報告を受ける、そういう機会も持つようにしておりまして、特に急増しているところにつきましては、様々な配慮をしたりとか、さらにもっといいますと、特にどうしても土日に、協議をしないといけない場合があったりする、という時については、もう日頃より、そもそも、土日にいるであろう部局とのみの協議に絞るとか、どうしても予算編成期はそうはいかないんですけれども、それ以外の時期はそうするとか、そういう工夫もしているところであります。そういう工夫を通じて、なんとか今のところ、残業時間については、去年に比べても増えない状況の中で、なんとか推移出来ているというところかと思いますが、いずれにしてもさらに、この働き方改革を進めていかなければならないということは大事な視点だろうとそのように思っています。
     まずは業務上の様々な先ほど申し上げたような工夫でもって全体として職員の働き方改革を進めさせて頂ければと思っています。特にICTを活用した様な新たな取り組みもスタートさせます。そういう効果というのも見させていただきたいとそういうふうに思っています。
いずれにしても、職員を大幅に増員するということにまだまだならないんだろうとおもっているところでございまして、3300人体制規模でという方向で堅持せざるをえないと思っていますが、繰り返しになって恐縮ですが、先ほど来申し上げた様々な工夫によって、まずは働き方改革がすすんでいけるように努力をさせていただければとそうおもっているところです。

■教育長 まず、病休、産休代替の臨時教員がはれてないようなケースということについては、それは大変申し訳なく思っているところです。そのことに関連して、臨時教員の数が大きすぎるんじゃないかということですけれども、これは先ほどお答えしましたように、今、大量退職の時代でございます。50代の教員が、小中校でもほぼ、全教員の数の半数が50代の教員という形で毎年大量の退職が生まれています。そういった中で、採用数も最近増やしてきております。例えば、数年前までは小学校で言いますと、数十名程度だったものが、平成28年度は118名、29年度は114名、30年度は116名と採用を増やしてきておりますけれども、おのずと限界があるということでございまして、その点についてはご理解をいただきたいと思います。
 病休、育休代替の臨時教員を確保するという、臨時教員の方が人材が必要なわけでございますけれども、これについては、結局採用すると、臨時教員の数も減ってくるというそういう問題もございます。ということからいうとトータルで正規教員の数と、それから、臨時教員をやってくださる方の数をトータルで増やしていくということが必要になります。
 ということからすると、県内だけでということではなくて、県外からいかに人材を確保するかと、いうことと、それから、退職定年を迎えた方にいかに長く勤めていただくか、というこういう二つの形で、従来でない人材を確保していくというトータルで人材を獲得していくということが必要ではないかなとおもっておりまして、そのような形で我々としては取り組みさせていただいているということでございます。
 それから、保育士について、正規の保育士が少ないということのご指摘については、我々もまったくそのように考えておりまして、例えば、市町村公立の保育所については、できるだけ正規で採用してもらいたいというお話もさせていただいているところですけれども、少子化が進む中で、先行きを懸念する市町村において、なかなか積極的によってもらえないというような実態はございます。
 我々引き続いて、正規の保育士を確保していただくような要請は続けてまいりたいというふうに思います。

●中根県議 ありがとうございました。働き方改革といいながら、なかなか改革の中身で多忙化が解消される方向がみえてこないだとか、それから人材不足といいながら、なかなか正規の採用がすすまないということは大問題だと思います。これからのみんなの課題だというふうに思いますけれども、人づくり、人育てに予算もかけて、高知県も、日本の国もがんばっていくという方向をもとめたいなと思います。
 これからもご一緒に考えていきたいと思いますので、今日はありがとうございました。