議会報告

  • 2019年10月11日
    2019年9月議会 米田県議による「大学入試英語の民間試験利用中止を求める意見書(案)」賛成討論

●米田議員 私は、提出者を代表して、只今議題となりました議発第7号「大学入試英語の民間試験利用中止を求める意見書」議案について、賛成の討論を行います。

 

 2020年度から始まる大学入学共通テストにおいて、文部科学省は、「読む・聞く・書く・話す」の4技能を測るためとして、7つの民間英語検定試験の利用を導入しようとしています。来年度から高校3年生が4月から12月のうちに受ける民間試験の2回までの成績が、大学の合否判定に使われることになります。

しかし、一部の民間英語試験の申し込みはすでにこの9月から始まる中、多くの問題点が解決をされず、当事者である高校生に深刻な不安が広がっています。このまま、民間試験導入を強行すれば、日本の教育にとって大きな禍根を残すことになると言わなくてはければなりません。

 問題の第一は、民間試験の多くはあくまで実用英語の能力を測ることが目的であり、子どもたちの英語学習のために開発されたものではありません。これを大学入試に持ち込めば、中学・高校の授業、英語教育が「民間試験対策」に偏ってしまい、本来、身に着けるべき英語の基礎的な能力・知識の学習がおろそかになる危険性が指摘されています。しかも、民間試験の運営団体等による対策講座や教材の販売が行われることは必至です。英語の基礎的学習の本旨が大きく歪められてしまいます。

 問題の第二は、受験生の経済的負担が深刻です。民間試験を受けるためには、大学入学共通テストとは別に受験料が必要です。最も安いものであっても5800円、高いものでは25,000円を超えます。試験会場が大都市でしか開かれない試験もあります。本県のような地方の受験生は、時間と会場までの旅費、宿泊費もかかります。家庭の経済力によって、試験そのものが受験できないということになりかねません。低所得の家庭には大きな重荷です。

また、民間試験の対策講座への参加や教材購入にも費用がかかるでしょう。高校生の人生を「人質」にとり、教育業界が中間搾取をするものだという厳しい批判の声が上がっています。本来、公平・公正であるべき大学入学試験において、その入り口から経済格差、地域間格差を生じさせるもので、言語道断な事態です。

 第三は、目的も難易度も異なる民間試験の成績を、公平に比較すること自体がそもそも困難です。どの試験を受けたかで有利・不利が分かれ、入試で最も大切な公平性が保たれません。

文科省は、この対策として7つの民間試験の成績を、国際標準規格(欧州で使われている言語能力の評価、CEFRセファール)と対照させるとし、この間了承していますが同作業部会メンバー8人中5人が試験実施業者の幹部でした。まさに民間業者と文科省一体になっての自作自演で作られた対照表に、公平性を保障する客観的裏付けはありません。

 

 入試制度の根幹である公平性・公正性を欠き、重大な問題が明らかになる中で、大学によって対応が分かれています。7月の朝日新聞と河合塾の共同調査によれば、大学の65%が民間試験の利用を「問題がある」とし、36%が「やめるべき」と回答しています。文科省の9月末時点の調査によっても、利用予定は、大学と短大合わせて561校、52.5%に留まっています。今後「増加する可能性」もありますが、いまだ流動的です。文科省は各大学に対し「入試の大きな変更は2年前に公表する」と通知していたことからも、極めて不正常な事態です。

学校現場や高校生自身から試験の見直しを求める声が上がっています。全国高等学校長協会は、文科省に対して7月の「不安解消に向けて」との要望提出に続き、9月10日には「不安解消には程遠い状況」、「諸課題を解決しないまま開始することは極めて重大」として、「延期及び制度の見直しを求める要望書」を提出をしています。そして全国の校長の7割が延期を求めているといいます。

また、初等中等教育分科会の委員を務める西橋瑞穂・鹿児島県立甲南高校校長は、英語民間試験の利用問題について「制度を設計したときに想像力が不足していたのではないか。離島の生徒は受験するのに2泊3日が必要になる。悪天候だったら、さらに時間と費用が必要になる」と批判をしています。

最大の被害者は、当事者である高校生、受験生です。

「不安は払拭されるよりむしろ日々増している」「犠牲になるのは僕たち高校生」など深刻な懸念が相次いでいます。「利用中止」を求める国会請願署名約8千名分が提出され、文科省前の抗議行動にも多くの関係者が集まっています。

国会内で開かれた、「英語民間試験導入問題」での野党合同ヒアリングでは、高校生が「試験を実施する団体が対策本や対策講座を開く。中間搾取を感じずにはいられない」と批判。別の高校2年生は、母子家庭で生活が苦しい、経済的不安が増している、と語り、「自分が受験生だったら、保護者だったらという立場でしっかり考えていただきたい。高校生の人生がかかっている。見直していただきたい」と訴えています。

本当に重く切実な訴えです。この声に応えて、英語民間試験利用の中止と、抜本的な見直しを求めようではありませんか。

文科大臣は、「中止すれば混乱が生じる」とのべ、予定通りの実施を表明しています。しかし23年度までは大学入試センターの英語試験が継続され、中止しても入試に差し支えはありません。民間試験の利用に固執する文科省の姿勢こそ、学校現場に混乱を引き起こしているのです。

そもそもの発端は、13年4月の自民党教育再生実行本部の第一次提言です。グローバル人材養成のため「大学において、従来の入試を見直し、実用的な英語力を測るTOEFL(トイフル)等の一定以上の成績を受験資格及び卒業要件とする」と打ち出しました。また、14年9月、文科省「英語教育の在り方に関する有識者会議」では、財界委員の要望に応えて民間試験の導入を決定し、共通テストの英語廃止などが議論をされています。まさに財界、政府・自民党の肝いりで始まった英語入試改革です。グローバル人材の育成を口実に、企業がもうける国作りをすすめる、そのために「人格の形成」を使命とする教育の目的、国民の教育権を侵害することは決して許されるものでないことを強く指摘したいと思います。

 

今、私たち大人が、「高校生の人生を守る」という一点で、立場の違いを越え、まさに行動を起こせるかどうかに、高校生、受験生、県民の視線が注がれています。高知県議会として、この切実な声に応える確かな行動を、起こそうではありませんか。

同僚議員の賛同を心からお願いをして、賛成の討論といたします。