議会報告

  • 2019年12月27日
    2019年12月議会米田稔県議による予算修正案・提案説明(2019.12.26)

おはようございます。日本共産党の米田稔です。        

  提出者を代表しまして、只今議題になりました議発第1号「令和元年度高知県一般会計補正予算に対する修正案」についての提案説明を行います。

 

  この修正案は、高校教育推進費・基礎学力把握検査等委託料に関する債務負担行為補正(追加)、823万3000円を、削除しようとするものであります。

  進学者の多い県立高校6校への新1年生、そしてこの6校と追手前高校を除く、県立高校29校の新しい3年生に対して、3学期の授業終了から春休みにかけて実施しようとする検査と結果分析にかかる経費です。

 

  削除を求める修正案提案理由の第1は、実態は、高校生向け・高知県版学力テストである、ということです。

  新1年生に対する検査ですが、直前に高校入学試験を行ったばかりです。中学校の学習内容の理解などを含めた入試結果に基づいて、生徒一人ひとりに応じた援助、指導を尽くすべきではありませんか。また、新3年生の検査を含めて単独随意契約により委託する特定の民間専門業者が実施するわけですが、受ける検査も、それに向けて事前に活用する学習教材も同じ業者が作成したものです。公平・公正さの確保含めて様々な問題をはらんでいます。

  同時にこの検査は、進学者が多い7校のうち追手前高校は1年、2年とも年1回、他の6校は1年2年とも年2回ずつ、それ以外の29校は、1年2回、2年2回、3年1回、3年間でそれぞれ2回、4回、5回実施する計画です。まさに高校の学習到達水準、いわゆるランクに応じた基礎学力把握検査等が実施されているのであります。

  そして、教育施策の大綱や教育振興基本計画には、平成31年度の目標数値を示しています。公立高校卒業生の国公立大学進学者数、現状現役545人から現役700人以上にする、県内大学入学定員数に占める県内公立学校卒業者の割合、現状18,8%から25%以上にする、また家庭学習をほとんどしないと回答した生徒の割合、高1・26,6%、高2・41,1%からどちらも15%以下にする、などを掲げています。こうした指標・目標の達成を至上命題とした学校訪問・指導が強化され、学校現場に大きな負担となっています。揺れ動く高校生たちや多忙化が深刻な学校現場、教職員を追い立て、追い込んでいることは明らかです。

  これまでも行われている学校現場での定期考査などの活用、さらなる改善によって、実態把握は可能です。そして教師集団の共同、同僚性の保障、発揮によってこそ、生徒一人ひとりへの援助と指導を充実し、未来をともに切り開くことができるのではありませんか。

  一人ひとりの生徒の人生の評価を、一民間企業の評価によって、診断・認定をすることは、公教育の責任を放棄するものです。そういった一業者の評価基準で、学校現場が翻弄される、高校生向け・県版学力テストは中止すべきです。毎年5千万円余の財源は、教員を増やすことや教育条件の整備改善に回すべきと考えます。

 

  第2の理由は、委託は単独随意契約で、特定の民間専門業者と契約しようとしています。平成24年度からこの事業が始められていますが、8年間も9年間も同じ業者に委託しており、いくつもの重大な問題があります。

 受験産業などを業とする有名な全国企業ですが、この間の県立高校生全ての基礎学力把握検査等の結果を保有している、膨大なデータを蓄積しているのであります。2月議会委員会審査で担当課長は、「管理は業者の責任においてしっかりやっていただいているものと思っている」と答えていますが、圧倒的な高校生の個人情報、プライバシー保護の点で大きなリスク、不安が解消するものではありません。

  次に、高知県下の公立高校生の「高校生のための学びの基礎診断」、「測定ツール」をこの特定の業者にゆだねてしまっています。先ほど一部紹介しましたが、検査結果も企業の定める学力指標、学習到達度ゾーンで評価されているのであります。文部科学省も、基本的に各学校の判断によるとしており、秋田県では、独自の一斉テストで学力は把握できる、それ以外の外部テスト実施は各校の判断にゆだねているとしています。高知県は、特定の受験産業業者に、膨大なデータ、生徒の学力指標、到達度評価を、まさに丸投げしているのであります。

  また、今回の委員会審査でも、データの返還を求めたのに対して、担当課長は、「到達の評価や今後の対策の協議などに必要だ」、と答えています。

 一人ひとりの高校生、子どもたちの現在と未来、人生を特定の一民間企業にゆだねてしまってよいのかが今問われていると思います。

 

  第3の理由は、今回の基礎学力把握検査等によって、一人ひとりの評価が評価尺度・学習到達ゾーンによって認定、振り分けられていることです。SからDゾーンまであり、最下位のDゾーンは「上級学校に進学することはできるが、授業について行けず苦労する学生」と規定しています。しかもさらにD1,D2,D3とさらに細かく分類されています。そして教育施策大綱、教育振興基本計画で、たとえばD3層の生徒の割合を現在の27%から15%以下に引き下げる、高校卒業者のうち進路未定で卒業する生徒の割合を5,4%から3%以下にする、などの目標、指標が示されています。

  未来ある高校生たちが進学した高校によって、さらに今回の基礎学力把握検査等の結果によって診断、認定され、評価されてしまっています。特定の企業が作った評価尺度で、あなたはDゾーンですよ、Cゾーンですよ、などと呼びかけることができますか。自己肯定感の醸成につながると胸を張っていえますか。

  一民間企業に丸投げする教育行政の姿勢は見直し、一人ひとりの個性や尊厳が大事にされ成長と進路が保障される教育を推進することこそ、子ども・生徒、保護者、県民の願いではありませんか。またそのためにも、今議会に提出された3万4千人超える県民の請願、すべての子どもにゆき届いた教育をすすめるための教育条件のいっそうの整備を図ることを強く求めておきたいと思います。

 

  以上、議発第1号「令和元年度高知県一般会計補正予算に対する修正案」の提案説明と致します。同僚各位のご賛同を心よりお願いをいたします。