議会報告

  • 2021年03月24日
    2021年2月議会 米田稔議員による「医療制度改悪に反対し、誰もが安心できる医療を求める意見書案」賛成討論

●米田議員 私は、只今議題となりました議発第7号「医療制度改悪に反対し、誰もが安心できる医療を求める意見書議案」について、賛成討論を行います。

 今国会に、2つの医療関連法案、いわゆる①医療法改定法案と②医療制度改定一括法案が提出され、早期の成立を図ろうとしています。これらの法案は、政府が設置した「全世代型社会保障検討会議」での議論を元にして、医師数の抑制と長時間労働の容認、病床の削減、そして高齢者への医療費窓口負担増、また国保料引き上げへの圧力など、全面的な医療制度の改悪が盛り込まれています。

 国民の生存権を脅かし、憲法を踏みにじるものであり、断じて許せません。

 「全世代型社会保障検討会議」が昨年12月に出した「全世代型社会保障改革の方針(案)」(2020年12月14日)では、「目指す社会像」として次のように述べています。「菅内閣が目指す社会像は、「自助・共助・公助」そして「絆」である。まずは自分でやってみる。そうした国民の創意工夫を大事にしながら、家族や地域で互いに支え合う。そして、最後は国が守ってくれる、セーフティネットがしっかりとある、そのような社会を目指している」としています。まず自助を強調し「自己責任」を押し付ける新自由主義的な社会像です。この「自己責任」論は、必要な方が公助へのアクセスを阻まれ、セーフティネットにたどり着かない大きな要因ともなってきました。

 菅政権が打ち出した、この「自己責任」を第一とする新自由主義路線は、決して新しいものではありません。1980年代の「臨調行革」路線から、1996年橋本政権の構造改革路線、2001年に発足し、「自己責任」論に拍車をかけた小泉政権による公的医療費の抑制政策を経て、今に至るまで40年間続けられてきた路線です。この路線の下、患者負担増の押しつけ、病床削減や病院の統廃合、医師養成数の抑制などが進められてきました。新型コロナウイルス感染症は、このように、不測の事態に対応するために必要な余裕を奪われてきた日本の医療制度の脆弱性を直撃しています。病床のひっ迫で、感染しても入院ができず、自宅療養中に亡くなる方が多発しました。医師をはじめとした医療スタッフへの負担も極限まで高まっています。このような事態が、決して「自己責任」では解決しないことは明らかです。

コロナ禍を受け、本来ならば、この新自由主義路線を見直し、だれもが、どこに暮らしていても必要な医療が受けられるよう公的な責任を果たすことこそ、政治に求められている役割です。にもかかわらず、これまでの新自由主義路線に固執し、おしすすめようとする菅政権には、国民の負託にこたえる意思も能力もないと言わざるを得ません。今回の医療関連法案には、国民のいのちと暮らしを顧みない菅政権の新自由主義的な危険性が、明確に現れているではありませんか。

単身年収200万円以上の後期高齢者など370万人への医療費窓口2割負担導入は、有病率も高く、収入も低い中で、すでに自己負担率の高い高齢者世帯へ、さらなる負担増を強いるものです。現役世代(20~59歳)においては、年間収入に対する医療費窓口負担の割合は、1~1.8%であるのに対して、75歳以上では、3.7~5.7%と若い世代の4~6倍も負担をしています。今回2割負担化の対象となる高齢者にとっては、高い負担率がさらに倍増する大変な改悪です。特に高齢者にとって重症化リスクが高いといわれる新型コロナウイルス感染症が蔓延するさなかに提案するという点においても、あまりにも無慈悲な仕打ち、政策だと批判しなければなりません。

日本医師会の中川俊男会長は、「2割負担となる対象者の範囲を狭めるよう求めてきた日本医師会の思いとは乖離がある。多くの疾患を持つ高齢者の受診が費用負担の面から抑制されることがないよう」求めていくとしています。

政府は、高齢者の負担増が、現役世代の負担軽減につながると正当化しますが、全くのごまかしです。現役世代の負担軽減は月額100円にもなりません。しかも、最も減るのは年980億円の削減となる公費です。かつての老人保健制度では1983年時点で、老人医療費に占める国庫負担割合は45%でした。現在の後期高齢者医療制度では、国庫負担は33%まで削減をされています。現役世代も、高齢者も安心できる医療制度にするためには、この国庫負担を増額する公助こそ必要ではありませんか。

医師数の抑制、医学部定員削減は大きな問題です。医師の絶対数の不足が、コロナ禍で医療体制がひっ迫した大きな要因でもあります。日本の人口千人当たり医師数は2.4人であり、これは経済協力開発機構(OECD)の加盟国平均3.5人を大きく下回ります。フランスの7割、ドイツの6割の水準です。OECD加盟国の単純平均と比べ、約13万人も足りません。絶対的に不足しているのが実態です。この低水準が、医師の長時間労働を助長しています。新型コロナウイルス感染症に対して、使命感を持って、医療現場を支え続ける医師の労働条件を改善するためにも、医師数の抑制ではなく、国際水準の医師数確保を目指す方向へと抜本的に切り替えるべきです。

また、新型コロナウイルス感染症で、病床がひっ迫する中で、地域のそれぞれの病院が多様な役割を担うことで地域医療を支えている実態を顧慮することなく、病床削減や病院統廃合を行った医療機関に全額国費の「給付金」を配る仕組みが導入されようとしています。しかも、その原資は「社会保障のため」としてきた消費税です。まさに国民を愚弄するものであり、増税分で病床削減を進めるなど許されるものではありません。

さらに国民健康保険は、長年、国民が求めてきた子どもの均等割の減額措置という重要な前進はありますが、公費の国保会計への独自繰り入れの廃止や、国保料の都道府県統一化への圧力を強め、国保料のいっそうの値上げにつながるものです。コロナ危機のもとで、深刻な生活のまっただなか国保料のさらなる値上げを推進する法案強行は、言語道断であります。

以上のように、「自己責任」を是とする新自由主義的な医療政策が継続されることは、国民のいのち、暮らしにとってリスクでしかありません。新型コロナウイルス感染症があらわにしたのは、感染症に「自己責任」では対応できないという現実です。これまでの医療政策の誤りを正し、だれもが安心して医療を受けられるよう、医療政策を転換すべき時がきています。今回の医療制度の改悪を中止し、抜本的な医療体制整備に向けて公助の役割を果たす決断を強く求めるものであります。同僚議員の皆さんのご賛同をお願いし、議発第7号議案の賛成討論といたします。