議会報告

  • 2021年07月09日
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    2021年6月議会 中根佐知議員による「「消費税の緊急減税とインボイス制度の導入延期を求める意見書(案)」賛成討論(2021.07.08)

●中根議員 私は、ただいま議題となりました議発第6号「消費税の緊急減税とインボイス制度の導入延期を求める意見書(案)」について、賛成の立場で討論を行います。

日本経済は、今、厳しい落ち込みの中にあります。

 新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、2021年1月~3月期の国内総生産(2次速報値)は、物価変動を差し引いた実質で、前期の2020年10月~12月分に比べて、1%落ち込み、年率換算ではマイナス3.9%となっています。2020年度は、2019年度比で国内総生産マイナス4.6%と、2008年のリーマン・ショック時のマイナス3.6%を超えて、戦後最悪の下落を記録しています。日本経済は、戦後最悪の落ち込みを受けた上でなお、さらなる経済状況の悪化が続いているという未曽有の危機の中にあると言わなければなりません。

今年1月~3月期がマイナスとなった最大の要因は、GDPの半分を占める個人消費の冷え込みです。緊急事態宣言に伴う、外出・外食の自粛要請により大きなブレーキがかかり、前期に比べ1.5%減少しています。

緊急事態宣言の影響は甚大です。

野村総合研究所によれば、新型コロナウイルス感染症の拡大による2020年4月~5月の1回目の緊急事態宣言における経済損失は、6兆3700億円、2021年1月~3月の緊急事態宣言では、6兆2800億円と試算されています。3回目の緊急事態宣言は、今年4月から始まり、沖縄では今なお継続されているとともに、その他の地域でもまん延防止重点措置が続くなどその余波もおさまらないまま、東京に4回目の緊急事態宣言が出されようとしています。その一連の影響も、非常に大きなものとなることは避けられません。

これまでの延長線上の経済対策では、この未曽有の危機から、日本経済と事業者、国民を救うことはできません。

そして、直視しなければならないのは、日本経済が、コロナ禍以前から厳しい消費不況に直面していた、という事実です。2014年4月と2019年10月の2度にわたる消費税増税により、この間、税率が5%から10%へ倍加したことが、消費を大きく冷え込ませてきました。

今こそ、消費税減税に踏み切ることが必要です。消費税減税は、その実質的な経済的効果はもとより、政治がコロナ禍で悪化する消費不況に対し「本気で取り組む」というメッセージとなり、また、逆進性の強い消費税が家計を重く圧迫している低所得の方々に対しても「あなたがたを忘れてはいない」という強いメッセージともなります。今、未曽有の危機に対する政治の姿勢が問われています。

 

また、消費税の適格請求書「インボイス」制度が、2023年10月から開始されようとしており、その事業者登録が、今年10月にも始まろうとしています。

日本商工会議所をはじめとする中小企業団体が、このインボイス制度の導入を凍結するよう求めています。

日本商工会議所が昨年6月~7月に行った「中小企業における新型コロナウイルス感染拡大・消費税率引き上げの影響調査」によれば、消費税率引き上げで3割、さらにコロナ禍で8割を超える事業者が売り上げを減少させていることが判明しています。また、約7割の事業者がインボイス制度の導入に向けた準備を行っていないと回答しています。

その後、コロナ禍が長期化する中で、中小企業が、深刻な消費不況のさらなる影響を被っていることは明らかであり、その中で、新たな事務負担を課して、インボイス制度の導入を進めることは困難です。

インボイス制度が導入されれば、現在、免税業者となっている小規模事業者は、インボイスが発行できず、課税事業者が仕入税額控除をできないために、取引先から外される懸念があります。実際に、先の日本商工会議所の調査によれば、制度導入後、課税事業者の約2割が「免税事業者との取引は(一部または一切)行わない」と回答しています。

小規模事業者ほど、消費税を価格に転嫁できないといわれており、小規模事業者が納税事業者に転換すれば、その分収入が減ることにつながります。消費税の納税を免除されてきた小規模事業者にとって、インボイス制度を予定通り導入することは、消費税増税とコロナ禍に続く、さらなる打撃となることは必至です。また、農家の9割は免税農家といわれており、コロナ禍で農作物の価格が安定しない中で、その上にインボイス制度を導入できる条件はありません。

困難な状況にある小規模事業者や農業者をこれ以上追い込むようなインボイス制度の導入は、最低でも延期をすることが当然です。一旦立ち止まり、制度の導入を延期し、制度見直しを含め早急に検討する必要があります。

 

中小事業者向けに高知県が独自に設けた「新型コロナウイルス感染症対策融資」の利用件数は2386件、利用額は計763億円にのぼっています。このような高知県の事業者の苦境を見れば、高知県議会として、政府に対し、消費税のあり方を見直し、経済を立て直す決断を迫ることが今、どうしても求められています。

 消費税の減税と、インボイス制度の導入延期・制度見直しは、消費不況と長期化するコロナ禍という日本経済が直面する未曽有の危機に対応するため、必要な措置だと考えます。国民の暮らしと事業者の営業を守るために、本意見書案への同僚議員のご賛同をお願いいたしまして、賛成の討論といたします。どうぞよろしくお願いいたします。