議会報告

【質問テーマ】

・憲法について

・米軍機の低空飛行

・政府の経済対策

・地方創生

・過疎地域に対する取り組み

・物部川の濁水問題

・鳥獣被害対策

 

 

●岡田議員 日本共産党の岡田芳秀でございます。通告に従い会派を代表して順次質問をさせていただきます。

 

【憲法について】  

●岡田議員 はじめに憲法についてです。

新型コロナウイルスは日本社会の脆弱な部分を露わにしました。それは女性などの自殺の急増に表れています。

2020年における総自殺者数は2万1,081人。男性は前年よりも23人減少した1万4,055人、逆に女性は2019年から935人増加し7,026人と2年ぶりに増加、職に就いている女性の自殺者数は15~19年の平均の1,323人から大幅に増加し、1,698人となりました。若年層に至っては、小学生が14人、中学生が146人、高校生339人の合計499人に上り、1978年の統計開始以来最多だった1986年の401人を超えました。

ジェンダーギャップ指数は先進国最低の156か国中120位、男女の賃金格差は先進国ワースト2位、子どもの精神的幸福度は先進国38か国中37位(ユニセフ)、ひとり親家庭の貧困率は約5割で先進国最低水準です。こういう実態が背景にあることは明らかです。

◆この状態は、憲法11条の基本的人権の尊重、13条の幸福追求権、25条の健康で文化的な生活を営む権利がないがしろにされている表れではないか。自殺者の急増の現状とその背景をどのように認識されているのか、知事にお聞きします。

 

●岡田議員 近代憲法は、政治権力の暴走や恣意的な行使を許さず、憲法によって国民の権利を守るという基本に立っています。それゆえ、政治に担当する国会議員、公務員などに「憲法を尊重し擁護する義務」でしばりをかけています。

◆女性などの自殺増をもたらす社会の歪みに対し、憲法擁護義務を負う知事として、どう対処するつもりかお聞きをいたします。

 

○県知事 岡田議員の御質問にお答えをいたします。

まず、女性などの自殺者の急増の現状、その背景についての認識と、自殺者の増加をもたらす社会の歪みへの対処について、お尋ねがございました。互いに関連しますのであわせて、お答えいたします。

令和2年の女性の自殺者数でございますが、本県では、前年に比べ3人減の33人となっております。しかし、全国では、前年より935人、率にして15.4%と大幅に増加をしているのは、ご指摘の通りでございまして、これは、生活苦や職場の人間関係、DVの被害などがコロナ禍で深刻化したという分析もされているところでございます。

また、今回のコロナ禍におきましては、女性の自殺者の増加のほかにも、女性の非正規労働者の減少、シングルマザーの失業率の上昇など弱い立場の女性が特に深刻な影響を受けているという情報がございます。

こうした状況を踏まえまして、県におきましては、国が緊急的な対応として打ち出しておられます、ひとり親家庭生活支援給付金でございますとか、地域女性活躍推進交付金を活用するなどによりまして、積極的な支援に取り組んでいるところであります。

コロナ禍におきまして、女性に特に強い影響が生じた背景には、「家計を支えるのは男性」といった従来の固定的な役割分担意識でありますとか、そのことによります女性の経済的基盤の弱さがあると思われます。

このため、ただいま申し上げましたような緊急的な対応に加えまして、男女共同参画の取組を社会全体として加速していくということが、これが男性も含めて全体で取り組んでいくべき課題であるというふうに考えております。

こうした課題に対処するために、具体的には、長時間労働の見直し、男性の育児休業の取得促進、多様なニーズに応じた就労支援といった形で、女性の視点に立った取組をより一層進めてまいる考えであります。

 

●岡田議員 2017年6月県議会で、国会図書館の資料も示しながら、日本国憲法の象徴天皇制・基本的人権の尊重・国民主権という基本構造に、本県の自由民権家植木枝盛の理論が圧倒的な影響力を与えていることを明らかにし、これは高知県民の誇りではないかと質しました。また植木枝盛は、今日の憲法9条につながる軍備縮小・廃止をすれば、福祉が増進するとその有効性を説いたこと、また、9条2項については、幣原喜重郎首相の発案だったことも示し、日本国憲法はメイドインジャパン、メイドイン土佐だと指摘をしたところです。さらに追加すれば、25条1項の生存権規定も日本の国会審議の中で追記されたものです。

当時の尾崎知事は、憲法制定過程の史実を確認し「土佐人として誇らしい」と述べ、「制定から70年を経て、大多数の国民が現行憲法を支持していることは確かであり、現行憲法は国民の間に定着している」と答弁をされました。

◆日本の民権思想、特に土佐の自由民権運動を源流として成立したのが日本国憲法だと思いますが、知事の認識をお聞きいたします。

 

○県知事 次に、日本国憲法の成立過程と高知県におきます自由民権運動の関係について、お尋ねがございました。

自由民権運動は、明治初めの藩閥政治、官僚政治に対する反発ということから、板垣退助、後藤象二郎らによります民選議院設立の建白書の提出に端を発して展開された運動とされております。

そして、こうした運動が帝国議会の開設でありますとか、大日本帝国憲法の制定をもたらしまして、ひいては、これらが日本国憲法の成立につながったとそういった関係にあるというふうに理解をしております。

また、国立国会図書館が公表されております「日本国憲法の誕生」によりますと、民間の憲法研究会案がGHQ草案作成に大きな影響を与えていたことが確認されているところでございます。

さらに、この憲法研究会案を作成した鈴木安蔵氏は、この作成に当たりまして、植木枝盛が著しました「東洋大日本国国憲案」 などを参考にしたというふうにされております。

加えまして、歴史学者の家永三郎氏は、「植木枝盛選集」におきまして、主権在民、基本的人権の尊重、地方自治などの点で、植木枝盛草案と日本国憲法とは酷似しているというふうに評しておられるところであります。

このように、わが国の立憲政治の成立過程で土佐の自由民権活動がこれを大きく後押ししたということ、また、郷土の思想家・植木枝盛の草案が現憲法の理念を先取りするものであったといえるということが言えると考えます。

私といたしましても、このように日本国憲法の成立の先駆けといたしまして歴史に名を刻んだ郷土の先人たちの先見性に、深い尊敬の念を抱くところであります。

 

◆また、自由民権の思想を源流とし、侵略戦争の痛苦の反省から生まれた憲法の成立過程を学ぶことは、主権者教育にとって重要と思いますけれども、教育長にお聞きをいたします。

 

○教育長 自由民権の思想を源流とした日本国憲法の成立過程を学ぶことの主権者教育における重要性についてお尋ねがございました。

日本国憲法の制定についきましては、小中高の各校種の発達段階に応じて学ぶべき内容が学習指導要領において定められております。

まず①小学校では、日本国憲法の内容に関する学習と関連付けながら、戦後、平和で民主的な憲法が制定され、民主的な国家として出発したことを ②中学校では、小学校の学習を踏まえ、日本国憲法の基本的原則などを取り上げ、平和と民主主義への期待などを 背景に、日本国憲法が制定されたことを、そして、 ③高等学校の「歴史総合」では、日本国憲法の制定や戦後の民主化改革が、日本の社会に与えた影響などについて考察する学習が行われることとなっているなど、各学校段階を通じて、体系的な学びが行われることとなっております。

また、本県の中学・高校生に配布している県教育委員会作成の歴史副読本『中高生が学ぶふるさと高知の歴史』においても、植木枝盛らの国民主権、人権尊重という自由民権運動の理想が、日本国憲法に結実したことが触れられております。

子ども達が将来、主権者として自らの判断でその大事な権利を行使するようになるためには、現代社会の諸課題について多面的・多角的に考察し、公正に判断できる力や、公共的 な事柄に自ら参画しようとする意欲や態度などを育むことが大変重要です。今後も、日本国憲法の制定の過程などを学ぶことに加えて、日本とその他の国や地域の動向を比較したり、相互に関連付けたりする学習活動を充実させるなど各学校における主権者教育の推進に取り組んで参ります。

 

●岡田議員 2001年9月11日に米国で起きた同時多発テロへの報復として始められた戦争は、米国最長の戦争となり、民間人を含む16万人を超える犠牲者を出し、大混乱させた末に、今年8月、混乱を放置し、撤退せざるをえなくなりました。テロは無くなるどころか、世界に拡散されました。これらは「対テロ戦争」の破綻を示すものです。日本もイージス艦、補給艦などの自衛艦をインド洋に派遣し、洋上給油で米軍などを支援しました。米国と国際社会は、アフガニスタンへの20年間の軍事介入がテロ問題を解決せず、同国を一層の苦難に陥れたことから教訓を学び、同国の再建に責任を果たすべきと考えます。

この12月は、そのアフガニスタンで人道復興に尽力した中村哲さんが、武装勢力の凶弾に倒れて2年を迎えます。中村氏は、記録的な干ばつに直面し、医師でありながら、まず飢餓から命を守ることが必要だと、経験のない土木作業にとりくみ、現地の人々と1,600もの井戸を掘り、全長30キロ近い用水路をひらき、不毛の地は広大な農地となって数十万の人々に恵みをもたらしました。その中村氏は、「9条がほんとうの日本の強み」だと指摘し、9条が「僕らの活動を支えていてくれる、これが我々を守ってきてくれたんだ」「武器など絶対に使用しないで、平和を具現化する。…それを、現地の人たちも分かってくれている」「現地で活動していると、力の虚しさがほんとうに身に沁みます。緑色に復活した農地に、誰が爆弾を撃ち込みたいと思いますか。それを造ったのが日本人だと分かれば、少し失われた親日感情はすぐに戻ってきます。それが、ほんとうの外交じゃないかと、僕は確信している」と述べています。

◆米軍の対テロ戦争の破綻、一方で平和貢献に徹した中村哲氏の取組を教訓に、9条に基づく武力によらない平和貢献で、世界の人々の信頼と共感を得ることが、真に日本の平和を擁護する道と思うが、知事の認識をお聞きいたします。

 

○県知事 次に、武力によらない平和貢献について、お尋ねがございました。

我が国は、日本国憲法にうたわれております平和主義の理念に基づきまして、国際社会の責任ある一員といたしまして、これまでも世界の平和貢献に積極的に取り組んでおります。

具体的には、平和構築を主要な外交課題の一つといたしまして、ひとつには「国連平和維持活動(PKO)等への貢献」、ふたつには「政府開発援助(ODA)を活用した現地における取組」を行っているところであります。

また、留学生を受け入れて優れた知識や技術の習得を促すという「知的貢献や人材育成」といったことが3本目の柱ということでございまして、これらの三本柱によりまして、様々な活動を展開されているというふうに承知しております。

私も、こうした武力によらない世界各国におけます平和貢献の活動を継続していくということが、我が国の平和と安定に繋がるものというふうに考えております。

 

【米軍機の低空飛行について】 

●岡田議員 次に、米軍機の低空飛行についてです。

「幼い子どもたちが、なぜ日常的に恐怖を感じないといけないのか」「経験しないとこのつらさはなかなかわかってもらえない」。怒りの声が渦巻いているのは、まるで、地上で生活している人々をあざ笑っているかのように保育所の上空で、米軍機の低空飛行がくり返されている本山保育所です。

先月11月5日にも、お昼寝の時間帯に戦闘機2機が上空を短時間のうちに3回飛行したとの報告が寄せられました。保育園上空を低空で爆音を放ちながら飛ぶ米軍機の動画もあります。ぜひ議場の皆さんにもご覧いただきたいので、映像と写真を準備させていただきました。この映像と写真は、何度も県知事をはじめ、防衛省、外務省にも訴え続けてきたにもかかわらず、中止されないばかりか、今年はさらに回数が増えており、子どもたちや職員の思いを伝えるためのやむにやまれぬ思いで保育士によって撮影されたものです。

はじめに、爆音を轟かせて米軍機が飛来したときに園庭で遊んでいた子どもたちの様子を写した写真です。1枚目と2枚目には、園児が怖がって保育士に抱きつき、その奥には不安げに空を見上げる子どもの姿があります。3枚目は、昨年、おやつの時間に爆音を聞き、不安で泣いている子どもの姿です。

そして次の動画は、この11月5日の13時前後に飛来した米軍機です。青い屋根が本山保育所です。

◆知事には、事前に爆音の入った映像をご覧いただいておりますが、これらの映像をご覧になっての知事の思いを、まず伺いたいと思います。

 

○県知事 次に、米軍機の低空飛行訓練に関しまして、映像を見た私の思いがどうかというお尋ねがございました。

本県におけます米軍の低空飛行訓練に対しましては、これまでにも県民の皆さまから多くの不安の声が届いております。

県といたしましても、米軍に対して超低空飛行など異常な訓練を行わないように、国を通じた要請を繰り返し行っているところであります。

私の知事就任以降も、これまでに3回、外務・防衛の両大臣に対して要請を行ってまいりました。

今回、戦闘機と思われる飛行機が爆音を轟かせながら保育園上空を飛ぶ映像や、それに驚き涙する子供たちの写真を拝見いたしました。このような住民を強い不安に陥れるような異常な訓練については、何としても中止をしていただかなければならないとの思いをあらためて強くしたところであります。

 

●岡田議員 米軍機の低空飛行訓練の中止を求める質問は、この議場でも何度も繰り返してきました。知事名での中止要請も、歴代の知事が行ってきました。全国知事会としても、ついに「日米地位協定」の見直しを求める要望を提出する状況となっています。

しかし、今年の5月3日付高知新聞は「米軍機 本県苦情 知らん顔」の見出しを立てて、要望が無視され続けている実態を報じています。さらに、今年7月17日付朝日新聞では、米海兵隊岩国航空基地が取材に対し、「保安上の理由により、運用の詳細は言及しない」、「騒音が地元の方々にもたらすかもしれない不都合については、軍として遺憾に思う。高いレベルの軍事的即応体制の維持において、きわめて重要かつ欠かすことのできないもの」と答えたと報じられております。全く見直す意思のない回答となっております。

ここ数年は、戦闘機、輸送機、オスプレイなどがいわゆるオレンジルート以外でも四万十市、四万十町、須崎市、越知町、いの町、そして高知市などでも目撃されています。県が集計しただけでも今年1月から65日間195回256機に上っています。

 米軍機の墜落の危険、ドクターヘリ・防災ヘリとの衝突の危険、子どもたちが泣き叫ぶ恐怖を与え続けることを、私たちは黙認することはできません。

◆中国四国防衛局は、固定式の観測カメラを本山町の雁山に設置すること、騒音測定器を同町の建物の屋上に設置し、飛行実態の把握を行うための予算を確保したとしていましたが、現在の進捗状況はどうなっているのか、危機管理部長に伺います。

 

○危機管理部長 低空飛行訓練を観測するためのカメラ等の設置に関する進捗状況について、お尋ねがございました。

本県における米軍機による低空飛行訓練の実態について、国自らが映像などを用いて把握できるよう、防衛省の中国四国防衛局において、動画撮影用の観測カメラと騒音測定器を 本山町に設置すべく準備を進めていただいているところでございます。

その進捗状況につきましては、 10月に設置工事に関する契約を施工業者と締結し、現在は、設置箇所や撮影の角度などについて、地元の本山町と協議を行っている段階であるということを防衛局に確認しております。

また、来年の3月15日までとする工期内に設置を終え、設置後は速やかに運用を開始する予定であると伺っております。

 

◆また、米軍の低空飛行訓練の中止を強く求めること、せめて事前に訓練通告が行われてしかるべきとの意見がありますが、今後どのように要請していくのか、知事に伺います。

 

○県知事 次に、米軍の低空飛行訓練の中止と事前通告を今後どのように要請していくのか、というお尋ねがございました。

この低空飛行訓練の中止要請につきましては、住民が生命の危険を感じるような超低空飛行訓練が繰り返されるとか、また、訓練回数が大幅に増加するといったような場合には、改めてこうした異常な訓練の中止を求めてまいりたいと考えております。

加えまして、本県上空におけます米軍機の主な訓練ルートにあたる、いわゆる「オレンジルート」は、ドクターヘリ、消防防災ヘリが日常的に活動している空域でもあるわけでございます。

また、オレンジルート下には、山間地域での救急患者搬送や災害時の救援物資の運搬などに必要なヘリポートも多く存在しております。

米軍機の低空飛行訓練は、こうしたヘリの安全な運行を脅かすものでございます。従いまして、飛行ルートや時期を事前に情報提供するように、これまでも繰り返し国に要請してまいりました。

一方で、米軍機の飛行訓練に関する情報は、米軍の運用に関わる情報であるというのも事実でありまして、その意味で、全てを明らかにするということは軍事上困難であるという事情も一定程度理解ができるところであります。

県といたしましては、そういうことではございますけれども、訓練に関する情報につきましても、軍事的な機密に差し支えのない範囲で工夫して事前に提供していただきたいと考えておりまして、今後もこの主旨を全国知事会とも連携し、粘り強く求めてまいります。

 

●岡田議員 米軍の無法ぶりは、先日の青森県での燃料タンクの市街地への投下という、大惨事につながりかねない暴挙まで引き起こしています。ドイツでは、米軍にドイツ国内の航空法を守らせる強い要請を行い、低空飛行訓練が実質的に行えないことになっています。

◆全国知事会でも、日米地位協定の見直しが共通の要望として出されています。その実現のため、知事は今後どのような決意で、どう取り組まれるのかお聞きいたします。

 

○県知事 次に、日米地位協定の見直しの実現に向けた決意と取り組みについて、お尋ねがございました。

全国知事会におきましては、平成30年7月に基地の無い都道府県も含めた知事会全体の総意といたしまして「米軍基地負担に関する提言書」を取りまとめております。

この提言書には、「日米地位協定を抜本的に見直し、航空法令などの国内法を原則として米軍にも適用させること」などを盛り込みまして、同年8月に政府に提言を行っております。この提言に関しましては、それ以降も毎年行っているところであります。

本県といたしましては、この日米地位協定の抜本的な見直しについては、全国知事会の枠組みを通じて要望していくことが効果的であるというふうに考えております。今後も全国知事会の一員といたしまして、この提言の実現に向けまして、継続的に取り組んでまいります。

 

【政府の経済対策について】 

●岡田議員 次は、政府の経済政策についてです。

岸田文雄内閣は、「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」を閣議決定し、21年度補正予算案を、今年中にも成立させたいとしています。岸田内閣の「経済対策」は、「Go To トラベル」の再開、マイナンバーカードの取得に伴う「マイナポイント」の付与、所得制限を設けた18歳以下への10万円給付、困窮学生への給付金、住民税非課税世帯への一律10万円給付、困窮世帯向けの「生活困窮者自立支援金」の支給などが盛り込まれています。

加えて、ミサイルなどの装備を拡充する軍事費7,700億円は補正予算としては過去最大、先端半導体の国内生産拠点の確保や「ポスト5G」関係の研究開発など大企業への支援も並んだ総花的なものとなっています。

 まず、第一の問題は、「経済対策」の財政支出が55.7兆円に上り、その裏付けとなる2021年度補正予算案の一般会計補正規模が35.9兆円となるなど、過去最大となる見込みにもかかわらず、国民・事業者への給付金があまりに不十分であり、必要な国民に届く支援となっていない点です。

住民税非課税世帯への10万円給付は、要件が厳しく、単身者で収入がおよそ100万円以下とならなければ対象となりません。これでは、コロナ禍の影響を受けた非正規雇用労働者は、その多くが対象とならないことが強く懸念されています。コロナ禍での生活悪化の影響は幅広い上に、誰がダメージを受けているのか、事前に把握することも難しい状況です。

この状況に対応するためには、給付金が必要なところに迅速に、かつ確実に届く仕組みが求められます。

◆非正規労働者なども広く支援・給付の対象とするよう改めるべきと考えますが、知事の認識をお聞きします。

 

○県知事 次に、住民税非課税世帯等への今回の経済対策におけます給付金に関しまして、給付の対象を改めることについて、お尋ねがございました。

国におきましては、新型コロナウイルス感染症の影響が長引く中で、様々な困難に直面した方々が速やかに生活・暮らしの支援を受けられるということを旨として、今回の制度を打ち出されたというふうに理解をしております。

対象は、令和3年度分の住民税均等割が非課税の世帯を基本とされておりますけれど、これに加えまして、コロナ禍の影響により家計が急変し、非課税世帯と同様の事情にあると認められる世帯も加える予定というふうにお聞きしているところでございます。

現在、国において制度を検討中の状態でございまして、国の補正予算成立をされ、詳細が示されましたら、事業の円滑な施行に向けまして、市町村の取組を支援してまいる考えであります。

加えまして、今回の経済対策におきましては、生活福祉資金特例貸付や新型コロナウイルス生活困窮者自立支援金の申請期間が、令和4年3月まで延長されました。

県といたしましては、今回新設される給付金の対象とされない方に対しましても、こういった延長となりました特例貸付、自立支援金などの支援策が講じられる場合もあると考えますので、こういった政策も通じまして、厳しい状況にあります方々の生活あるいは暮らしの支援を行ってまいりたいと考えております。

 

●岡田議員 子育て世帯への給付も、主な稼ぎ手の収入で所得制限を設けた結果、給付の不公平が生じると指摘されています。また半額は、来春の原則クーポンでの支給となり、967億円の事務経費がかかることにも、多くの疑問の声が上がっています。今回、補正予算に計上されている「学生支援緊急給付金」の予算額が675億円であり、それと比しても巨額の事務経費といわなければなりません。また、16~18歳への給付については、別途申請が必要で5万円が届くのも年明け以降になるとも報道されています。

◆政府は年内に5万円を給付し、来春にクーポン5万円を配布する計画ですが、政府に対して、自治体が現金で一括給付できる予算措置を行うよう、市町村と連携して求めるべきだと考えますが、知事のご所見を伺います。

 

○県知事 次に、子育て世帯への給付におけます現金の一括給付について、お尋ねがございました。

今般の経済対策におきましては、コロナ禍の影響を踏まえまして、子どもたちを力強く支援するという観点から、子育て世帯への臨時特別給付が決定をされております。

このうち、クーポンによる給付5万円分というのが想定されておりますが、これにつきましては、給付の仕組みの構築あるいは商品提供店舗の選定に時間を要するということがございますので、来年春の入学、新学期に向けた給付が難しいという事情も想定されます。

また、特に本県の中山間地域におきましては学習支援、育児支援など子育てサービスを提供する事業者や、商品提供店舗が少ないといった課題があるということでございます。

こうした事情もございますので、全国知事会、市長会、町村会におきましては、地方の意見を反映いたしまして、市町村が柔軟に対応できる仕組みとしていただきたいという旨を、 1 1月末に連名で国に要望し、要望書の形で国へ提出したところでございます。

この問題に関しましては、国会では、昨日総理から、「自治体の判断で地域の実情に応じ 年内からでも1 0万円の現金を一括で給付することも選択肢の一つに加えたい」という明確な方向性も示されたところでございます。

県といたしましては、こうした方向性に添いまして、今後の制度設計におきまして、各市町村の自主性が尊重される仕組みとなるということを期待いたしているところでございます。

 

●岡田議員 事業者への支援である「事業復活支援金」は、新型コロナの影響で今年11月から来年3月のいずれかの月の売上高が50%以上、または30%から50%減少した事業者中堅・中小・小規模事業者・フリーランスを含む個人事業主ですが、…を対象にしています。

そのうえで、個人事業者の実情はどうかと事業者にお聞ききすると、売上減少が30%までいかなくても、20%減少が数カ月続いて困っている、という事業者が少なくありません。ところが、こうした事業者には支援金はなく、しだいに経営が厳しくなっているのが実情です。

◆売上減少が20%、25%という月が続いて経営が厳しい事業者に対して、何らかの支援が必要だと考えます。県独自の給付金の対象拡大を行う考えはないか、あるいは国に求める考えはないか、知事のご所見を聞かせてください。

 

○県知事 次に、国の事業復活支援金に関しまして、県独自で対象を拡大できないかというお尋ねがございました。

本県におきましては、コロナ禍が長期化する中、国に先行いたしまして県独自の給付対象を拡大した給付金を創設いたしまして、事業者の下支えを行ってまいりました。

それと同時に、国に対しては、給付金の支給対象を拡大すること、そして給付内容を充実させていくことを訴えてまいったところであります。

こうした結果、今回の国の経済対策の「事業復活支援金」という形で、ようやく支給対象が拡大され、支給金額も拡充されるということになったわけであります。こういった事情がございますので、まずは、今回の国の新たな支援金を活用いただくということで、事業者の事業継続の支援をはかってまいりたいと考えておりますし、これと同時に、需要回復の対策などを含めました各種の経済対策を県としても実施していくということで、早期の景気回復に努めてまいりたいというふうに考えております。

その上で、今後の経済状況でございますとか、国新たな支援金制度の適用状況等を踏まえまして、また事業者の皆さんのご意見もお聞きしながら、必要な場合には、 国に制度の更なる充実などの政策提言を行ってまいる考えであります。

 

●岡田議員 また、新型コロナウイルス感染症の次なる感染拡大を見越し、「自宅療養」で亡くなる方が相次いだ第5波を教訓として、医療体制の抜本強化を行うことも必要です。そのためには、医療従事者の確保が喫緊の課題です。

政府は、看護師の賃上げとして、コロナ医療に携わる医療機関に限って、当面月4000円の賃上げを行うとしています。額が不十分なうえに、地域における医療体制の維持には、コロナ医療に直接関わる医療機関以外も大きな役割を果たしており、コロナ医療に携わる医療機関に対象を限ることは、道理がありません。抜本的な看護師の処遇改善が必要です。

◆国に対し、さらなる看護師の抜本的な処遇改善を求める考えはないか、知事にお聞きいたします。

 

○県知事 次に、国に対して看護師の抜本的な処遇改善を求める考えはないかという点についてお尋ねがございました。

この11月19日に閣議決定されました今回の「コロナ克服の経済対策」におきまして、公的部門におきます分配機能の強化の一環といたしまして、看護や介護等の現場で働く方々の収入の引き上げ等を図ろうという内容が盛り込まれております。

議員からご指摘がございました「看護職員等処遇改善事業」は、その第一歩という位置づけで、この度の国の補正予算に計上されたものであります。

内容的には、地域でコロナ医療など一定の役割を担う救急医療機関に勤務する看護職員これを対象といたしまして、来年2月から、 収入を1%程度、月額にして4千円引き上げるといった中身と承知しております。

コロナ禍の中でご尽力いただいている看護職員の処遇改善に資するものと期待をいたしております。

一方で、この措置が1 0月以降の措置をどうするかという点につきましては、今後の公的価格の見直しでございますとか、令和4年度の当初予算の編成過程におきまして、改めて検討されるという扱いとされておりまして、この点についての、国の動きをまずは注視してまいりたいと考えております。

 

●岡田議員 そして、国の補正予算案には、新型コロナウイルス感染症とまったく関連性のない、軍事予算7,700億円が「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」に含まれていることも大きな問題です。今年度の新規契約費として約2,500億円、過去に契約した装備品の分割払いの経費として約4,300億円をそれぞれ充て、哨戒機や輸送機のほかにミサイルや魚雷などを増やす見通し、となっています。21年度の当初予算5兆3,422億円と今回の補正予算を合わせると、同年度の防衛費は6兆円を上回ります。

 財政法上、補正予算による支出は特に緊要となった経費について行うものとされています。財政法第二十九条です。補正予算による軍事費計上は、安倍政権から繰り返されている補正予算を悪用した、あからさまな軍拡と指摘しなければなりません。

◆補正予算での軍事費計上には、財政法上要請される緊急性は全くなく、「コロナ克服」という政府自らが掲げた経済対策の目的からも逸脱するものと考えますが、知事のご所見を聞かせてください。

 

○県知事 次に、国の補正予算での防衛費の計上について、財政法との関係とのお尋ねが ございました。

財政法第29条は、「内閣は、予算作成後に生じた事由に基づき、特に緊要となった経費の支出を行う場合、補正予算を作成し、これを国会に提出することができる」というふうに規定をいたしております。

お尋ねの補正予算への防衛費の計上につきまして、政府は 「財政法に基づき、緊要性があるものとして予算案を提出している」というふうに説明されているものと承知しております。

防衛費を含めまして、その緊要性の有無などにつきましては、予算案の提出を受けました国会において、十分な審議がなされたうえで、判断されるべきものだというふうに考えております。

 

【地方創生について】  

●岡田議員 次に、地方創生についてお聞きします。

国において2014年11月に、地方創生の根拠法となる、「まち・ひと・しごと創生法」(「地方創生法」)が制定されました。政府は、この地方創生法に基づき、地方創生の「総合戦略」と、その具体的な政策化の方向を示した「基本方針」を定めています。そして、昨年12月に、第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」(2020改訂版)として策定されています。

「総合戦略」の目的は、将来にわたって「活力ある地域社会」を実現することです。そのために、①人口減少を和らげる。そのために結婚・出産・子育ての希望をかなえる。また地方に住みたい希望を実現する、②地域外から稼ぐために力をつけるとともに、地域内経済循環を実現する。人口減少に適応した地域をつくる。③東京一極集中を是正するというものです。また、「基本方針2021」では、地方創生の3つの視点として、「ヒューマン」「デジタル」「グリーン」を重視して推進するとしています。

岸田首相は、「新しい資本主義」を標榜していますが、この地方創生の路線は引き継がれるものと考えます。政府の政策決定を受けて、本県では「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定し、実行していますが、私は、いま一度、地方が主体性をもって政府が進める「地方創生」を見つめ直し、点検する必要があると考えます。

その理由は、第一に、国と地方の関係に関わる問題を含んでいるからです。もっと言うと政府による地方創生が、国と地方の関係をゆがめていると考えるからです。

初代の地方創生担当大臣が「『地方再生』ではなく『地方創生』と言っているのは、いろいろな考え方や仕組みを作ろうとしているためだ。中央と地方、あるいは民間と政府の関係を全く違うものにしていきたい」と述べたことがあります。2015年1月の経団連会長との懇談の中です。1993年6月の衆参両院での「地方分権の推進に関する決議」に基づく地方分権改革を経て、国と地方自治体は対等・協力の関係になりましたが、地方創生によってそれが変わるということです。

地方創生の実施手段は「選択と集中」です。地方自治体に地域の総合戦略をつくらせ、結果について政府が評価・選別する。それにより「努力する自治体」には資金と支援策を集中する仕組みです。一見、当たり前のように見えますが、国主導で上から地域間競争を促す戦略であり、「やる気がない」と見なされれば取り残されます。そして自治体の集約や再編が余儀なくされるおそれもあります。国連の「持続可能な開発目標」は「誰一人取り残さない」です。自治体間の格差が広がるようなことになっては本末転倒です。また、権限を独り占めする政府の交付金という「金」によって、地方創生の取り組みが「支配」されるようになってしまうと、国と地方の対等な関係がゆがめられます。

◆地方から見て、政府の地方創生には、国と地方の対等な関係を崩す構造的な問題があると考えますが、知事の所見を伺います。

 

●岡田議員 第二に、政府が進める「地方創生」は、これまでの経済政策、社会福祉政策に対する反省が希薄であるからです。

 地方衰退の要因は、東京に人・モノ・カネが集まる「東京一極集中」もありますが、それだけではありません。同時に、地方が切り捨てられてきたことによるものです。

とりわけ輸入自由化のもとで農林水産業が衰退したことが地方の活力を失わせました。また、この30年、賃金はほとんど上がらず、人手不足といわれる介護の職場でも最低賃金レベルで働いている人が少なくありません。男女の賃金格差も残っています。非正規労働者は4割に増え、貯蓄ゼロの世帯が増えています。勤労者の可処分所得が増えなければ、購買力が回復せず、地域経済は良くなりません。一方、安心してお金を使える基盤ともなる社会保障は、充実どころか病床を減らす計画です。また、将来を担う学生は、高い学費を払うためにバイトに追われ、卒業すれば多額の奨学金の返済が待っています。

 他方で、エネルギー政策は、地方に豊富にある再生可能エネルギーへの思い切った転換を図るのではなくて、原発を温存する構えです。しきりに言われた、大企業が儲かれば、やがて滴り落ちて来るという、トリクルダウンは起きませんでした。

「今だけ、金だけ、自分だけ」といわれる新自由主義の経済政策を改め、大企業優遇でなく、一次産業を重視し、家計を応援する経済政策に切りかえてこそ地方再生につながるのではないでしょうか。なにより安定した雇用と社会保障の充実こそ人口減少への一番の対策となります。先端技術の導入や規模拡大で生産性を上げた事業者に支援を集中するというやり方だけでは、地方の衰退に歯止めはかかりません。普通に働いて、普通に暮らせる社会を持続させることが大切です。

政府の地方創生は、地方を衰退させてきた、こうした問題に正面から向き合っていないと言わざるを得ません。

◆政府の「地方創生」は、地方衰退の根本をただすものになっておらず、くらしへの施策が乏しいと考えますが、知事の認識をお聞きします。

 

○県知事 次に、政府の進める地方創生におきます、国と地方の関係、そして、施策の内容のあり方について、お尋ねがございました。関連いたしますので、あわせてお答えをいたします。

地方創生は、地域地域の様々な課題に対しまして、各自治体が自らその強みや弱みを分析する、そして、地域の特性を活かした取り組みを自主的・主体的に行っていくということによりまして、その実現を目指すといったものであります。そして、こうした地方独自の取り組みを国が支援することが基本的な枠組みとなっております。

本県におきましては、人口減少におきます経済の縮みが、若者の県外流出、中山間地域の衰退を招き、さらにこの結果、人口減少に拍車がかかる、といった負のスパイラルをたどってきた経緯がございます。この負のスパイラルを克服し、一人ひとりの暮らしを守るべく、産業振興計画をはじめといたしましたこれまでの取り組みを活かしながら、体系的な総合戦略を策定をしたところでございます。

この総合戦略におきましては、地産外商や観光振興、移住促進といった経済の活性化、そして出会いの機会の創出などの少子化対策、さらには中山間地域の小さな拠点となります集落活動センターの開設などを盛り込みまして、様々な取り組みを進めてまいりました。

その結果、本県の経済は、人口減少下におきましても拡大をしていくといった構造に転じつつあるというふうに考えております。こうした取り組みを進めるにあたりまして、地方創生推進の交付金など、国の施策が大きな後押しとなったということは否めない事実だというふうにと考えております。

このように全国の自治体が、地域の特性を活かし、創意工夫を凝らした独自の取り組みを主体的に行うということが、まさに地方創生のあるべき姿だというふうに考えているところでございます。

 

●岡田議員 ◆また、そうした視点から、将来を担う学生の高い学費引き下げなど県民の要望をしっかり国に上げていくべきと考えますが、知事の考えを聞かせてください。

 

○県知事 次に、この地方創生に関連をいたしまして、学生の学費引き下げなど県民の要望を国に上げていくべきではないかということについて、お尋ねがございました。

大学は地域におきます「知の拠点」といたしまして、地域の将来を支えます産業、人材の育成に大きな貢献を果たすといったことなど地方創生にとって重要な役割を担っていると考えております。

そうした大学への進学について、子どもたちが経済的な理由によって断念することのない環境づくりが必要であると考えます。

こうしたことを踏まえまして、県におきましては、全国知事会を通じまして、大学等の高等教育への進学希望を叶えるための給付型奨学金の創設などを国に提言してまいりました。その結果、国は、令和2年度から、授業料等の減免制度、そして給付型奨学金の支給を併せて措置をいたします「高等教育の修学支援新制度」を開始したところでございます。

県としましては、この制度の開始後も、奨学金の給付額の引上げなど、制度の拡充につきまして、引き続き全国知事会を通じて、国に提言をいたしているところであります。

 

●岡田議員 本県では、昨年3月に「第2期高知県まち・ひと・しごと創生総合戦略」が策定されました。この中の、人口の推移と、人口減少の負のスパイラルに対応する5つの基本政策、それらを下支えする施策、そして基本目標、この関係がわかりにくい面があります。

それは、「日本一の健康長寿県づくり」「少子化対策の抜本強化」は別として、「経済の活性化」「教育の充実」「中山間対策の充実・強化」など人口の増減とは直接つながっていないか、つながりが薄い施策もあり、こうした施策をも人口で評価するという問題です。

そのため、5つの基本政策の目標とは別に、人口増減に関わる4つの基本目標をたてています。政府の総合戦略もそういう組立てになっているので、致し方ないのかも知れませんが、無理に人口との関わりに結びつけているように見てとれます。

◆人口増への貢献は重要だとしても、すべての施策を人口増への貢献で評価するのは、少し無理があると考えます。個別の施策そのものが重要でもあるからです。総合戦略の評価基準について、知事にお聞きします。

 

○県知事 次に、高知県まち・ひと・しごと創生総合戦略の評価基準について、お尋ねがございました。

この総合戦略におきましては、「地産外商により魅力のある仕事をつくる」といった4つの基本目標を設定いたしまして、これに基づき、関連する具体的な施策を盛り込んでいるところであります。

こうした施策の評価基準は、例えば、中山間地域の振興という基本目標につきましては、集落活動センターの開設数を数値目標として掲げるといった形で設定をしておりまして、それぞれの施策の目的、内容に応じて設定をしているところでございまして、一律に人口増への貢献度を評価するといったものではないところであります。

各施策につきましては、総合戦略推進委員会などにおきまして、取り組みの進め方あるいは人的、財政的支援の投入量こういった点なども含めて評価をいたしておりまして、 PDCAサイクルによります不断の点検・検証及び見直しを行っているところであります。

 

◆地方創生の主体は、なんといっても県民です。そこに地方創生のカギがあると考えますが、どう県民主体の取り組みにしていくのか、併せて、知事にお聞きします。

 

○県知事 次に、地方創生をどのように県民主体の取り組みにしていくのかという、お尋ねがございました。

総合戦略などの各計画におきましては、策定段階から検証に至りますまで、有識者のほか、関係する団体や市町村の皆様などに参画いただきまして、様々なご意見をいただいております。

また、その実行にあたりましては、できるだけ多くの県民の皆様に参画いただきまして、自らプレーヤーとして取り組んでいただくということが、地方創生を成し遂げる上で望ましい姿だと考えております。

これまでも、こうした観点から、産業振興計画の「地域アクションプラン」では、地域の皆様が主体となり、地域資源を活かして、加工品の開発や販売などに取り組んでいただいております。

また、「集落活動センター」では、住民の皆様が主体となりまして、集落での支え合い活動、特産品づくりなど、地域の課題に応じた取り組みが進められているというふうに承知しております。

今後も、私自身、可能な限り地域に出向きまして、より多くの県民の皆様との対話を重ねながら、率直なご意見を反映した戦略づくり、あるいは官民協働による取り組みをさらに進めてまいりたいと考えております。

 

●岡田議員 地域を維持していくうえで集落連携等による、地域の支え合いや活性化に向けた仕組みをつくることは重要です。そのため、本県では、「集落活動センター」や「あったかふれあいセンター」の整備を進めてきました。小さな拠点として「集落活動センター」は令和6年度末に80ヵ所を目標にしています。

 この事業を始めるには、運営主体や、運営に協力していただく人を組織しなければなりません。そのために、県の地域支援企画員が市町村や関係機関、地域住民とも協力して重要な役割を果たしています。

 課題は、県の地域支援企画員のような役割を担える人材を市町村や地域に育成し、全体のスキルアップを図ることではないでしょうか。こうした人材が増えることが、市町村、地域住民による内発的な力を引き出し、地域のまとまりをつくり、住民主体で事業を起こす力、安定的に事業を継続していく力を強めることにつながります。今後、さらに地域の高齢化が進むことから、きめ細かく支援、支援、取りまとめができる人材の確保が重要です。

◆県として、県の地域支援企画員の役割、市町村との連携と地域支援の人材育成について、どのように考えているか、中山間振興・交通部長にお聞きします。

 

○中山間振興・交通部長 まず地域支援を担う人材育成についてお尋ねがございました。

各市町村に駐在しております地域支援企画員は、市町村や地域の皆さまに寄り添い、ともに考え行動することで、住民の思いを実現し、課題の解決を図るなど、地域の活性化を後押ししております。

一方、人口減少や高齢化により、地域のリーダーや担い手が不足する中にあって、市町村職員や地域支援企画員の活動だけでは、地域の活性化を進めていくことは困難になってきております

このため、県では、これまでも地域づくりや集落活動を応援する「地域おこし協力隊」や「集落支援員」などの人材を確保し、地域活動の担い手やコーディネーターとして育成する取り組みを市町村とともに進めてまいりました。

今後、集落実態調査の結果を踏まえ、地域おこし協力隊などの活動に対して、相談体制やネットワークを充実することに加え、実践的な研修会を開催するなど、サポートの強化を 検討したいと考えております。

また、このような地域をサポートする人材だけでなく、集落活動センターをはじめとする地域の団体の関係者や集落の後継者など地域内の人材育成にも、市町村と連携して取り組みたいと考えております。

 

【過疎地域に対する取り組みについて】 

●岡田議員 次に、過疎地域に対する県の取り組みについてお聞きします。

国では、「過疎地域の持続的な発展」という理念のもと、今年4月に新しい「過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法」を施行しました。

 これを受けて本県では、8月に「高知県過疎地域持続的発展方針」(令和3年度~令和7年度)を定めています。

 過疎は、一定の空間的な範囲に住んでいる人がどれだけ減っているかで表されます。その過疎地域が直面しているのは、過疎化に加え、人口減少、少子高齢化です。これらは同時に進行しており、「過疎・高齢化」とひとまとめに表現されます。

 中山間地域を中心とする過疎化や高齢化が進むと、集落の自治機能が低下し、それとともに農林地や生活基盤が荒廃します。景観や文化など地域固有の資源が消滅していきます。

過疎・高齢化が進む地域の方からは、買い物に苦労している、バス停まで遠くて大変だと、病気になったら心配、といった声を多くお聞きします。

地域のおかれている現状、地域の人たちの要望、他方で地域の良さなどを把握し、問題点や課題を整理して、横断的に共有できる仕組みを充実させることが必要であり、そして、総合的な施策や事業を行ない、住民の皆さんに適切な行政サービスが届くようにしなければなりません。

 本県では、新過疎法に基づく過疎地域とされた自治体数は、これまでと変わりありませんでした。人口減少に歯止めをかける諸施策を行なっても、なお当分の間、人口減少が続く見通しです。その間に、地域の過疎化が進行することは避けられません。

こうした状況のなかで、いかにして生活の質を落とさず、むしろ生活の質を向上させて、住み慣れた地域で暮らし続けられるようにしていくのかが、県政の大きな課題です。

◆過疎地域の現状に対する認識、そして今後、過疎対策に具体的にどう取り組むのか、知事にお聞きをいたします。

 

○県知事 最後に、過疎地域の現状に対する認識と今後の過疎対策の具体的な取り組みについて、お尋ねがございました。

本県におきましては、長年にわたります総合的な過疎対策によって、産業の振興やインフラ整備など、一定の成果を挙げてきたものと考えております。一方で、過疎地域では、依然として人口減少に歯止めがかかりませんで、高齢化や集落の小規模化なども相まりまして、地域の活力や生活基盤が弱まるといった、厳しい状況にあります。

このような過疎地域の現状を踏まえまして、本県におけます過疎地域の持続的発展を図るという目的で、ご指摘のありましたような「高知県過疎地域持続的発展方針」を本年8月に策定いたしました。

この方針では、県の5つの基本政策と横断的に関わります3つの政策、さらには、地方創生総合戦略などとも連動させるという考え方で、「産業の振興」、「生活環境の整備」、「教育の振興」など11の項目を柱として過疎対策を進めることといたしております。

現在、この方針に基づきまして、評価指標となりますKPIを設定した県計画の策定を行っております。県計画に基づく事業の実施に際しましては、進捗状況、達成状況を踏まえまして、PDCAサイクルを回しながら進めてまいります。また、過疎地域のそれぞれの市町村では県の方針に基づきまして、順次、市町村計画を定めていただいておりまして、過疎市町村の皆さまと連携して、過疎対策に取り組んでまいる考えであります。私からは以上であります。

 

【物部川の濁水問題について】  

●岡田議員 次に、物部川の濁水問題についてお聞きします。

物部川は流程71㎞と四万十川、吉野川、仁淀川に次いで県内では4番目に長い川です。源流部一帯は奥物部といわれ、県下の最高峰である三嶺(標高1,894m)を始めとして、1,500m級の山々が連なり、石鎚山系と並ぶ四国の二大奥山地帯となっています。

自然豊かなこの物部川にも、他の日本の多くの川と同様に戦後間もなくから昭和30年代にかけて電源開発の事業が入り、物部町(旧物部村)大栃より上流では住友共電による大小いくつかの取水堰堤や発電所が支流にでき、それより下流では永瀬・吉野・杉田の三つの県営ダムが造られていきました。

流域住民に親しまれ、アユ漁も盛んなこの物部川に20年ほど前から異変が起きています。豪雨により川の水が濁るとなかなか元の清流に戻らなくなってしまいました。

このため2005年度(平成17年度)に国土交通省、高知県、関係機関、関係自治体で濁水対策検討会が設置され、濁水の実態把握・監視、流域対策(発生源対策)、貯水池対策が取り組まれてきました。また、清流と森を守ろうという官民挙げた活動も取り組まれてきています。関係者のご努力には心より敬意を表するものです。しかし、こうした活動を行ってもなお、抜本的な解決には至っておりません。

物部川で濁水問題が言われ出したのは、1993年(平成5年)に発生した大規模な山火事を原因としたものが最初です。その後、2004年(平成16年)、2005年に連続して来襲した台風にともなう豪雨による土砂崩れなどが大きく影響し、出水の度に頻繁に濁水を発生させるというパターンが続いております。

濁水の要因としては、シカの食害、森林崩壊、ダム湖に溜まった土砂などが要因として考えられます。その中でも、ダム湖に泥水が流れ込んで溜まることが、濁水を長期化させているとみられています。

長期の濁水は、自然環境や生態系に悪影響を及ぼします。日光が遮られ、水生動植物の生息環境が悪化します。石にヘドロがこびりつき、コケを食べるアユやボウズハゼなど川魚の生育に支障を来しています。また、物部川の水は農業用水として利用されており、農業への被害も拡げます。作物によっては、水をろ過して利用しなければなりません。

こうした被害を防ぐための抜本的な対策が必要です。

◆現在の濁水対策の取り組み状況について、土木部長にお聞きいたします。

 

○土木部長 まず、現在の物部川における濁水対策の取り組み状況について、お尋ねがございました。

永瀬ダム上流域の山腹崩壊などにより、ダム湖に流れ込んだ土砂は、降雨による出水のたびに濁水の発生源となっています。

このため、流域の山林では国や県により、崩壊の拡大を防ぐための山腹工をはじめとする治山事業を行うとともに、森林組合などによる、森林保全のための間伐も進められています。

また、県ではダム湖内で濃度の高い濁水がとどまる水深に取水口を移動させ、ダム湖から濁水の早期排出を促す、選択取水設備の運用なども行っているところです。

あわせて、国土強靭化対策予算を活用し、上流の河川やダムに堆積した土砂の浚渫を加速化しているところであります。

 

◆県は、従来の濁水対策検討委員21人に森林組合や土地改良区代表、土砂管理や水生生物の専門家ら11人を追加したとのことですが、その理由、目的についても、併せて土木部長に伺います。

 

○土木部長 次に、従来の濁水対策検討委員2 1人に森林組合や土地改良区代表、土砂管理や水生生物の専門家ら11人を追加した理由及び目的について、お尋ねがございました。

平成1 6年に物部川の濁水が長期化し社会問題となったことから、翌年の平成1 7年から濁水対策検討会を開催し、濁水対策に関係する学識者にご意見をいただきながら、課題の解決に向け、土砂の浚渫や治山事業に取り組んでまいりました。

しかし、これらダム上流域の対策だけでは、抜本的な解決には至らないことが明らかになってまいりました。

令和2年度に開催した検討会においては、課題の解決に向けて、山の荒廃が進む上流域から、濁水の影響を受けている下流域まで、流域全体で関係者の理解を得なければならない、 との提言がございました。

このことを受けて、今年度から、度々発生する山腹崩壊をまのあたりにしている森林組合や、農業用水の濁りに苦慮している土地改良区の代表者など、地域の関係者、また、海岸の浸食や水生生物の生態に詳しい学識者など、新たに1 1名の委員に加わっていただき、流域全体で濁水の長期化の抜本的な解決に向けた検討を行うこととしたものでございます。

 

●岡田議員 10月27日開かれた、新しい濁水対策検討会では、”ダム上流の川底の掘削などで除去できる土砂量は流入量に対してごくわずかであり、ダムの改良を視野に議論が交わされた” ”検討会は本年度中に対策方針をまとめ、22年度以降の具体化につなげる方針だ” との報道がありました。

 全国で検討されているダムの貯水池における濁水長期化対策としては、濁質の発生、流送、貯留の過程から、①流域・発生源対策、②河川内対策、③貯水池内対策、④貯水池下流対策の4つの対策があるとされています。

流域・発生源対策とは、森林整備、治山事業、地すべり防止対策、流域の乱開発の防止等により濁質の生産量を抑制することです。

河川内対策は、流域内で発生した濁質の貯水池内への流入を防ぐためのものです。渓流における側岸浸食による土砂の生産および堆積土砂の運搬を抑制する渓流対策や、排水バイパスを設置して、自然に近い形で洪水時の土砂や濁水をダム下流に流し、ダムへの流入濁質の低下を図る方法などがあります。

貯水池内対策は、湖岸浸食を防ぎ、濁質の貯水池への流入を抑制すると共に、流入した濁質については放流操作などにより、ダム下流の濁水を軽減させるものです。

貯水池下流の対策は、河川内対策と同様、濁水を流す過程における対策ですが、ダム下流および放水口下流といった限定された範囲における対策です。

こうした様々な知見を有するダム工学の専門家、専門機関に加えて国の知見なども総動員して抜本的な対策を早急に検討する必要があると考えます。

◆県として、どのような知見を集めて対策を行なっていくのか、また、ダムの改良とその効果についてどのように考えるのか、土木部長にお聞きいたします。

 

○土木部長 最後に、どのような知見を集めて濁水対策を行うのか、ダムの改良とその効果について、お尋ねがございました。

ダム上流域で毎年のように山腹崩壊が発生し、大量の土砂がダム湖に流れ込む状況は、濁水の発生のみならず、水を貯める容量が少なくなることから、ダム本来の目的である治水 機能を低下させることにもつながります。

このことから、ダムへの堆砂を抑えるために、大量の土砂を、効果的に下流へ排出する方法の検討が必要であると考えております。

例えば、洪水時においてダム湖内を経由せずに土砂を下流に排出する排砂バイパスの整備は、土砂堆積の抑制や濁水の早期排出といった効果を発現できる一つの事例と考えております。

今後は、同様の課題を抱えて対策を実施した、ほかのダムの先行事例などを参考とし、国の専門機関などから知見を得ながら、物部川に適した対策を検討してまいります。

 

●岡田議員 また、濁水を軽減するには、水源地である上流域、中流域の森林保全が重要です。高知県は2003年4月、全国に先駆けて、「森林環境税」を導入しました。本県は林野率が83.5%と全国一高く、森林の約6割が杉、ヒノキの人工林で、その面積は39万㌶に及びます。人工林は、外材の増加による林業不振と担い手の高齢化などによって、人の手が入らず放置されている所が少なくありません。人工林の荒廃は水源涵養機能の低下による水不足の問題や土壌流出による川や海の生態系に影響を与えます。

高知県の「森林環境税」の主旨は、県民に薄く広く税負担をしてもらい、県民総意で「山」の再生に取り組むところにあります。県民への一層の周知を図り、県民参加の森づくりを促進していくことが求められます。

◆県は、今後、濁水防止に寄与する県民参加の森づくり、森林環境保全事業をどう進めていくのか、林業振興・環境部長にお聞きいたします。

 

○林業振興・環境部長 濁水防止に寄与する県民参加の森づくりなど、森林環境保全事業をどう進めていくのか、お尋ねがございました。

森林は、水源のかん養や山地災害の防止、生物多様性の保全など、多くの公益的機能を有しております。ご指摘のありました川の濁水防止も、こうした公益的機能の一つであると考えております。この公益的機能の維持・確保に向けまして、県では、森林環境を保全する取り組みや、県民の皆様に森林への理解や関わりを深め広げる取り組みなどを行っております。

まず、森林環境を保全する取り組みとしましては、荒廃森林の発生を防止するための保育間伐の実施や、地域の活動団体が放置された竹林の伐採などを行う里山保全活動を支援しております。

森林への理解や関わりを深め広げる取り組みとしましては、 将来を担う子どもたちへの森林環境教育として、令和2年度は、県内の小中学校67校の5, 253名の児童・生徒に、森林の持つ機能や森林資源の活用などについて学んでいただきました。

県民が参加する森林保全ボランティア活動についきましても、令和2年度は46回、延べ651人の皆様に間伐や薪づくり作業などに参加していただいたところでございます。

加えまして、森林の持つ公益的機能や森林環境を保全することの重要性につきまして、より広くご理解いただくため、森林環境情報誌を毎年2回、県内全ての保育園や幼稚園、小中学校等に配布することで、家庭での周知にも繋げております。

引き続き、こうした取り組みを通じて、川の濁水防止をはじめとした森林の公益的機能の重要性について、県民の皆様のご理解がいただけるよう、森林環境保全事業を推進してまいります。

 

【鳥獣被害対策について】

●岡田議員 次に、鳥獣被害対策についてお聞きします。

 11月に高知市東部の住宅地や南国バイパス、南国市の香長中学校や吾岡山、大篠小学校南の住宅地などで野生のサルの目撃情報が相次ぎました。けが人がなくて幸いでしたが、平野部の住宅街にサルが出てくるのは自然環境が変化したからでしょう。最近では、私の住む南国市の南部の十市や稲生の方からもイノシシに畑作物を荒らされたという相談が寄せられるようになりました。いずれも山裾の田畑でしたが、平野部に近いところでも鳥獣対策が必要になってきています。

 本県では、2012年(平成24年)に過去最高の3億6千万円の農林水産業等への被害があり、その後、野生鳥獣による被害は減少傾向にありますが、昨年(2020年・令和2年)においてもなお1億1千300万円の被害を被っています。そのため鳥獣対策は、引き続き県政の重要な課題であると考えます。なお、農地面積は近年減少傾向にあるため、被害の評価は農地面積の推移なども勘案して行う必要があります。

 本県では、2012年度から「野生鳥獣に強い集落づくり」をスタートさせ、JAに業務委託して鳥獣被害対策専門員事業を行なっています。専門員は、地域住民を主体とした集落ぐるみの鳥獣被害対策を進めていく役割を担っており、集落の合意形成、防護柵の設置や捕獲方法の指導などを行なっています。この専門員の育成には、県がしっかりと支援をしなければなりません。また、重点支援集落を決める県と市町村、関係機関でつくる推進チームの役割も重要です。

◆事業自体は県の実施であり、鳥獣被害対策専門員事業の活動をどう評価しているのか、今後の課題と取り組みも併せて、中山間振興・交通部長にお聞きいたします。

 

○中山間振興・交通部長 次に、鳥獣被害対策専門員の活動の評価、今後の課題と取り組みについて、お尋ねがございました。

県では、平成2 4年度から集落ぐるみでの総合的な鳥獣被害対策に取り組んでおり、県内の4つの農業協同組合に配置しております1 6名の鳥獣被害対策専門員は、その対策を推 進するコーディネーターとして重要な役割を担っております。

具体の活動としましては、被害の深刻な集落に対して、集落ぐるみで対策を行うことへの合意形成や、被害の実態把握、防護柵の設置や効果的な捕獲方法の指導など、総合的な被害 対策の窓口として、住民に寄り添い、きめ細やかな支援を行っているところです

また、今後の課題といたしましては、集落でのリーダーの不在、あるいは担い手が不足していることで、集落単位での被害対策が進まない集落が存在することです。このため、今年度から、周辺集落を巻き込んだ広いエリアでの合意形成を行い、集落連携による鳥獣被害対策を進めているところです。

これらの対策を進めるうえで、鳥獣被害対策専門員の役割はますます重要になってまいります。県としましては、専門員を対象とした研修や専門機関のサポートなどのバックアップを行い、さらなる鳥獣被害の縮減に努めてまいります。

 

●岡田議員 本県では、生息数が著しく増加し、又はその生息地の範囲が拡大している鳥獣の管理を行なう、第2種特定鳥獣管理計画を作成し、イノシシ、ニホンジカの捕獲目標をたてて、農林業被害や自然生態系への被害を軽減するために取り組んでいます。

計画の捕獲目標は、イノシシが年間2万頭、ニホンジカが年間3万頭。これに対する捕獲実績は、2015年の実績ではイノシシ18,736頭、シカ20,556頭です。

 ここ10年の狩猟者登録は、第一種猟銃の減少が著しく、2005年度に4,000件を下回り、2015年度には2,122件となっています。一方、わな猟の登録が増加しており、2015年度に2,631件、これは1985年(昭和60年)の約8倍となっています。そして、直近の10年間は毎年、合わせて約4,800件前後で推移してきています。年齢別では、50歳以上が約9割となっており、高齢化が顕著となっています。特に60歳以上の割合が年々増加しています。

◆狩猟者登録は横ばいで推移しており、イノシシやシカの年間捕獲目標を達成するのは難しいのではないかと考えますが、狩猟者登録をどう増やし、捕獲目標達成へどのように取り組むのか、中山間振興・交通部長にお聞きいたします。

 

○中山間振興・交通部長 次に、狩猟者登録の増加と捕獲目標達成のためどのように取り組むのか、とのお尋ねがございました。

令和2年度の狩猟免許交付件数5, 962件に対して、狩猟者登録件数は4, 528件で、その割合は75.9%にとどまっており、いわゆるペーパーハンターが一定数存在する状況です。

イノシシやシカの捕獲目標を達成するためには、狩猟免許の取得者が狩猟者登録を行うことを促進し、狩猟の現場へ誘う必要があります。このため、くくりわなの製作講習会の開 催や狩猟の名人によるマンツーマンでの捕獲技術指導、わな猟体験ツアーなどを通じて、狩猟を行うきっかけづくりや担い手の育成を行っているところです。

また、若い世代を中心に新たな狩猟者を確保するため、高等学校での出前授業や狩猟フェスタなどのイベントの開催、狩猟免許試験の初心者講習会の受講料への補助なども行って おります。

この結果、狩猟免許取得者の年齢構成につきましては、平成23年度から令和2年度までの1 0年間で、50歳代以上の狩猟者は減少している一方で、4 0歳代以下の狩猟者は、526人から1079人にまで増加しております。また、新たに狩猟免許を取得される方も年間3 6 0人程度で推移しております。

今後も、このような取り組みを継続することで、狩猟者登録件数の増加や捕獲目標の達成につなげてまいります。

 

●岡田議員 次に、三嶺におけるニホンジカ(以下シカ)の食害対策についてお聞きいたします。

 シカは、古くから日本に生息していましたが明治期から大正期、昭和初期にかけて全国的に乱獲が行われ、生息数は減少をたどりました。その後、1940年代から90年代にかけて狩猟を規制し保護する時代が続きました。この保護政策とともに、山村をとりまく経済社会の変化があわさって、シカは80年代から徐々に増加し始め、90年代、そして2000年代には全国的に急激にその数を増やしています。

四国山地でのシカの急激な増加は、林業の衰退・集落の崩壊が大きく影響しています。山間奥地の森林をとりまく環境が変化し、とくに人と自然との関りが希薄になり、狩猟を行なう人が減ってきました。このことがシカの激増につながっています。

増えすぎたシカによって、奥物部の三嶺ではシカの食害が深刻です。広範囲にササや樹木の下草や樹皮が食い荒らされ、一部では山林崩壊につながっています。そこから崩れた土砂が河川に流れ込むことが物部川濁水問題の原因の一つにもなっています。また、シカによる希少植物の食害も深刻です。

◆三嶺は、四国に残された自然の宝庫です。県として、四国の山間部で、とりわけ三嶺でシカが増加した要因をどう理解しているのか、中山間振興・交通部長にお聞きします。

 

○中山間振興・交通部長 次に、三嶺でシカが増加した要因について、お尋ねがございました。

三嶺でのニホンジカの急激な増加は、議員からお話のありました全国的な要因に加え、四国4県の気象データや研究者の報告から、温暖化により降雪量が減少したことが大きな要 因ではないかと考えております。

具体的には、ニホンジカの食害が拡大する前の三嶺では、稜線部に豊かなササ原が広がり、樹林内にも多くの下草が生い茂っておりました。

2000年代に入り温暖化が進行したことで降雪量が減少し、ササ原や下草が冬期でも雪に埋もれることがなくなり、ニホンジカにとって魅力的な冬期のエサ場となりました。このエサ場を求めて、周囲から多くの個体が集まり、繁殖が進んだことでニホンジカの生息密度が急激に増加した、と分析しております。

それらに加え、三嶺には鳥獣保護区や国有林が存在し、平成元年からは国の特別保護区も設定されておりますことから、狩猟による捕獲圧が十分に掛からなかったことも、ニホンジカが増加した要因の一つと考えられます。

 

●岡田議員 現在、高知県では特定鳥獣保護管理計画によって、個体数管理の強化を実施しています。

しかし、それを担う県下の第1種、第2種の銃猟狩猟者数は著しく減少している現実があります。また、同時に高齢化がみられます。捕獲柵は、高知県の山間部は急峻であるため、大規模な捕獲柵は困難であろうと予測されます。

今後、捕獲実績を向上させていくにはくくりわなが最も重要な部分を占めていくことと思われます。高知県もくくりわなを推進していますが、くくりわなは無差別であるため、メス、オスに関係なく捕獲され、また、カモシカやツキノワグマといったほかの野生動物の錯誤捕獲の可能性も高いという問題を含んでいます。

◆三嶺のシカの食害をどう把握しているのか、今後どのようにシカの頭数管理を行っていくのか、中山間振興・交通部長に伺います。以上で、私の第一問といたします。

 

○中山間振興・交通部長 最後に、三嶺でのシカの食害の把握と、今後の個体数管理について、お尋ねがございました。

県では、自然保護活動を行っている団体や、高知大学などの研究者、関係機関などで組織されております「三嶺の森をまもるみんなの会」から、三嶺でのニホンジカの食害などの情報を提供いただいております。

いただいた情報によりますと、被害面積などは把握されていないものの、食害により、稜線部のササ原や樹林内での下草の枯れあがりが見られたり、表皮の食害で枯れる樹木が発 生しているとお聞きしております。

このような被害への対策としましては、捕獲の強化が重要であると考え、国の事業を活用した有害許可による捕獲活動への支援に加え、県独白で狩猟期における捕獲に対する報償金制度を設けるなど、1年を通じて捕獲を推進しているところです。

また、狩猟が禁止されている鳥獣保護区や国有林では、香美市や四国森林管理局が中心となって、ツキノワグマなど希少動物の錯誤捕獲を起こさないように、銃や囲いわなでの捕獲を実施しております。さらに、徳島県との連携事業としまして、県境での捕獲にも取り組んでいるところです。

今後も引き続き、これらの取り組みを継続することで、 ニホンジカの個体数管理に努めてまいります。

 

●岡田議員 それぞれにご丁寧に答弁いただきまして、ありがとうございます。

 米軍機の低空飛行の問題ですけれども、11月5日、飛行状況、騒音について本山町役場にお聞きしましとですね、12時54分に飛んできたのが、99デシベル、13時28分に飛んできたのが100デシベルという記録が残されているそうです。

 本山町役場と保育所というのは、すぐ近くにありますけれども、このレベルだと、極めてうるさいと、会話はほとんど不可能だというレベルでございます。

 寝ている子どもが飛び起きて先生に抱き着く、不安を与える、泣き出すとこういう事態がずっと続いているわけですよ、そしてこの12月に入っても、飛来が確認されたということもお聞きをしております。

 この山間部の状態、放置はできないと思います。引き続き強く改善を求めていくということで知事には努めていただきたいと要請をしておきます。

 そして、中山間の問題、知事も先ほど答弁の中で、想像以上に厳しいと、中山間の状況もですね、調査され把握されているということでございますけれども、質問の中でも取り上げました高知県過疎地域持続的発展方針、これも読みましたけれども、やっぱり人材ですね、人、地域を支える人をつくるのが大事だということも、かなり強調もされております。やっぱり地域のリーダー不足、あるいは支援をする行政側のやっぱり体制、ここもいっしょに作っていくと県、市町村連携をしながらですね、いっそう強めていくことが、これからの高知県、いっそう過疎も進む、高齢化も進む中で、大事だと思います。中山間の振興なくして、高知県の発展はないということも言われておりますけれども、やっぱり、地域の皆さんの声をしっかりと受け止めて、地域振興をはかってもらうことを強く要請をいたしまして、私の一切の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。