議会報告

【質問項目】

・敵基地攻撃能力

・物価高 くらしの防衛

・新型コロナウイルス感染症の5類引き下げ

・教育行政について(教育実習におけるパワハラ、高校の定員内不合格)

 

●吉良議員 私は、日本共産党を代表して、以下質問に入らせていただきます。

 

【敵基地攻撃能力】

●吉良議員 まず敵基地攻撃能力について、知事にお聞きいたします。

「反撃能力」いわゆる敵基地攻撃能力について、12月議会に引き続き、お伺いします。

 今般、政府が推進する敵基地攻撃能力の保有は明白な違憲であり、東アジア地域の緊張激化、安全保障環境の悪化を招かざるを得ません。私ども、日本共産党は、広範な国民と共同して、この導入に断固反対する決意を表明するものです。以下、この間、国会での議論などを通じて明らかになった事に基づいて、知事の認識をお聞きします。

 

 東アジアの安全保障環境の悪化という際に、言及されるのは、「台湾有事」=中国と台湾の武力衝突の可能性です。

 中国は、武力侵攻があるとすれば、台湾が「独立」を宣言した時(反国家分裂法第8条)との立場をとっています。では、台湾の民意が独立を望んでいるのか、台湾政治大学選挙研究センターの世論調査では、「現状維持」派が8割以上もあり、独立など望んでいないことがわかります。また、台湾民意基金の世論調査では、「米国は台湾を利用し中国を挑発している」にイエスが57.4%、「親米になってこそ台湾を守れる」にはノーが62.1%など、「アメリカの対中対抗のために台湾を利用されたくない」という台湾の民意が見て取れます。

米国の正式見解も、「中国には現時点で(武力統一するという)意図や動機もほとんどないし、理由もない」(2021年6月、米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長)、また「中国軍が最近、非常に挑発的な行動を取っていることが目に付く。(が、)それが侵略が差し迫っていることを意味するかどうかは、深く疑っている」(2023年1月、オースティン米国防長官)との立場です。

しかし、米国のバイデン大統領は、台湾が中国から攻撃された場合は、アメリカが台湾を防衛すると発言し、米政府ウェブサイトから「台湾は中国の一部」、「アメリカは台湾独立を支持しない」という文言を削除し、また、「台湾有事」での台湾への武器供与を示唆するなど、中国に対し挑発的態度を取り続けています。米国は、中国への挑発で「台湾有事」を煽り、この「台湾有事」の危機感を最大限に利用して、日本など同盟国との軍事的一体化を進めています。

事実、岸田首相は、この米国が煽る「台湾有事」を念頭に「インド太平洋で同じこと(ウクライナ戦争)を起こしてはならない」と述べ、軍事費倍増と敵基地攻撃能力の保有を決めました。日本の軍事費倍増で、最も利益を得るのは米国の軍需産業です。

 もし「台湾有事」が起これば、米軍と一体化した自衛隊が敵基地攻撃を行う可能性は否定できず、相手国の反撃を招き、日本も甚大な被害を受けることになります。浜田靖一防衛大臣も、敵基地攻撃をすれば報復攻撃で日本に「大規模な被害が生ずる可能性がある」(2月6日答弁)と認めています。絶対に起こしてはならない事態です。

◆日本が、米国の煽る「台湾有事」を念頭に敵基地攻撃能力を保有することは、いたずらに東アジアの緊張を激化させ、戦争を望まない台湾住民の民意にも反し、報復攻撃による日本への被害をも招くものではないかと考えますが、知事の台湾有事への考えをお聞きいたします。

 

○県知事 吉良議員の御質問にお答えをいたします。

まず、台湾有事について、お尋ねがございました。

近年、中国は台湾周辺で軍事演習を行うなど、台湾に対する軍事的な圧力と見られる行動を一段と強めております。報道によると、中国は、台湾統一には武力行使を辞さない姿勢を見せており、台湾を支援する米国も含めた緊張が高まりつつあるというふうに認識をしております。

また、令和4年版防衛白書では、台湾は、「最西端にある与那国島からの距離はわずか約110キロで、台湾をめぐる情勢の安定は、我が国の安全保障にとって重要」とされております。

私といたしましても、台湾の有事は、反撃能力、いわゆる敵基地攻撃能力の保有の如何に関わらず、日本の平和と安全にも重要な影響を及ぼすのではないかというふうに懸念しております。

こうした中、日本政府は従来から、「台湾を巡る問題については、対話により平和的に解決されることを期待する」という一貫した立場を取っております。

政府におかれましては、台湾問題の平和的な解決に向けて、ご尽力いただきたいと私としても強く思っております。

 

●吉良議員 昨年11月の岸田首相と習近平国家主席との首脳会談では「日中の意思疎通の強化」で一致し、この2月には次官級の会談を相次いで開催しています。「台湾有事」や偶発的な武力衝突を未然に回避するために、この日中間の意思疎通はさらに強化することが必要です。

◆東アジアの緊張緩和へ、米国追随だけではない日本独自の外交戦略が必要と考えますが、知事のお考えをお聞きいたします。

 

○県知事 次に、東アジアの緊張緩和に向けました、日本独自の外交戦略について、お尋ねがございました。

台湾周辺のみならず、尖閣諸島や東シナ海周辺などでの中国の軍事活動の拡大あるいは活発化によりまして、日本を含む東アジア地域での安全保障上の緊張感は高まっているというふうに認識しています。

政府は、日中首脳会談などにおきまして「東シナ海の安定なくして日中関係の真の改善はない」といった姿勢を示しております。

こうした中、両国の関係者の間では、日中間の信頼醸成そして協力強化を図るために、直接、率直に意見交換を行っているものというふうに承知をしております。

今後も、首脳レベルを含めまして、あらゆるレベルで緊密に意思疎通を図っていくことが、日中2国間の外交において、ひいては東アジアの緊張緩和に向けて、重要であるというふうに考えております。

 

●吉良議員 敵基地攻撃能力のためには、スタンド・オフ・ミサイル(相手国の脅威圏の外から発射する長射程ミサイル)の大量導入、開発が必要になります。米国から購入するトマホークの導入のみならず、マッハ5を超え射程3000㎞とされる極超音速誘導弾の開発などにも進もうとしています。

 浜田防衛大臣は今年2月10日の会見において「スタンド・オフ・ミサイルの具体的な配備先は決定はしておりません」と述べるなど、政府は配備先について明言していません。来年度青森や大分に整備するとされるミサイル保管庫についても今後130カ所が必要としていますが、設置場所は明らかにしていません。国民に、詳細を知らせないまま、進めようとする政府の姿勢は問題です。

射程3000㎞といわれる極超音速誘導弾であれば、高知市―北京間、約1600㎞であっても、十分に射程範囲に入り、3000㎞の射程範囲内に最大約30分で着弾します。日本のどこに配備されてもおかしくありません。

◆スタンド・オフ・ミサイル配備先あるいは保管庫の設置場所として、高知県は検討対象にされていないのか、また、検討対象となった場合、知事として配備・設置の是非をどのように判断されるのかお聞きいたします。

 

○県知事 次に、いわゆるスタンド・オフ・ミサイルの配備あるいは保管場所として本県が検討対象にされていないのか、また、検討対象となった場合の判断はどうかといったお尋ねがございました。

本県が「スタンド・オフ・ミサイル」の配備あるいは保管場所として検討対象になっているかどうかにつきまして、国からの説明を現在のところ受けておりません。

仮に、本県への配備が検討されることになれば、防衛戦略上の必要性あるいは本県への影響を県や地元自治体へ十分説明するように求めてまいる考えであります。

その上で、地域住民の方々の声を踏まえまして、県としての考え方を示していくと、そういった段取りで進むことになると考えます。

 

●吉良議員 さらに、敵基地攻撃能力の保有に進むにあたり、防衛省は、自衛隊基地の「強靭化」をするとして、昨年12月と今年2月にゼネコンなどを集めた「説明会」を行っていたことが明らかになりました。全国300の自衛隊基地の主要司令部の地下化など科学・生物・核兵器などによる攻撃を想定した整備を図る計画で、国会にも国民にも隠し、その裏で、ゼネコンには計画を説明し、すでに発注の具体案まで提示するなど、財政民主主義を定めた憲法83条違反の疑いも出てきています。「強靭化」の対象には、高知県の陸上自衛隊高知駐屯地と航空自衛隊土佐清水分屯基地も含まれます。

◆両駐屯地が「強靭化」対象となっていることに関して、国からの説明はあったのか、なければ、詳細な説明を求める必要があると思うがどうか。知事にお聞きします。

◆また、県民の命が失われる想定はとても許容できるものではありませんが、知事としてどのように受け止めるのか、お聞きいたします。

 

○県知事 次に、高知駐屯地がいわゆる自衛隊施設の「強靭化」の対象と.なるにあたっての、国からの説明、あるいは受けとめについてお尋ねがございました。関連いたしますので合わせてお答えをいたします。

報道によりますと、防衛省の調査によりますと、全国にある自衛隊施設の約8割が防衛性能を満たしておらず、 5年後までに全施設の約6割を整備する計画であるというふうに報じられているところであります。

本県にあります駐屯地の強靭化につきましては、現在のところ国からの説明は受けておらない状況であります。

今後、駐屯地の強靭化にあたりまして、地域の住民の方々の安全が脅かされるといった事態があってはならないものと考えます。また、地域に影響を与える可能性があるような整備となるという場合には、十分な説明がなされるよう国に対して求めてまいりたいと考えております。

 

●吉良議員 防衛費の増額を最優先した国の2023年度予算案は、国民生活を犠牲にするものです。

 (防衛費は、)2022年度比1兆4000億円増となる、6兆8219億円で過去最大で、その財源には、歳出削減、復興特別所得税の流用、特別会計からの繰入金、そして、これまで戦前の反省から禁じ手としてきた防衛費への建設国債の充当と、なりふり構わぬ予算確保策です。一方で、社会保障費については、「自然増」分を1500億円圧縮、75歳以上の医療費窓口負担2割負担の通年化、コロナ対策で設けられていた雇用調整助成金の特例措置の終了、介護保険はサービス料2割負担の対象拡大、また、年金額も物価上昇に追いつかず実質0.3%~0.6%減とされるなど、国民の生活を保障するものとは到底言えません。岸田内閣の目玉政策ともいえる「異次元の少子化対策」も、その具体的な中身、財源見通しは示されず、防衛費増に見られるような本気度はまったく感じられません。

「国民の命を守る」とする防衛費増が、実際には、国民の暮らしを破壊しています。

 今年度の防衛費増額分は1兆4000億円ですが、大学学費の無償化は1兆8000億円といわれています。教育費負担は子育て世帯の最大の不安となっており、「異次元の少子化対策」というなら避けては通れない課題です。防衛費を確保するだけの本気度で予算をねん出すれば学費無料は十分可能であり、少子化対策としても大きな効果を発揮し、人を育て、将来の社会発展を促すものとなります。

◆確保した貴重な財源は、物価高騰で苦しむ国民の暮らし・子育ての支援や社会保障の充実にあててこそ、「国民を守る」ことにつながると考えるものですが、国の来年度予算案へのご所見を、知事にお伺いします。

 

○県知事 次に、国の来年度予算案についてお尋ねがございました。

現在国会で審議されている国の来年度予算は、「内外の重要課題に対して道筋をつけ、未来を切り拓くための予算」と位置づけられております。

こうした考えの下、安全保障・外交に加えまして、子ども政策、いわゆるグリーントランスフォーメーション、地方創生といった現下の課題への対応が図られております。

また、今回の当初予算は、先に成立した令和4年度第二次補正予算と一体的に編成をされております。この補正予算によりまして、電気料金の負担軽減策など、足下の物価高騰への対応策が講じられております。

こうしたことを踏まえますと、国民の生活に配慮した予算をトータルで編成をされたものというふうに受け止めております。

加えまして、子ども政策につきましては、現在、政府におきまして抜本強化に向けた具体的な検討を進めておられまして、国会においても議論が展開されております。今後、国会での議論も踏まえて、6月に決定される骨太の方針で全体像が示されるとそういった予定で進んでおるというふうに承知をいたしております。

一方、重要課題への対応などを背景に一般会計の総額は 1 1 4兆円を超えまして、当初予算としては過去最大となりました。依然として歳入の3割以上を国債、借金でありますので、これで賄う構図は変わらないということであります、 防衛力や子ども政策の強化に係る安定財源の確保といった課題も残っているというふうに承知をしております。こうした財政面での課題への対応に関しましては、国会において、与野党間で真摯な議論がなされることを期待いたしております。

 

【物価高 くらしの防衛】

●吉良議員 2022年12月の消費者物価指数は、41年ぶりの上昇率となりました。生活必需品ほど値上げ幅が大きく、2人世帯以上の場合、家計への影響は年間14.3万円(赤旗試算)となり、うち食料は6-7万円、水光熱費は3-8万円と負担増の4分の3近くをしめています。今年になっても、主要食品メーカー64社が価格改定を公表。品目数は1万点以上におよび(東京リサーチ)、その約7割が年度末の2月・3月に集中するなど、物価高騰による生活圧迫が県民の暮らしと影響を直撃しています。

深刻なのは生活必需品ほど高騰していることです。昨年12月の「基礎的支出」は前年同月比6・1%上昇なのに対し、「選択的支出」は同2・6%上昇となっています。購入頻度別では、1カ月に1回以上購入する品目は7・8%上昇しているのに対し、1年に1回程度しか購入しない品目は1・6%上昇にとどまっています。生活に身近な品目ほど値上げ幅が大きくなった結果、所得の低い世帯ほど、物価高騰の影響が大きくなっています。年収に対する負担増の割合は、年収1500万円以上の世帯が1・2%なのに対し、200万円未満の世帯では6・2%と5倍以上の負担(赤旗試算)となっています。

◆低所得者の多い本県への影響は深刻です。影響を、どう認識しているのか。お聞きいたします。

 

○県知事 次に、物価高騰の本県への影響に対する認識について、 お尋ねがございました。 国が公表しております全国消費者物価指数をみますと、本年1月まで 1 7カ月連続で前年の同月を上回っておりまして、特に最近は前年同月比で4%以上という大きな上昇となっております。

また、高知市の1月の指数は前年同月比で2. 8%の上昇となりました。市におけます子育て支援策の効果もありまして、全国に比べれば上昇幅は一定程度抑えられているものの、上昇傾向は続いているところであります。

今般の主な上昇の要因は、私たちの生活に必要な食料品をはじめといたしまして、電気やガスの価格上昇といったものでありまして、県民生活にも大きな影響があるというふうに考えております。加えまして、現在、賃金の引き上げは物価上昇の水準にまでは届いておらないところであります。昨年の実質賃金は2年ぶりに前年を下回るという結果となっておりまして、家計の負担感は増しているというふうに受け止めております。

こうした中、政府におきましては、昨年決定をいたしました総合経済対策に基づきまして、賃上げの促進に向けた対策を講じております。さらには、電気代、都市ガス代の負担軽減策を開始し、先月の請求分からはその効果が反映されているというところであります。

また、多くの方がLPガスを利用されている本県の状況を踏まえまして、今議会に提出した2月補正予算案におきましては、県独自の支援策を盛り込んだところであります。

今後も、県民の皆さんの暮らしを守るために、各分野の状況も注視しながら、必要に応じて対策を検討し講じてまいります。あわせて、全国知事会とも連携し、国に対して必要な提言を行ってまいります。

 

●吉良議員 この物価高騰の大本には、ロシアのウクライナ侵略で顕在化した、海外に食料、エネルギーを過度に依存している日本経済の脆弱さがあります。そして輸入物価上昇に対する円安の影響が64・5%(12月の企業物価指数 日銀発表)をしめたように、一部の輸出大企業や富裕層の利益拡大を誘導したアベノミクス、異次元金融緩和の失政がかぶさっています。

 物価高から暮らし営業を守る緊急の対策とともに、人類が直面する気候危機、食料危機打開のために、国際的な合意ともなっている脱炭素・エネルギーシフト、工業型農業からのシステムチェンジを加速させる重要性が、ますます明らかになり、予算編成は、こうした課題に立ち向かうべきです。

 県予算案では、LPガスの高騰対策、7億円が計上されており、評価するものですが、ライフラインである光熱水費のさらなる高騰対策の充実が求められています。

厚労省の市区町村別年金支給状況(22年3月末)によれば、高知県民の年金総額は、年間3038億円となっており、19年度の民間法人企業所得3780億円の8割となる大きな比重を占めており、県経済にとって重要です。しかし、その高齢者の生活の糧である年金は、マクロ経済スライドの発動で、物価高に追い付かず、実質0.3~0.6%削減となっています。

◆年金で生活している高齢者のくらしをどのように守っていくのか、知事にお聞きします。

 

○県知事 次に、年金で生活する高齢者の暮らしをどう守るのか、というお尋ねがございました。

議員からご指摘のありましたマクロ経済スライドの制度仕組みは、本来、物価や賃金に連動するベースの改定率に対しまして、マクロ経済スライドはこの水準を押し下げる方向に調整をするということで、緩やかに年金の給付水準を調整する、下方修正をするということでありますが、調整をする仕組みであります。

この主旨は、将来世代の負担が過重なものとならないように、年金の給付と保険料等収入のバランスをとろうというものでありまして、制度の持続可能性を図っていくと、将来世代の負担を軽減していくという観点に立つという点からは、一定の合理性があるものではないかというふうに考えます。

一方で、ご指摘もありましたように物価高騰が続く中、年金の給付水準は物価等の改定の水準よりも低い水準まで抑制されるということになりますので、年金の受給者にとりまして、影響が大きいというふうに認識をいたしております。

いずれにいたしましても、社会保障制度の根幹であります年金制度につきましては、給付と負担のバランスを確保し、将来の持続可能性ということも考えて、国においてしっかりと制度設計と運用をおこなっていただくべきものというふうに考えます。

なお、国におきましては、年金の生活者を含みました非課税世帯などの、生活が困窮される方につきましては、いわゆる特別給付金、あるいは物価・燃料高騰による負担の軽減を図るための緊急支援などを、例えば10万円、あるいは5万円の臨時給付という形で実施をされておりまして、これらは、年金生活者の方々の影響の緩和の一助にはなっているのではないかというふうに考えます。

県におきましては、セーフティネットであります生活保護の制度あるいは自立支援の制度によりましてお一人お一人に寄り添った支援を行っております。さらに、来年度は、新たに支援員を全県で3人配置いたしまして、生活保護あるいは自立支援制度との連携をより一層強化いたします。加えまして、状況に応じまして、生活福祉資金の貸付、フードバンクなど関係機関と協働しながら、生活困窮されている方に対する必要な支援につないでまいります。

こうした取り組みを通じまして、年金で生活しておられる高齢者の方々も含めまして、生活に困窮される方々が、いわゆる制度の狭間に陥ることがないよう、寄り添った支援を行ってまいりたいと考えております。

 

●吉良議員 ◆さらに、低所得者層への支援にもなる燃料油価格激変緩和措置のこの10月以降の継続や市町村が実施している水道料金の減免制度の拡充などに取り組む意思はないか、子ども・福祉政策部長にお聞きいたします。

 

○子ども・福祉政策部長 燃料油価格激変緩和事業の継続や水道料金の減免制度の拡充などの取組について、お尋ねがございました。

灯油を含むガソリン等の価格の上昇幅を抑えるため、国において、昨年4月から原油価格重物価高騰等総合緊急対策を実施しています。

これにより、低所得者世帯の負担についても低減されている状況ではありますが、本年9月末でこの対策が終了予定となっております。このため、今後の原油価格等の動きを注視するとともに、必要に応じて政策提言を行ってまいります。

また、国の新型コロナウイルス感染症対応の交付金を活用した水道料金の減免制度は6市町で実施されましたが、1町を除き本年2月末までに終了しております。

新型コロナウイルス感染症や物価高騰の影響への対策等として行ったこうした対策は、高齢者世帯等における負担軽減に一定の効果があったものと考えます。

水道料金は県民の生活に直結することから、引き続き国の交付金制度の活用も含め、動向を注視してまいります。

 

●吉良議員 子育て世帯への支援も欠かせません。2022年の出生数は初めて80万人を切り、77.1万人となることを第一生命経済研究所が明らかにしました。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、77万人になるのは2033年と予測していましたが、推計を11年も前倒しして少子化が加速しています。この点からも、思い切った政策展開がもとめられています。

県の子どもの医療費無償化制度は、就学前でとどまったままです。以前も指摘しましたが、制度が拡充されないもと、少子化により、予算額そのものは減少しています。今県下の自治体の多くが、中学生、高校生の医療費無償化に踏み出していますが、子どもの半数を占める高知市が小学校までにとどまっています。

さらに全国的には小中学校の給食費無償化に踏み出す自治体も増加し、県内でも少しずつ実施する自治体が増えています。

全国より、少子化、人口減が進行する高知県でこそ、子育てを支える政策をリードする必要があります。例えば、明石市は、18才までの医療費、中学校の給食費、0-2歳の保育料、公共施設の入場料、0歳児の見守り訪問「おむつ定期便」(月3000円相当)という5つの無償化を実施し、人口増・税収増という好循環を作り出しています。泉・明石市長は、「何を優先するか、という政治的決断の問題だ」とのべています。本県では、子育て支援交付金など、市町村の実情にあわせ、あらたな支援策の拡充に使える制度設計をすることも可能だと思います。

◆子どもの医療費無償化を拡充する考えはないかお聞きします。また、学校給食費の無償化に向けて一歩でも二歩でも前進させるべきと思いますが、どうお考えかお聞きします。

 

○県知事 次に、子どもの医療費無償化の拡充について、お尋ねがございました。

少子化が進行する中、安心して子育てできる環境を整えていくことは重要な政策課題だと考えております。

このため、県では、子どもの医療費無償化に取り組みます市町村を支援し、乳幼児期の医療費に財政支援を行っております。さらに、各市町村におきましては、この県の制度をベースにしました上で、助成対象の年齢を拡大し、子育て支援に力を入れて取り組んでいただいているとそういう状況でございます。

他方、子どもの医療費助成制度に関しましては、どの地域に住んでも安心して医療を受けられるということが不可欠であるというふうに考えます。その意味で、本来、国において、こうした制度は全国一律に実施すべきものだというふうに考えます。

このため、これまでも全国知事会を通じまして、全国一律の子ども医療費助成制度の創設を国に提言してまいっておりますし、先月の末には、早期の実現に向けました緊急提言も知事会として行ったところであります。

現在、国におきましては、子ども施策の抜本強化に向けた具体的なたたき台の議論が進められております。この機を逃さずに、私自身も、子どもの医療費助成制度の創設を含めまして、国策として強化を図るべき施策につきまして積極的に政策提言を行ってまいる考えでおります。

 

○県知事 次に、学校給食費の無償化についてお尋ねがございました。

令和4年12月現在で、県内市町村におきましては、12団体が学校給食費の完全無償化を実施しておりまして、 10団体が、一部補助を実施しているというふうに承知をしております。完全無償化の12団体のうち7団体は、新型コロナウイルスにかかります国の交付金を活用した事業として無償化をしているということでございまして、そのほとんどの団体は国の支援がなければ、継続は困難だというふうにお話をしているというふうに伺っております。

また、仮に県内すべての公立小中学校で、完全無償化をした場合の費用を試算いたしますと26億円を超える規模ということになりまして、これを仮に本県の一般財源で、継続的に確保するということを考えますと、これは相当の困難が伴うものと、それだけの大きな規模だというふうに考えます

一方で、学校給食は、子どもたちの健康の保持増進あるいは食育などの観点から、我が国の教育の中で大変重要な役割を担っているというふうに考えます。

そうした中でございますので、全国都道府県教育長連合会におきましては、先月、国に対しまして、学校給食等への支援に関する緊急要望を行っております。この中で、国の交付金の継続に加えまして、学校給食費等の負担の在り方についても抜本的な整理を求めておられます。

まずは、教育委員会を中心に、こうした働きかけを進めていただきまして、私といたしましては、少子化対策全般に係ります政策提言などを通じまして、こうした動きを後押ししてまいりたいというふうに考えております。

 

●吉良議員 冒頭でも指摘したように、異常な物価高騰の背景には日本経済の歪みがあります。食料自給率はカロリーベースで38%と先進国で最低水準です。殆どを輸入依存している飼料、化学肥料、種などを考慮すると10%程度との指摘もあります(鈴木宣弘・東大教授)、エネルギーの自給率も、再エネの本格的推進、エネルギーシフトの国際的取り組みから大きく遅れ、10%余りにとどまっています。当面の暮らしと営業を守る方向が、中長期的にも、上に述べたような経済の歪みの構造を転換する方向であることが極めて重要です。

 気候危機転換点といわれる2030年まであと7年です。脱化石燃料の推進、また、温暖化ガスの約3割を排出している食と農との分野で、工業型農業から、家族経営、地域循環、有機農業などへ転換が求めせれていることを、幾度となく本議会でも取り上げてきました。「システムチェンジ」は未来への責任です。気候危機打開、脱化石燃料にかかわって、以下伺います。

 政府は、2月10日、原発の「最大限活用」を明記した「GX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた基本方針」を閣議決定しました。いまもなお、終わりの見えない福島原発事故を教訓に、「原発の依存度を低減」するとしていた方針をなげすてて、原発の建て替えや運転期間の延長などをはじめとする政策の大転換を政府の正式な方針にしました。

 新増設には、10年ほどの期間が必要であり、とても当面の価格高騰や脱温暖化に間に合いません。すでに原発は高コストであり、核廃棄物の管理もふくめ、市場システムでは扱えないことが明白となっています。また「安全対策」などのため停止していた期間を運転期間から除外し、60年を超えた運転を可能にしようとしています。原子炉の圧力容器の壁は中性子などに照射される期間が長くなればなるほどもろくなります。運転停止中でも設備の劣化は進みます。原発の危険を少しでも減らす目的の上限ルールをなくすことは、逆行そのものです。

◆国民的議論もせず、国会での説明もなく、一方的に決めたことは民主主義破壊に他なりません。福島原発事故を風化させる暴挙であり、許されるものではありません。「GX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた基本方針」で示された原子力政策の方針について、所見をお聞きします。

 

○県知事 次に、「GX (グリーントランスフォーメーション)の実現に向けた基本方針」、この閣議決定で示された原子力政策の方針につきましてのお尋ねがございました。

この基本方針閣議決定におきましては、再エネ主力電源化とともに、原子力につきましては、第6次エネルギー基本計画に示された可能な限り原発依存度を低減するといった方針のもと活用していくというふうにされているところでございます。

ただ、再生エネルギーの主力電源化が実現するまでの間、足下の危機への対応、そして将来にわたる電力の安定供給の確保のために、安全性の確保を大前提として、脱炭素効果の高い原発を活用するという考え方は、私としては理解ができるものだというふうに受け止めております。

基本方針を受けまして、今国会では、原発の6 0年を超す運転を可能とする法案が提出されまして、審議を通じて安全対策に関する議論が深まるものと考えておりますし、それを期待いたしております。

原発の活用につきましては、安全性の確保が大前提となります。国におきましては、丁寧な議論を重ねていただき、いわゆる安全神話に陥ることなく、安全性を最優先とした制度設計を行っていただきたいというふうに考えます。

また、その際には、国民に対しても、丁寧なわかりやすい説明を行う努力を続けていただきたいというふうに考えております。

 

●吉良議員 世界は、福島原発事故をうけ、気候危機打開の取り組みとして再エネへの転換、エネルギーシフトを大胆にすすめています。かつて再エネで先進だった日本は、いまや見る影もありません。原発や化石燃料に固執する大手電力など経済界が、再エネ普及を妨害しているからです。その象徴的な出来事が、大手電力が、子会社である送配電会社が保有する顧客情報を不正閲覧し、新電力会社に契約している顧客の「取り戻し営業」をしていた問題です。判明しているだけで関西を発端に少なくとも6社が関わっていました。そうしたもと、この間、新電力会社の6社に1社が事業から撤退する事態となっています。また、顧客獲得競争を制限するカルテル疑惑も存在し、1000億円の課徴金納付命令の処分案を通知される事態も生まれています。そもそも送配電・小売りが同一企業傘下なのは、真の「電力自由化」とは言えない、として当初から「法的分離」では不十分と懸念されていたことが、その通りになったわけです。抜本的な改革が求められています。

◆そうしたもとで、四国電力など電力大手5社が一般家庭向け規制料金の値上げを国に申請していますが、公正な競争を妨害し、不正を働くような電力会社に、電気料金値上げを国民に押し付ける資格はないと思いますが、県としてどう考えるのかお聞きいたします。

 

○県知事 次に、電力会社による電気料金の値上げについて、お尋ねがございました。大手の電力会社のうち、四国電力株式会社を含め、少なくとも6社におきまして、顧客情報の不幸閲覧があったということは、ご指摘があった通りでございます。

コンプライアンスの遵守といった点で誠に遺憾であります。各社におきましては、こうした問題が二度と起きないよう真相の究明、再発防止策をしっかりと講じ、消費者に対しまして丁寧に説明することで信頼回復に努めていただきたいと考えております。

一方で、国の認可が必要な一般家庭向けの規制料金につきまして、大手電力会社からの値上げの申請が行われております。現在、ロシアのウクライナ侵攻に伴いまして、石炭、液化天然ガス(LNG)の価格が高騰し、円安の進行も加わって発電用の燃料が高騰しているという背景があると伺っております。

大手電力各社の値上げ申請につきましては、こうした背景を元に判断がされたものと考えられますので、今回の不正閲覧の問題をもって値上げ申請を否定する理由とはならないのではないかと考えます。

しかしながら、電気料金は、家計、経済活動への影響が非常に大きいものでございますので、値上げの認可にあたりましては、物価高騰が続いている現状を踏えた慎重な審査が必要と考えます。

岸田総理からも「厳格かつ丁寧な査定による審査を行う」ように指示が出されたというふうに報道されておるというところであります。加えまして、この審査に当たりましては、あらゆる経営効率化を前提とし、また申請後の為替や燃料価格水準の状況の好転も勘案する方針とされておりまして、こうしたことから、値上げ幅については厳格な査定が行われるというものだと考えているところであります。

 

●吉良議員 農業分野では、大きな方向としては、地域循環、環境と調和したアグロエコロジーの取り組みが重要ですが、直面する物価高騰対策が喫緊の課題となっています。

農林水産省が12月に公表した農業物価統計調査では、肥料は前年同月比で40・3%、配合飼料が23・9%上昇し、農業の各分野で生産が危機に直面しており、資材高騰分の直接・全額補填の支援が待ったなしです。同調査の農業物価指数、2020年を100といたしますと、前年同月比で、販売価格を示す農産物価格指数が2・0%アップにとどまる一方、農業生産資材価格指数は、10・1%上昇しています。内訳は、肥料の主成分である窒素・リン・カリを多く含む「高度化成肥料」は、前年同月比で52・8%。尿素は88・3%、配合飼料は23・9%上昇しています。

◆資材高騰分の全額補填、また特に厳しい状況にある酪農の経営安定対策など抜本的な対策なしには、農業の生産基盤が崩壊しかねません。本県の産業振興計画の土台である第一次産業とりわけ農業をどう守るつもりか、お聞きします。

 

○県知事 次に、資材価格の高騰が続く中で、第一次産業、とりわけ農業をどう守っていくのかということについて、お尋ねがございました。

本県では、肥料や飼料などの価格高騰による農家の皆さんの負担が軽減されますように、国の緊急対策あるいはセーフティネットなどの積極的な活用を図ってまいりました。あわせて、県におきましても、国の臨時交付金を活用いたしまして、こうした国の対策を補完する県独自の対策を、時機を逸することなく講じてまいったところであります。

なかでも、お話のありました酪農は、生産コストに占める飼料費の割合が高くコスト増加分が乳価に十分に反映されていないことから、経営継続のための緊急支援を行いました。

一方で、現在の異常ともいえる価格の高騰は、当面続くものと考えられておりますので、こうした中でも、経営が継続されますように、一層の構造転換を図っていくということが重要だと考えております。

そのための県の主な支援策といたしましては、畜産では、構造転換支援パッケージといたしまして、コストの削減、生産性の向上、経営継続の3つの取り組みを支援するための予算を本議会に提案しております。

また、園芸の分野におきましては、データ駆動型農業の推進、スマート農業技術の普及など、生産性向上、コスト削減につながる取り組みを一層推進してまいります。

今後も状況に応じまして、こうした県の支援策をさらに充実させますとともに、国に対しましては、セーフティネットの充実、また構造転換への支援の強化などを、政策提言してまいる考えであります。

 

●吉良議員 再エネ・省エネを中心としたエネルギー自給率の向上、脱化学肥料・農薬と結んだ食料自給率の向上は、人類的な危機である気候変動対策にとっても、また不安定化をます国際環境のもとで、国民の命と暮らしをまもる安全保障政策の根幹としても、もっとも重視すべき内容です。

 ところが、政府予算案は、農水省予算は削減、エネルギー関連予算の約4分の1は原発関連で、前年度比85億円増の一方、再エネ・省エネ関係は、「需要家主導による太陽光発電導入促進補助金」20億円減、「地熱発電の資源量調査・理解促進事業」25億円減、「洋上風力発電等の導入拡大に向けた研究開発」21億円減など、まったく逆行した内容となっています。危機的な人口減・少子化に対する抜本的な予算拡充もありません

予算のかけ方がまちがっています。人口減、地方の衰退をもたらした構造を転換するものになっていません。

◆こうした国の政策に追随していて、高知県の課題を打開することはできないと思いますが、知事にお聞きします。

 

○県知事 次に、国の政策に追随することで、本県の課題解決につながるのかとのお尋ねがございました。

本県では、山積する課題の解決に向けまして、経済の活性化をはじめとする5つの基本政策、そして、3つの横断的な政策に基づき取り組みを進めております。これらの政策は、地域の実情や課題をしっかりと把握した上で、県民の皆さんをはじめといたしまして、様々な方々からのご意見をいただきながら知恵を絞り、練り上げてきております。

また、各政策の実行にあたりましては、数値目標を明確に定めました上で、PDCAをしっかりと回しながら目標達成に向けて取り組んでおります。また、その際には、国の施策を最大限に活用し、取り組みをより効果的、効率的に進めてきたと考えております。

一方で、国の政策あるいは制度などが本県の課題解決に向けて十分なものとなっていないと判断した場合には、その都度、必要な政策提言を国に対して行いまして、国における対応を強く求めてまいっております。

このように、本県の施策は国に追随しているといったものではなく、むしろ国に先駆けて県内の課題を捉え、その実行にあたって国の政策、支援制度を活用し、追い風としながら進めているというふうに考えております。

今後も、こうした姿勢で、県勢浮揚の実現に向けてしっかりと取り組んでまいります。

 

●吉良議員 「中山間地域再興ビジョンの策定」を検討するとのことですが、その策定にも、未来を見据え、気候危機打開など持続可能な地域、若者が未来に希望を抱く高知県の構築へ向け、システムチェンジに挑戦する包括的な視点が必要です。

産業振興計画も示され、そこでは、「中長期を見据えた各産業分野の構造転換」がうたわれています。しかしインバウンドや輸出、関西連携などいわゆる「外貨」を稼ぐ施策は目立ちますが、県内の内需を拡大していく具体策に乏しいと言わざるを得ません。実際に、5つの柱の中で、4つ目の「中山間の暮らしを支える地域産業づくり」では「IT企業などの誘致」、5つ目の柱「SDGsの広がりによる持続可能な地域社会づくり」では「高知版サステナブルツーリズム」が示されていますが、IT企業誘致で中山間の暮らしを支える地域産業がつくれるのか、サステナブルツーリズムが持続可能な社会をつくる具体策なのか、コロナ禍による影響を見ても、大いに疑問です。

県外に流出する電気代等を県内に循環させていく再エネ・省エネ転換の抜本強化、中山間の主力産業である一次産業の支援拡充、また地域での暮らしに必要不可欠なサービスである保育・介護等ケア分野の処遇改善で雇用と地域の生活基盤を守る取り組みなど、今、現に地域で暮らしている人々を支える予算に抜本的転換が必要です。

◆産業振興計画も含め、県予算に、県内の内発的発展を位置づけてこそ、真の「構造転換」、システムチェンジができ、持続可能な高知県が築けるものと考えますが、知事にお聞きいたします。

 

○県知事 次に、県予算にいわゆる内発的発展を位置付けることにつきまして、お尋ねがございました。

議員ご指摘の「内発的発展」の趣旨でございますが、これは県外への依存度を上げるのではなくて、むしろ県内における地産地消の拡大によって、本県の発展につなげるとそういったご趣旨であるというふうに理解をいたしました。

この点につきましては、来年度予算においても、例えば、有機農業の推進や県産飼料の生産の拡大、県産材の利用促進といった取り組みのほか、商店街の活性化などに取り組む、そういった考え方で予算を計上いたしております。

ただ、その上で人口減少化にあります本県におきましては、県勢浮揚を図っていくためには、「地産地消」だけでは限界があると、活力のある県外市場から「外貨」を獲得していくことが成長をはかっていくためには重要だという考え方に立っているわけであります。

そのために、本県の強みを生かして県外市場に打って出るいわゆる「地産外商」を産業振興計画の戦略の柱に位置づけまして、取り組みを強力に進めてまいっております。

来年度予算におきましても、「外商」ができるためには、優れた県産品を生み出さなければいけません。つまり、そのための「地産の強化」を図るという取り組みは盛り込んでおるところでございまして、例えば、一次産業では、再造林推進策の抜本強化をはじめ、 園芸用ハウスの高度化、優良農地の確保、養殖生産の拡大、こういった取組などを充実をいたしております。

また、「外商の面での強化」といたしましては、「らんまん」の放送開始、関西圏の経済活力の高まりという追い風をしっかりと捉えるための本県への誘客や外商拡大に向けた取組を一層強化するという予算を盛り込んだところであります。

引き続きまして、県内における地産地消の拡大だけではなく、「地産外商」を進めていくということによりまして、持続的な発展につなげてまいりたいと考えております。

 

【新型コロナウイルス感染症の5類引き下げ】

●吉良議員 次に新型コロナウイルスについてお聞きします。

政府は、今年5月8日を期日として、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけを現在の「2類」から、季節性インフルエンザなどと同等の「5類」へ引き下げることを決めました。事実上の、新型コロナウイルス感染症対策の終了を意味し、感染対策の放棄と公費負担の縮小となるもので、時期尚早と言わざるを得ません。

 新型コロナウイルス感染症は、波を重ねるごとに感染者数・死亡者数が増え、第8波では過去最高の死亡者数を記録、死亡者数は、昨年12月1日から今年1月21日という2カ月にも満たない期間で1万5399人に上るとされ、累計死亡者のおよそ4人に1人がこの第8波で亡くなっています。高齢者施設などクラスターも相次ぎ、高齢者の犠牲が多いことも特徴です。

 季節性インフルエンザとの違いは、非常に強い感染力、一年間で何度も流行を繰り返す点、深刻な後遺症被害、簡易で有効な治療薬の不在など、一目瞭然です。

 「5類」変更に伴い、医療費の公費負担が縮小される問題があります。当面は現状維持とされていますが、公費負担がなくなれば、検査・診療で自己負担は約6000円、入院の窓口負担は、原則ゼロから3割負担になれば、軽症で約15万円、中等症になれば約30万円になります。高額療養費制度はありますが、大幅な負担増です。重症化予防の治療薬「ラゲブリオ」の使用は、3割負担で約3万6000円という高額です。

◆医療費負担で受診控えが起こる事態は避けなければなりません。当面継続するとされる公費負担は、新型コロナウイルス感染症が完全に収束するまで継続することを国に求めるべきと考えますが、知事にお聞きいたします。

 

○県知事 次に、新型コロナウイルス感染症の公費負担につきましてお尋ねがござました。

新型コロナウイルス感染症が5類に変更された後も、他の疾病における費用負担とのバランスを踏まえながら、経過措置として一定の医療費等の負担軽減を行うことはぜひとも必要だというふうに考えております。

このため、全国知事会を通じまして、医療費やワクチン接種に係ります公費負担は当面は継続するよう提言をいたしているところであります。

この公費負担の継続が必要かどうか、あるいは、いつまで必要かという点に関しましては、今後の患者の発生動向がどうか、あるいは治療薬の価格がどうか、今かなり高価なものが値下がりをしてくるということが見られるかどうか、といったような要因によって変わってくると考えておりますので、こうした動向を注視しながら、必要な場合には、この継続について、国への提言をさらに行ってまいる考えであります。

 

●吉良議員 また、最大の問題点は、新型コロナウイルス感染症の流行期に医療機関がひっ迫し「医療難民」を生み出した医療体制の不十分さです。この点が改善されないまま、「5類」へ引き下げれば、大きな混乱が起こることは必至です。

 政府は、「5類」引き下げで、コロナ患者に対応する医療機関の制限をなくすので、受診できる医療機関が増えるという見通しを立てていますが、現場からは疑問の声が出ています。「対応が困難であった医療機関の多くは、感染している可能性のある患者と他の患者を分ける動線が確保出来ない、時間と空間を分けられないという施設上の限界があり、高齢者や基礎疾患を持つ重症化リスクの高い患者を感染のリスクから守り切れないという事情を抱えている。入院においても、有効な換気の確保やゾーニングを可能にする病棟構造が無いことや職員体制の困難さが要因である。こうした具体的な問題をどのように解決していくのか、明示されるべきである。」と全日本民主医療機関連合会が見解を出しています。そういう現場からの意見は真摯に受けとめなければなりません。

新型コロナウイルス感染症への医療提供は、医療機関に大きな負担となることから、病床確保や発熱外来設置に対して補助金を出していましたが、「5類」になれば、これら補助金も削減される方向で、医療提供体制の確保はさらに困難になります。

 また、保健所による「入院調整」もなくなることから、必要な人が適切な入院ができるのか、県民からは心配の声も上がっています。

◆高知県内の医療提供体制を確保し、新型コロナウイルス感染症による医療難民を生まないため、国に対し医療機関への支援継続を求める必要がありますが、知事としてどう対応されるのかお伺いします。

◆また、現在、行政が行っている新型コロナウイルス感染症患者の入院調整は、適切な医療提供に不可欠であり、継続すべきではないか、お聞きいたします。

 

○県知事 最後に、この5類移行後の医療機関への支援や入院調整の継続について、お尋ねがございました。

関連をいたしますので、併せてお答えいたします。

新型コロナウイルス感染症が5類に位置づけられたといたしましても、感染力そのものが変わるわけではございません。今後も感染の継続が、一定は見込まれることでありますので、引き続き、患者さんが安心して医療を受けられる体制、環境を確保していくということが重要だと考えております。

本県におきましても、国からの支援内容の見直しや院内感染への不安といったことから、診療や入院の受け入れに慎重になる医療機関が出てくることも想定されます。こうしたことを踏まえまして、全国知事会を通じまして、この点にういて、国に万全の対策を講じるように申し入れをしたところであります。

具体的には、先日の全国知事会と加藤厚生労働大臣との意見交換会の場におきまして、ひとつには医療機関への支援として、感染防御対策に必要な支援、診療報酬の加算等を一定期間継続することなど、またもう一つには、入院調整機能につきましては、コロナ患者の受入可能病床の情報を共有するためのシステムの構築、あるいは移行期における行政支援の仕組みづくりが必要ではないかといった点などにつきまして主張し要請したところであります。

こうした感染症法上の位置づけの変更に伴います各種の政策や措置についての見直しにつきましては、今月の上旬に国から具体化をされた方針が示されるという予定になっております。県といたしましては、今後示されます国のこの具体的な詳細の方針を踏まえまして、 高知県医師会あるいは入院協力医療機関などの意見もお聞きしながら、引き続き、医療提供体制の確保に必要な支援などにつきまして、国に要請を行ってまいる考えであります。

私からは以上であります。

 

●吉良議員 また、「5類」引き下げに関わり、基本的な感染対策が緩和され、例えば、マスクの着用や、換気対策などが取られなくなれば、基礎疾患を持つ高齢者などを中心に新型コロナウイルス感染症を罹患する危険性が増し、第9波では、第8波以上の犠牲を生むことを強く危惧するものです。

◆基本的な感染対策の継続について、県として科学的知見に基づいたガイドラインを策定し、基礎疾患を持つ方などを守るために必要な感染対策を、県民に呼びかける必要があると考えますが、取り組むおつもりはないか、この項は、健康政策部長にお聞きいたします。

 

○健康政策部長 新型コロナウイルス感染症について、基本的な感染防止対策の継続に向けたガイドラインを策定し、必要な対策を県民に呼びかけることについて、お尋ねがございました。

本年2月1 0日に国の新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針が改正され、 3月1 3日以降は、屋内におけるマスク着用は個人の判断に委ねることを基本とするとされました。

ただし、一律にマスクの着用は必要ないということではなく、医療機関を受診する時や、重症化リスクの高い方が感染拡大時に混雑した場所へ行かれる際などにおいては、引き続きマスクの着用を推奨しております。

また、 3月13日以降も、基本的な感染対策は重要であり、引き続き、「三密の回避」、 「手洗い等の手指衛生」、「換気」などの励行について呼びかけることとしており、今回の政府の方針は概ね適切であると考えています。

このため、県独自で追加的なガイドラインを策定することは考えておりませんが、今後改正される予定の業種別のガイドラインも参考にしつつ、今回の見直し内容を県民に分かりやすい形で啓発してまいります。

 

【教育行政について】

●吉良議員 次に教育行政についてお聞きします。

県立高校で行った教育実習中に、保健体育科の指導教員及び体育教官室の教員によるひどいパワーハラスメント、いびり、いじめを受けたとの告発が実習生とそのご家族からありました。当該教育実習は2021年10月11日から11月5日の4週間、実習生の母校である県立高校で実施されたものです。大学3年生の実習生は実習の後半以降、発熱、頭痛、腹痛、胃痛が続き、ストレスからくる症状であると心療内科で診断され、PTSDで実習後2週間加療通院が続き大学にすぐ復帰できず、復帰後も担当の指導教員を思い出すと眠れない状態が続いたと訴えています。

実習期間中の勤務は午前8時25分から午後4時55分までと、実習開始3日前の事前打合わせで説明されていました。しかし、実習初日、保健体育教科教員たちだけの「教官室」で、「実習期間中は7時30分に来て、掃除、そして、一番最後の先生が帰るまで残っておいて。俺は帰るけど」と超勤強要だけでなく本人は指導せずさっさと帰ることを指導担当教員にいわれた実習生は、強い違和感を抱くも、毎日朝7時30分から教員を含め全員が帰り戸締りするまで学校に残る日が続きます。さらに、バトミントンラケットの持ち方の質問に対して即答できなかった途端、「こんな事も知らんがか、基本中の基本ぞ」、「大学で、何を習いゆうが?ダメ、だめだ」と二人の教員に囲まれ頭ごなしの強い口調の批判に心を折られるなど、初日から、教官室で四面楚歌の状況に陥らされています。

 

事前に実習授業単元を聞いても直前まで示されず、しかも一週間で11校時もの指導案の作成を課せられています。他校で実習を担当している先生に私がお聞きしたところ「正式指導案は、2校時分程度(保健体育科であれば体育1時間、保健1時間)作成しますが、それ以外の授業は略案とし、A4用紙1枚でまとめる。事前に指導教員としていっしょに準備を行います」との事で、極めて過大な作業課題を課しているといえます。また前の日にが「それでいい」と言われた指導案が翌日には「全然だめ、やり直し」と理由もなく突き返され、指導を仰いでも「自分で考えろ」というだけ。また指導案をチェックせずすぐ帰るので印刷ができず、提出期日に間に合わない状況が作られる。さらに、授業後の話し合いの場で「生徒への対応とか勤務時間も時間内に来て5もらえるかもしれんけど、指導者への態度、提出物の遅さとか、1とか2やど。教育実習の単位なかったら卒業できんがか?これ、単位ないぞ」と言いながら、教育実習成績評価表を見せ、「ほんまは実習生に見せんけど、単位なさそうやき見せるわ」「実習目標が中学生よりひどい、実習で学んだことの所もただの感想やん」と、いたぶられ、あまりのことに実習生が「すべてが感想ではないです、言って頂いたことも書いてる個所もあります」と反論すると、「だから、そういうのを直せ!すみません、やろうが!」「はいって、言えや!」と威圧的・感情的にどなっています。

教育系学部に進学し教員になって生徒と共に陸上をしたいという、かねてからの夢に一歩近づく場となるはずが、4週間も理不尽で威圧的な数々の言動の真只中に置かれ、精神的苦痛から教員への夢を断念させられる場、となってしまったのです。

実習後も治療が続く実習生の状態に心を痛めていたご家族は、正月明けの2022年1月7日、実習校を訪れ、事実を明らかにし、実習成績を正当に評価しなおすよう申し入れます。 

対応にあたった副校長は記録メモにみられる指導教員による数々の発言に対して「上から暴言。パワハラ的な事で精神的に追い込まれて行って、確かにいかんね」「実習生に対する体育(科教員)の厳しさは自分らも感じるところがある。正直、保護者からも、あまりのことやないか、聞いてくれっ、て言われた事が一回や二回やない。学生が涙流してきたことがあって、慰めた事がある」と述べ、パワハラ言動が常態化していたことを認めています。

1月13日に副校長は電話で「昨日、担当指導教員を呼んで、校長を交えて話をしました。実習生の記録したメモにあるような、そういう形で指導し精神的に追い込まれているー。かなり強く叱責し、メモにある通り、単位が出せん、とか言うことを言っているので、それは間違いだったということは本人も反省していますし、反省させました。」と、述べています。

1月17日に面会した校長は「指導担当教員が言った発言というのは、やはり行き過ぎた発言であり、不適切な発言であったと私も思っております。」「『喝入れ』があったことは間違いないんです」「社会通念からしたら、理不尽と思うような非常に厳しい指導ということをやるというのが、伝統的に今まであって、(実習生に対して、これもあれも)できない、できないって(否定する)指導ばっかりやったって事」「体育教官室と職員室とでは、違う『文化』があるというのは、事実だったと思います。」「行き過ぎた指導であると認めます」「担当指導教員のことだけでなく教官室全体のことをせんといかんと、実際には、他の教員もそうなんだと思いますし、やはり、なにがしかの、うんと違う指導もあったと思います。」「パワハラとかその事については全教員に周知します。」「人の人生を棒に振るような理不尽な言葉で、人の進路迄、人生まで変えてしまうような、やっぱりその行き過ぎた発言があっちゅうぞと、ずっとそれを背負ってやって行けいうつもりでやれと(指導担当教員を)指導します。だから、委員会のほうにも報告させてもらいます。」とパワハラを確認し、担当教員だけでなく教官室の教員も含めた指導を明言しています。

1月19日、その判断の下、校長は県教委高等学校課への報告に臨んでいます。それからしばらくしても県教委に報告した結果の話が校長からなく、しびれを切らしたご家族からの要請に応じて3週間後の2月7日、やっともたれた場で、校長の口から「校長(の私)がパワハラとかいうことを判断するものではない」と県教委にいわれた。「本人からの話を聞くことができず、記録を見せてもらえない状況では事実確認を行う事ができない」との判断が示された、と、思いもよらない言葉を聞きます。

また、成績評価についても「教育実習での成績というのは、客観的な事実に基づいて、実際に評価を出しているものであって、校長の考え一つで変えるいというのはあってはならないという事を(県教委に)言って頂きました」とのべています。成績評価については、校長自らがご家族に、客観的な事実に基づく評価ではなく「不当な中で出た成績なので、やり直します」と言い切っていた経緯があります。

“パワハラがあったことを全教員に周知し、不当な成績評価も見直す”という校長の姿勢は、県教委に報告したことで、豹変しました。ご家族にとっては、何を信じていいのか、まさに青天の霹靂の心情であったことは容易に推察できます。この2月7日を経て、ご家族は、学校と県教委が組織ぐるみでパワハラの事実を隠ぺいする方向へと舵を切ったのではないか、我が子の人生を変えてしまった仕打ちは、なかったことにされるのではないかと思い、3月上旬に私どもへの相談となったのです。

実習前年の2020年6月「パワハラ防止法」が施行され、迅速かつ適切な対応、事実確認、事後対応を講じることが事業主に義務つけられています。県教委は、教育長通知、アンケート実施、ガイドブックの改定発行など学校現場に対し、法主旨の徹底を図るよう指導していました。しかし、パワハラによるPTSDに苦しみ、教職への夢を断たれた実習生の報告を受けても、ご本人やご家族に連絡をとり様子をうかがう事すらせず、また、現場校長とともにパワハラ防止法にある迅速で適切な対応を取ろうとしなかった県教委高等学校課の姿勢は許されるものではありません。

3月16日、伊藤前教育長に調査を求めた5日後、3月21日から実習生への聞き取りや、関係教員への聴取にかかりますが、その10日後、3月末に当該指導担当教員は退職し、県教委の管理下からその身分は消えてしまいます。

◆学校から報告を受けても二カ月間、当事者に対しての聞き取りなど何もせず、放置したことに対しどうお考えか、教育長に伺います。

 

○教育長 まず、ハラスメントが疑われる事案についての報告を受けた際の県教育委員会の対応について、お尋ねがございました。

今回の事案につきましては、令和4年1月19日に校長より一報を受けております。その際、校長に対して、当事者双方及び関係者への調査を実施し、事実関係を確認するよう指示をしております。

学校は、この指示のもと、関係教員にそれぞれの言動や見聞きした内容等の聞き取りを実施しております。しかし、一方の教育実習生の方には直接お会いする事ができず、各教員の発言内容との整合性を確認するに至ってはおりません。このため、「現時点では、ハラスメントと認定するまでには至らず、その旨をご家族にもお伝えさせていただいた」との報告を受けております。

その後、 3月中旬まで、ご家族より学校及び県教育委員会に対する相談等はございませんでしたが、学校においては関係教員等に対してさらに事実関係を確認するなどの調査を行ったと承知しております。

県教育委員会においては、この事実、本事案を重く受け止め、校長より一報を受けて以降、3月中旬までの間、学校に対して事実確認のための指示をするなど、必要な対応は一定行っていたものと考えます。

 

●吉良議員 3月29日、教職員の言動等に関する調査項目の聞き取り内容の記述がご家族に示されています。肝心の実習生に対する言動への判定経緯は公にされないまま、4月15日の、県立学校長会議、事務長会議において、「教育実習実施にあたっての留意点」という通知文書が示され7点にわたる留意事項の説明がなされています。しかし、通知を出すことに至った当該校での事実経過などは全く報告されていません。それゆえ当該校長の監督不行届きへの対応も明らかにしていません。

◆この通知を出すことに至るまでに協議を行った機関名、メンバー、そして認定結論、判定をお聞きします。また、それに基づき、指導担当教員と教官室の教員、また当該校長へはどう対処、処置したのか教育長にお聞きします。

 

○教育長 次に、「教育実習実施にあたっての留意点」という通知を出すに至るまでの協議の経緯や、その後の処置について、お尋ねがございました。

令和4年4月の通知につきましては、教育実習生に対するハラスメントが疑われる事案が発生していることを踏まえ、教育実習が開始される前にすべての県立学校長に対して注意喚起を行うためのものであり、この時点では、本事案の事実認定をしたうえで発出したものではございません。

本事案につきましては、令和4年3月に改めて教育実習生側からの要請を受け、県教育委員会において再調査を開始しました。そして本年度に入っても、教育実習生の方や関係者への聞き取りなどを重ね、私をはじめ、教育委員会事務局で協議を行った結果、指導担当教 員については、一部指導においてハラスメントにあたる言動があったことを確認するに至りました。

しかし、当該教員はすでに退職しておりますことから、指導や処分を実施してはおりません。

また、他の関係教員の実習期間中の言動等につきましては、業務上必要でかつ相当な範囲を超えるものであったとは確認されず、不適切な指導には該当しないと考えております。

校長につきましては、本事案が教育実習期間中の学校内の出来事であること、指導担当教員の一部言動が不適切な指導と確認されたこと、適切に教育実習が実施されるよう教員を指導すべき立場にあることなどから、一定の対応を現在検討しております。

 

●吉良議員 調査にあたったのは高等学校課の課長補佐などが一般業務の中の一つとして携わっており、その仕事量は相当なものであったと推察されます。しかもそれは調査の手順や決定事項など手順を明示したフローチャートを備えたものではなく、当然、会議録など整備されておらず、結論にいたる取り組みや審議状況を後日検証できるものがないことが、この間私とのやり取りの中で明らかになっています。

県教委の調査と認定結果に関して、実習生とご家族は納得するところには至っていません。不服申し立てをする権利をどう保証するのかは大きな課題です。

◆パワハラ防止法に即し「パワハラ防止委員会」という名の組織を配置しているところもありますが、第3者機関など、一般業務から独立してた立場で聞き取りや調査、判定する権限を持ち合わせた組織、機関の設置をどう考えるのか、現在の苦情相談員等の現状も含め、教育長に伺います。

 

○教育長 次に、一般業務から独立した立場で聞き取りや調査、認定などの権限を持つ組織、機関について、そして苦情相談員等の現状も含めてお尋ねがございました。

現在のハラスメントの相談体制につきましては、各県立学校の副校長又は教頭を苦情相談員に、事務局関係課の課長補佐を相談員にそれぞれ指定し、内部相談窓口としております。加えまして、弁護士等の専門家を外部相談員として委嘱しております。

また、こうした相談窓口の一覧や相談や相談対応の流れなどを示した通知を、年度当初に、県立学校長及び市町村教育長に発出し、教職員への周知徹底を依頼しております。

学校現場でハラスメント事案が発生した場合には、これまでも客観性を持って対応してきたところであり、引き続き、現行の対応体制を適切に運用することに努めてまいります。 あわせて、より客観性を高めるといった観点などから、一般業務から独立した立場の組織機関の設置も含め、対応の在り方などにつきましては検討していきたいと考えます。

 

 

【定員内不合格について】

●吉良議員 次に定員内不合格についてお聞きします。

昨年末、文科省は公立高校の「定員内不合格」についての全国調査結果を発表しました。

 実態を把握していない6県を除き、都道府県別の最高が高知県ののべ182名と報じられました。人口の少ない高知県が、実数で郡を抜いた一位であることに驚きの声が上がっています。

◆原則として定員内不合格を出さないとしている都道府県が少なくない中で、高知県でなぜこれほど多くの「定員内不合格」が生まれているのかお尋ねいたしまして、私の第一問といたします。

 

○教育長 最後に、公立高等学校における定員内不合格について、お尋ねがございました。

本県では、申山間地域の学校も含め、多くの高等学校で、地元の中学生を全て受け入れることができるだけの入学定員を設定しております。しかし、実際には、私立高校などに進学する生徒もおり、大半の学校で志願者が入学定員を下回っております。こうした学校の入学者選抜を受け、不合格となった志願者は、全て定員内不合格として算定されます。

また、高等学校では、それぞれ特色ある教育課程を編成しており、学校によって学ぶ内容も違ってまいります。そのため、学力状況や学習意欲等のギャップによるミスマッチをできる限り少なくするためにも、各校の学習内容や教育活動に見合った力や意欲を持った生徒を受け入れるという観点から、入学者選抜の結果、定員内であっても不合格となる場合もあり得ると考えております。

ただ、本県では、年度内に複数回の受検機会を設けておりますことから、二度目以降の受検で公立高等学校に合格した生徒や、最終的に私立高校に合格した生徒なども定員内不合格者に計上されておりまして、公表された延べ182人のうちの多くは実際には高等学校に進学している状況でございます。

 

【第二問】

●吉良議員 二問を行います。

教育長にお聞きいたします。

パワハラのこの件についてですね、教育長はパワハラが「疑われる」事案だというふうにおっしゃっております。私どもは、ご本人や、そしてそのご家族の持っているいわゆるメモですね、そして、身に対する危機を感じて録音もなさっているんですね。それを一部教育長にもお聞きいただいて、そして判断がされたというふうに思っております。

その結果が、「疑われる」事案だということに対して、ご本人も、そしてご家族も不服があるんですね。

最も大事なのは、教育実習を受けることによって人生を曲げられたということなんですよ。本県の教育に携わりたいという夢を持っていた一実習生が、その道を断つことを余儀なくされたという、この事案だけをとってもですね、パワハラがあったというふうに断定しないとですね、これはね示しがつかないですよ。

今後、教育実習生含めて本県の教育に携わりたいという方々は、今回の事件を注目しております。

一体どういうような措置がなされるのか。例えば、私の手元にあります11月4日、5日のやり取りですけどもね。これ一部、教育長もお聞きになってますね。4日の日にもう常にずっと威圧されていた実習生がですね、身の危険をいつも感じているので、ついに IC レコーダーを持つんですね。

4日の日に行きました。そしたら、いきなりその教諭にすごい剣幕で怒鳴られた。威圧してきたので、その教官室に他の教員もいたけれども、身の危険を感じたというふうにおっしゃっています。

そして、その教諭は、「おめえな、自己評価が高すぎだろ!普通は自己評価が高くない!」という剣幕で、「戻れ!」って言われて、はいわかりましたって戻る。戻って行こうとしたら、「おい、待てや」と「評価を社会では意識するべき。新社員として来ていたら、俺なら3日で首切る。教育実習生だからおいてあげている。おらせてあげている。ずっと我慢してきた。俺がどんだけ我慢してきたか気づかんかったやろ。お前の評価はかなり低いぞ。単位はない。4週間我慢して、今まで、怒らずに言ってあげていた。帰れ!」、わかりましたと、「帰れと言ったら、帰るのか、俺は面倒も見たくない。帰りたけりゃ帰れ!勝手にしろ!」。

そして、その翌日ですよ、翌日に教官室でこういう会話がなされているんです。

「昨日、暴言吐いてしまったから、○○という実習生に」、そしたら、周囲の教官室、周囲が高笑い(をする)、これ、お聞きになってますね。「帰れ、お前!」これ舌を巻いて再現するような口調、また周囲が笑う。「俺もグッと堪えた。いつか、廊下かどっかそこへ行き引きずり込んでほら」、周囲がまた笑う。これで4週間、予想つきますよね。

 精神やられるのは当たり前ですよ。

 こういう風な状況の中で音声も残っている。それでも、パワハラが「疑われる」事実で済ませるっていうことはね、やはり、後世のいろんな方々に笑われますよ、人権意識感覚が。 高知県教委というのは、そういうものかと、こんなこと言っても、パワハラにならないんだ。

どういうことですか。示しを付けることができますか、他の学校の先生方に。

これぐらい言っても(パワハラに)ならないじゃないかと、双方の言うことが違うんだと、確認できないんだ、それでずっと「疑われる」事案できてるじゃないですか。到底その判断は容認できない。

教育長は、教育畑、長くいるはずです。人格を形成する場所で、人権を尊重する場所で、そして差別解消も含めて、みんなが豊かにね、公平な、平等な権利を持って成長していくという場、あなたは知ってるはずです。だからこそ、こういうような会話が、教育現場で行われるということについては、厳しく指摘し対処すべきだと思います。ですから、もう一度、この不服を持っていることに対して、きちっとね、再審査をすべきだと思いますがお聞きいたします。

それから、この(2月)21日に国会でですね、うち(日本共産党)の本村伸子衆議院議員が勤務時間のこと、教育実習生が14時間も実習時間があったということで、文科省の長岡文科大臣は調査をすると、県教委にもね、過大なこういう勤務実態をさせないように調査するんだ、という答弁も得ています。そして、パワハラについては、迅速にね、これは対応していかなければならないということを述べております。

本人に対して何時間、4週間勤務させられたのか、お調べになりましたか。そのこともお答えください。

 

今、問われていることは、そういう実態にきちんと向き合う。校長任せではなくて。校長は豹変しているわけですから、県教委にそう言われて、校長は本人も交えて、既に1月17日に、本人も悪かったということも確認しているわけです。

そのことについて、何も触れずに双方の意見が一致しないからなんていうね、そんなことを許していたら、パワハラってことは指摘できませんよ。わからなかった、知らなかった、そんなつもりではなかったって、発言するのは当たり前じゃないですか。

何よりもちゃんとしたメモもある、証拠もある。そして、本人も校長と副校長の前で、言い過ぎだった、間違えだった、と反省したって言っているわけですから。そのことに沿って、やっぱりきちっと指導していくということが必要だと思います。

いずれにしても、その2点、まずお聞きしたいと思います。

 

○教育長 まず、ですけれども、あのパワハラ、ハラスメントか疑われるって言う発言をさせていただいたのは、これは当初の段階ですね、先ほどの答弁の中でもですね、「指導においてハラスメントに当たる言動があったことを確認した」というふうに話をしました。

そういう意味で、我々としてはこの指導教員の行動の中にハラスメントがあったというふうに認定をしております。そして、当初におきましては一方の方々の発言内容で、もう一方と食い違いがあった、そして、なかなか双方の言い分を、この一致点を見ることができなかった、そういったことから、ハラスメントが、疑われるという発言をさせて頂いたものです。そして、この認定に至った経緯につきましては、今、議員から言っていただいたように、当事者、教育実習生の側の方から、いろいろ資料をいただき、あるいはデータ等も頂いて、これを含めて、これをもとにですね。

再調査をした結果ですね、やはりそこにはハラスメントがあったというふうに認定をさせていただいたと、いうものでございます。そして、もう一点につきまして、この4週間の一日一日のですね、この方の勤務時間についてですね、現在我々のところで、これはまだ調査できておりません。そういう意味ではこの点については再調査をしてみたいというふうに思います。以上です。

 

●吉良議員 パワハラがあったという事実認定して、ご本人に伝えたんですか?伝えてないじゃないですか、ご家族も全然知りませんよ。その体質が問題でしょう。

検証できる文書化をして、その審議の結果をちゃんと報告するというのが筋ですよ。なってないですよ、この取り組みは。きちんとしたフローチャートも持って、その手順も含めて、今この段階だということも示しながら、現場の校長とも保護者とも共有しながら進めていくというのが筋なんですよ。

そういう体制がなってないということが一番の問題です。

今、教育実習生は、幸いなことに元気に学んでいます。しかし、教員になるということについては、残念ながらその気持ちはなっていません。そういう重要な、本県の教員を目指す方々に、今後こういう思いをさせないためにも、きちんとした組織立った手立てをやるということもう一度求めたいと思いますけども、よろしくお願いします。

 

○教育長 教育実習というものについては、教育実習生が実体験を通して、教員としての必要な知識とか、技能・態度・心構えなどを習得する。そして、それとともに、教職への意欲や情熱を高める機会である、さらに将来の本県教育を担う人材の育成に資するものであるというふうに考えております。

ただ、本事案ではこのような意義・目的を遂げるものとなっていない。そして、結果として、教育実習生が教員となることを諦めたということについては、非常に、私としても残念に思って、そして重く受け止めているところです。

そのような意味で、こういったことを繰り返してはならないというふうに考えております。そのような意味で、教育実習の主旨を踏まえ、各受け入れ校において、教育実習が適切に行われるよう、そして、なんといってもハラスメントが起こることがないよう、さらに指導を徹底していきたいというふうに思います。