議会報告

  • 2023年10月25日
    2023年9月議会 はた愛議員の「令和5年度・高知県一般会計補正予算に対する修正案」提案理由説明(2023.10.13)

●はた議員 日本共産党のはた愛です。私は今議会に、計上されています、議発第2号「第1号令和5年度・高知県一般会計補正予算に対する修正案」について、修正案理由説明を行います。
補正予算中、教育の充実に関わる「学習支援プラットフォーム構築等委託料」785万4千円について、削除の提案をいたします。
この事業は令和6年~令和8年の3か年で1億9,608万6千円の債務負担行為を設定しており、総事業費のうち、県費は83.2%で、国費の割合は16.8%の事業です。
 事業目的について、県教委の説明では、県独自の学力テストやデジタルドリルでの学習結果などを教員の指導向上や子どもたちの自主的な学習に活かし、また「気持ちメーター」による児童生徒の気持ちを教員がデジタルで把握するシステムや、保護者もアクセス出来るシステム、教員の業務負担の軽減にもつながる事業との事です。
議案質疑の中で明らかになったのは、タブレットの持ち帰りにより、授業以外での学習行動の管理が強化されるという事です。私達はデジタル化のすべてを、否定しているわけではありません。
時代に即した教育環境の変化として、情報共有の面や事務処理の効率化など、メリットがあるとの声も認識しています。    
しかし、なぜ、子ども達はデジタル化の中で「疲れる」との声を寄せているのでしょうか。
例えば、今回の補正予算によってバージョンアップされる一つに、児童生徒の気持ちをデジタルで掴む「きもちメーター」があります。笑顔のマーク、悲しい等のマークがありますが、悲しいマークを押すと「先生が来る、だからもう押さない」「いじめに合っていても悲しいマークは押さない」との声が寄せられています。
他には、高知市内の小学校の授業中に、実際に起きている事を紹介しますが、「高学年ではユーチューブの動画サイトに接続し閲覧する、R18指定のアニメを見ている、ひたすらゲームをする、これらは、担任が聞き取りで、履歴を確認して分かった事で、教育委員会が把握しているわけではありません」と、現場の先生は話します。さらに、先生は「小学生がタブレットを持ち帰ることで、この様な事になるのは想定できるし、それを毎回調べる事などできません。恐らく今後も続くのではないでしょうか。」と危惧を話してくれました。
また保護者の話しでは、「子どもは、持ち帰ったタブレットに向かって本読みを録音し、夜9時までに送信しなければならず、出来ていなければ、先生から本読みを再度送るように連絡が来る。そこまでデジタル化をする必要があるのか」という声が、寄せられています。
これらは、デジタル化が、そぐわない現場の実態の数々です。

県教委に対し、この様な学校現場や子ども達の声を、どう把握されているのかと問いましたが、「ご指摘の意見は聞いていない」との答弁がされました。一人一台タブレットは、県内では令和3年度から運用されていますが、メリットだけでなく、紹介した様な問題点も存在しています。
この間の活用実態について、県教委からは、検証に必要な当事者への聞き取りなど、十分な調査がされたとの報告はなく、また、持ち帰り仕事も減っておらず、教員の働き方改革につながっているとは、言い難いこともわかりました。
今後、継続して多額の経費を必要とするにも関わらず、十分な議論と検証がされずに、バージョンアップするのは非常に問題です。
本来、学校は、先生が子どもたち一人一人に向き合い、人間的な信頼関係を深めながら、また、友たち同士で励まし合い、学びあう環境が大切にされる場所ではないのでしょうか。
子どもをデーターで管理していく教育への懸念は、県内だけでなく全国的にも広がっています。
全日本教職員組合が今年9月6日に発表した「2024年度・文部科学省概算要求についての談話」の中で「教育DXの予算が前年度から大きく増やされているが、端末使用による健康・学習面での影響や子どもや教員の情報集約とひも付け、個人情報漏洩の懸念などが山積している。その中で、教育の市場化が一層進められている」また「教員の持ち帰り仕事を是認することに繋がりかねず、働き方改革も在校時間の縮減に留まる懸念がある」と、指摘しています。

私達、日本共産党は、教育的な観点よりも、経産省が主導する教育の市場化の流れが優先され、子どもの視点や先生の視点からの問題の指摘が軽視されている現状や、根本的な教育課題の解決につながっていない点などからも、安易に進める事を認めることはできません。
まず県政がすべきは、デジタル化の検証ではないでしょうか。そして、一人一人の子どもたちの個性を受け止め、向き合える適切な人員確保や、自ら考え、判断し、行動できる主権者の育成。
また、地域社会と共に人間的関係性を育める、温かい学校づくりではないでしょうか。
教育の『質』につながる教員は、非正規ではなく正規で採用し、真に教育が目指す「人格の形成」、つまり一人一人の自由で独立した精神、多様性が、尊重される学校づくりの予算を、確保する事が、教育委員会の責務だと考えます。
以上の点から「学習支援プラットフォーム構築等委託費」を削除する修正案の提案理由といたします。