議会報告

  • 2025年06月30日
    塚地議員の「納税者の理解が得られる私立高校授業料無償化を求める意見書」案反対討論

●塚地議員 

私は、日本共産党を代表し、議発第3号「納税者の理解が得られる私立高校授業料無償化を求める意見書」案に反対の立場から討論を行います。

高校進学率は99%にのぼり、準義務教育化、シビルミニマムとして、すべての子どもへの高校教育を保障するために、授業料無償化をもとめて、粘り強い国民運動が続けられてきました。毎年国会に署名が届けられ、昨年度は228万人分にも上っています。

この3月、高校無償化に関して自民、公明、維新の会による3党合意は、年収910万円未満という所得制限を公立・私立ともに廃止するもので、「お金の心配なく学びたい」など私学高校生や保護者の運動の反映として歓迎するものです。同時に、私立高校授業料の全国平均額を上回る私立高校は半数を超えるなど、支給額として十分とはいえません。また、授業料以外の学校納付金は私立・公立でも高額で、真の無償化、教員定数の抜本的改善など教育条件の整備をすすめることがなお求められています。日本の教育予算は、対GDP比でOECD諸国平均の7割しかなく、世界最低水準であり、教育予算の大幅増額にむけ、国民、県民のみなさんと引き続き力をつくす決意です。

そもそも教育の無償化は、国際人権規約に明記された基本的な人権であり、世界がめざすべき目標です。日本政府が批准している国際人権規約(A規約)や子どもの権利条約では、子どもの教育についてはその国籍に関係なく、その子どもが実際に住んでいる国の政府が責任をもつことになっています。現在の高校授業料無償化においても、多くの外国人学校も『高等学校の課程に類する課程』をおくものとして     無償化の対象となっています。一方、自公政権は、”内外人平等”の国際人権規約などに違反し、朝鮮学校を対象外とする差別的対応をとっており、国連・子どもの権利委員会からも是正勧告を受けており、国際ルールにもとづき早急な是正が必要であることをまず、指摘をしておきたいと思います。

自民党県議団提出の意見書本文には「日本人の子供が海外の私立学校に通う支援は限定的であるにもかかわらず、外国人の高校生は日本に来れば無償で教育を受けられるという制度設計」は納税者の理解が得られないと述べています。「納税者の理解」という体裁をとっていますが、極めて危険な思想の反映と言え看過できません。

新自由主義による貧困と格差の拡大のもと、日々の生活の苦しさの矛先を外国人にむける排外主義が各国で高まっていることは極めて憂慮する事態です。わが国でも、「外国人に対する過度な優遇を見直し、日本人が払った税金は日本人のための政策に使います」などと声高に喧伝する動きが顕著となっています。しかし、その主張である「高額療養制度」の不正利用や生活保護受給の優遇などは、まったくのデマであることが明らかにもなってきています。同意見書決議案はこうした危険な流れと軌を一にするものになっていると指摘せざるを得ません。

我が国は、少子高齢化、人口減が急速にすすんでおり、一次産業や建設業などをはじめ多くの産業で外国人労働者を抜きに社会がなりたたなくなっています。日本に在留する外国人は2024 年末時点で約 377 万人と過去最高となり、就労する外国人も24年10月末時点で約230万 人と過去最高を記録しています。今後更なる増加が見込まれています。政府は、2018年12月に「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」を決定しています。その目的には、「日本人と外国人が互いに尊重し、安全・安心に暮らせる 共生社会の実現を目指し、外国人がキャリアアップしつつ、国内で就労して活躍できるようにすることなどにより、 日本が魅力ある働き先として選ばれる国になるような環境を整備していく」ことが謳われています。そのため、日本語教育の支援、多くが外国籍の方が通う夜間中学の推進、ライフスタイルにあった支援と相談窓口の設置など、税金を投入し、ウィンウィンの関係となるよう努力しているのではありませんか。こうした共生のための努力こそ県民に知らせ、充実をもとめることがまっとうな立場だと思います。

中長期に滞在する外国人は、所得税や住民税、そして社会保険料を負担しています。そうした在留外国人をも冒涜するものになるのではないでしょうか。転居や出入国の頻繁さなどに、制度が十分対応できてない問題も、その解決のため、政府として検討・改善もとりくまれており、あえて、今、差別的取り扱いを肯定するような主張を県議会として行うべきではありません。

本県も外国人材の方々に、高知県を選んでいただく努力を続けているところです。しかし、本意見書案は、政府のすすめる「共生社会」にも反し、高知県議会が、国内外はもとより国際的にも、共生ではなく分断と偏見の助長に賛同しているという誤ったメッセージを発することになります。同僚各位の良識と懸命なご判断で否決されることを望み、ご賛同をお願いし、反対討論といたします。