議会報告

【質問項目】

・県内の生物標本等の保存について

・指定管理者制度における文化施設等の公募方針について

 

●細木議員 日本共産党、細木良です。通告に従い、質問させていただきます。

 

【県内の生物標本等の保存について】

●細木議員 2024年に改定された生物多様性高知戦略では、「近年、高知県内の動物標本の現状について、民間の団体が調査を行ったところ、多くの標本コレクションが県内のあちこちに散在していることが分かりました。調査結果によると、これらの標本の多くは、個人や民間団体の所有物であるため、収集した研究者や収集家がいなくなると十分な管理が行われなくなり、近い将来、県外に散逸したり、標本としての価値が失われてしまう恐れがあります。調査を行った民間の団体は、県内に存在する標本のうち、7万点ほどは今後10年以内に現在の保管状態を維持できなくなるだろうと考えています」との記載があります。

高知県環境基本計画第5次計画の取り組みである「施策4 動植物の情報収集と標本の適正管理」では、「生物多様性の保全に必要な基礎的データを得るため、県として関係機関などと連携し、動植物の生息、生育情報について、収集・整理するとともに、県内に有する標本が県外に流出して散逸することがないよう、適切な保管場所を確保します。また、これらデータベース化と実物資料を適切に活用する仕組みを構築することにより、県内での研究人材の育成や展示による効果を推進します。」とあります。

県内の民間団体が2021年に聞き取り調査した結果、生物標本132件235000点ものコレクションが県内にあることが分かりましたが、現状のまま維持保管が困難な状況にあります。理由として、高齢化、保管場所の維持困難、適切な保管管理知識を有する人材不足等です。

最近でも貴重な生物標本が県外に流出している事例が発生していますし、南海トラフ地震など災害による損壊も想定をされます。ことは悠長な問題ではありません。

◆環境基本計画第5次計画の期間は今年度末となっていますが、「施策4 動植物の情報収集と標本の適正管理」における適切な保管場所の選定についての進捗状況を、林業振興・環境部長にお伺いします。

 

○林業振興・環境部長 はい。

現在、県内にある標本のうち散逸が危惧されるものにつきまして、自然史科学の専門的な知識を有するNPO法人が、旧県立高知南高校の校舎の4階を使い保管できるよう手続きを進めているところでございます。具体的には、当該法人から施設を所管する県教育委員会の申請を行っており、今後 11月、もしくは12月あたりから、標本の運び込みが開始できる見込みであると承知しております。

 

●細木議員 ◆来年度以降この取り組みについてどのように推進していくのか、林業振興・環境部長にお伺いします。

 

○林業振興・環境部長 散逸が危惧される標本は約7万点と非常に多数となりますので、NPO法人からは、先ほども答弁しましたように、運び込みは年内に初めて、来年度のどの時期に終了するのかはわからないといったお話をお聞きしているところでございます。

運び込みの作業がある程度進んでくれば、今後は、その次として、適切な保管や管理をどう行っていくのか、あるいは、標本の展示などをどう活用していくのか、といったことが課題になってくるものと考えております。これらの点につきましても、NPO法人からご意見を伺って参りたいという風に考えております。

 

●細木議員 標本管理には紫外線、温度、湿度などをしっかり管理するということが必要だと思います。エアコンやエレベーター、インターネット環境などを整備するように求められていると思いますので、是非そういうことも検討していただきたいと思いますし、この第6次計画ではしっかり踏み込んで、こうした民間団体の皆さんと一緒に、協力しながら人材の育成や、後、県民の皆さんにしっかり見てもらうための展示など、計画していただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 

【指定管理者制度における文化施設等の公募方針について】

●細木議員 公社等外郭団体の在り方の見直しについて、県政運営指針改定についてパブリックコメントが行われ、異例の301者、延べ794件もの意見が寄せられました。そのうち最も多かった意見は直接指定から公募への切り替えによる雇用不安、人材確保は困難、専門性が低下するという趣旨の意見でした。

国の「経済財政運営と改革の基本方針2017」では、「“文化経済戦略”を策定し、稼ぐ文化への展開を推進する文化と産業・観光業等他分野が一体となって新たな価値を創出し、創出された価値が、文化、芸術の保存・継承や、新たな創造等に対して効果的に再投資されることにより、自律的・持続的に発展していくメカニズムを形成することを目的とする」とありますが、今回の公募化への見直しについては、こうした新自由主義的な稼ぐ文化の論理から問題が始まっており、矛盾は深まるばかりと感じています。

指定管理公募は「周回遅れ」、「競争すれば良くなるということではないフェーズに来て10年経っている」との指摘もされています。再公営化が世界の趨勢です。なぜそんなに急ぐのか、大いに疑問を感じています。

文化施設に詳しい慶応大学の福島幸宏准教授が、「文化行政の中で、各施設に求める役割を十分議論していない。いきなり、公募に切り替える県のやり方は乱暴だ」と指摘しています。そもそも今回の見直しについては、知事、総務部長、行政管理課の限られたメンバーで 発案をされ、文化施設には、突然5月に説明を行った経緯からも、現場無視の見直しであることは明らかです。

牧野植物園のスタッフは、植物園としての意義を守りたい思いで、マスコミのインタビューに答え、「ここでの研究の価値は資料。それが高知県の財産であり、高知県に自然が残る活動を我々はしているわけです。それに対する意義とか、お金では買えないものに関して、自律性向上団体の指定っていうのが、どういう風になっているのか不安な要素」、「各館の例えば20年なりやってきた人間から何のヒアリングも、今回、受けないで、公募に方針転換しましたよね。外郭団体の職員に対する義理も礼儀もそういったものは一切ない。我々もただの使い捨てって。それで、諦めてるんです。私は県に対して諦めた。県に対してです」と、今回の県の進め方を強い言葉で非難されています。こんな思いを財団職員にさせている知事は、学芸員さんはじめ、懸命に働いている財団職員全員に対してリスペクトがあまりにもないと感じます。

◆聞き取りや論議なく、方針を変更した現場無視の経緯について、こうした学芸員さんの発言に対して、知事はどうお考えなのか伺います。

 

○県知事 学芸員の方々の声のご紹介ございましたけれども、新聞報道でもございましたように、中には、この問題について、冷静な受け止めをしておられる学芸員もおられる、「雇用不安の問題は、この業界に限ったことではない、いずこの業界でも多少の雇用不安はあるものだ」、というような声もあるというようなことも紹介をされておりました。

そういう意味では、個々の職員の皆さん個人個人の受け止めというのは、様々だということだと思います。従いまして、基本的には指定管理者であります財団の役員を通じまして、職員の皆さんの声も、いわば集約をしていただいた形で意見を伺ってまいりました。

そして、こういった作業は、方針を決めました5月以降に各団体に説明をし、意見を伺って参ったわけでありますが、その後のパブリックコメントにおきまして、職員の方々からのご意見も直接、こうしたものも含めて広く意見をいただいたという風に理解をしております。

そして、その過程でいただいた意見といたしましては、県として真摯に受け止めまして、例えば、継続雇用の方向性、これを公募の条件にするとの対応をするといった必要な措置を講じた上で、改めてお示しをしたところでございます。こうした誠意をもって対応してきた結果が、当初のお示した方針に技術的な修正を加えたというような経緯だという風に考えております。

今後とも、各団体、そしてひいては、勤務しておられる職員の方々のご意見を真摯にお聞きして物事に対処をしていく、その姿勢に変わりはないつもりでおります。

 

●細木議員 岡田芳秀議員の質問で、現場を混乱させた責任について明確な答弁が知事からありませんでしたが、今日の1日の質疑を聞いてですね。やはり、知事のモットーである 「共感と前進」、このことで言えば、今本当に共感をされているというようなところではないので、やっぱり、前に進めてはならないという点が1点。

2点目は、やはり、このインセンティブを働かせる、その制度が今年始まったのにお金も払われてないし、検証もされてない。本当、後出しじゃんけんのように、やはり、この公募を条件としてきたこと、これは2点目。

3点目は、資料の散逸が懸念をされるということも、武石議員もありましたように、やっぱり、寄贈された方からの信義をやっぱりしっかり守るという点では、指定管理が別の団体になった場合に引き上げられるというそういうことがあったら本当に取り返しのつかないことになると思います。

このまま進めたら、県の文化行政及び文化施設の在り方について、大きな禍根を残すと思います。この項、白紙撤回についての知事の答弁は構いませんので、以下、いろんな問題点、矛盾点についてお聞きをしていきたいと思います。

今回、自律性向上団体とされた、野市動物公園から県知事に対して提出された意見書では1)“のいち動物公園の果たすべき役割”として「環境教育」「調査研究」「種の保存」を挙げ、そのために継続的な取り組みと蓄積が必要であり管理運営団体が数年ごとに変更することへの危惧が記され、2)“協会の継続的な運営に関すること”では、指定管理に指名されなかった場合、協会の解散が想定され、職員の雇用確保が困難になることや、更新毎に継続的な雇用不安が生じ優秀な人材流出や応募の減少など職員の安定的な確保が困難になること、3)“職員の処遇、雇用の確保などに関すること“では職員の処遇は、県に準じており大きな課題ではないこと、4)運営に関することでは、社会教育の一環で行っているイベント等は教育普及や動物保全、動物福祉の啓蒙を目的としており有料化には馴染まないこと等、今回の方針変更について様々な問題点を指摘しています。

のいち動物公園はご存知のように、世界的な旅行口コミサイト「トリップアドバイザー」の「旅好きが選ぶ!日本人に人気の動物園・水族館ランキング2020」で、堂々の1位に選ばれています。来園者からは「動物の見せ方や小動物との触れ合いにスタッフの創意工夫満載」「何回行っても新鮮な気持ちにしてくれる場所でオススメ」などの感想が寄せられています。こうした素晴らしい動物園で働いてみたいと県外から移住し、結婚、子育てしているスタッフが相当数おいでるとお聞きしました。こうした事例はのいち動物公園に限ったことではありません。人口減少が進む本県において移住定住の好例ではないかと思います。

指定管理者公募化方針は県外にも影響が出始めており、高知の財団への就職に不安を感じ、選択されないといった動きもあるとの事です。県の移住定住施策にも影響が懸念されます。

◆「指定管理公募化方針」は新たに博物館等で学芸員として働きたい方が高知県を選択しなくなるのではないか。こうした懸念について知事にお聞きします。

 

○県知事 まず、この指定管理者制度、前提でございますけども、これは期間を定めて管理をさせるということになっております。3年、5年等の期間を定めております。これは公募であれ、直指定であれ同じでございますので、そういう意味では 指定管理機関が更新をされる時期には、この雇用の問題に関しては、一般的なリスクとしては、その時点で雇用が切れるというリスクは、もともとははらんでいる、これは直指定にしても変わらないという点は前提として、申し上げたいという風に存じます。

そして、今回の見直しにあたりましては、公募の際には、現在勤務している職員の雇用の継続を条件づけるなどの手法によりまして、各施設などの実情に応じて必要な対応を図る、そうした方針を決めましてお示しをしております。

また、現在、県の施設の公の施設の中で 公募方式をとって選定をしております施設は31施設ございます。このうち、直近の公募で複数の応募がありましたのは、1施設、障害者スポーツセンターだけでございまして、残りはいわゆる一者応札という形でございます。そうしたことでありますので、通常の求められる水準の運営をしていれば、現実に起こっておりますことは競争相手なく、公募のテストをくぐって再度指定が更新をされるというような、ケースが大半であるというのが事実でございます。

加えまして、今回の見直しは指定管理者が創意、工夫を凝らして新たな公益的な事業も展開できる、そうした自由度を高めようというものでございます。そうしますと、職員の皆様お一人お一人にとりましても、財団としてやりたい事業というのをやれる自由度が高まってくるということでございますから、そうした流れを通じまして、職員の皆さんにとっても、まさしく、県民の皆さん、利用者の皆さんから評価がされるより良い事業を展開しやすくなるという効果を私は期待をしているところでございます。

 

●細木議員 100%担保はされないので、やはり、その不安というものはあると思います。

財団からの意見やパブリックコメントを受け、人材の専門性や継続性を担保し、雇用の不安定化を起こさないための措置として、「現在の指定管理者の職員のうち、希望する者が現状を下回らない処遇で継続雇用されるよう、公募要領で条件付け等」を行うこととしています。

◆現在雇用されている職員で希望すれば非正規職員含む全職員が継続雇用されるのか。総務部長に伺います。

 

○総務部長 今年度管理者の公募を行う高知城歴史博物館におきましては、切り分けを行いますので、宝物資料の管理等以外の業務に従事する職員につきまして、非正規職員を含め、希望する全職員の継続を条件とする予定でございます。

その他の施設につきましては、今後、公募を行う際に施設の実情に応じて判断を行っていく方針でございます。大変失礼いたしました。

 

●細木議員 パブコメで2番目に多かった意見は「収益性を求めることは不適当。県の文化行政が後退する」というものです。9月の記者会見では、「経費の2~3割負担という入場料の比準を上げるべき。多少値段は高くても付加価値が高いサービスを提供するよう経済構造に転換すべき」旨を発言されています。国宝をめざす高知城夜間貸し切り(398000円)、報道がありましたが富裕層向け企画はその一例だと思います。

日本国憲法第25条の規定から「文化権」が導かれ、それを保障するための立法措置として文化芸術基本法が制定されました。

「文化権」とは「何人(こども、高齢者、障碍者、在留外国人)も自由に多様な芸術文化を創造し、および享受する権利を有する」とされており、文化芸術の創造と享受の機会は、市場原理にのみゆだねてはならない。とされています。世界人権宣言第27条では「すべての人は、自由に社会の文化生活に参加し、芸術を鑑賞し、および科学の進歩とその恩恵にあずかる権利を有する」と文化的権利を謳っています。

◆広く県民が利用する県立施設において、高価格でのサービス提供が行われることは、「文化権」の保障と逆行するものではないでしょうか。知事に伺います。

 

○県知事 これは、前回、岡田議員とのやりとりでも答弁をさせていただきましたが、収益性がまかりならんというご意見でございましたが、博物館法等で、避けるべきとされている営利というのはですね、儲けの部分を出資者で山分けするとか、行政の場合なら他の行政目的に使うと、こういうことを指していると考えておりまして、そもそも文化施設において、施設運営に必要な収入を得ること自身が否定されるわけではないという風に考えております。

県といたしましては、県民の皆さんに低廉な負担で良質な文化に親しんでいただけますように、必要となる経費の大半を管理代行料、これは、元をたどれば、県民の皆さんから頂いた税負担ということでございます、これで措置をいたしまして、文化施設の利用料金を安価に設定致しております。これを通じまして、お話のございました文化を享受する権利を保障しているという風にかんがえております。

その上で、今回の見直しは指定管理者の自由度を高めまして、より付加価値の高いサービスの提供を目指すものであります。高価なサービスを提供するのはいかがなものかという ご意見がございましたが、利用者の方々が相応の対価であると判断をして納得して購入していただけるのであれば、また、施設の管理運営全般に支障をきたさないかたちで行えるのであれば、この高価なサービスを提供すること自身に特段の問題はないという風に考えております。こうした取り組みで得ました収入は施設の運営、そして、文化の振興のために使っていくということでございますので、文化を享受する権利の保障に逆行するものではないという風に考えております。

 

●細木議員 大きな問題がある、今、発言だったと思います。特段の問題はないという風な 答弁でしたけれども、やはり、その高価格のサービスでも、やっぱりそれをどうしても見たいという方は、お金のあるなしで判断をされるわけですので、これはやっぱり、文化権の保障という点では、僕は、逆行するものだと思いますので、指摘させていただきます。

また、知事は65歳以上の高齢者の入館料を減免する制度の廃止についても、選択肢の1つと認める発言を行っています。この制度は、高齢者の積極的な外出、健康で充実した生活を送ることを支援するため、長寿手帳を発行し、県立始め公的施設の入場料や利用料金を減額免除している高知県の優れた政策で、県民に大きく支持されている制度です。

文化に触れる機会が多いほど、健康度が高まるとの調査結果も出されており、介護予防にもつながる有効な制度だと私は思います。入場料が免除されていると言っても、県の東部や 西部から高い交通費を使って県中央部の施設まで来ることは大変です。

◆減免制度廃止となれば、文化に触れる貴重な機会をさらに奪うことにも繋がりかねません。高齢者への減免制度について、今後の適用方針を知事に伺います。

 

○県知事 お話がございました高齢者の方々への利用料金等の減免でございますが、これはお話もございましたが、高齢者の方々の社会参加、あるいは健康増進の推進といった県政 全体を通じました政策目的に沿って適用されております制度でありまして、今回の見直しに当たりまして、高齢者の利用料減免を全体として、直ちに変更する考えは持っておりません。

一方で、現在、条例で定めております高齢者の減免規定を、この詳細を前提といたしますと、例えば、美術館や、のいち動物公園が自主事業として、新たな企画展を実施したいという場合、この場合に、常設展とか、通常の展示とは別料金で新たな企画展を実施して収入を増やしたいという希望をされる場合でも、現行の減免規定によりますと、高齢者については料金が徴収できない、一律に無料とするしかないという扱いになります。

これによりまして、自主事業として、高付加価値サービスの提供ができないというご意見が管理者側からございましたら、この自主事業の部分について、常設展や入園料とは異なる 扱いとするといったようなことも含めて制度改正が必要ではないかという議論、これはあり得ることだと思っておりますので、こうした状態が生じましたら、この点などについては真摯に検討をし、その結果によりましては、条例改正等をご提案させていただくということは有り得ると思っております。

 

●細木議員 今回の見直しは将来的に、県の文化予算の縮小を目指しているかのような 疑念を、私は抱いています。8月の定例記者会見では収益が上がった場合、指定管理代行料の引き下げについては、短期的には否定しつつ、将来的には引き下げを否定しませんでした。◆指定管理代行料減額の今後の可能性について、知事に伺います。

 

○県知事 施設の指定管理を行うに当たりましては、管理運営に標準的に必要となる経費を積算しまして、ここから利用料収入の見込みを差し引くことで、指定代理の代行料を積算し、お支払いをするという形になります。

今回の見直しに当たりましては、自主事業の実施などにより生じます増収分を代行料から減額するということは行わずに、指定管理業務の基本部分は引き続き、主として代行料で措置をするという考えでございます。

一方で、中長期的な対応について申しますと、代行料の支払いは、指定管理期間ごとに設定をされます。この種の施設でありますと、5年ごと、ということになりますから、そういう意味では5年ごとに、指定管理料につきましては、物価あるいは集客の動向などを踏まえて水準を見直すということが、これはもう制度の立て付け上、必要になってまいります。

その際にありましても、直近の実績などによりまして、利用料金の収入を見込むことが基本とはなるわけでございますが、自主事業などの管理者の努力による増収分だということが明らかなものは、引き続き、管理者の収入として帰属をさせるという考え方に立ちまして、こうした対応を取ることによりまして、今回の制度見直しの趣旨を踏まえまして、経営努力のインセンティブが働くように、失われないように対応をして参る考えであります。

 

●細木議員 答弁の中で集客の動向についてのコメントがありましたが、やはり、博物館 というこういう文化施設については、定量的な集客とかという数では計られない、さまざまな活動がありますので、その点についてはしっかり指摘をしておきたいと思います。

今回の見直しの背景として、県民所得の向上を目指す民間事業者の取り組みを先導するため、職員の所得向上を図るとあります。9月の記者会見で、知事は財団職員の給与水準について、「せいぜい県職員並が上限」との発言が度々ありました。

◆今回見直しの対象となっている団体の職員から、給与水準など処遇改善についてどのような声があるのか、知事に伺います。

 

○県知事 すでに報道などもされておりますけれども、牧野記念財団につきましては、過去から処遇改善の要望を県に対していただいておりまして、県議会でも、この問題が取り上げられております。

今回、自律性向上団体と位置づけるその他の団体からも、処遇改善の要望をいただいたところはございました。ただ、今回の見直しは県立施設などにおきましても、創意工夫を凝らした付加価値の高いサービスを提供する、それにより、自由度の高い体制を構築するということが目的でございます。牧野記念財団に関する県議会でのご指摘が契機となった見直し ではございますが、団体側の要望に応えること自体を目的とした見直しではないということは申し上げたいと思います。

 

●細木議員 昨年12月時点での公の施設の指定管理者における業務状況評価では、今回、対象となっている施設の相互評価を全てAとなっています。

一方、知事は9月の記者会見で、現在の直指定の現状について、「県の関与で、県職員の延長の発想でしか運営しなかった部分が多かった、県の顔色ばかりを見るような運営になりかねない」との発言がありました。

◆直指定の指定管理施設において、こうした運営実態はあるのか、知事に伺います。

 

○県知事 この発言の真意を改めましてご説明をさせていただきます。

これは特に直指定ということになりますと、直指定の判断を、実質的にしていくのは県庁の担当課が中心にしていくということになります。財団の側が引き続き、指定管理者の指定を受けたいと考えますと、やはり、世の中、あらゆる組織で人事権が持つところが強いということはありますから、このいわば生殺与奪を握るという立場にある担当課に対しては、いわば頭が上がらない、ないしは、場合によっては忖度をするというような立場になってしまうのではないか、こういうことを申し上げました。

一方で、公募制によりますと、もちろん県としての審査等に当たる役割はありますけれども、この財団等にとって、争うべきは、まだ見えぬライバルということでございます。そういうところに打ち勝っていくためには、私は、究極は、県民の皆さん、そして利用者の皆さんに評価をされる経営ができているかどうかというところがポイントになると思いますので、県民の皆さん、あるいは、利用者の皆さんの思いに、あるいはニーズに思いを寄せまして、評価が得られるような経営をしていく、それであれば潜在的な競争相手も、この良い経営をするところには太刀打ちできないとおって、先ほど申し上げましたように、公募をしましても、競争相手が現れないということに繋がるということではないかと思いまして、そうしたメカニズムを私としては想定をして、こうした財団等施設の管理者が、是非、県民の皆さん、あるいは利用者の皆さんに寄り添ったそういう思考をし、また行動をしていただくということを期待したい、こういう趣旨を申し上げたところでございます。

 

●細木議員 今議会、「県立施設運営活性化懇談会設置」のための費用が計上されています。

◆懇談会の設置目的について 総務部長にお伺いします。

 

○総務部長 今回見直しの方針を各団体に説明した際に、団体側から自主事業として何ができるかわからないといった声がございましたため、県として実施事業の企画をサポートさせていただくために設置するとしたものでございます。

従って、今回の懇談会の設置目的は、各団体の自律性向上計画の策定支援、高付加価値サービス提供による収入増の方法論の助言としております。

この中において、専門家の方から、各団体が実施事業を企画する上でのアイディアを提供していただくことを期待しております。補正予算の承認をいただければ、今年度の後半に各団体あたり2回の開催を予定しております。

 

●細木議員 自律性向上計画、すなわち、やっぱり稼ぐことを目的という風に感じました。施設の実情など詳細に把握していないような中、短期間たった2回で本当に実りある、そうした政策・アイディアが出るのかっていうことがちょっと不満です。それについて、ちょっと指摘もしておきたいと思います。

◆本懇談会の委員構成について、総務部長に伺います。

 

○総務部長 人選については、これからになりますけれども、今、想定しておりますのは、学識経験者、経営者、それから施設管理に見識がある方を中心に5名程度想定しております。

 

●細木議員 先ほど、経営者ということが出されていました。この懇談会ついては、来年度も継続して設置される可能性もあるとお聞きをしています。

◆経営者の中から、特定の業者がずっと、懇談会に入るっていう事は、公平性っていう点ではどうなのかと思いますが、その懸念はいかがでしょうか。総務部長に伺います。

 

○総務部長 委員の選定にあたっては、様々な観点から、公平性を損なうことのないように選んでいきたいと思います。

 

●細木議員 合わせて、今後、指定管理に応募する可能性もありますので、ちょっと懸念も伝えておきたいと思います。9月に入り、急遽、城博の宝物資料の保存管理や研究など、学芸部門を公募から外すと打ち出され、今議会に設置条例改正案が提出されています。現場は混乱しているとの報道もあります。

◆学芸部門などコア業務と公募業務の切り離しは可能なのか、文化生活部長に伺います。

 

○文化生活部長 はい。これまでも、指定管理業務に係る仕様書の中で、施設の維持管理や 許認可、企画、運営などの管理業務、資料の保存や調査・研究・展示などの学芸業務というように、従事すべき業務を個別にお示ししています。こうした分割は他県においても同様の事例がありますことから、これらも参考にしながら、今後、早急に、業務区分を整理してまいります。

 

●細木議員 この業務の切り離し、さびわけについては、様々な懸念が、学識経験者から出されています。「博物館事業はトータルで運営されるもので、横の連携、コミュニケーションは取れなくなる」、「全体として何をしていくのか、協議体が機能不全になるリスクがある」「意思統一が困難、個々の判断がすべてずれてくる」、「学芸員ができる範囲が狭くなり、個性を発揮できない」、こうした懸念も出されているようです。

◆さて、公募した結果、企画候補や施設運営維持管理業務について山内記念財団以外の団体が指名された場合、コア部分を担う財団職員の処遇改善にはつながっていくのか、総務部長に伺います。

 

○総務部長 今回、整理いたしました、高知城歴史博物館の指定管理業務について、公募の結果、仮に、土佐山内記念財団以外の事業者が行うこととなった場合、その財団の方は、宝物資料の管理等に係る業務運営を行うということになります。その財団の人件費は、委託料で措置するということになりまして、県準拠の給与とした上で、人事委員会勧告等に準拠した引き上げ分についても、措置をするということになります。

 

●細木議員 更新ごとにこういった不安定な運営が起こってくるのではないかという風に懸念をします。

あと、高知城歴史博物館については、年度末が契約の期限となっています。通常であれば、7月から9月までを公募をかけて、審査決定の事務を経て、12月県議会で指定の議決を得ることが、県の指針で定められています。すでに10月に入っています。これから様々な公募の仕様書などを決めなければならないし、代行料の算定もこれから決まり、公募にかかっていくと思いますが、最低60日間は必要だと思います。12月議会では無理なので、2月議会にこけてくるという点では、通常のスケジュールとは、全然異例のスピードになっています。

◆武石議員は、今回質問やめましたけれども、この公募の公平性とか、指定管理者の制度の問題では、せめてこの高知城博については指定管理、直指定をそのまま存続して、この方針転換については見送り先送りをすべきではないかと思います。知事お答えください。

 

○県知事 直指定を継続しろというご意見だという風に思います。

けれども、私は、公平性という話がありました。公募の公平性を言うのであれば、直接指定は全く門戸を閉ざすわけでありますから、最も公平でない方法だと思います。そういう意味では、条件はつけても、ハンディはつけるにしても門戸を開くということの方が、私は公平だと思いますので、今回はこういう形でやや忙しいスケジュールになりますけれども、業務の範囲は以前よりは縮まりますので、このスケジュールでやらせていただきたいと思っております。

 

●細木議員 これまで直指定の理由ということで、様々な理由を付けてしっかり、直指定をしてきたというところの整合性が私は問われてくると思います。

「文化政策ラウンドテーブル高知」という団体が発足いたしました。県にも呼びかけられています。高知県における文化政策、文化施策の在り方に関する現状、及び課題を共有して持続可能で包括的な文化政策のビジョンを模索していこうと、是非、こういう団体にも、県 はしっかり参加をしてほしいと思います。これちょっと質問はやめておきまして、最後の質問にします。

文化政策の専門家は、「県は文化政策、文化施設をどう充実させるかという目的を語らず、公募という手段の話しかしていない」と指摘をしています。その要因の1つとして、文化政策についての根拠条例、すなわち文化振興条例が県にないことです。全国では38の都道府県で制定されています。県の文化振興ビジョンは来年度までの期間となっています。

◆高知県文化振興条例の制定をすべきと考えますが、知事の所見をお聞きします。

 

○県知事 お話がございました他県で制定されております文化振興条例の例を見ましても、その多くが理念的な内容を規定したものでございまして、文化政策に関します具体的な計画・指針などは別途策定をされております。本県は、すでに文化芸術振興ビジョンを策定しております。これは、文化芸術基本法の趣旨を踏まえました上で、他県の条例で規定されております、文化政策の基本理念、県の役割などを盛り込んでいるところでございます。

このビジョンを着実に実行することで、さらなる文化芸術の振興につなげていきたいと考えておりまして、条例の制定の必要性は、現在感じているところではありません。

 

●細木議員 残念です。是非、条例の意義、これからも引き続き求めていきたいと思います。以上で終わります。ありがとうございました。