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- 2025年10月17日
- 議会(質問・討論)
- 2025年9月議会 細木良議員の予算等反対討論/文化施設の管理公募化、県立病院の個室料引上げ(2025.10.14)
●細木良議員 日本共産党県議団を代表し、第1号令和7年度高知県一般会計補正予算、第10号高知城歴史博物館の設置及び管理に関する条例の一部を改正する条例議案、第11号高知県営病院事業料徴収条例の一部を改正する条例議案に反対の立場から討論を行います。
まず前段として、県が進めようとしている「公社等外郭団体の在り方の見直し」について、県が示す見直しの背景では、県民所得の向上を目指す民間事業者の取り組みを先導するため、高付加価値のサービスを提供し、職員の所得向上を図ることとしています。博物館等非営利施設に対し「稼ぐ施設」になれと迫り、県民の所得向上を実現させる”リードオフマン”の任務を県の文化施設に押し付け、県内の民間企業に波及させるという考えは地方自治法244条「公の施設」の設置目的に反し、憲法から援用される「文化権」、世界的な「博物館」定義、「博物館法」の趣旨に真っ向から反するものと考えます。
国の文化芸術基本法第一条では、文化芸術が人間に多くの恵沢をもたらすものであること、第二条3項では、文化芸術に関する施策の推進に当たっては、文化芸術を創造し、享受することが人々の生まれながらの権利であることに鑑み、国民がその年齢、障害の有無、「経済的な状況」又は居住する地域にかかわらず等しく、文化芸術を鑑賞し、これに参加し、又はこれを創造することができるような環境の整備が図られなければならない。「経済的な状況」、すなわちお金のあるなしで文化の享受が等しく受けることが困難になる点については、今議会の知事の答弁でも明らかになりました。
県は今年度から文化施設等の入館料を引き上げました。その時の理由も職員の処遇改善でした。そもそも総務省通知では指定管理団体での人件費について「指定管理者の継続的な人材確保などを通じて施設運営の安定を図るため、賃金水準の変動等を踏まえ適正に積算し、指定管理料に反映する必要がある。」、「人件費の積算 • 人件費算定に用いる労務単価は最新ものを使用し、賃金水準の変動等を踏まえ適正に積算し、指定管理料に反映すること。」とされています。
県の文化行政をどう発展させるのか、そのために文化施設はどうあるべきなのかの視点に立ち、財団等の職員の処遇についてどのような要望があり、課題があるのかしっかり話しあうことこそ必要ではないでしょうか。
また、県民所得の向上というのであれば、県内の圧倒的多数の中小零細企業に対する県の施策があまりにも貧弱であり、最低賃金引上げに対応した事業所に直接支援し、大変喜ばれている徳島県や岩手県のような施策をこそ参考に導入すべきです。県内中小零細企業の置かれている、賃上げしたくてもできない、深刻な人手不足を解消する県の実効性ある支援を強く求めます。
第1号議案中、県立施設運営活性化懇談会開催費について。
この懇談会の目的は各団体の自律性向上計画の策定支援、高付加価値サービス提供による収入増の方法論の助言となっており、今年度後半に各団体あたり2回の開催を予定しています。短期間、わずか2回で施設の実情に応じた計画が仕上がるのか疑問です。また懇談会委員の人選については、学識経験者、経営者、施設管理に見識がある方を中心に5名程度を想定とのことでした。経営者については、今後文化施設等の指定管理に応募する事業者の経営者である可能性も否定できません。公平性という点で疑問が残ります。「公社等外郭団体の在り方の見直し」そのものに反対していることとあわせ、前述の指摘した点について懸念があるため懇談会開催費用は認めることはできません。よって修正案に賛成、原案に反対いたします。
次に第10号「高知城歴史博物館の設置及び管理に関する条例の一部を改正する条例議案」は9月に入り急遽、城博の宝物資料の保存管理や研究など、学芸部門を公募から外し、施設の維持管理や許認可、企画、運営などの管理業務を分離し、指定管理を公募する方針に転換したことによる条例改正案です。県内外の多くの批判に対する「付け焼刃的」な弥縫策により、施設や関係部署は混乱を極めています。
この業務の切り離し、さびわけについては、「博物館事業はトータルで運営されるもので、横の連携、コミュニケーションが取れなくなる」、「全体として何をしていくのか、協議体が機能不全になるリスクがある」「意思統一が困難、個々の判断がすべてずれてくる」、「学芸員ができる範囲が狭くなり、個性を発揮できない」、こうした様々な懸念が学識経験者から出されています。指定管理運営指針に基づかない拙速なスケジュールですすめることもあり、反対するものです。
次に第11号高知県営病院事業料徴収条例の一部を改正する条例議案について。改正の内容は来年1月から県立病院の有料個室の使用料を一日当たり1400円引き上げるものです。
物価高騰が長期間つづき県民生活は疲弊しています。罹患し入院が必要になれば医療改悪の波を受け、多額の医療費負担がのしかかってきます。公的な病院、県立病院だからこそ県民の立場に立って医療が提供されなければなりません。個室料負担は高額療養費等の対象にならず、そのまま多額の負担が発生します。現行料金は他の公的病院と比較して若干低いとしても、長期になれば重い負担となります。現下の物価高騰の折、引き上げはすべきではありません。
県立病院の経営についての現状は、全国の自治体病院の9割が赤字、民間病院も含め県内の病院の7割が赤字というように厳しさを増しています。今月開催された県市長会議では「地域医療の崩壊が目前に迫っている」と危機感を示し、県に対して公立病院存続のための財源措置を国に求める要望が出されています。県民の命を守るため国に対し、しっかりと物申すよう求めます。
尚、個室料の徴収条件として、ベッドコントロール等病院側の都合で徴収してはならないこと、また病状に応じて個室で療養しなくてはならない場合も徴収してはならないことを患者さんにも丁寧に説明し徹底するよう求めておきます。
県の進めるスマートシュリンクのsmartは「賢い」という意味の他に「ずきずき痛む」という意味があります。
またshrinkには「縮む」以外に「枠にはめ込む」という意味もあるようです。
県の進める「県一消防広域化」、賢く縮むと真反対で野放図に膨張する「県民体育館建て替え」、そして「文化施設の公募化」などこの間の知事の政治姿勢は、新自由主義的な思想の下、県民負担の増大、「痛み」の押しつけと県民の声抜きにゴールありきで突き進む「枠にはめ込む」姿勢が顕著です。
「共感と前進」という知事のモットーは県が打ち出す施策に県民に共感してもらい前進する意味だということです。そうであるならば県民の共感がないものは拙速に前に進めてはなりません。
以上の理由で今議会提案された第1号、および10号、11号の条例議案に反対するものです。
同僚議員のみなさまのご賛同をお願いいたします。