-
- 2025年12月22日
- 議会(質問・討論)
- 2025年12月議会 岡田芳秀議員の「介護保険制度の後退につながる見直しの中止を求める意見書(案)」賛成討論(2025.12.19)
●岡田議員 日本共産党を代表し、議発第8号「介護保険制度の後退につながる見直しの中止を求める意見書(案)」に賛成の立場で討論いたします。
現在、厚生労働省の諮問機関である社会保障審議会の介護保険部会で2027年度の介護保険制度見直しに向けた議論が進んでいます。厚労省は、12月1日の同部会に、介護サービス利用料の2割負担の対象を拡大する案を提示しました。具体的には、2割負担の対象となる年収基準を現行の280万円(単身者)から最大230万円まで引き下げるという案です。これが実施されると、新たに負担増となる高齢者は約13万人から最大35万人以上に上ります。ただでさえ物価高騰で厳しい国民生活に深刻な影響を与えることが懸念されます。同部会では慎重論や反対論も相次い出されているところです。
厚労省は、「当分の間は負担増の上限を月7千円に抑える」「預貯金が一定額未満であれば1割負担に戻す」などの配慮措置を示していますが、それはあくまで「当分の間」の暫定的な措置にすぎません。配慮措置が終了すれば最大月2万2千円、年額26万4千円もの負担増となり、高齢者の暮らしに深刻な影響を与えることになります。
国はこれまでも、①要介護1・2の「生活援助」や通所介護の地域支援事業への移行、②ケアプランの有料化、③利用料2割負担の対象拡大など、介護保険制度の重要な部分を縮小する見直しを検討してきました。
国は要介護1・2の人を「軽度者」と呼びますが決して軽度でありません。認知症の人は要介護1・2の時期にもっとも専門的なケアが必要です。「生活援助」や通所介護は、高齢者が重度化を防ぎ、住み慣れた地域で日常生活を維持するうえで必要不可欠なサービスであり、給付縮小は利用控えや要介護度の悪化、そして家族の介護負担の増加につながる懸念があります。
社会保障審議会介護保険部会の委員である「公益財団法人認知症の人と家族の会」の和田誠代表理事は、2割負担の拡大やケアプランの有料化は高齢者の直接負担だけでなく、支える現役世代の生活にも重大な影響を及ぼし、労働時間の制約や介護離職を招くと指摘し、「増加している老老介護や独身の子が親を介護するシングル介護世帯では生活そのものが成り立たなくなる」と強調し、負担増に強く反対しています。
さらに、この制度見直しは、利用者だけでなく、介護サービスを提供する事業所にも深刻な影響を与えます。すでに政府が2024年度から訪問介護の基本報酬を削減したことが大きな打撃になっています。介護事業所が1カ所もない自治体が出てきております。多くの事業所が慢性的な人手不足や物価高騰によるコスト増に直面し、厳しい経営を強いられているところです。利用者の負担増によって介護サービスの利用が縮小すれば、地域の介護事業所の経営基盤が弱体化し、結果として高齢者が必要な介護が受けられないという悪循環を引き起こされる懸念があります。
高知県においても、高齢化が進み、高齢者のみの世帯も増加しています。皆さんが、安心して必要な介護サービスを利用できる体制を維持することが極めて重要です。負担増や給付縮小を伴う一連の見直しは、地域包括ケアシステムの後退につながり、高齢者の生活と尊厳を守るという制度本来の目的に反するものです。
要介護1・2の生活援助・通所介護の保険外し、ケアプランの有料化など、介護保険制度の後退につながる見直しは、介護の社会化を唱えて出発した保険制度を後退させ、自己責任を押し付けるものであり容認できません。介護保険制度の後退を招く見直しは行わず、利用者が必要なサービスを継続して利用でき、事業所が地域で安定して運営できるよう、介護への国の支出を増やし、国の責任で介護保険制度の充実を図ることこそ重要となっています。
そのことを強く求めて、議発第8号の賛成討論といたします。同僚議員の皆様のご賛同をよろしくお願いいたします。
意見書案はこちら↓
介護保険制度の後退につながる見直しの中止を求める意見書(案)
厚生労働省は、12月1日の社会保障審議会・介護保険部会において、介護サービス利用料の2割負担の対象を拡大する所得基準の引き下げ案を提示した。現行の所得基準(単身者の場合)280万円を260万円、250万円、240万円、230万円へと見直す4案で、新たに負担増となる高齢者は約13万人から最大35万人に上る。物価高騰が続く中、部会でも慎重意見や反対意見が相次ぎ、国民生活に深刻な影響を与えることが懸念される。
さらに厚労省は、「当分の間は負担増の上限を月7千円に抑える」「預貯金が一定額未満であれば申請により1割負担に戻す」などの“配慮措置”を示したが、期間は「当分の間」と暫定的措置であることを明らかにしている。75歳以上医療の2割負担の緩和措置が、わずか3年で終了したように、将来的に負担増が既定路線化する恐れは否めない。配慮措置終了後には最大月2万2千円、年額26万4千円もの負担増となり、高齢者の暮らしに大きな影響を与えることが予想される。
国はこれまでも、要介護1・2の生活援助や通所介護の地域支援事業への移行(いわゆる保険外し)、ケアプランの有料化、さらなる利用者負担増など、介護保険制度の重要な部分を縮小する見直しを繰り返し検討してきた。生活援助や通所介護は、高齢者が重度化を防ぎ、住み慣れた地域で日常生活を維持するうえで必要不可欠なサービスであり、給付縮小は利用控えや要介護度の悪化、家族の介護負担増につながる懸念がある。
こうした見直しは、利用者だけでなく、介護サービスを提供する事業所にも深刻な影響を与える。すでに多くの事業所が慢性的な人手不足や物価高騰によるコスト増に直面し、経営が厳しさを増している。給付縮小や利用者負担増によりサービス利用が減少すれば、地域の事業所の経営基盤がさらに弱体化し、結果として高齢者が必要な支援を受けられなくなるという悪循環を引き起こす恐れがある。
高知県においても、高齢者単身世帯や高齢者のみ世帯が増加しており、安心して必要な介護サービスを利用できる体制を維持することが極めて重要である。負担増や給付縮小を伴う一連の見直しは、地域包括ケアシステムの後退につながり、高齢者の生活と尊厳を守るという制度本来の目的に反するものであり、容認できない。
よって、国におかれては、次の事項を実現するよう強く要望する。
記
1、 要介護1・2の生活援助・通所介護の保険外しを中止し、介護保険制度の後退を招く見直しを行わないこと。
2、 ケアプランの有料化や利用者負担増など、高齢者の不利益となる改定を行わないこと。
3、 利用者が必要なサービスを継続して利用でき、事業所が地域で安定して運営できるよう、国の責任で介護保険制度の財政基盤を強化すること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。